前世の妹が今世の彼氏に告白したらしいんだが   作:雷神デス

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息抜き投稿、TSはいいぞ。


前世の妹が今世の彼氏に告白したらしいんだが

 俺はおそらく、誰がどう見ても勝ち組な女子高生である。

 いきなり何を言ってるんだこいつと思われるかもしれないが、まあ待ってほしい。

 誰だって、人生の中で一度や二度、己の幸せを自慢したい時があるものだろう?

 

 まず諸君、勝ち組と聞いて、どんな姿を想像するだろうか?

 スポーツ万能?成績優秀?才色兼備?なるほど間違っちゃいないだろう。

 しかし諸君、よくよく考えてもみてくれたまえよ。

 

 それ、たゆまぬ努力が前提だよな?

 

 俺は決して努力を否定しない、それはそれとして、それはそれとしてである!

 汗水垂らして頑張るのって、クッソしんどいんだよな!

 できる限り楽して、大した努力はせずに幸せな人生を歩む!

 それこそが、まさしく“勝ち組”と言われる条件ではあるまいか!?

 

 さて、ではどうすれば、俺の言う勝ち組になれるのか?

 ハハハ、実に簡単なことだ、友よ。

 

 

「加奈。今日のお弁当、美味しい?今日は加奈の大好きなハンバーグを作ってみたんだけど……」

 

「うん!とってもとっても、と~っても美味しいよ、優斗君!」

 

 

 美味しそうなお弁当を片手に、俺に微笑みかけているこのイケメン。

 こいつこそが、俺の彼氏である十六夜(いざよい)優斗(ゆうと)君である。

 俺十六夜なんて苗字使ってる奴、今世で初めて見たわ。

 

 

「あ、加奈。口元にソースが付いちゃってるよ?ほら、じっとしてて」

 

「んむ。えへへ、ありがと~!」

 

 

 そしてえへへなんてクッソあざとい笑いをうかべているこのそれなり美少女な女子高生。

 これ、俺である。目を逸らすな、このリボン付けてる女の子の魂は俺なんだよ。

 わざとらしく口端にソース付けて、拭かれ待ちしてた女が俺なんだよ諸君。

 

 

「あの二人、相変わらずラブラブだよなぁ」

 

「聞いた話じゃ、孤児院からの付き合いらしいぜ?つけ入る隙ねぇや」

 

「優斗君みたいなイケメンが彼氏だなんて、加奈ちゃんズルいよね~」

 

 

 見ろ、諸君。

 これこそが、俗に言う勝ち組なのだ。

 俺本人がクッソあざとい女子高生であり、成績は平均ちょい上、部活は帰宅部、スキンケアは一応やってるけど化粧とかはそれなり、学園一の美少女なんて口が裂けても言えず、本来であれば普通の女子高生としてそれなりの苦労をしていたはずであろうこの俺、朝宮(あさみや)加奈(かな)

 

 だがどうだ、クラスに居る周囲の生徒の反応は!

 どうだ、この俺に向けられる羨望の眼差しは!

 俺は気づいたのだ、本当に楽して幸せになれる方法に!

 

 

「んふふ~。私、優斗君と恋人でよかったな~!」

 

「フフッ。僕もだよ、加奈」

 

 

 恋人が、彼氏が超ハイスペックで、超都合のいい、超理解ある男なら!

 別に俺がすっごい努力しなくても、何なら全力で彼の背中におんぶにだっこでも!

 多少の自尊心と引き換えに、あらゆることが上手くいくのだ、と!

 

 

「にひひ~!私、世界一幸せな女の子かも!」

 

 

 諸君、あえて言おう。

 人生における、楽に生きるための選択肢とは、そう!

 玉の輿であったのだと!

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 前提から言うと、俺は前世の記憶を持っている。

 ちなみに前世はバリバリ男だ、TS転生という奴だ。

 転生した時こそ多少の戸惑いはあったものの、俺はすぐに動き出した。

 

 何のために?決まっているだろう。

 前世で出来なかった、楽で幸せな人生を送るために、だ!

