前世の妹が今世の彼氏に告白したらしいんだが   作:雷神デス

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最近コメディ要素薄れてきてるので、番外編でコメディ要素を……!


【番外編】加奈さんはとてもモテますわ

 加奈さんは、性別年齢問わず、非常にモテるお方です。

 わたくしとしては実に遺憾なのですが、びっくりするくらいモテますわ。

 平気な顔して多くの殿方の心を掴み、その後すでに彼氏持ちであることが判明し脳破壊。

 もはや慣れ親しんでしまったその流れに、一種の風物詩すら感じてしまう程。

 

 

『いやー、やっぱ優斗君はモテるね。私も鼻が高いよ……!』

 

『眼玉をお忘れになりまして?』

 

『急に罵倒された!?』

 

 

 その癖こんなことほざきやがるので、常々自覚してほしかったですけれど。

 今になってようやく、加奈さんも多少そのことを自覚できるイベントが起きました。

 優斗さんと別れることになった、という噂は既に校内に知れ渡り、今もなお大盛り上がり。

 無謀な勇者たちの屍が、絶え間なく積み重なっていく様は正直面白いですわね。

 

 

「しかしまあ、毎度毎度よくもこれほど丁寧に……」

 

 

 されど屍たちの目に、後悔など一片たりともないようでした。

 誰一人としてその告白を馬鹿にはせず、また誰に対しても真摯に向き合い。

 そのせいで疲れている姿は見せれど、決して弱音を吐くことは無く。

 しょうがないのでクラスの皆で、時折無理やり休憩を挟ませつつ。

 

 

「これで七十人目と。女性の方は十三人目ですっけ?」

 

「みたいだね~。このペースならギリギリ百人届くか……!?」

 

「止まれ止まれ止まれ!私の財布のために、どうか……!」

 

「諦めなさいませ。今日のスイパラはあなたの奢りですわ」

 

「人の告白で賭け事するのやめてくれないかなぁ五里羅さん!」

 

「金を直接賭けないゲームは、賭博禁止法には反しませんのよ?」

 

「モラルの問題だよ!?」

 

 

 実際のところ、バカみたいな数の告白に真摯に対応しているのは彼女だけ。

 流れ作業で済ましてもいいでしょうに、そのどれもにしっかり応えていては、告白する側は一回で全部出し切って終わりでも、彼女はその一回を幾度も繰り返すことになる。

 

 

「モラルという話なら、ひっきりなしに告白しに来る方々にも文句を言うべきではないかしら?というかあなた達、目的が透けてますのよ。ワンチャンにすら賭けていない、ただの記念みたいな野次馬根性で来てるお方はここからは除外しますわね」

 

「「「ギクゥ!?」」」

 

「いやそんな人いないでしょ。告白だよ?人生における一大イベントだよ?」

 

「言われてますわよ騒ぎ事が大好きなだけの愚か者共。自覚ある方はとっととお消えなさい」

 

 

 これで半分程は減ったでしょうか。軟弱者達だこと。

 加奈さんは「ええ~……?」と困惑しておりますが、学生の告白なんてそんなもの。

 結婚を視野に入れる、だとか考えない軽率な方々が大多数ですわ。

 とはいえ……残った半分の生徒達は、そうではないのでしょうけれど。

 

 

「朝宮さん。俺、ずっと朝宮さんのことが好きでした。あの日俺が、クソくだらない漫才で滑って場が凍った時。君がすかさずフォローをして場の笑いを取り戻したこと、忘れてません。加奈さん、どうか……俺とプロの漫才師になることを前提に付き合ってください!」

 

「ごめんなさい、私漫才師になるつもりはないから……!けど、あなたがプロの芸人になったら、絶対見に行くね!目指せ、雛壇芸人!」

 

「ぐはぁ!絶対笑わせます!」

 

「朝宮さん。私、あなたが励ましてくれたおかげで、昔からの夢だった美容師になる道を諦めずに済んだの。全然上手く出来なかった頃の私に、大切な髪を整えさせてくれて。髪型をみんなに自慢してくれたの、すっごく嬉しかった。女同士だけど、愛さえあればそんなものは障害になりえない!私と生涯を共にして、あなたの髪を私の色で彩らせてください!」

