サイキョーと無敵しかいないドラゴンのお食事屋さん   作:ナツコソビオレ

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気分は遠足

「…大丈夫だったか」

「す、すみません、お伝えしたいことがあった矢先でしたのにお邪魔を…」

 

 よかった生きてる、喋ってる。

 まともに初めて聞いた「人」の反応を見て、周囲は安心をおぼえる。

 感情が働いたわけではない。

 そこにいる全員が、このミッションに失敗したら、触れることを許可されるくらい特別扱いされたこの生物を即座に死亡たらしめた存在としてどう処断されるか知れたものではないからである。

 

 今回の許可を出したギンの命令、処遇は、彼女らにとってはあまりに重い。

 客の存在ではなく、そっちに大きく興味が動いていたのである。

 

「全然大丈夫ですゥ」

 

 言葉で笑っているメラ美の対外的営業スマイル。

 表情の裏ではそういう理由で、全然面白くはない、

 そういうことだ。

 

(悪いのは、殺しかけたこいつだしな)

 

 そう、周囲も思っているのはこのタイミングでは出さない。

 実は、この客が倒れて起きるまでに腐食毒が効きすぎて腕を段階に分けて二度切除、急造し取り付け、内臓の浄化と回復魔法のかけなおし数度と、かなりこの人物自体をいじっている。

 目を覚ましただけでも、相当奇跡を頼ったと言っても過言ではない。

 それをそれとして。

 ベッドに寝かせ、そうした処置の対象がすぐ動けるはずはないので、介抱しながら事情を聴く。

 

「……客じゃなかった…迷い込んだだけだったとは」

「ま、まぁ、気軽にランチしに来たという恰好ではなかったですが」

「そうなのか、詳しいなオマエ」

「むしろそこまで何も知らないのか」

「………私に何か文句がありそうな言葉だなぁ、フォルセティ」

「あなたの態度にはいつでも不満ありますわアイシー」

「ほぉ……」

 

 ちょっとしたことから即座に立ち込める殺気。

 

「待って待って! また住めなくなるから!」

「「ちっ」」

 

 仲が悪いらしいにしても、言葉尻一つで言葉以外に発展するのは勘弁していただきたい。

 誰が関わるにしても、周囲の生命ことを考えて行ってほしいものだ。

 まず誰であっても山ひとつは消えてなくなるだから。

 

「なんでもいい、まず、全員集合!」

 

 会議の開始である。

 

「まず、彼だが、村が襲われて助けを求めにあてもなく道沿いに歩いていた…わかるな」

 

 メラ美が現状把握と状況の周知、細部確認を行っている。

 いわゆる報連相。

 知っておくことを全員理解して頭に入れているか、この場で伝える。

 さらにそれ自体を全員を証人にして事実化したうえで後の責任の曖昧さを消し去る。

 プロセスとしてとても必要な過程なのである。

 

「つまり、迷わなければ辿りつけないくらい、やっぱり場所が悪いと言うことでは」

「そこじゃねえ!」

 

 ぺしっと、指二本で相手の頭を弾く。

 

「我々は、彼が迷いながらも無事に人の住居にたどり着いて応援を呼ぶ役目を果たす、そんな運命を摘んで閉ざしたのではないのか?」

「…具体的にお願いしたいんですが…」

「この無警戒毒撒きカスのせいで、人がやれて当たり前のことを邪魔したんじゃないの! て言ってんの!」

「言い方!」

 

 勘違いしたくてもできない程度に悪口だが、一応これでもメラ美としては、全員の前で裁量の是非を一気に出させて判断して、後腐れもできないよう慈悲でやってるつもりではあるのだ。

 誰がわかるものか、と言うレベルながら。

 

「とはいえ、命はちゃんと助かっているのですから…」

「二度と動けるかわからない体の交換やっているレベルで、ちゃんとと呼べるものなはずがない!」

「…だからってどうするっていうのよ今更…」

 

 様々に意見が飛ぶ。

 とはいえ、大半が、ヒトと状況に関しての理解を全くする気がないままなので、状況の確認などを別視点で流していくのがせいぜいだ。

 

「…で、結局どうしたらいい」

「ここで煮詰めた終点に何かすべきかどうかって意見が出ちゃうのが我々だよな…」

 

