前世の妹が今世の彼氏に告白したらしいんだが   作:雷神デス

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俺の彼氏は、王子様ではない

「ハァ!?マジで言ってんのそれ!?」

 

「耳元で叫ぶなって、うるさいなぁ」

 

 

 弟の驚愕の声を聴きながら、溜息を一つ零して身支度を整える。

 先日から様子がおかしいだの何があったのだのとうるさいので、仕方なく色々と事情を伝えてやったところ、この様だ。

 

 

「いや驚くなって言う方が無理でしょ……。嘘だろ姉ちゃん、あの超優良物件から振られたの?マジで?優斗兄ちゃん、もうずっと姉ちゃんを離さねぇもんだと思ってたけど」

 

「もー、いいでしょ別に!この前話した超絶可愛い女の子との件が尾を引いてるの!あんたが気にすることなんて何もないの!ほら、行くよ学校!」

 

「無理があるだろ……。もう少し詳しく教えろって姉ちゃん!」

 

 

 碧海の奴め、こんなに姉の事情に突っ込みたがる奴だったとは。

 別にいいだろ、別れ話の一つや二つ、そこらへんほっつき歩けば幾らでも出るものだ。

 今回の場合色々と事情が特殊ではあるが、俺が別れたところで気にする必要も……。

 

 

「あ、あの!少しいいですか!?」

 

「うん?いいけど、どうしたの?」

 

 

 弟と共に通学路を歩いていると、何やら真剣そうな男子高校生が俺の前に姿を現した。

 たしか、同じ高校の生徒で、体育祭の時に少し仲良くなって話したこともある。

 しかし、挨拶程度ならばともかく、呼び止める程の用事なんて何かあっただろうか?

 

 

「風の噂で聞きました。朝宮さん、十六夜くんと別れたってほんとですか?」

 

「え?いやなんで知って……いやまあ事実だけど……」

 

「……あ。姉ちゃん、それ言っちゃ……!」

 

「それなら!」

 

 

 バッと差し出された花束に、思わず首を傾げる。

 俺今日別に誕生日でも、何かを卒業するわけでもないんだけど。

 困惑する俺を他所に、弟は「あちゃあ……!」と言いながら頭を押さえ。

 花束を差し出してきた彼は、決心したように言った。

 

 

「僕と!付き合ってくれませんか!」

 

「え」

 

「……そりゃ、そうなるよなぁ」

 

 

 ……え?

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

「朝宮さん!俺とご飯食べない!?」

 

「朝宮さん、よかったら今度、皆でカラオケ行かない!?」

 

「朝宮さん、俺美味しいレストラン知っててさぁ!」

 

「あ、あはは……」

 

 

 なんだこれは、何が起こっている?

 人生で初めて訪れたモテ期に困惑の意を隠せず、少し後ずさる。

 今まで普通に話していただけの男子生徒が、何故こうもこぞって……!?

 ちなみに今日一日で受けた告白回数は七回だ。どうなってる???

 

 

「はーい散った散った!加奈ちゃん困ってるでしょうが!」

 

「ほら、今日は女子でお昼ご飯食べよ?男子たちがうるさいだろうし」

 

「あ、横暴だ!?知ってんだぞ女子の中にも狙ってる奴が居るって!」

 

「ばっ、やめろバカ死にたいかコラァ!気の迷いで言っただけだ喧嘩するかぁ!?」

 

「上等だコラリングに上がれぇ!」

 

 

 いやほんとに何が起こっている?

 異様な雰囲気の教室で、困惑する俺の肩を五里羅さんが優しく叩く。

 そして、苦笑交じりに頭を振って、俺の隣で優雅にお弁当を広げる。

 女子力が高く、かつボリューミーなお弁当に思わず喉が鳴るぜ……!

