エヴォルダー   作:法相

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 今回で最終回です。読んでくださった皆様、ありがとうございます。
 小説家になろうで書いている作品もどうぞよろしくお願いします!


最終話:変わる世界

「ひっさびさの学校は流石に憂鬱ですわぁ」

 

 九月末期、しばらくぶりに学校に足を踏み入れる。

 本当は新学期からちゃんと学校に出る予定だったのだが、いかんせん怪我の度合い酷かったのでリハビリを含めてこんな時期になってしまった。

 巻かれている包帯はとってはいけないと言われているが故に周囲には痛々しく映っていることだろう。実際まだ痛いし。

 とはいえこれ以上学業を疎かにするのは些かよろしくないのは目に見えているので憂鬱な気持ちと一緒に登校したわけだ。

 ヒソヒソと周囲から声が聞こえるが、あんまり気にしてもしょうがないので切り捨てる。

 いそいそと移動し、教室へ入って自分の席に座る。

 この高校は席替えなどのイベントは存在しないので、久方ぶりでも安心して自分の席に座ることができる。

 

「よっこいしょっと」

 

 カバンも机に置き、詰め込んでいた教材を可能な限り打ち込んでいく。

 新学期から来ていれば置き勉もできたんだが、入院治療期間というものがあったのでそんなことはできなかったわけだが。

 

「……勉強、ついていけるか不安だ」

 

 これでもゼロたちと関わり合う前は目立ちこそしないが、真面目に授業などを受けていたから勉強も中堅くらいの学力はあった。

 しかし今回は一ヶ月のブランク。その間の勉強はもちろんしていない。

 それよりもリハビリやら傷を治すのに尽力していたからね! なんも知らん奴が聞けば甘えとか言いそうだけどまじで生死の境を行き来するくらいにはやばかったからどうか許してほしい!

 でも俺には友達がいない。なので誰かにノート写させてもらえるはずなどもない。

 まぁだいぶ身体はだいぶ回復したから自由も効くし、地道に一学期最後の内容から今の範囲を見て抜けた部分を埋めるのが一番丸い選択肢だろう。

 と、考え事をしている間にチャイムが鳴り響きわいわいしていたクラスメイトたちも席に座っていく。

 チャイムが鳴り終わると同時に担任が入ってきて、俺の方に目をやると「よ!」と手をあげて挨拶する。

 俺もペコリと頭を下げて返すと満足そうにしていた。管理局の人に言い訳を頼んだから俺の怪我には触れないでくれるようにはなっているはずだ。

 

「はーい、みんな席についたな。新城も退院して何よりだ」

 

 どうも、ともう一度頭を下げておく。

 俺の席は一番奥の窓側という絶好のポジション。日当たりは最高の物件だ。

 そういや隣の席は空いているが風邪で休みなのだろうか。気温が変わりやすいから弱い人は本当にすぐ体調を崩してしまうから俺も気をつけないとな……自律神経とか鍛えるのは至難の技だし。

 

「新城の退院もめでたいことだが、もう一つ今日は大事なお知らせがある。なんと今日から転校生が入ることになった」

 

 担任の発言に教室がざわめき出す。転校生が来るとか一大イベントだからしょうがないか。

 それから連絡事項を一つ二つを伝え、転校生と仲良くするようにとお言葉をいただいた後に「入りなさい」と廊下で待つ転校生に入室を促す。

 ガラッとドアが開かれ、現れたのは俺にとっては非常に見知った顔だった。

 見目麗しい容姿と黒髪、そして肩には竹刀袋をかけている紅花奏だった。

 

「はじめまして、紅花奏と言います。どうかよろしくお願いします」

 

 礼儀正しい頭の下げ方、そしてその容姿から男女ともにウケがよかったのか周囲は拍手して出迎えていた。

 

「席はあそこ、新城の隣だな。新城は入院してたから知らなかっただろうが、ちょうど新学期始まってからすぐに沢城は親の都合で転校したんだ」

「なんですと!?」

 

 いや、沢城さんが転校したとかはしょうがないけど花奏がここに来るとか俺なんも聞いてないんだけど!?

