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【MYUTUBE イサチャンネル生配信「初夏の夜だし、そろそろ今後のチャンネルについて語ろうか」(2027/06/12) アーカイブ文字起こし・抜粋】
(前略)
「はいどうも、イサチャンネルです。いやあ、まだ六月に入ったばっかりなのに夜でもジメジメして暑すぎない? 押入れから扇風機引っ張り出して回してるんだけどぬるい風が顔に当たるだけで全然涼しくない。だからさっき今年初のエアコン解禁しちゃいました。みんなも無理せず冷房つけろよー」
まさやん24:こんばんはー!
ぴよ助:おつおつ! こっちも今日から除湿入れてるわ
夜勤明けのK:ビールがうまい季節になってまいりました
くるみのすけ:あれ、なんか今日の配信タイトル真面目じゃん。また引退詐欺か?
ドブ川きよし:どうせ新しい扇風機買いたいからスパチャくれって話だろ
「誰が引退詐欺だ。あと扇風機はまだ現役で首振るから買い替えないよ! そうじゃなくてさ。この半年くらい『怪しくない日常系チャンネル』って看板で美味い蕎麦屋の話だの掃除のライフハックだの色々やってきたじゃん? それはそれで楽しかったんだけど、ここへ来て俺もようやく腹が括れたっていうかさ。もう吹っ切ってオカルト配信に戻してみてもいいかもなとは思ってるんだよね」
もちごめ:ファッ!?
ぴよ助:おいおいどうした急にwww
たけのこ派:えっ、ずっとオカルト配信だと思って見てたんですけど違ったんですか!?
夜勤明けのK:たけのこ派くん、それ言っちゃダメなやつw
ずんだドロップ:悪霊退散と往生印でバズった男が半年越しに何を言っているのか
ねむり猫:こんばんは! かなべるちゃんの配信でお名前を聞いて遊びに来ました! オカルトのお話聞けるんですか? やったー!
百物語:俺もカナベル氏のところから来た。あっち引っ越ししてから探索の準備で忙しそうだからこっちで怪談聞けるならめっちゃ嬉しいぞ
「おっ、カナベルのところのリスナーさんじゃん。いらっしゃいゆっくりしていってくれ。そういえばあの子も春に近畿のほうへ引っ越したんだっけ? フットワーク軽いよなあ。……で、常連どもはちょっと黙れ! 俺の中ではこれまでずっと健全な雑談と生活の知恵チャンネルだったんだよ!」
くるみのすけ:無理があるってw
ドブ川きよし:で、吹っ切ってオカルトに戻るってことはまた昔みたいに懐中電灯持って夜の廃墟とかウロウロすんの?
しろくま:また変な祠を蹴っ飛ばしたりしないでくださいね
「いや、それはやらない。前みたいに心霊スポットに凸ったりとかは正直あんまり考えてないかな。夜中の山道なんて虫は多いし足元は危ないし、そもそも不法侵入だのなんだのってコンプライアンス的にもろくなことがないじゃん」
まさやん24:過去の黒歴史には敏感なイサ氏
ぴよ助:まあ今の登録者数で無許可凸なんかやったら一発で炎上するしな
とりの:じゃあオカルト配信に戻すって何やるのさ?
「うん。なんで心霊スポット凸をやらないかっていうとコンプラ以外にもう一つ理由があってさ。ほら、俺って年末に田舎の実家へ帰省したじゃん? あの時におふくろから小言を食らったって話は前にもちょっと言ったと思うんだけど」
夜勤明けのK:出た、最強のおふくろ
もちごめ:年末に町おこしのニュース見て怒ってたってやつだっけ
「そうそう。でさ、先月も電話で近況報告した時にまたおふくろに釘を刺されたわけよ。『あんたが動画で何喋ってるか知らないけど、もしこの世に幽霊や怪異がいるにせよみんなそれぞれ理由があってそうなってしまったんだから悪戯に話のネタにして茶化すのは失礼よ』ってさ」
しろくま:お母様、めちゃくちゃ良いこと言うじゃないですか
ねむり猫:すごく筋の通った素敵なお母さんですね!
百物語:たしかに。心霊スポット凸って要するに他人の墓場や事故現場に土足で踏み込んで騒ぐようなもんだもんな
くるみのすけ:おふくろの言葉だけは素直に聞くマザコンの鑑
「マザコンって言うな! でもまあ言われてみればその通りだなと思ってさ。怖いだのヤバいだのって表面だけ撫でてギャーギャー騒ぐんじゃなくて、なんでそういう話が生まれたのかっていう背景くらいは知っておいたほうがいいんじゃねえかなって思ったんだよ。それでこの一ヶ月くらい仕事の合間に図書館へ通ったり古い郷土資料を漁ったりして、俺なりに色々と調べてはみたんだよね」
まさやん24:えっ、伊佐朗が図書館で勉強!?