 

 

「今日は大変そうですわね、加奈さん。暫くの間こんな状態が続くでしょうから、あまり一人では行動しないことをおすすめしますわよ」

 

「ごめん待って五里羅さん、そもそもこれ何が起きてるの?何がどうなってこんな狂ったモテ期が訪れてるの?今の私の頭の上、クエスチョンでいっぱいだよ?」

 

「あなたが一番よく知っているのではなくて?単純に、あなたの元恋人である十六夜さんが、あなたと別れた事実を呟き、それによって学校中が祭りになっているだけですわよ。珍しく朝練に参加したかと思えば、随分とまあ凄まじいイベントを……」

 

「いやそれだけでこうなるわけなくないかなぁ!?」

 

「いやこうなるでしょう。何を言っているのですか、あなたは」

 

 

 一応、噂が広がった原因に関する覚えはあるのだ。

 以前までは、優斗君は俺の登校時間に合わせて部活の朝練に参加せず、部活動よりも恋人と一緒の登校を優先してくれるようにしていたのだが。

 昨日の別れ際、明日からは朝練に参加する旨と、別れたことは秘密にしなくていいのかという確認を取られ、深く考えずにそれにYESと答えはしたのだ。

 

 

『優斗君は大変だろうけど、私はあんまり影響無さそうだし』

 

 

 そう言った時、彼はかなり微妙な顔をして頭を抑えていたのだが。

 もしかして、こうなることを理解していたというのか……!?

 いやそりゃ俺は美少女だし可愛いが、ここまでなるか普通!?

 俺の他にも可愛い子沢山いるじゃん!?

 

 

「まず第一に。異性からの恋愛的な人気という点において、あなたの市場価値は優斗さんよりもよほど高いことを自覚なさってくださいませ。彼は確かにスペックも高く、恋人への気遣いも欠かさない人でしたが、それはあなたのサポートがあってのこと。それを周囲はよく知っている」

 

「いや別に私がしたことってそんな大したこと無くない……?」

 

「なるほど。ちなみにそのお弁当、朝どれくらい時間をかけて?」

 

「ん?これ?えーと、朝五時に起きて、昨日の夜から用意してたあれこれを使って、家族の分のお弁当も作って~……まあざっと二時間くらい?」

 

「それを毎朝、優斗さんにも作っていたのですよね?」

 

「あ、優斗くんの場合恋人だから、家族のお弁当よりも少しだけデコレーションを凝ってたかな?野菜でハートの形を作ったりするの意外と難しいんだよね~。それで三十分追加で使ってたよ!」

 

「……普通、ただの恋人は、そんな面倒なことはしません」

 

「……アハハ、またまたぁ!普通するでしょ?」

 

「しません。作るにしても大体冷凍食品で済ませます」

 

「……マジ?」

 

「マジです」

 

 

 いやいやいやまさかそんな。

 アニメとか漫画とかだとそんくらいかけてる子普通にいたよ?

 それにせっかく食べてもらうなら美味しいもの食べてほしくない?

 前世の母親弁当にもそれくらいの時間かけてたし、大事な人に作るなら普通そんなもんじゃね?

 

 

「あとマネージャーでもないのに、毎回恋人の部活にやたら美味しいレモンの蜂蜜漬けを差し入れに来る彼女なんて普通居ません。恋人の訓練スケジュールを全部把握してる彼女なんて普通いません。試合に欠かさず応援に来てくれる彼女なんてまず居ません」

 

「いや居るでしょ!?スポーツ漫画には居たよ!?」

 

「幻想ですわ。大抵の場合『お疲れ、今日もがんばったね』で終わりです。そんなに彼氏の部活動に対して入れ込んだりしません。というかなんであそこまで色々関わってながらマネージャーにならなかったのですか?」

 

「え?疲れそうだし……」

 

「基準がバグり散らかしていますわね」

 

 

 いやだって、彼氏だけじゃなくて部員全員の責任持たなきゃならないんだろ?

 彼氏一人のサポートでも大変なのに、流石にそれ以上はこなせる自信も無い。

 せいぜいが、スポーツドリンクや練習後に効く差し入れを持ってくるくらいだ。

 

 

「言っておきますけど、部活のマネージャーでもあなたの労力にドン引きしていましたからね?普通マネージャーでもあそこまで働きませんわよ?なんであなた、部外者なのにマネージャー以上に部活のこと詳しいんですか?」

 

「なんか監督さんと話している内に色々聞けて……?」

 

「スペックとコミュ力がバケモノじみてますわね。もう少し自覚を持たれては?」

 

「いやそりゃ誰からも好かれるよう振舞ってはいるけど、そんなに大変かなこれ」

 

「ナチュラルに才能とフィジカルを見せつける癖、やめた方がいいですわよ」

 

 

 今日の五里羅さん、なんか普段より口が鋭い気がするぞ……!?

