むむむの伊佐朗   作:埴輪庭

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24.作家②

 ◆

 

 遠国 春彦は怪奇小説家だが、それはあくまで表の顔に過ぎない。本業は別にあり、これは公開されていない。彼が今掻塚のビジネスホテルに宿泊しているのは執筆のためではなく、その本業を手掛けている最中だからだ。

 

 そして、彼の本業とはすなわち──

 

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「もしもし──ええ、段々と拡散している様です。しかし驚きましたよ……いや、時代に即した手法とでもいうべきでしょうか。祓いの業もハイコンテクストからローコンテクストの時代へ移り変わったのかもしれませんねぇ。はい、引き続き要所要所でこちらの配信でも取り上げていくつもりです」

 

 通話を終えて、遠国は大きく息をついた。確かに大分薄(・)れ(・)て(・)は(・)い(・)る(・)。少し前までなどは始終誰か──いや、何かから視られているような感覚が拭えず、ホテル宿泊中も気を抜けば手(・)続(・)き(・)が進みかねないようなそんな状況だった。手続きとはすなわち、魔(・)を引き込むためのチェックポイントの様なものだ。

 

 例えばホラー映画の登場人物が怪異の餌食になる直前、必ず踏まされるお決まりの行動パターンがある。夜中にふと目を覚ましたとき、半開きになったクローゼットの暗がりを息を殺して凝視してしまう。シャンプーの最中に背後の気配を察し、泡だらけの手を止めて恐る恐る振り返ってしまう。あるいは誰もいないはずの廊下で物音がした際、震える声で誰かいるのかと問いかけてしまう。

 

 魔の側が仕掛けてくる呼びかけに対し、人間側が律儀に応答して自らの認識を差し出す儀礼──それこそが手続きの正体である。

 

 現にこの部屋でも数日前までは際どい攻防が続いていた。深夜二時を回るとユニットバスの換気扇から濡れた呼気のような湿った風が吹き込み、寝ていれば誰かが傍に立っているような気配がし──とまあホラーテンプレをなぞるような怪奇体験を何度もしてきた。だがそこは遠国も専門家として、自身の感情を俯瞰的に観ることで恐怖を形骸化させ……と、そんなかんじで手続きを拒否してきた。

 

 だが今や、その気配すらも嘘のように途絶えている。まあたまに深夜にドアがノックされたりはするのだが、その程度ならどうということはない。

 

 なにせこの遠国 春彦という男は、祓いを本業としているゆえに。

 

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 世の中に胡乱な生業は数あれど、祓い屋などという商売はその最たるものだろう。合法か非合法かすら判然としない曖昧な領域で、輪郭の定まらないものを相手に銭を稼ぐ。

 

 遠国がそんな奇妙な仕事に身を投じているのは、単に実家が神主の家系であったという身も蓋もない生い立ちと、現場の観察記録を作家業の肥やしに役立てようという打算によるものだ。

 

 ちなみに彼自身、幽霊の存在を信じているかと問われればイエスでもありノーでもあった。怪異は存在する。ただし、そ(・)の(・)多(・)く(・)は(・)脳が作り出した幻想に過ぎない──それが彼の持論である。

 

 だからこそ、奇妙奇っ怪な事態をある種俯瞰して観る事ができるのだろう。遠国は怪奇現象を怪奇現象として認めつつも否定するという矛盾した認識を持っている。

 

 祓い師としての手法も独特で、一般的な祈祷や除霊の類とは一線を画していた。数珠を擦り合わせたり護符を貼り巡らせたりもするが、それは基本的にはポーズに過ぎない。彼が主に用いるのは徹底的な「対話」と「論理による解体」である。

 

 憑依や怪異に苛まれる人間は、土地の因習や個人的な罪悪感あるいは生理的な恐怖といった文脈を無意識に編み上げ、自らの精神に「魔の受け皿」を組み上げてしまう。人間側が脳内で認知の型を歪めることこそが、この世の裏側に潜むナニカと同調する波長を自ら合わせてしまう契機なのだ。

 

 遠国はその歪みを民俗学的な知見と精緻な問答によって解剖する。相手が信じ込んでいる呪いの構造を白日の下に晒し、因果の結び目を言葉で組み替えていく。恐怖によって構築された認識のプログラムを逆回しに解体し、魔と繋がってしまった霊的チャンネルを強制的に遮断する。

 

 例えば自室の隅から毎晩のように響く子供のすすり泣きに怯える依頼人がいたとする。遠国がまず調べるのは、霊の正体ではなく建物の換気経路と地域の郷土史だ。

 