 動揺する俺をよそに花奏は俺の隣の席に座り、にっこりと微笑んだ。

 

「これからよろしくね、剣くん」

 

 

「どういうこと!? ほんと急すぎて呼吸止まりかけたんだけど!?」

 

 学校が終わり、それぞれ別ルートで管理局に戻り俺と花奏、そして一姫さんの三人で俺の部屋で話をすることとなった。

 

「いやぁ司法取引の結果だよ。それと一姫さんの口添えもあってね」

「花奏ちゃんも剣くんと同い年なんだから青春を満喫しても問題ないでしょ。それに学校で何かあったときには連携取れるでしょ?」

「「ね〜」」

 

 完全に息があった様子、というかめっちゃ仲良くなっとるこの二人。

 一体どういうことなの……

 

『剣くんごめんね、この二人がどうしてもサプライズしたかったっていうの止められなくて……』

『しかし窓からお前の慌てる姿を見るのは楽しかったぞ。いやぁ愉快愉快』

 

 謝るシンザンと笑う黒鉄。ていうかお前いたのかよ。そんな気配微塵もなかったぞオイ。

 

『お前はテンパると気が散るだろう? しかし我も見たかったぞ慌てふためく剣……どうだった黒鉄?』

『花奏が親しげに話すからクラス中から視線を浴びて面白いように挙動不審になっていたぞ』

「細々と俺の実況しないでくれませんかねぇ!?」

 

 ゼロまでノリノリに……というか黒鉄とも仲良くなってたのかよお前……

 

「この様子だと何も知らなかったのは俺だけ……?」

「剣くんはそれどころじゃなかったでしょ? リハビリや治療に集中してもらいたかったのよ。それに司法取引したって言っても花奏ちゃんが戦麗華にいたのは事実だから、ろくに戦闘できない状態の剣くん人質にされたら大変って上が判断したのよ」

「それで監視係は一姫さんになったんだ。ま、妥当な判断だと思うよ。ケガしててもそこらの護衛には負けないしね」

 

 それよりも、と一姫は少し膨れっ面をしながら俺の隣に立ち腕を思い切り抱きしめる。

 大きくこそないが確かにふくよかなものが腕に押し付けられていた。

 

「なんで一緒に帰ってくれなかったのさ? ボクは楽しみにしてたのに……」

「いやだってお前そりゃええっと……ごめんなさい」

 

 行き着く場所は同じ管理局だから帰る時は一緒で一台の車に乗れば効率的なのは間違いない。

 けれども俺としては急なことだったから今回は別々に帰らせてもらったわけだけど……

 

「まぁまぁ、花奏ちゃん。剣くんはウブな男子高校生なんだからしょうがないわよ。それに今後はずっと一緒に登下校できるからいいじゃない」

「むぅ……そうなんですけど」

 

 まるで姉妹のようなやりとりをしている二人。この間命を賭けた戦いをした人らとは思えない距離感だ。

 

「……雨降って地固まる、かね。この場合も」

「今はボクも管理局傘下になってるからね。もっとも監視下の元に過ごさざるをえないけど。名目上は剣くんの護衛の任務にもついてるんだよ」

「私も通えたらいいのになぁ……でもこればかりはねぇ。あ、でも花奏ちゃん」

 

 一姫さんも立ち上がり俺の隣に来て、残っている腕をギュッと抱きしめた。

 

「独り占めはナシよ?」

 

 にっこりと、けれども威圧を込めた笑顔が俺を経由して花奏に向けられた。

 ……中間にいる俺はめちゃくちゃ気まずいんだけど。

 ……ん、というか待って。この状況は、

 

『二股というやつか。剣、多分お前は勝ち組になるのだろうな』

『いや、どっちかていうとハーレムじゃない?』

『日本は少子化進んでいるから案外その方がいいかもしれんな』

 

 そこの三馬鹿、何を言っている。

 

「わかってますよ。でも剣くん好きな気持ちはボクの方が大きいですから!」

「一途に思い続けてたんだもんねぇ。でも顔が赤いわよ」

「そういう一姫さんも赤いですよ……」

 

 伝わる。二人の鼓動が胸を経由して俺に伝わってくる。

 そして中心となっている俺の脳味噌もパンク寸前となり、どんどん意識が遠のいていく。

 きっとこれからの俺の人生は平々凡々というものとはかけ離れるけど、以前とは違って賑やかで、楽しいことも辛いことも痛いこともたくさんあるだろうけど……充実した人生になりそうだ。

 

「「剣くん!?」」

 

 そう確信し、俺は意識を手放した。

 

end

 

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