 ていうか俺ってマネージャーさんからドン引きされてたの?

 普段あんなに仲良く、部活のあれこれについて聞いてくれてたのに……?

 部員一人一人の好みについてもちゃんと教えてあげてたのに……?

 

 

「その他もろもろ、恋人として付き合うなら、という点において。優斗さんよりもあなたの方がよほど評価が高いですわ。何なら恋人が居ると知った上であなたに告白かまそうとしたり、ストーカー行為に出ようとした殿方までいらっしゃったのよ?」

 

「え、ストーカーとかいたの!?」

 

「全員優斗さんが事前に潰しておりましたけれど」

 

「潰すって何したの!?」

 

 

 俺の元彼氏がとても怖い!

 

 

「あなたに恋心を抱きながらも、優斗さんという恋人が居ることによってその秘められた想いは表に出る事が無く留まっていました。しかし、あなたが現在フリーだと知ってしまった殿方たちに、もはやブレーキをかける必要も無し。あなたにアタックを仕掛けるべく、各々が自分の長所を武器にあなたの気を引こうとしているのです。あ、ちなみに女性もいらっしゃいますわね」

 

「いやそんなことある……?居たとしても数人程度じゃない……?クラス中から好意向けられる程……?というか最後えげつない新情報無かった?え、私女の子相手でも油断できないの?嘘でしょ?安息の地はいずこに!?」

 

「その様子だと、ファンクラブの存在も気づいていないのですね……」

 

「初耳だが!?」

 

 

 いやてか、ドンドンと教室内の人が増えてない?

 

 

「あら。あなただけではなく、私の予想も超えてしまっていたようですわね?他のクラスの方々も、この機会を逃すまいとなだれ込んできたようですわ。教室の中が恋に狂った暴徒たちでギッチギチになりそうですわね」

 

「ねぇこれ何が起こってるの!?現実かなぁこれ!夢だったりしない!?」

 

「夢じゃないですわ。現実ですわよ現実。それより、しっかりお弁当を抱えてくださいます?あと舌を噛まないように」

 

「へ?」

 

「「「「朝宮さぁん!よければ一緒にご飯を!」」」」

 

「うわぁいっぱい来たぁ!?」

 

「では、ごめんあそばせ」

 

 

 五里羅さんは、ガシッ、と俺の腰を両手で掴んだかと思えば。

 雪崩のように迫りくる生徒達に背を向けたかと思えば。

 ──軽々と、俺をどこかへとぶん投げた。

 

 

「え、ちょ」

 

「優斗さん。高くつきますわよ?」

 

「アハハ……今度必ず礼はするよ、五里羅さん」

 

 

 ふわりと誰かに受け止められ、思わず顔を上げれば。

 元彼氏こと、幼馴染の優斗君が、俺の身体を軽々抱えていて。

 

 

「さて、人気者さん。良ければ幼馴染と一緒にお昼ご飯。どう?」

 

「……あ、はい」

 

 

 ……とりあえず、流れに身を任せることになったのだった。

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

「……お弁当、自分で作ったんだ?」

 

「うん。自分で好きなお弁当作って、改めて加奈の凄さが分かったよ。料理ってあんなに大変なんだね。加奈はあのお弁当のこと、手抜きだとか言ってたけど。全然そんなこと無かった。卵焼きなんて、結局父さんに手伝ってもらう羽目になったし……」

 

「あの人料理までできるんだな」

 

「僕も初めて知った。加奈のお弁当にはかなわないけどね」

 

 

 結局また、いつも通りの景色でご飯を食べることになっている。

 強いていつもと違う点を挙げるならば、食べている場所だろうか。

 人影のない、あまり日当たりがよくない場所で、二人並んで食べている。

 

 