 

 

「フッ。新聞配達、か。苦学生諸君、随分と苦労して頑張っているんだね……!私はそれを見ながら、愛しの彼氏から貰ったお茶を飲みながらアフタヌーンティーだよ……!ちなみにその姿勢、坂道だと足を痛めやすいから気を付けるといいよ……!」

 

 

 ひとり言を垂れ流しながら、かつての自分と同じく必死に働く学生たちを眺めながら。

 優雅に水筒に入れて貰った、なんか高いらしいよく分かんない銘柄のお茶を飲み干す。

 別に味はどうでもいいんだよ、俺は味じゃなくて値段を感じてんだから。

 

 

「フフフ、我が人生まさしく順風満帆……!我が世の春が来た……!もう必死こいて自転車乗ってあちこちに新聞を配ることも、クソ客ばっかり来るコンビニでバイトする必要も、皆がおしゃれな服着てる中一人制服を私服扱いする必要はない。なんてブルジョアジー……!」

 

 

 俺の前世は、多分割と悲惨だった。

 家族のことは大好きだったけれど、父は幼い頃に亡くなり、母さんは身体が弱かった。

 幼いころから母さんが辛そうな顔をするのが嫌で、高校に通うための資金をバイトで集め、母さんの負担を減らすため家事全般を担当していた。

 

 

『ごめんね、正彦。ありがとうね』

 

 

 母の口癖だったその言葉は、俺には酷く重くのしかかった。

 母は一人では生きていけない。だから、一人息子である俺が、母を助けてあげないと。

 そう考えながら、ずっと、ずっと、ずっと。色んなことを我慢して、生きていた。

 

 そして、母が職場で知り合った男性と再婚し、ようやく資金面に関して余裕が出始め。

 これから少しずつ良くなっていくかもしれない。そう希望を持った矢先に、俺は交通事故で、若くしてあの世(一応言うと前世のことな?)を去ったのだ。

 

 

『なんで。どうして。せっかく、新しい家族ができるのに……!』

 

 

 今際の時、母のお腹は膨らんでいた。

 妹ができる直前に、俺は妹を腹に抱えた母を庇って死んだのだ。

 それを後悔するつもりはない。俺は確かにあの時、正しい行いをした。

 されど、それでも、人生をもう一度だけやり直せるなら。

 

 

「楽に生きたい……!」

 

 

 必死に努力した。必死に働いた。ならもういいんじゃないか?

 なんで俺が、記憶を持ったまま朝宮加奈として産まれたかは分からない。

 けれど、もう一度人生をやり直せる機会を神様がくれたのならば。

 俺は今度こそ、俺自身の幸せのために生きてみようと思ったのだ!

 

 

「こうして私は、セリエAのスター選手に憧れるよりも……『玉の輿』に憧れるようになったのだよ、にゃんこちゃん……!」

 

「みゃーお」

 

 

 道端に居る猫に話しかける不審者ムーブしつつ、たまったものを発散しながら帰路に就く。

 ちなみに俺は帰宅部で、ハイスペック彼氏君こと優斗君はサッカー部だ。

 そして当然の如くチームのエースストライカーである。

 

 彼はまさしく理想の彼氏だ。

 いついかなる時でもイケメン仕草を忘れず、どんな時でも俺のことを第一に気遣ってくれる。

 料理は美味いしスポーツは万能だし成績も首位だし将来のサッカー選手だし、あと顔もいいし声もいいし家が金持ち。

 こいつ人間か?と何度か思ったことはある。

 

 よくそんなとんでもスペックの彼氏を捕まえたなって?

 諸君、甘いよ。ママレードよりずっと甘い。

 理想の彼氏ってのは、捕まえるもんじゃない。作るもんなんだよ。

 

 

『優斗君!あそぼ!』

 

『う、うん』

 

 

 俺と彼は、孤児院で育った。俺も彼も、物心つく前から両親に捨てられたのだ。

 彼は内気な性格で、同じ孤児院の仲間からも遠巻きにされていたが、俺だけは気づいていた。

 何をだって?決まっているだろう諸君。

 

 

『優斗君はね!将来、王子様みたいな人になれるよ!』

 

『お、王子様?』

 

 

 顔がいい。顔がいいのだ。遺伝子の段階で顔がいい、面にも才能は宿るらしい。

 誰がどう見ても将来王子さまになるイケメンフェイス、俺はそれを見逃さなかった。

 彼は凄まじい才能を持つ天才児だと決めつけ、先んじて粉をかけることにしたのだ。

 

 一緒に遊び、理想の彼氏に仕向けるために勉強を教え、礼儀を教えた。

 そのおかげで、彼は金持ちの親に認められ、会社を継ぐ後継ぎとして認められ。

 やがて孤児院を出て、俺と同じ高校に入学し、すぐに俺は彼から告白を受けたのだ。

 

 

『僕は、君に相応しい男になるよう、ずっと自分を磨いてきたんだ。加奈ちゃん。どうか、俺と恋人になってほしい。必ず君を、幸せにする』

 

『うん、喜んで!ずっと一緒だよ、優斗君!』

 

「人生勝ち確キタコレ!」

 

 

 無論、全てが俺の計画通り!