 人の心がない。

 それで安心するほうもほうだと、メラ美は心底思うが。

 自分に。

 

「それは、まるで結論にするアイデアは最初から持っているかのような口ぶりですね」

「もちろん」

「それはつまり…?」

「簡単だ」

 

 メラ美は単純に、当たり前に告げた。

 

「我々が解決してやるんだよ」

 

 ざわついた。

 声には出ない程度だがざわついた。

 が。

 決してそれに対して、疑問や反論は出なかった。

 様々理由はあるが、大手を振ってここから出て楽しいことがみんな揃ってできるという可能性に、全員がたどり着いていたからである。

 

 

 

 

「生き物って総じてケダモノというカテゴリから逸脱できないもんだよな」

 

 もうすぐ村、と言うあたりでメラ美が呟いた。

 

「いちいち最低なことを言うおまえが一番理解力があるというのも、それを証明するという理解でいいのか?」

「ありうるな」

 

 毒子の言葉に、喧嘩を売られたとは思わず、はっとなる。

 

「高尚で無感情というのは、やっぱりヒトがやるには正しくないのかもしれない、または本能に蝕まれる一瞬が一番人らしいと言われる可能性もある」

「…見下してるのか悩んでいるのか、私では判断つかんな」

「いえ、たぶん感情の取得に修正をかけているだけだと思いますよ」

 

 口をはさむのはフォルセティ。

 ふんわりと笑顔の表情を浮かべているが、見下すの正しい用法はこれの方であると思わざるを得ない。

 それに関してのセンサーが唯一あるのは、いまはアイシーだけなので飛び火はしない。

 そして、そんなピクニック気分な雰囲気で集団が歩いているが、周囲はすでに血と死体が目立って戦地と呼ぶべき視界と言うほかはない。

 

 

 実に異常である。

 

 見ると、逃げようとして後ろから切り殺された村人だろうか。

 放置するにはあまりに悲しいものが最初にあり、少し進むとそれに似たものがまた複数。

 確かに、襲われて理不尽に崩壊したであろう村だ。

 時間と人情にあふれた旅人であれば、その場に埋めてやっていたかもしれない。

 

 が、一行は踏みこそしないが気にも留めずに奥に行く。

 今まさに攻防が起きている様子はないし、もしかしたらもう略奪まで済んで立ち去ったのかもしれないが、それらは留意すべき要因ではない。

 

 現状を見て、あの迷い込んだ客が納得する程度に情報が拾えたらいい。

 そんな程度なのだ。

 

 そこに。

 

「………」

「jq bbie.c@!!! b\p!!!」

 

 なんかいた。

 言葉が通じそうにない鳴き声を大きく上げているもの。

 二足歩行の爬虫類っぽいなにか。

 

「なんなんだオマエは?」

 

 毒子が駆け寄ってきたそれに少しだけ踏み込んで触れる。

 そこから、一秒もあったろうか?

 その爬虫類が、変色してドロドロに崩れる。

 腐食毒だ。

 意識なく触れる程度なら毒がしみこむ程度だが、意図するなら周囲丸ごと吸えば死ぬ程度の毒で満たすことはたやすい。

 が、これが無意識の一つ先程度で発動しまくるのは、はた迷惑のレべルをも軽く超える。

 こんな勢いの奴らの集まりだから涼しい顔でいるだけで、これは移動がもはや天災なのだが…。

 

「殺気っぽいものが向けられてるねぇ」

「そりゃ大変だねえ」

 

 一向に涼しい顔。

 

「…フォルセティさぁ、せっかくこんなに珍しさを満喫できる機会なのに、無言でやるのやめてくれる?」

「なんでしょう、とくに迷惑なことはしてないですけど」

「したね!あの家の中からこっちに襲い掛かろうと待ってたやつ、家の中ですぐ殺したね!?」

「……さぁ」

 

 フォルセティ。

 大気、空気、天などの領域をつかさどり、すべてが常に一体になることで自由に操る存在。

 空間に触れている限り、すべてに視覚が行き届き、さらに操ることができるので睨んだ相手を瞬間で真空ミキサーにかけて肉塊にすることもできる。

 おそらくだが、それを無言で連発しているのだとメラ美は指摘した。 

 