 遠国の調査によれば、泣き声の物理的な正体は吹き込む風が換気口を震わせる共鳴音に過ぎないことが分かった。しかし依頼人と話してみれば、どうにも胡乱なものに目が無い様で、様々な心霊話を収集するヘキがあった。その中に、ここには昔水子を弔う塚があったという話があり、遠国はそれが原因だと考えた。

 

 結果として、遠国は依頼人の家の換気口を修繕させ、その上で弔いの儀を執り行い──依頼人はその日以降、すすり泣きを耳にすることがなくなった。

 

 遠国自身にとってはポーズに過ぎなくとも、依頼人にとっては「正規の作法で魔が祓われた」という決定的な終止符となるのだ。これは言わばオカルトの枠組みを利用した認知の再定義。言葉によって境界の裂け目を繕い、異界との同調を断ち切る──それこそが、遠国 春彦流の退魔仕草というわけだ。

 

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 そんな彼に少し前、祓いの依頼がやってきた。内容はとある地域一帯を祓う──その手助けをしろというもの。非常に面倒な、そして厄を孕んでそうなそれを当初は断ろうとしたが、相手は厄介なことにそれなりに権威のある神職筋からのもので、遠国が属する業界、あるいは界隈の大手とも言って良い。

 

 自身が主体となって動かなくても良いとはいえ、個人ではなく地域を対象とした祓いは遠国も初めての事だった。ともかくもその地域はどんなものかと調べれば──でるわでるわ、厄い話のバーゲンセールだ。

 

 恐(・)怖(・)や(・)環(・)境(・)に(・)反(・)応(・)し(・)た(・)人(・)間(・)の(・)脳(・)が(・)作(・)り(・)出(・)す(・)知(・)覚(・)の(・)産(・)物(・)では済まないナニカの蠢動を感じた遠国は、己の死すら計算に入れて依頼を受けた。まあこの辺がこの男の不思議な部分で、そんな不味い依頼は断ってしまえばいいものを、一端引き受けたからには命を懸けてでも完遂しようとする奇妙な誠実さと意気地がある。

 

「──この土地は奇妙な状態になっていますね。あの世とこの世、正気と狂気の境目があやふやになっている」

 

 遠国はスマホの向こうに向けて落ち着き払った声で言った。応(いら)えはない。

 

「ひとまずは──」

 

 遠国は空中をかき混ぜる様に人差し指をくるくると回す。

 

「搔き乱すことにします」

 

 遠国の嗤い混じりの声に何かを感じ取ったのか、通話相手は少し戸惑った様子で「……ほどほどに」と答えた。

 

 ◆◆◆

 

【練馬】掻塚町スレPart.58

 

 1 名無しさん@お隣速報 2026/11/24(火) 19:05:12.33 ID:jK4mNt8R

 掻塚町民のなんでも雑談スレです

 sage進行でまったりどうぞ

 次スレは>>970

 

 前スレ

【練馬】掻塚町スレPart.57

 

 2 名無しさん@お隣速報 2026/11/24(火) 19:12:40.18 ID:wL9sVb3K

 おつおつ

 

 3 名無しさん@お隣速報 2026/11/24(火) 19:24:05.77 ID:mN3xQw6P

 スレ立て乙です

 今日も寒いねえ

 

 5 名無しさん@お隣速報 2026/11/24(火) 19:48:33.90 ID:kR7tYp2M

 急に冷え込んできたから暖房つけたわ

 電気代が怖い

 

 8 名無しさん@お隣速報 2026/11/24(火) 20:15:22.45 ID:dL8wKs4Q

 ちょっと聞いてくれ

 昨日さ、固定電話に非通知で着信あったから出たのよ

 そしたら小さな女の子の声で「私メリーさん。今エイトイレブンの前にいるの」って言われて即切られたんだけど

 これイタ電だよな? 

 

 9 名無しさん@お隣速報 2026/11/24(火) 20:22:10.88 ID:wL9sVb3K

 >>8

 令和にメリーさんとか生きてたんかワレwww

 

 11 名無しさん@お隣速報 2026/11/24(火) 20:35:44.12 ID:fT2vJc9H

 >>8

 近所のガキの悪質ないたずらだろ

 次は「今あなたの後ろにいるの」ってくるから玄関に塩投げつけとけ

 

 14 名無しさん@お隣速報 2026/11/24(火) 21:04:18.63 ID:pB5nLt7W

 メリーさんは草だけど、うちも一昨日の夜おかしかったぞ

 二丁目の住宅街を歩いてたらブロック塀の向こうから「ぽ、ぽ、ぽ、ぽ……」って低くて変な声が響いてきて鳥肌立った

 あれ絶対ヤバいやつだろ

 

 15 名無しさん@お隣速報 2026/11/24(火) 21:12:50.30 ID:mN3xQw6P

 >>14

 出た八尺様www

 

