エヴォルダー   作:法相

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ダブルヒロインの戦いって燃えると思っている派閥です。


14話:瞬きの戦い

 ――疾い。

 花奏の抱いた感情はその一つに尽きた。

 交差する剣撃は刀は折れずとも、最初に立ち会った時からは格段に腕前が上昇していた。

 花奏は元々一振りの刀でも手数を武器にする相手もそれを上回る速さで返り討ちにしていた。一姫の二刀流とて初戦では対応できていたのだ。

 幾度目かの鈍い金属のぶつかり合う音。

 

『花奏、奴さん見ないうちに随分と強くなったな』

 

 相棒である黒鉄も一姫の強さをしっかりと理解しており、それに短く相槌を打つ。

 

「本当に、疾い」

 

 全力でやっているにも関わらず、次第に花奏は余裕がなくなり大きく弾いてなんとか距離を取る。

 空中のため踏ん張る必要もなく想定以上に距離をとれた。

 

(この成長速度は模擬戦、とは違うな。剣くんとの特訓っていうのはかなり実戦に近かったんだろうな!)

 

 ほんの数瞬の間にそこまで考え、翼をたなびかせ勢いよく旋回し一姫の頭をかち割らんとばかりに叩きつけにいく。

 一姫もいち早く反応し、二刀を交差させて受け止めた。

 だが花奏の一撃はまさに豪剣であり、そのまま一姫は地面へと叩き落とされた。

 

『完璧には入らなかったな』

「黒鉄、彼女が強いのはわかっていたことじゃないか。驚くことはない」

『いや、少なくとも最初の戦いの時程度の実力であれば今の一刀で終わっていた。気を抜くなよ』

 

 わかっているよ。と返し地面を見る。

 土煙が思った以上に舞い上がっているが、すでに立ち上がっている彼女に称賛の思いを胸に浮かべた。

 構えをとったのが見え、花奏もそれに応戦するべく突きの構えを取り……同時に翔んだ。

 

 

「やっぱ強いわねあの娘」

『限界まで頑張ってるんだけどね。正直厳しいよ』

 

 シンザンの返事に「だよねぇ」と一姫ももらす。

 手元にある二本の刀を見れば、先ほどの一撃を受け止めたせいで大きくヒビが入っていた。

 いや、そもそもこの対戦は一姫に分が悪い。

 いかに攻撃を続け様に放っても、惜しいところまでは行くのだが花奏の本能とでも言うべきか完全には攻撃が通らないず、力も花奏が上。

 正直に言って一姫は最初に花奏と戦った時よりもはるかに強くなったと自負している。

 剣との訓練は花奏の推測どおり模擬戦どころではなく、実戦に非常に近いものとなっていた。一姫自身もシードラゴンズにとった不覚を猛省し、気を引き締めなおして訓練に熱が入り飛躍的に実力が伸びた。

 

「超えられないのは……紅さん、とんでもなく相性がいいのね」

『反応反射速度、どれもが私たちの上っていうことはそういうことでしょ。私たちも極端に悪くはないけどね』

 

 やれることをやって今の実力差、ほんの紙一重。されど紙一重。

 これ以上のことを望めないし、望む気もない。

 

「シンザン、勝つわよ」

『もちろん。早く剣くんたちを援護しに行かなきゃだしね』

 

 援護にこない以上剣が誰かと戦っているのは事実だ。そしてその相手もエグゼと想定はついている。

 

「シンザン、悪いけど一本折れるかも」

『問題なし、必要経費だよ』

「ありがと。んじゃ、行くよ」

 

 改めて構え直し、視線を花奏に向ける。

 上は花奏、下は自分。実にわかりやすい構図だ。

 しっかりと地に足を踏みしめ……跳んだ。

 二人が交差し刀がぶつかり合い、鈍い金属のぶつかり合う音が響いた。

 折れたのは、一姫の刀の内の一本であった。

 交差した直後に二人は地面に降り立ち、折れた刃が地に突き刺さる。

 数瞬の間沈黙が流れ、膝をついたのは花奏であった。

 

「ぐぅ……!?」

 

 脇腹の装甲を切り裂かれ、血が吹き出す。

 致命傷ではないものの大幅な戦力低下は間違いなかった。

 

「参ったな……確実に倒したと思ったんだけど」

『花奏、しっかりしろ! くそ、戦力では我らの方が優位だったはずなのになぜ……!』

 

 黒鉄の苦痛の声に対し、シンザンは『こっちも手痛いんだけどなー』とこぼした。

 一姫の方も肩の装甲を砕かれ、深々と斬り込まれた傷がある。先ほどの一撃で受けたものだ。

 

「腕一本切り落とす予定だったけれど……狙いが甘かったかな」

 

 刀を突き刺し、杖のようにして立ち上がる。

 それを見てまだやる気なのか、と少々呆れつつ一姫は「ちがうわよ」と悟すように返した。

 

「正確すぎだったから狙えたのよ。確かに一歩間違えたら左腕ぶっつり切断されてたでしょうけど」

「……渾身の一撃だったんだけどね。防御しても完全に切れたと思ったよ」

『まさかあれを堪えるとは』

「堪えてないわよ!? 二本とも折れる寸前にしたあんな一撃受け切れるわけないじゃない! ただ流しただけよ!」

『流した、だと?』

「そう。ほんの少しだけ勢いを上に逸らしたのよ。それでも肩の装甲は砕かれるわ正直腕あげるのも辛いくらい痛いわで散々ね」

 

 ケラケラと笑いながら答える一姫に花奏と黒鉄は言葉を失う。

 攻撃の軌道を逸らすと簡単には言ったが、大きく差のついた相手ならいざ知らずかなりの接戦になるほどの相手にそんな賭けに出るのは無謀でしかない。

 

『貴様、阿呆か?』

「失礼な。勝算は多少はあったしここでやらなきゃ勝ち目はなかったわよ。その上で刀一本、もといシンザンの足一本を犠牲にしてね。肉を切らせてなんとやら、ってね」

『まぁ正直なところ手痛い欠損だけど、時間が経てばくっつくしね』

「……参った。ボクたちの負けだよ」

 

 苦笑しつつ花奏は黒鉄との合体を解除し、両手を上げる。

 

「えらく素直ね。まだなにか隠してるのかしら」

「とんでもない。元々ボクは空っぽだからね、戦麗華に加担したのもただの食い扶持稼ぎさ。まぁ剣くんと再会できたのは嬉しい誤算だったけど」

 

 ポッ、と一瞬にして表情を赤らめる花奏に今度は一姫が苦笑する番だった。

 黒鉄の方ももはやどうでもいいのか傷の修復に充てるように静かになる。

 

「と、そうだ聞いておかなきゃなんだけど……」

「なんだい? 答えれることには素直に答えるよ。敗者には抵抗する権利もないしね」

 

 このいさぎの良さは素直に見習うべきだな、と感心しつつ一姫はとある疑問を発した。

 

「管理局にいる内通者って……」

 

 

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