ドブ川きよし:明日東京に雪でも降るんじゃねえか
ぴよ助:MAMAZONのレビュー欄じゃなくて本物の本を読んだだと
「お前ら俺を何だと思ってんだよ。字くらい読めるわ! でもね、いざ掘り返してみるとこれが意外と面白くてさ。ただの作り話だと思ってたやつに笑えないくらい生々しいルーツが隠れてたりするんだよ。……例えばさ、『八尺様』ってあるじゃん?」
たけのこ派:あ! 知ってます! 白いワンピース着て帽子かぶった背の高い女の人の怪談ですよね!
すもも単推し:ぽぽぽぽ、って声出しながら追いかけてくるやつ!
夜勤明けのK:前に掻塚町のスレで誰かが夜道で遭遇したって騒いで、結局ただのキジバトだったってオチがついてたやつだろw
もちごめ:あったなあそれwww
百物語:八尺様って二〇〇〇年代の終わり頃にネットの掲示板に書き込まれて広まった現代のネットロアの代表格だよな。あれにルーツなんてあんの?
「そう思うじゃん? 俺も最初は誰かがネットで創作した現代の怪談をみんなが面白がって広めただけだと思ってたのよ。でもね、あれって実はただの都市伝説じゃないんだぜ」
くるみのすけ:え、マジで?
ねむり猫:ただの都市伝説じゃないってどういうことですか?
しろくま:モデルになった事件とかがあるんですか?
「んー、ネットで広まった『白いワンピースに白い帽子』って見た目は、時代に合わせて後からくっついた皮みたいなもんなんだよ。本当にヤバいのはその中身っていうか大元の成り立ちのほうでさ。あれ、元は巫女だったんだよ」
ぴよ助:巫女?
とりの:神社の巫女さんってこと? ワンピースのお姉さんなのに?
百物語:ほお、神職がルーツの怪異なのか。どこの地方の話?
「特定のどこの村って名前までは記録から削り取られてたんだけど、ある山奥の貧しい農村に伝わってた話らしい。昔その村の社に本物の霊力を持った一人の巫女がいたんだって。背がすらっと高くて、村人たちからは神様の声を聞く特別な存在として大事にされてたらしいんだよ」
たけのこ派:へえー、最初はちゃんとした巫女さんだったんですね
ねむり猫:そんなすごい巫女さんがどうして八尺様みたいな怖い怪異になっちゃったんですか?
「それが人間の勝手さっていうか業の深さなんだよな。ある年からその村をひどい日照りと凶作が襲ったんだって。雨が全然降らなくて田んぼの土はひび割れて稲がすっかり枯れちゃった。一年目だけならまだしもそれが二年も三年も続いて、村中が深刻な飢饉に陥ったわけよ」
しろくま:うわあ、昔の農村でそれは地獄ですね
夜勤明けのK:食い物がなくなると人間マジでおかしくなるからな
「そうなんだよ。最初は巫女さんも村を救うために必死で神様に祈りを捧げてたらしい。毎日飲まず食わずで社に籠もって枯れていく田んぼに実りが戻るようにって舞を踊り続けたんだって。その時に巫女さんがずっと唱えていた祝詞っていうか祈りの言葉があるんだけどさ。それが『穂よ栄えよ満てよ。穂、穂、穂……』っていう稲穂の『穂』を願う言葉だったんだよ」
もちごめ:……えっ、嘘だろ
ぴよ助:おいちょっと待てよそれ
くるみのすけ:稲穂の「穂」って、まさか
百物語:うわ、鳥肌立った。「ぽぽぽ」って機械音みたいな不気味な声じゃなくて稲穂を祈る「ほ・ほ・ほ」が訛ったのかよ!
とりの:ひえええええええ!!
ねむり猫:そんな……村のみんなのために一生懸命お祈りしてた言葉だったんですね
「そう。でもどんなに巫女さんが命を削って『穂、穂、穂』って祈っても雨は降らなかったし稲も実らなかった。飢え死にする人間がぽつぽつ出始めた頃にはガリガリに痩せこけた村人たちの目がすっかり血走って恐怖と飢えのはけ口を探し始めたわけよ。そしてその矛先がどこへ向かったかというと社で祈り続けていた巫女さんだった」
ドブ川きよし:うわ、最悪のパターンじゃん
まさやん24:なんでそうなるんだよ、一番頑張ってた人だろ
「そこまで追いつめられた集団って理屈じゃないんだよな。『巫女様は何をしておるんだ』『祈りが足りねえんじゃねえか』って陰口から始まって、誰かが『巫女のせいだ! あいつが山のカミ様を怒らせたんだ!』って叫んだところで村中の狂気が一気に爆発した。松明を持った村の男たちが夜の社へ押し寄せて、まだ村のために祈っていた巫女さんを無理やり外へ引きずり出したんだって」
たけのこ派:やめてえええええ
しろくま:あまりにも胸糞すぎる展開だわ
とりの:それからその巫女さんはどうなったの?