「予想はしてたけど、予想以上だったなぁ。滅茶苦茶好かれてるね?」

 

「予想してたんなら言ってくれた方が嬉しかったなぁ……!自分が恋愛的な好意を持たれる側になるとかぜんっぜん想像してなかった……!」

 

「普段あれだけ、自分のこと可愛いって言ってたのに?」

 

「優斗くんがキャーキャー言われてるから、私も最低限可愛くなけりゃ変な嫉妬買いそうだなって思ったからさ。だからわざわざ色々勉強して、可愛くなるための努力を欠かさなかったのだ。いやまあ、私もなんかキャーキャー言われる側だったみたいだけど……」

 

「むしろ君のがよほど人気だったね」

 

「意味が分からないなぁ、ほんと」

 

 

 自分の容姿が可愛いとは自覚してる。しかし、学園一だなんて口が裂けても言えない。

 この学園はやたらと濃い生徒が多いし、現役でアイドルやってる女の子やら、子役として大ブレイクした経歴がある子やら、何ならモデルの仕事まで取ってる子すらも居る環境だ。

 俺だって可愛くなるための努力はしたが、彼女らには到底かなわないだろう。

 

 

「むしろ納得だと思うけど。だって加奈、色んな人に関わってるし、誰だって見捨てないでしょ。それで避けられない重荷を背負って、どうにか解決して、その癖お礼なんていらないって笑い飛ばす。そりゃ、人気も出るよ。傍目から見ればヒーローだ」

 

「……そんなでも無いんだけどね」

 

 

 結局のところ、俺が誰かに優しくしたり、助けようとしたりするのは。

 ヒーローめいた理由があるんじゃなくて……ただ、その人から好かれたいからだ。

 嫌われるのが怖くて、いざという時に使える縁が、手段が欲しいからだ。

 前世の母親がやっていたことと、何ら変わりない。

 

 

「けど、これで分かった?加奈はモテるんだよ。その気になれば、僕なんかよりもいい人と付き合えるくらいに。君は、君が思ってるより凄い人だから」

 

「……なんか、こそばゆいな」

 

「事実だからしょうがない。だからこそ、僕は加奈と別れたわけだし」

 

「……どゆこと?」

 

 

 何故俺がモテることと、俺と別れることが関係しているのだろうか?

 

 

「だって加奈、ロマンチストじゃん」

 

「はぁ?何それ?」

 

 

 いきなり何を言いやがるのだろうか、この幼馴染は。

 俺ほどリアリストな人間なんて、探してもそう見つかるもんじゃないぞ?

 幼い頃から将来安泰な相手を作って、その癖理由があればすぐに捨てようとして。

 自分でも、朝宮加奈という人間がどれだけ最悪な奴かはよく理解しているつもりなのだ。

 

 

「私リアリストなんだけど?どこがロマンチストなのさ」

 

「恋人ってどういうもの?」

 

「なに急に。そりゃ、助け合って、愛しあって。誰よりもお互いのことが好きで……」

 

「ほら見ろ。変に理想ばっか見てるじゃん」

 

「はぁ~!?」

 

 

 何を言ってやがるのだろうかこの男。

 恋人というのはそういうものだ。恋愛というのはそういうものだ。

 尊いものであるべきだし、恋は一途であるべきものだろう。

 

 

「加奈は、綺麗すぎるんだよ。恋愛ってのを滅茶苦茶ロマンチックで、凄いもので、皆がみんな、物語みたいなラブストーリーを繰り広げてると思ってる。実際は全然そんなこと無いのに」

 

「いや、そんなこと……!」

 

「だから。僕との恋人関係も、偽物だって思ってた」

 

 

 ……昨日から、どうも優斗くんの様子がおかしい。

 あるいは、こんな不貞腐れた子供みたいな顔が、彼の本当の姿なのだろうか?

