むむむの伊佐朗   作:埴輪庭

33 / 44
閑話: カナベルへの返信

 ◇

 

 伊佐朗さんからの返信はすぐに来た。

 

『おつかれ。読んだ。長かったなこれ。

 

 俺、この町にそこそこ住んでるけどカナベルが書いてる噂、ひとつも聞いたことないわ。マジで「え、そうなの?」って感じで読んだ。俺が知らないだけかもしれんけど。

 

 氷屋も知らん。ていうか俺コンビニ以外あんま地元の店見ないし。開いてないのに会社はあるって……まあ配達専門じゃないの、知らんけど。葬儀の翌日にシャッター半分とかたまたまだろ。たまたま開けてたらたまたま近所で葬儀終わったとこだっただけの話だと思うよ。

 

 配達員の古い制服も見たことない。夜中に制服着て歩いてたらそれこそ不審者じゃん。声かけるのはやめとけ。顔覚えてないのは普通だろ。みんな他人の顔なんて覚えてないって。

 

 石の話も知らん。道端の石なんか拾って持ち帰るなよ。子供か? まあでも、鳥か何かがそういうの持ってくるって話は聞いた事があるな。あ、いや、それは金属だっけ? カラスとかの……まあいいや。とにかく道に落ちてるものは拾わないほうがいいだろ。

 

 ならびさん、なにそれ。聞いたこともない。子供の怪談ってどこにでもあるだろ。俺がガキの頃も意味わかんない流行りのやつあったし。四角い影は……子供の絵だろ。細かいこと気にすんなよ。かわりばんこって何の話やら感じだけどさ、まあ遊びの順番か何かじゃねーのかな。考え過ぎだよ。

 

 暗い町の写真はさすがに撮り方か機材だろ。俺のスマホも夜撮るとクソ暗いし。消えた三枚は同期エラー。クラウドもたまにミスる。場所思い出せないのもまあ気にしすぎだと思う。

 

 面白かったけど、俺はこの町に住んでて別に困ってないし、知らなくもいい噂ばっかだなって感じ。むしろそういうの気にしすぎてヘラっちゃうこともあるんじゃない? 

 

 カナベルもあんま根をつめすぎないようにな。あんま参考にならない返事でごめんな。俺も何かあったらネタ提供するから勘弁してよ。あ、またコラボやろうな~、そんじゃあね』

 

 ・

 ・

 ・

 

 さて、これをどう捉えたものだろうか。

 

 言ってる事は確かにそうなのだけど。

 

 伊佐朗さんからの返信は正直に言えば少しそっけないな、と思った。

 

 なんていうか全部流されている感じ。いや、流すというより逃げられている感じ。向こうから距離を取られているような。

 

 だから最初に読んだときはやっぱり頼る相手を間違えたかな、と思った。あの人はオカルトにはもう興味がないのかもしれない。かつて心霊凸をやっていた頃の熱量はきっともう残っていないのだ。

 

 でも、返信を何度か読み返しているうちに引っかかってくるものがあった。

 

 あの人の返信はなんだか、まるで──。

 

 偶然なんだろうか? 

 

 それとも、伊佐朗さんからのメッセージの様なものだったりするのだろうか。

 

 気になる──とても、とても気になる。

 

 伊佐朗さんは何かを隠している? 

 

 それとも私の考えすぎなだけ? 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。