キヴォトスの不死身の男   作:はなげ

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不死身の男の命の価値とは

 

 薄暗い部屋の少し小さめのダイニングテーブルで2人の人物が向かいあって座っている。机には紅茶と数個の洋菓子が置いてある。部屋の雰囲気とは裏腹に、呑気にティータイム中であった。

 

「あなたとも、もう長い付き合いになりますね。ゴスペルさん」

 

 ゴスペル。それは黒服の色彩に対抗するための実験の過程で意図せず生まれた副産物のような存在の生き物である。しかしその容姿はどこにでもいるようなモブ面の男子高校生と何の違いもない。

 

「付き合い、か……実験という名目で四肢をちぎられたり毒物を注入されたり、火炙りに処されたりするのを付き合いと言うならまあそうだな」

 

 呆れたような面で紅茶と洋菓子を摂取しながらゴスペルはそう言った。

 

「その節に関しては大変お世話になりました。ですが私、いや私達にとってあなたのその不死身の肉体は大変興味深いものなのですよ。潰しても、切断しても、焼いても、時が経てば必ず蘇生する。そしてその理由は不明。嗚呼、何故? 何故何故何故何故? クックック……大変興味深い。実験での副産物であなたのような方が生まれたのは私にとっての幸運と言っていいでしょう」

 

 ゴスペルは不死身である。バラバラにされようと目に見えないくらいの塵にされようと時が経てばしばらくの間傷跡こそ残るものの必ず復活する。

 

「副産物という言い方は失礼じゃないか黒服さんよぉ。全く、俺が不死身じゃなかったら尊い俺の命を775回も奪ってることになるんだからもっと敬意を持って欲しいね」

 

「もうそろそろジャックポットになりそうですね。ていうか数えてたんですかあなた」

 

「やかましいわ!!。数えてたのはまあなんとなくだよ。ラジオ体操のスタンプとかそんな感じ」

 

「それとはだいぶ異なる気がしますが、まあいいでしょう。しかし、「尊い俺の命」ですか……。耐圧実験でのプレス機による圧迫で飛び散った自身の残骸を見て「昨日出した下痢と似てる」とのたまったり、耐熱実験として火炙りにした時には「次は炭火でやってみよう」とか提案したあなたがよく言えたものです」

 

「お? ガキ相手に正論とは大人げないねぇ……。でも実際命が尊いものであるのは確かだろ? …………ただ一つ疑問に思うことがあるとするのならばそれは俺にも適応されるのかと言う点だな。失ったら二度と戻らない。だから尊ばれるものなんだろう。でも俺はそれに属さない、いやそれどころかむしろ真逆。決して失われることがない。自分で言っておいてなんだけど、尊い俺の命ってのは自分でもおかしく感じたよ」

 

「つまりあなたは通常の人間で言うところの死に相当する負荷を負うことに恐怖心はないということでしょうか?」

 

「恐怖心あったらこんな呑気に喋ってねぇよ」

 

「……それもそうですね。しかし仮に死ぬ事がないとしても身体を損傷した際に痛み等は感じるはずです。そこに対する恐れはないのですか?」

 

「痛みか……昨日教育番組で『痛いの痛いの飛んでいけー』と言っているシーンを見かけた。幼い頃からそう言った言葉が教え込まれるほど人間、いや生物にとって痛みとは恐れるべきものなんだろうな。けどそれは死に繋がるものだからじゃないか? 俺を除いた生物というのは生存本能により繁殖等の特別な行動を除いて死を避けるものだ。避けるべきものに繋がるからこそ恐れるのだと俺は考えているよ。実際、俺は自分が苦痛を感じることに関してはどうでもいいと思ってるよ」

 

 そう自身の自論を述べた後彼は少しため息をつく。

 

「やっぱり俺の命と他の生物の命は価値が違うのかなぁー。それはそれでなんかちょっとショック……」

 

「違うかどうか、外へ出てみれば分かるのではないですか?」

 

「道徳の教科書でも買いに行くの??」

 

「いえ、私達ゲマトリア以外の人とも交流してみればどうでしょう? ちょうど私からも頼みたい事がありますし」

 

「頼み事?」

 

「小鳥遊ホシノさんの観察です」

 

「おう俺にストーキングしろと? 撃たれようと焼かれようと構わんが檻にぶち込まれて犯罪歴が残るのは嫌だぞ?」

 

「そんなこそこそやらずにもっと堂々としてていいです。彼女の在籍するアビドス高校は現在生徒数が2名という少人数であり廃校の危機に瀕しています。なので入りたいと言って上手いことやれば居候くらいにはさせてもらえるんじゃないでしょうか?ちなみに馬鹿正直に私の依頼を受けて来ましたと言った場合おそらく200回くらいミンチにされるのでやめておいたほうがいいです」

 

「おいお前その子に何したんだよ!?そして上手いことの部分を教えろよ!! ……まあいいや、貴重なお外出る機会だし、行ってくるよ。最悪200回ミンチにされて帰ってくるわ」

 

「ええ、健闘を祈ります。地図はあなたの携帯に送っておきますのでそれを見ながら向かって下さい」

 

「はーい、行ってきまーす」

 

 ゴスペルは軽く身支度を整えてから、剣とウィンチェスターを装備して黒服に手を振って外へ出るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





ちなみにゴスペルの倫理観は黒服といろんな教育番組によって形成された。

知恵とかは黒服、マエストロ、ゴルコンダに教えられた。

結構お喋りな性格です。

それと彼は生まれて3年なので肉体は高校生でも歳は3歳です。
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