 だとすれば……猫を被ってたのは、自分だけじゃなかったみたいだ。

 

 

「普通は皆、何かしら取り繕ってる。全部をさらけ出して受け入れてもらえるなんて、都合の良すぎるパートナーだ。だからみんな、ある程度で妥協する。心底から愛おしいと言えなくたって、例え感情の何パーセントかが相手を嫌う気持ちだって。ほんの数パーセントでも、その人に対する愛情があるなら。好きって気持ちは嘘じゃない。愛してるって言葉は嘘じゃない」

 

「……」

 

「けど加奈は。その言葉じゃ、理屈じゃ、納得できないんだろ?」

 

 

 知っている。そんなこと、とっくの昔に知っている。

 けど、認めたくない。そんなもんだと、諦めたくない。

 恋は純粋であってほしいし、愛は美しくあってほしい。

 自分はそうではないけれど、本物の恋は、本物の愛は、きっと。

 

 

「だから。とりあえず、証明して見せることにした」

 

「……証明?」

 

「幼馴染だからじゃない。君に助けられたからじゃない。僕が君を好きなのは、そんなのとは全然関係の無いことだって。他の意味なんて、微塵も混ぜてやらないぞって。そう証明するために、ライバルを作ることにした。ちゃんと、十六夜優斗は、朝宮加奈を誰よりも君が大好きで」

 

 

 真っすぐにこっちの目を見て、自信満々に笑った。

 今まで見たことないくらいに、彼の瞳にもやる気が満ちあふれていて。

 

 

「朝宮加奈は、十六夜優斗が大好きだって。そう言ってもらうために」

 

「……君って。そんな風に笑うんだ」

 

「うん。実はずっと無理してた。加奈にとっての王子様でありたいなって思ってさ。けど、加奈の理想に乗っかるんじゃダメだってようやくわかった」

 

 

 ……私の理想。なんだっけ?昔、優斗君に話した気がする。

 王子様。誰にでも自慢が出来て、見かけがとっても綺麗な、完璧な人。

 彼はきっと、そうあろうとしてくれたんだろう。そうあってくれたんだろう。

 

 

「僕は。僕なりの“かっこいい”を、君にぶつけるべきだった。君の理想に乗っかって、ただそうあろうとするよりも。君にとっての王子様で収まるなんかよりも。もっともっと、かっこいい奴になってやる、って。自信満々に笑い飛ばしてやるべきだった」

 

「フフッ、なにそれ?私よりも変な考え方じゃない?」

 

「だって加奈が変なんだもん。釣り合うなら、好きになってもらいたいなら。それ以上に変な奴になってやる、なんて。当然の覚悟でしょ?」

 

「そんなものの証明のために。一回チャンスをぶら下げて、他の恋敵を倒すの?」

 

「うん。思いっきり全員踏み越える。全員踏み台にして、君に好きだって言いに来る。あと、第二の目標として!君のお父さんと同じように、僕にもあの口調で喋ってもらうことを目指す!」

 

「……もしかしてなんだけどさ。お父さんに散々キツク当たってたのってさ」

 

「嫉妬ですけど?ずぅ~っと頑張ってるのに、ぜんっぜん素を見せてくれなくてさ。あと、ズルいだろ。マッチポンプみたいなやり方で加奈から信頼勝ち取ったの。あの話聞いてからずっと思ってるからね。あの人、ズルいって」

 

「──バカみたいだね?」

 

「バカだよ。悪い?」

 

 

 バカみたいだ。俺が王子様だと思ってた奴は、思ってたよりバカな男の子だった。

 それに気づかない自分もバカだし。そんなくだらないことで嫌ってたのもバカだ。

 今の今までずっと。自分は彼のことを何も分かって無かったらしい。

 

 

「あと。君が人生で一番危ない目に遭ってた時に、僕が近くにいなかったのも腹が立つ」

 

「それに関してはしょうがないでしょうに。けどまあ、そっか」

 

 

 しょうがない。

 ダメな親のラーメン屋に、客を一人増やしてやるためだ。

 

 

 

「じゃ、これからは父さんのラーメン屋と。“俺”をよろしく、優斗君?」

 

「────!」

 

 

 

 ……なんか喜び過ぎて変な舞を踊ってるが。

 もしかして俺、割と悪女の素質でもあるのだろうか?




一話で致命的な設定ミスがあったので直しておきました……!
多分色々混乱させてたと思うので、マジ申し訳ない……!
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