「気配らしいのが、見かけてちょっと楽しめそうな気がしたとたんにすぐ消えるのさ、大体君が殺してるね!?」

「不快じゃないですか」

「こういうのが初めての仲間もいて、珍しくて楽しめそうっていうのを邪魔してんのよぉ? それさぁ」

「不快ですので」

 

 いかん、話にならない。

 メラ美は悟った。

 こいつは自分たちが、他の生き物が発する、いわゆる感情にあてられるのに珍しさを感じない。

 いたってヒトに近い感覚があるやつだ。

 

「…なら、こう考えよう」

「なんですか」

「もしも見えないところで、あのヒトが助けたいと思っている人が人質になっている可能性がある」

「はい?」

「そういうことにしよう」

「何かそれが障害になりますか?」

「なるんだよ普通の生き物にとって!」

 

 おかしい。

 ヒトの感性が一番わかるやつとして人の目線を提示したはずだ。

 それが、通じやしねえ。

 所詮こいつも私らと同じ現象に過ぎないのだ。

 メラ美はそれを修正した。

 したが、理論としては押し通さなくてはいけない。

 理解をしろよと言えるのも、かろうじて通じそうなのもこいつくらいなのは、たぶん数年は変わらないと思っているからだ。

 

「だからヒトらしい行動としてお前のやり方失格! ちゃんと見えてから!」

「……話が進まなそうなので、いいですよそれで」

「納得してなさそうだな!」

「だって、貴方だって誰が死んでも心が痛むなんて思考には行き当らないのでしょ?」

 

 そっちかぁ。

 少し内心顔をしかめるメラ美。

 

「どっちにしても、そういう感性をみんな身につけるためなのもあるんだから、禁止な禁止!」

「もういいです、わかりましたよ」

 

 まったく納得して飲み込んではいない様子。

 しかし、今は相づちをうたせたので、それでいいだろう。

 

 そうはなったが…。

 

 結果が変わるものではない。

 奇襲していると思って飛び出してきたやつらが、見えないところで死んでいるか、目に見えた瞬間切り刻まれるかだけしか違わない。

 

 

 むなしい。

 ただ、むなしい。

 こいつらの感性に一石を投じることがいかに無駄なのかを知るだけなのかと悲しくなる。

 

 だが変化はあった。

 

「種族が、おかしな混ざり方をしているものですね」

 

 後ろからついてくる誰かが言った。

 

「キノ、起きてることあるんだね」

「…気づいてなかったのか」

 

 振り返るメラ美に、非常冷めた目で見ているのはアイシー。

 お前がいるのもあるから、キノは寝たままだろうと思ってたんだよと順序だてて突っ込んでやろうと思ったが、時間は惜しい。

 そして、そんな時間をこいつ、堅物アイシーが納得するまで…。

 いや、説き伏せるまで根詰めの勝負を行うのだとしたら。

 間違いなく、フォルセティと毒子が周囲の生きとし生けるものを絶滅させることだろう。

 止める者も方向修正する者もないこいつらは、ただの災害と変わりない。

 そう、メラ美は確信している。

 そう思うが故、今は、己を曲げるほかないのである。

 何の疑問も飲み込み、耐えるのだ。

 

「…で、私はフォルセティに負けないだけ殺すべきだとおまえは思わないのか?」

「知ったことかよ!」

 

 対抗意識を燃やすな! 毒が頭の中煮詰まった出来損ないがよ!

 しかもキルマークで。

 もうめちゃくちゃだよ!

 

 そう叫んでやりたかったが、メラ美だってそれが意味がないことは最初から理解している。

 

 何が目的で来てるか…。

 と、心の中で毒づきながら、ふと気づく。

 

 メラ美、何のために来たかを完全に忘れていた。

 人がいたら殺さない、は基本として押さえていたが、救出、解放といった、あの迷子の求めていたであろう意図は…。

 もう完全に抜け落ちていた。

 そりゃこんな殺戮の応酬になるよなあ。

 自分がそうなら、自分以外がそれを覚えて守ってるはずがない。

 メラ美は内心で納得すると、改めて必要なはずの措置、そして取るべき行動を練り直す。

 

「どうしたバグったか」

「脳の奥まで毒が詰まったお前と一緒にすんなよ!」

「脳みそなんて誰にあるんだよ!?」

「…そういえば私たち、言葉通りに言えば全員能無しだな」

「言い方よ」

 