「そこからの記録はちょっと配信の規約に引っかかりそうなくらい惨いからボカして言うけどさ。飢えと憎しみでタガが外れた男たちに散々暴行された挙句『こいつを生贄に捧げればカミ様の怒りが鎮まるはずだ』って手足を折られて古い井戸の底へ生き埋めにされたとも山の祟り神への人柱として惨殺されたとも言われてる。死ぬ間際まで彼女の口からは恨み言と混ざり合ってあの『穂、穂、穂……』っていう掠れた声が漏れていたらしいよ」
ねむり猫:ひどい、あんまりじゃないですかそんなの
百物語:なるほどな。もともと本物の霊力を持っていた巫女が守ろうとした村人たちに裏切られて人柱にされたことで、神性と凄まじい怨念が混ざり合ってバケモノに変質したわけか。だからただの幽霊じゃなくて、見たら魅入られて取り殺されるレベルの障り神になったんだな
くるみのすけ:百物語ニキの解説でさらに納得したわ。一番怖いのは結局生きている人間ってことじゃん
「ちなみに、なんで『八尺』なんて途方もない背丈で語られるようになったのかっていうのも諸説あるんだけどさ。村の男たちが彼女の亡骸を古い井戸や狭い木箱に無理やり押し込もうとして関節という関節を外して引き伸ばしたからだとか、あるいは死後に膨れ上がった怨念が大人を見下ろすほど巨大な影になって村を覆い尽くしたからだとか言われてるね。結局その村はそれから間もなく原因不明の疫病と変死が相次いで一人残らず全滅して廃村になったそうだよ」
ぴよ助:うわあああああ関節の話やめろおおおお!!
もちごめ:村ざまぁw
たけのこ派:おふくろさんが「みんな理由があってそうなったんだから茶化すな」って言ってた意味がめちゃくちゃ分かりました
ねむり猫:ほんとですね。八尺様ってただの怖いモンスターだと思ってたけど、元は村のために祈ってたお姉さんだったなんて悲しすぎます
「だろ? 俺もこれを調べた時はおふくろの言ってたことマジだわって思って、ちょっと背筋が伸びたもんね。もちろん今ネットで出回ってる話の中には誰かが面白半分で作った真っ赤な嘘もたくさん混ざってるんだろうけど、こういう風に昔からあった本物の悲劇や祟りの記憶が形を変えて『都市伝説』って名前で現代に漂着してるケースもあるわけよ」
まさやん24:おいおい、今日の伊佐朗なんか本物のオカルト解説者みたいじゃん
「…………」
ドブ川きよし:どうした?
ぴよ助:あれ、急に黙ったぞ。回線止まった?
もちごめ:いや氷の音はしてるからマイクは生きてるっぽい
「……無、無、無」
くるみのすけ:ん? いま小さい声でむむむって言わなかったか
たけのこ派:いつもの「むむむ」にしては声がなんか低くありません?
「──哀れなる娘よ。荒ぶること勿かれ。哭き患うこと勿かれ。常夜ゆく道に惑うこと勿かれ……無、無、無」
夜勤明けのK:?
とりの:伊佐朗くーん!!
「……んあ? あれ、俺いま一瞬ボーッとしてた? わりいわりい、ちょっと意識飛んでたわ。昨日あんま寝てなくてさ」
まさやん24:ボーッとしてたレベルじゃねえぞ
百物語:いや……うーん……
「変な勘繰りすんなって。俺は至って正気だからな! まあそういうわけだから……えーとなんだっけ。そう、これからのイサチャンネルだけど、わざわざ危ない場所へ突撃して幽霊を煽ったりはしないけど、こういう『怪談の裏にある本当の理由』みたいなやつをたまに掘り下げて語っていこうかなと思ってるんだよね」
しろくま:それすごく良いです! 安心して聞けるし、何より故人や怪異へのリスペクトがありますね
もちごめ:さっきの謎の呟きが一番オカルトだった気もするけどなw
「俺寝言言う癖あるんだよね。すまんすまん。とりあえずみんなも、もし万が一夏の夜道や田舎のあぜ道で二メートル半くらいある白い服のお姉さんに出くわすようなことがあっても石投げたりスマホ向けて煽ったりすんなよ。昔いろいろあった巫女さんなんだなと思って心の中で一礼して、目を合わせないようにそっと道を譲るのが大人のマナーってもんだからさ」
たけのこ派:はい! もし会ったら心の中で丁寧にご挨拶します!
ねむり猫:お姉さんが少しでも報われるといいですね
(後略)