 

「ごめんなさい、私自分のおしゃれは人に任せきりじゃなくて、自分でも色々と触ってみたいから……!あの時あなたが整えてくれた髪型、すっごく可愛かったよ。プロの美容師になったら、またおしゃれの話とか一緒にしたいな」

 

「くぅ……!私一人のハサミでは、朝宮さんの髪を独占出来ないというわけね……!」

 

 

 斃れ、されど微笑み、自ら去っていく勇者たち。

 正直滅茶苦茶面白いですが、本人たちは実に真面目。

 ごめんなさいの一言で済ませばいいのに、律儀というかなんというか。

 というわけで、以下に個人的に面白かった告白集を載せておきますわね。

 これを読んだ約一名は、しっかりと参考にするように。

 

 

 

 

【エントリーNo.1 元高二病患者の間宮(まみや)様】

 

 

「僕は、あの地獄から救ってくれた君を、女神だと思っている」

 

「う、うん。私、別に大したことはしてなかったと思うけど……?」

 

「教師からも、周りからも見放されていた僕のために、同じクラスメイトですらない僕の為に、君は立ち上がってくれた。ただ、いじめられてる現場を見たってだけで。僕なんかの為に声を上げてくれる人なんて、君しかいなかった……!」

 

「まあ、うん。後で事情聞いたら、君も色々やらかしてたみたいだけど……」

 

「言わないでください。死にたくなります」

 

「もうクラスメイト達が頑張ってる中、すかした態度で『無駄に頑張っててだっさw』とか呟いてないよね?ちゃんと協力してる?何があってもいじめを許容する理由にはならないけど、それとは別に頑張ってる人達を馬鹿にするのは良くないからね?」

 

「今はしっかり取り組んでおります……!」

 

 

 なんかもう色々とダメそうな方ですが、覚悟だけは決めてきたようです。

 赤いバラを手に、キリッとした表情でそれを差し出し。

 彼もまた、他の勇者と同じように、無謀にもそれを口にしました。

 

 

「嫌われ者だった俺なんかのために、全力で駆けずりまわってくれた君に、俺はハートを撃ち抜かれた!朝宮加奈さん。どうか俺と、付き合ってくれないか!?」

 

「……ごめんなさい!」

 

「ぐわあああああああ!!」

 

 

 予定調和ですが、まあ頑張ったのではないでしょうか?

 少しだけ、悩んだ素振りはありましたから。

 

 

「ダメな理由は、やっぱり俺が以前やらかしたことが……!?」

 

「いや、別にそういうわけじゃないよ?ちゃんと悪い所を認めて改善できたのは、間宮君の良い所だと思うし。それはそれとして、この前の調理実習の時、自分だけサボってたよね?皆の方が料理得意だし、自分は手伝わなくていいかって感じに。先生が見てる時だけ、食器を洗ったりしてたよね?」

 

「……はい」

 

「自分が出来ないことだからこそ、積極的に取り組んでいかなきゃ。そういうところも直さなきゃ、私の彼氏にはなれません。ということで、あなたの告白には応じられません。けど、嬉しかったよ?今度また、皆でカラオケで歌おうね!」

 

「ちくしょおおお!!ありがとうございました!!」

 

 

 こういうところ。こういうところですわね。

 彼女は人をよく見ます。それも多分、大抵の場合は無意識に。

 人の名前を決して忘れず、人柄や特徴をしっかりと覚えて。

 一度会っただけの相手ですらも、聞かれればすらすらと思い出を語れる。

 

 

「あんまりやりすぎると、いつか刺されますわよ」

 

「なんで!?」

 

 

 あなたが思っている以上に、ちゃんと向き合うって言うのは難易度が高いのですから。

 間宮さんも悪いお方ではないのでしょうが、加奈さんの理想が少々高すぎましたわね。

 とはいえ、ハードルを乗り越えうる方自体はそれなりに存在していました。

 

 

 

 

 

【エントリーNo.2 陸上部エースの虎走(こばしり)様】

 

 

「朝宮先輩。俺はかつて、自分の才能に溺れていました」

 

「虎走君、短距離走界における超新星とか言われてたもんね。女の子達もキャーキャー騒いでたし、あれはしょうがないよ。まあ、それで他の新入生にちょっかいかけてたのはやりすぎだけど。今は皆から慕われているみたいで、先輩は安心です」