 その間にも、確実に周囲から生きとし生ける力は失われていく。

 突っ込みをしている間に何かすべきことはあったのか、なかったのか。

 

「あ」

「どうした能無し1号」

「人確認してる!? 丸ごと殺してない!?」

「…してないわけないです、貴女じゃないですよ」

 

 棘はあるが、フォルセティが冷静さを失うような舞台ではそりゃないか。

 

「はいはい体質でご迷惑おかけしますわね」

「そのへんは自覚してるんですね」

「君らと違って、私なりの苦労があんのよ」

「…でしょうね」

 

 少しだけふて腐れたようなメラ美と、さも当然と言わんかのごとき周囲。

 

「あの人には悪いけど、全滅ですかしらねえ」

「説明しづらいから、何人かは生かしとこうよ…」

「生々しい傷が残るだけで、それも必ずしも…いいこととは…」

「だからお前らは人の心がないっちゅうんじゃい!」

 

 吐き捨てるメラ美。

 

「人なんて死んだら泣いて誰かと会えば笑うって覚えればいいんだから増えればそれだけいいんだよ!」

 

 返しで言うそれもどうなんだ。

 メラ美もわかっているようで、だいぶ不安なやつのようだ。

 

「そういった感情の理解ができないとヒトどもに紛れ込めないから、私が全員分の教育に腐心しとるというのにだなぁ…」

「いや、たぶん無駄だぞそれ」

「頭に腐敗した毒詰まってるやつに言われたくないわい!」

「むしろ、何も入ってない話になってんじゃないのか」

「そうなんですけどね!」

 

 仲がいいのか悪いのか。

 そんな話の間にもフォルセティは粛々と周囲への殺戮を進めている。

 そして、言い合いしているメラ美と毒子の間にちょうど落ちた。

 

「おいおい殺すの好きすぎて空から魚まで降りてくるのかよ最近のドラゴン界隈はよ」

「なんでもありだな」

「…いや、ちょっと待てなんだこれ」

「なにか、ご不満でも」

 

 フォルセティがいくら性格がねじれているといっても、この場にいないものを能力で出したりするほど気合い入れてくるものだろうか。

 そこまで、そもそも感情的になるシーンでもないはずではないか。

 と、すると…。

 この魚…いや、水棲系の亜人種もしくは混血…。

 これは元からここにいたことになる。

 さっきから豚ども、犬系、鳥系と様々な雑種のような怪物がフォルセティに切り刻まれていたが…。

 

 

 ありえん。

 

 ようやく、先ほど誰かに言われたことも思い出して、違和感が発生する。

 何のために、そこまで混合した関連性のうすい奴らがこんな場所で遊んでいるのか。

 

「喋れるのいたら…一人生かして情報取ったほうがよくな…」

「とくに行動の調査が必要な生き物がいるとは認めませんが?」

「…取り付くしまもねえ…」

 

 後始末の途中で調べるしかないか。

 メラ美はその一言だけであきらめる気で、もはや生存者探しで残った建物の家探しでもしようと思いかけていた。

 そこを。

 

「いや、ちょうどいるかもしれないな…一言くらい話せるものは」

「おやおや、珍しく心を入れ替えてくれたとは…」

 

 いや、違う。

 

『キサマタチは、神をも恐れぬ大罪を犯しておるッ!』

「フォルセティのあれ食らって、喋れるやつがいるのか」

 

 メラ美が少し驚く。

 見ると、初めて喋る奴がいたのに感心するのと同時に、何やら立派な着衣…ローブのようなものを着て、明らかに人間の真似なのか文明の欠片を身につけていそうな怪物がそこにいる。

 どちらかと言うと、強そうであること以上にメラ美にとってはありがたい存在ですらあった。

 今の状態に関して理解し、説明できそうな生き物に、やっと、初めて出会ったのである。

 

『神の前には等しくひれ伏せ、つまりワタシの前に無礼を詫びて死なねばならぬッ!!』

 

 が…その希望の存在は、これまたえらく強い態度でいるものだ。

 

「…あいにく、ここにいる奴に神の代弁者の発言は響かないと思うんだよね、飽きられててさ」

『ならば不信心なるものに神の怒りが与えられるべきであるッ!!』

 

 うぉぉぉぉぉ!