 俺は普通の一般家庭の養子に入り、不自由はなく過度な期待は背負わず生きてきた!

 このままでは普通に就職して働かなければいけなかったが、なんと彼氏は次期社長!

 俺はこの二度目の人生において、全てに成功して生きてきたのだ!

 

 

「このままいけば、まさしく順風満帆!さして苦労せず、大した努力もせず、私は最高の幸せを手に入れられちゃう!人生バラ色、甘い汁啜りほうだーい!」

 

 

 ああ、なんて、なんて輝かしき我が人生!

 もはや障害になるものなど、ただの一つも無いだろう!

 

 

「この幸せは、絶対手放さないんだから!」

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「ラブレター!?」

 

「うん。今朝、下駄箱を開けたら入ってて……」

 

 

 俺の幸せ、崩壊の危機到来である。

 しくじった、まさか彼女持ちの男にラブレター渡してくる勇者が居たとは!

 まさか、あのラブラブ見せつけ具合でもワンチャンあると思ってんのか!?

 あれ以上になるともう公衆の面前でやることではなくなると思うんだけど!?

 

 

「む~!私の大事な優斗君にラブレターを送るなんて!この泥棒猫め!」

 

「アハハ……まあ、ラブレターを送ってくれた子には悪いけど、断るつもりさ。それにどうもこの子、僕と加奈が付き合ってること知らないみたいなんだ」

 

「はえ?そうなの?」

 

 

 それはまあ、なんというか。

 勇気というよりはただの無知だったような。

 まあ流石に、あれだけアピールした上で奪いに来るような剛の者など早々いないか。

 俺は決して油断しない女、今世の俺は恋愛つよつよ幸せ玉の輿&光源氏ガールなのである。

 

 

「友達に話を聞いてみたところ、他校の生徒みたいなんだよね。しかも僕らより学年も下だし、どうも色々と早とちりして、勢い任せにラブレターを送ってくれたみたいだ。ちゃんと断りの返事を伝えに行くつもりなんだけど……今日、加奈と一緒に帰る予定だったろ?」

 

「うん、そだね!私、と~っても楽しみにしてたよ!」

 

「気まずいならいいんだけど。その子に、自分には加奈という彼女がいる、って証明することも兼ねてさ。一緒にその子に会ってくれないかな?」

 

「んえ?」

 

 

 やべぇ思わず間抜けな声が出ちゃった。

 いや、こいつ正気か?一応告白してきた相手に今の彼女連れていくのか?

 いやまあ俺としても断ってくれなきゃ困るんだけど、そいつに何か恨みでもあるのか?

 仮に俺がされた側なら、一生もののトラウマになりかねんぞ?

 

 

「も、も~!冗談が上手いなぁ、優斗君は!」

 

「え?いや、けど。確かめなきゃならないだろ?」

 

「な、何を?」

 

「その子が逆恨みして加奈に攻撃する奴かどうかをさ。過去にも何度かあったんだ。告白を断った後に、加奈を付け狙って何かしようとする女が。素直に諦めてくれるなら、僕は何も気にしないけどさ。もしそんな奴だったら、加奈を前にした時に見せる目や態度で分かる」

 

「え待って。私何度も付け狙われたことあるの?」

 

「うん。ああ、安心して!全部僕がどうにかしたから!」

 

 

 聞いてないんだが?

 今初めて知ったし、何ならお前が何をどう対応したのかも知りたいんだが??

 もう目や態度で分かるくらいには俺はメンヘラからの襲撃を受けかけてたの???