 17 名無しさん@お隣速報 2026/11/24(火) 21:28:33.91 ID:rY6sNb1V

 >>14

 それキジバトの鳴き声だぞ

 Mutubeで「キジバト 鳴き声」で検索してこい

 

 18 名無しさん@お隣速報 2026/11/24(火) 21:35:02.14 ID:pB5nLt7W

 >>17

 聞いてきた

 ……まんまこれでした。お騒がせしました

 

 20 名無しさん@お隣速報 2026/11/24(火) 21:52:19.45 ID:jK4mNt8R

 ハトでワロタ

 

 23 名無しさん@お隣速報 2026/11/24(火) 22:30:41.20 ID:qV8wMn5T

 笑い事じゃないんだが、うちの洗面所の鏡さ

 三面鏡を合わせて奥を覗くと、奥の方に映ってる自分の顔だけ瞬きのタイミングが明らかにズレてるんだよ

 これ何かの呪いか? 

 

 24 名無しさん@お隣速報 2026/11/24(火) 22:38:15.88 ID:wL9sVb3K

 >>23

 昭和の怪談かよ!! 

 合わせ鏡で十三番目の自分がどうのこうのってやつだろ

 

 26 名無しさん@お隣速報 2026/11/24(火) 22:50:04.33 ID:dL8wKs4Q

 残像だろ

 寝不足のときに合わせ鏡じっと見てると脳がバグるってテレビでやってたぞ

 

 29 名無しさん@お隣速報 2026/11/24(火) 23:22:18.90 ID:sK3pLt9M

 うちも本棚と壁の十センチくらいの隙間から、赤い服着た女がじっとこっち覗いてくるんだけど……

 

 30 名無しさん@お隣速報 2026/11/24(火) 23:31:45.12 ID:fT2vJc9H

 >>29

 隙間女じゃん! 

 テンプレすぎて逆に清々しいわ

 

 32 名無しさん@お隣速報 2026/11/24(火) 23:48:02.66 ID:mN3xQw6P

 隙間に新聞紙でも詰めとけ

 ついでに埃掃除しろ

 

 35 名無しさん@お隣速報 2026/11/25(水) 00:15:33.40 ID:tN6eKf8Q

 なんかさ

 前スレあたりから思ってたんだけど、最近このスレのオカルト報告おかしくない? 

 

 36 名無しさん@お隣速報 2026/11/25(水) 00:24:19.88 ID:wL9sVb3K

 >>35

 何が? 

 

 38 名無しさん@お隣速報 2026/11/25(水) 00:42:05.12 ID:tN6eKf8Q

 いや、なんか全部どこかで聞いたことあるような話ばっかりじゃん。メリーさんとか八尺様とか合わせ鏡とか隙間女とかさ。ネットのまとめサイトで見た三流ホラーの寄せ集めみたいになってる

 

 40 名無しさん@お隣速報 2026/11/25(水) 01:05:44.90 ID:kR7tYp2M

 言われてみれば確かに草

 ベタベタのテンプレばっかりだな

 

 42 名無しさん@お隣速報 2026/11/25(水) 01:22:30.15 ID:rY6sNb1V

 遠国の動画とかイサチャンネルの切り抜きがバズってから、みんな影響されすぎなんだよ

 ちょっと物音がしただけで「怪談だ!」って脳内で有名な都市伝説に結びつけて騒いでるだけ

 

 45 名無しさん@お隣速報 2026/11/25(水) 01:50:18.77 ID:dL8wKs4Q

 夏頃のスレはもっと生々しかったのにな

 妙に気味悪いローカルな話が多かったのに

 今じゃ完全にネット怪談の品評会スレじゃん

 

 47 名無しさん@お隣速報 2026/11/25(水) 02:18:40.22 ID:fT2vJc9H

 まあでも、得体の知れない不気味な現象より、ベタなネット怪談のほうが笑い飛ばせるからマシじゃね? 

 ハトにビビる奴とか見てて和むわ

 

 49 名無しさん@お隣速報 2026/11/25(水) 02:35:12.88 ID:wL9sVb3K

 それはそう

 どんな怪異(笑)が出ても、とりあえず玄関に塩盛っときゃ解決するしな

 

 52 名無しさん@お隣速報 2026/11/25(水) 03:02:45.60 ID:jK4mNt8R

 三流ホラーには塩撒いて寝ろ

 

 53 名無しさん@お隣速報 2026/11/25(水) 03:15:08.33 ID:mN3xQw6P

 塩盛って寝ろ

 

 55 名無しさん@お隣速報 2026/11/25(水) 03:30:22.90 ID:kR7tYp2M

 寝ろ寝ろ

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