 唸るような叫びの呼応が周囲に、その言葉と同時に起きているのが聞こえる。

 まだそんなにいたか。

 さて、その緩んだ感想から、ほどなくである。

 

「お!?」

 

 光が見えたとたん、とてつもない轟音。

 周囲の建物や木々は瞬時に吹き飛び、または残りながら着火して、それが幻でないことを証明してみせる。

 

 

 とてつもない大きさの雷であった。

 

『愚かッ!!!』

 

 勝ち誇るかのような愉悦の叫び。

 

『偉大なる龍族の束ねる真なる怒りの群れを、ヒトごときが止められるはずは、ないッ!!』

「…親が聞いたら泣くぜ、まったく」

 

 煙と風に見通しもきかない中の雄叫び。

 そこについでで聞こえる、冷えた突っ込み。

 

 誰が。

 

「竜だか何だか名乗るなら、目くらいは正しく能力を残して進化できなかったのかねぇ」

「いや、絶対こっちと繋がってないから仕方ないでしょ」

「じゃあこいつは実際は何なんだよ?」

「生物ベースで別に作った後継者でしょ…ただ卑下だけしてやるもんじゃないわよ」

「…に、したって目も感覚も鈍すぎて役に立たんじゃんよぉ、これじゃ」

 

 口々に、何もなかったかのような軽口が出てくる。

 当然…。

 

『貴様ら、何かに護られてでもいるのか、答えろッ!!』

 

 そりゃ怒る。

 

『いや、必要はない…次は死ねッ!!』

 

 もう一度。

 同じような雷が降り注ぐ。

 魔法としてもかなり高位に違いない。

 同じように落とすにも、すでにそこには建物の影すら消えた焦土とえぐられた土が残る程度になるほどなのだ。

 地面すら焼け焦げて、その力のすさまじさを言葉にするまでもないほどの情景を作り出している。

 

「身の程…くらいは知ってれば、逃げられたと後悔してほしいわね」

『………!?』

 

 龍と名乗った存在が、すでに言葉もなくすほど困惑している。

 同じ力があったはずなのに、今度は地上に届いていない。

 失敗したわけではない。

 弾かれるか、消されるかしたのだ。

 

「何か聞く前に殺すのはやめときなよぉフォルセティ」

「…またそうやってやることを制限しようとする…」

 

 やろうとしていたのは明白らしい。

 

「こっちとしても聞きたいことはあるんだ、言葉が通じるからには仲良くやれる余地はあると思うのがヒトらしさって示さないとな!」

「こんだけ仕掛けられてか」

「そこ、毒子、せっかくの機会を大事にする精神忘れない!」

 

 攻撃など眼中にないかのようだ。

 この彼女たちにとって、村の惨状も、とてつもない敵も、感情を動かすレベルにすら値しないかのように。

 

「そこのお前、元素始龍とか古代煌皇種あたりの単語に覚えがあるかい」

『…もちろん、わが一族の始祖の名に覚えがないわけがない!』

 

 いかにも誇らしげに答えてみせる。

 さぞかしすごい存在という意味なのだろう。

 

「……悪いけどそれ、絶対嘘だからこの後はさ、名乗らないほうがいいぜ」

『愚弄かッ!!!』

「そいつらと同じ眼があれば、すくなくとも山一つ向こうからでも私たちはわからなきゃいけないんだよ…子孫名乗るなら……それくらい能力残っているべきだよ君らにも」

『何度も苛つかせてくれる! 何が言いたい!』

「世代が違って能力が薄れるにしても、何か根本的なものは残るはずでしょうし、そこが消えたら何も残んねえよってことだよ、龍の子孫くん」

『ならそう思って世を去るがよいッ…』

 

 怒りが、伝わってくる。

 呪詛のようなものを唱えるその一つ一つに、呪文だけではなく感情が乗っている。

 おそらく渾身の何かなのだろう。

 

『魂そのものを捧げて消えてなくなるがいいッ!!』

 

 龍を名乗るそれは、証明をしたのである。

 世界のどれよりも禁呪とされる、命をもてあそぶ極大の魔法によって。

 それを使える規格外の魔力によって。

 これは、それに値する「力」だったに、違いない。

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