 

 

「今回の場合、手紙を見る限りはあんまり危険な子じゃなさそうだけどね。前みたく、包丁を片手に君の後ろを付け回すような奴ではないと思う!」

 

「私って包丁片手に持った女から付け回されてたの???」

 

「ほら、去年に銃刀法違反で捕まった不審者情報あったじゃないか。あれだよ?」

 

「あれなの!?」

 

 

 その時は『わ~!怖いね!もしこんな奴と出会うことあったら、優斗君守ってね?』(きゅるりん!)で好感度稼ぎとして使ったイベントのあれの裏でそんな事件が進んでたの!?

 どういう心境であの時『大丈夫。加奈のことは、絶対僕が守るから!』とか言ってたの!?

 

 

「あの時は思わず相手の骨を折っちゃって、色々大変だったなぁ」

 

「……す、すごーい!優斗君は強くてかっこいいね!騎士様みたい!」

 

「もー、大袈裟だなぁ加奈は」

 

 

 諸君、どうにかぶりっこ言葉をひねり出した俺を褒めてほしい。

 幼馴染かつ彼氏の危ない一面を知って俺は内心少しガクブルだよ。

 嬉しそうに笑うのはいいから、次からは何があったか報告してほしい。

 俺の知らない場所で俺の危機が何度も迫ってるのとても心臓に悪い!!

 

 

「それで、どうしようか?一緒に来てくれる?」

 

「……そう、だね。そういうことなら、一緒に行こうかな!」

 

 

 もしも普通の善良な女子高生だとしたら本当に申し訳ないのだけれど。

 君がもし包丁片手に襲い掛かってくる恋敵だとしたら夜も眠れないので、どうか俺が君の心をぶち折りに行くことを許してほしい。

 多分クソ程ウザイぶりっこムーヴするけど許してほしい。

 

 

「優斗君との放課後デート、とっても楽しみにしてたしね!」

 

「フフッ。用事が終わったら、一緒に評判のカフェに行こうか。パフェが美味しいらしいから、是非加奈に食べてみてほしかったんだ」

 

「わ、ほんと!?楽しみ!期待してるね、優斗君!」

 

 

 どうか、何事も無く終わりますように……!

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「君が、これを送ってくれた奏さんかな?」

 

「は、はい!」

 

 

 何も聞かされていなかったが、告白してきた女の子の名前は(かなで)ちゃんというらしい。

 一目見れば分かる、普通の男であれば、大半は俺よりあの子を選ぶはずだと。

 でかいおっぱい、つぶらな瞳、均整の取れた顔立ち、そしてでかいおっぱい……!

 誰がどう見ても美少女だ、俺ならこんなもん即OK出してる。

 

 

「き、来てくれたんですね。嬉しいです……!」

 

「何度も書き直した痕があったあのラブレターを見て、手紙を破くわけにはいかないさ。それくらいの良識は持ち合わせているつもりだ」

 

「……ありがとうございます、十六夜先輩」

 

 

 まったく、なんて嬉しそうに笑うのだろうか。

 これは多分、メンヘラストーカーなんかとは一切縁のない女の子だ。

 見るからに清楚で、純情で、純粋で、可愛らしい、メインヒロインみたいな女だ。

 普通であればここから、物語が始まったりもしたのだろうが。

 

 

「けれど。ごめん。僕は君の告白を断るためにここに来た」

 

 

 豪速ストレートでぶち抜きやがったこいつ。

 そして今まで物陰に隠れていたのだが、そろそろ出番のようだ。

 非常に心苦しいが、俺の幸せのため、君の愛は成就しないでいただこう!

 

 

「……そう、ですか。……その。良ければ、理由を聞かせてもらってもいいですか?」

 

「簡単な話だ。僕には既に、愛する人が。交際している女性がいるからだ」

 

「えへへ、ごめんね?優斗君の彼女は、この私、加奈ちゃんなのでした~!」

 

 

 ほんっとごめん、けど俺こういうキャラで通ってるから……!

 そんな目で俺を見ないでくれ、なんだこいつってなる気持ちは分かるから。

 けどこんくらいしないといけない理由があるんだよこっちには!

 

 

「見ての通り。僕にはこの世界一可愛い彼女、加奈がいるんだ。君は知らなかったようだが、僕には既に恋人がいた。僕が君の告白を断る理由は、それが全てだ。すまないね、奏さん」

 

「ふふーん、優斗君は私の物だよ!どれだけあなたが可愛くても、渡さないんだから!」

 

 

 やばい、どうしよう、これ奏ちゃん泣いちゃわないかな。

 何なら俺のこと恨んでいいよってくらいに思い始めてきてしまった。

 かわいい子の泣く姿なんて、俺としてはあんまり見たくはない。

 

 

「……そっか。ごめんなさい、十六夜さん、加奈さん。私、早まっちゃったみたいです」

 

 

 ぐわー!少しだけ溢れ出そうになった涙を指でぬぐうな!様になるなぁ!

