エヴォルダー   作:法相

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16話:不死鳥

 そんなゼロの言葉に、俺は……

 

「謝るなんか必要ないぞ。ゼロ。俺はお前に会えてよかったと思ってるんだから」

 

 思ったままの言葉を口にした。

 この反応は想定外だったのか、ゼロも少し間の抜けた声で返した。

 

『剣……本気で言ってるのか?』

「ったりめーだろ。まぁ掌の上で転がされていたっていうのは正直癪に触るけど、それだけだ」

 

 灰沢さんのいう通りそれだけの理由で俺が狙われたのなら、俺の人生の岐路はそこだったのだろう。

 ただただ自堕落に無意味に生きていた俺。かなりの強引さで流し込まれたけれども、そのおかげで一姫さんとゼロに出会い、花奏とも再会することはなかった。

 

「以上を以て俺はゼロを恨むなんてことはないし、ここまで戦ってくれてる相棒にそんな不埒な気持ちを抱くなんぞない」

『剣……我をそこまで信頼してくれていることに、心からの感謝を』

 

 心なしか声が震えているように感じる。でも今は何も言わないでおこう。

 

「ふむ、そこは普通に怒ったりする物だと思ったのだが……」

『私も同意見だ。だが……花奏くんが気に入っていたのはそういうところなのかな』

 

 クックック、と短い笑いをこぼすエグゼに、灰沢さんは「かもしれないな」と変わらずに対応する。

 

「うん、やはり君は面白い。君にその気があれば私と組まないかとスカウトしたいところだが、そんなつもりは毛頭ないだろう?」

「当たり前だろ? 良い方向に導いてくれたって意味で感謝はしてるけど、利用してくれてたことを許すかどうかはまた別問題だ。それに灰沢さんがなんで内通者やってるかも聞いてないしな」

「ははは、そうだな。私の理由は戦いながら教えようか」

『いいのかい志郎? もう目的は達しているだろうに』

「なぬ!?」

『いや考えれば当たり前だろう落ち着け、剣。灰沢は我らの敵だ』

 

 ゼロに諭され確かに、とすぐに気持ちを切り替える。

 灰沢さんが内通者でそれを隠すことが無くなったということは、目的は達成されたと考えるのが自然だ。

 だからすぐにでもここを抜け出すのが灰沢さんにとってはベストな判断であるはずで、俺と戦う必要なんて全くない。

 

「なに、基本的に世の中は悪役の思ったように動く物なんだが……それを乱すことをできた努力賞みたいなものだ。それにそのまま逃してくれるほど彼も下にいる都宮くんも甘くはないさ」

「よくわかってらっしゃる!」

 

 当然のことだ。そのまま見逃す必要はないし、相手の変身を待ってやる必要もない。

 全力で踏み出して灰沢さんを捉えるために手を伸ばす。

 しかし、その一撃に彼はたったの半歩動いただけでいなした。

 驚愕する俺をよそに背中に蹴りを入れられ前に転んだ。

 

「良くも悪くも君は直線的だ。軌道を逸らすのはそんなに苦はないよ。多少は痛むがね……」

『志郎! 早く私を纏いなさい!』

「わかっているさ。エグゼ、ウェイクアップ」

 

 俺が立ち上がるほんの数瞬、後方から灰沢さんが合体するのがわかった。

 振り向けば、手には黒い刀身の西洋剣を握っており、紅の翼と翡翠のバイザーをつけた不死鳥と思わせんばかりのエヴォルダー合体者、灰沢志郎が立っていた。

 

「さぁてと……君や都宮くんの急成長は素直に認めよう。けれど……」

 

 剣を振り、とんでもない風圧が俺たちの身体を襲う。

 

「まだ『俺』には遠い」

 

 

「やっぱりね……灰沢さんが黒だったか」

「あんまり驚いていないんだね」

「覚悟はできてたからね。でもそうするとあの人以外にも内通者複数いるわね。探し出すのが骨が折れそうだわ……」

 

 やれやれとおおげさに手を広げるも、一姫は慌てることなくシンザンに触れる。

 折れた刀はなんとかくっつきはしているものの、見てくれだけで未だ摩耗しているままだった。

 とはいえ二本使えるだけ普段の戦闘スタイルを崩さずにいけるのはこの局面ではプラスだ。

 

「シンザン、セットアップ」

 

 再びその身にシンザンを纏い、上を見る。

 

「……エグゼにおいつくつもりかい?」

「当然よ。上が静かになってるのなら剣くんが制圧した可能性もあるわけだし、拮抗しているならそれはそれでいいわ。私が加勢したら決着もつくで」

 

 しょ、と言い切る前に凄まじい衝撃に遮られる。

 

(衝撃、というよりも風圧? 何よこれ、前回のエグゼ以上……?)

『剣くんとゼロ、大丈夫かな……』

 

 相方も心配そうな声を出し、意識を上に向ける。

 すぐに加勢しなければまずい、と考えて飛ぼうと考えた時ソレは見えた。

 剣とゼロの顔を鷲掴みにして、勢いよく屋上から飛び出す紅い不死鳥のエヴォルダーを。

 

「剣くん!? 纏え黒鉄!」

『ちぃっ! 付き合ってやる!』

 

 何が起こるのかを察したのか、花奏はまだ修復途中である黒鉄を迷わず纏う。

 直後、急激に角度を変えて猛スピードで紅いエヴォルダーは地面に向かって突進を始めた。

 その着地点を見透かしたように花奏は剣とゼロのクッションとなるように飛び込み、轟音が響いた。

 

「――ッ!」

 

 声にならない声が上がり、剣も花奏も揃って相棒との合体を強制解除に追い込まれた。

 当然それだけの情劇を受ければダメージが大きく剣も花奏も血を吐き、ほとんど動けずにいた。

 ゼロと黒鉄もそれは同様で意識を失ったのか、はたまた死んでしまったのか動く気配はない。

 

「つ、剣くん! 紅さん!」

『仕留め損なったか……ゼロ、黒鉄はそれぞれまだ機能を失っていない。スクラップ一歩手前か』

「いや今のは紅くんに感謝だな。加減を間違えて殺すところだった」

 

 紅いエヴォルダー、エグゼと灰沢志郎は普段と変わらない声音でこぼしていた。

 

「っ! 灰沢ぁあああああああああああああ!!!」

 

 瞬時に咆哮を上げ、二刀で斬りかかる。だが灰沢はそれを一振りで簡単にいなし、弾き飛ばし管理局の建物の壁を壊し、その向こうに転がる。

 体勢を無理やり立てなおし、起き上がり灰沢を睨み付ける。

 

「クソが……! これは想定外だったわ」

「すぐに立つあたり優秀だよね、君も」

『しかし口が悪いようだ。普段からああなのかな、彼女?』

「いや? アレが地のようだ」

 

 まるで歯牙にも掛けていない様子に一姫は苛立つ。

 

『内通者ってレベルじゃないね……』

 

 シンザンの口調は弱々しく、先の一戦でもだいぶ体力装甲共に消費している。

 そのことをわかったのか灰沢は「まぁまぁ」となだめるように穏やかな声で制す。

 

『せっかくだ。まずは一つの真実を話そう。彼と都宮くんも動けないだけで意識はあるだろうから聞こえるだろう? そういう前提で話す』

「そもそも私は内通者ではないよ。最初から私は戦麗華側だったんだ。なにせ私が作ったんだからね」

 

 剣も一姫も、そして構成員であった花奏にも知らされていない事実が灰沢から発された。

 

 

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