 夕日をバックに立ってるせいで余計に正ヒロイン感が生まれちゃってるだろ!

 なぁこれ俺がほんとに勝ちヒロインでいいの?罪悪感ががが!

 

 

「昔から、やろうと思った時に行動し始めちゃう悪い癖があったんです。今回も、それが出ちゃったみたい。……真摯に断ってくれて、ありがとうございました、十六夜さん」

 

「ああ。断った僕が言っても、あまり慰めにはならないだろうけど。君のような女性なら、きっとまたいい人を見つけられる。僕にとっての加奈のような、運命で結ばれた男性が。だからどうか自棄にならず、自分の幸せを追い求めてほしい」

 

「フフッ、勿論です!私の命は、私だけのものじゃありませんから」

 

 

 うう、なんて出来た娘さんじゃ。

 そうだとも、子供の命はご両親が必死に守り、繋げてきたもの。

 それを無下に扱い、粗末に使い捨てるなんてこと、最悪の親不孝だ。

 

 

「私の命は、生まれる前に兄に守られて繋げられてきたんですから」

 

 

 ん?

 

 

「兄に守られて?」

 

「あ、はい!まだ私がお母さんのおなかの中に入っていたころ。交通事故で轢かれかけたお母さんを庇って、兄が命を落としたんです。ずっと、母の為に自分の幸せすら省みず、働き続けた……顔も知らずとも、私にとって自慢の兄が居たんです」

 

 

 ハハハ、いやいやいやまさかまさかそんなバカな。

 いやぁ美しい話だ、素晴らしい兄妹愛、その兄ってのは立派な奴だったんだろうな。

 何かやたら身に覚えがある気がしないでもないがきっと気のせいだハハハハハハ。

 

 

「そうか。それは、猶更申し訳ないことをしたな」

 

「あ、いえ!別にそんなつもりはなかったんです!それに、兄だって妹が告白断られたくらいで怒るなんてことしませんよ!そんなに素敵な彼女さんが居るんですし!」

 

「フフッ、それもそうか」

 

 

 いや待ってくれ、待ってくれ。

 いや仮に、仮に話だけど、ほんとうに仮定の話だけどな?

 もし彼女が、もし奏ちゃんが俺の、俺の妹だとするならだぞ?

 

 

 お前こんなかわいい俺の妹の告白断ったの?

 殺すぞ?

 

 

「ビークール、ビークール……!」

 

「ん?どうしたんだ、加奈」

 

「大丈夫。俺は落ち着いてる。ビークール……!」

 

「加奈……?」

 

 

 ちょっと今は話しかけないでくれ、キャパオーバーなんだって。

 多分これは聞かない方がいいんだろう、断言できる、聞いたらダメだって。

 けど、聞かなきゃ、ダメだ。

 

 

「……ねぇ。奏さん」

 

「はい?」

 

「そのお兄さんの名前、って。分かったりします……?」

 

「兄の名前、ですか?」

 

 

 きょとんとした彼女は、すぐに笑顔になって。

 

 

「正彦、って言います!」

 

 

 うん、そうか。

 

 

「ねぇ。優斗君」

 

「ど、どうした?」

 

「私、思うんだけどさ」

 

 

 俺の妹は、こんなに元気に育ったんだな。

 俺の妹は、幸せになるために生まれたんだな。

 うん、それなら、ちょっとさ。

 話、変わってくるじゃん?

 

 

「ちょっと私と別れて、この子と付き合ってみる気とか、無い?」

 

「「……は?」」

 

 

 おお、神よ。

 これは、あんまりではないのだろうか。

 俺の幸せだったはずの人生の中に突然紛れ込んだ特大エラー。

 どうしようも無い前世の宿命が、今ここで襲い掛かるなんて。

 諸君、この問題、どう付き合えばいいと思う?

 

 

 前世の妹が今世の彼氏に告白したらしいのだが。

 

 

 マジでどうしようかな、これ!?




題名そのまんまです。
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