 

「そうなれたのも、先輩が俺に打ち勝ち、俺の鼻っ柱をへし折ってくれたからです。なんであの足で陸上部入ってないんだとか、短時間のトレーニングで足速くなりすぎだろとか、色々あって俺のプライドバキバキにへし折られましたが」

 

「なんでも出来ちゃう天才美少女でごめんね……?」

 

「いえ、おかげで今や、全国大会で活躍できる選手にまで成長出来ましたから」

 

 

 校内で一番足の速い虎の如き俊敏さを持つ虎走様。

 彼は少し緊張した面持ちながらも、しっかりとした態度で告げられました。

 後ろにいる私たちの間にも、僅かに『行けるか?』と言う希望が芽生える程に。

 

 

「俺と共に、速さの先にある可能性を追い求めてはくれませんか?」

 

「……ごめんね?その道を一緒に歩めるのは、私じゃない」

 

「……そう、ですか」

 

 

 彼はそれ以上は何も言わず、何処か吹っ切れた表情で背を向け去っていきました。

 潔し。思わず賞賛の眼差しを向け、同時に少しだけ疑問が芽生えます。

 スペック的にも精神的にも、彼はなかなかの傑物であったように思えますが。

 加奈さんはなぜ、それをすげなく断ったのか?

 

 

「あ、そうだ。陸上部のマネージャーさん、ちゃんと労わらなきゃダメだよ」

 

「……?はい、いつも感謝してますよ」

 

「ならよかった」

 

 

 その何気ない会話を聞いて、「あぁ……」と嫌な納得感を覚えてしまいます。

 彼女にとって虎走様には、もっといいお相手が居る、という判断なのでしょう。

 彼女のこういったところは、あまり好きではありません。

 

 

「虎走さん。本気でしたわよ?」

 

「本気だったからだよ。妥協で受け入れたら、どっちにも失礼でしょ」

 

「……それ。あなたの元恋人に対する感情が、妥協によるものではなかったのだと。そう言っているようなものだと思いますが。とっととよりを戻す方がいいのではなくて?」

 

「……色々あるの!」

 

 

 誤魔化されましたわね。相変らず隠し事が下手ですこと。

 けれどまあ、こういうところも込みで、愛されているのでしょう。

 わたくしとしても、良い所しかない人間なんて気色悪くてかないませんし。

 だからこそ、加奈さんは愚直な程に真っすぐな人間に弱いのかもしれません。

 

 

 

 

【エントリーNo.3 生徒会長の神山(かなやま)様】

 

 

「朝宮加奈。貴様、十六夜優斗と別れたというのは本当か?」

 

「あ、神山さん。うん、本当だけど……」

 

「そうか。では私と付き合え」

 

「……いやなんでそうなるの!?」

 

 

 おそらくは、今日一番の衝撃が教室中に走ったことでしょう。

 神山様と言えば、この高校の生徒会長にして、十六夜様に負けず劣らずのご令嬢。

 以前から、何かと注目されがちな朝宮さんを危険視し、注意することもありましたが。

 

 

「何を驚いている?合理的な判断だろう。朝宮加奈、お前が持つポテンシャルは間違いなく私以上だ。並みはずれた運動能力、碌に勉強する素振りが無くとも平然と我が校の教育水準についていける頭脳、そして何よりも恐るべき人心掌握能力」

 

「多分過大評価だと思うよ……?あと美少女を忘れてない?」

 

「なんでいちいち自分の顔の良さをアピールするのだ貴様は」

 

「メイクもせずにその顔面偏差値の神山さんには分からないことかなぁ!」

 

 

 ……多分この瞬間だけは、クラス中の女子が同じ感想を抱いたことでしょう。

 とはいえ、文句を言ってる加奈さん自身も十二分に美少女と言える方ですが。

 彼女の場合、特筆して『美女である』と描写されるタイプの美しさですわね。

 ほんの少々、妬ましくも思います。口には出しませんけどね?

 

 

「くだらん。過剰な宣伝はむしろ、自分に自信がないと言っているようなものだろう。十二分に整ったその顔立ちで、何をそう念押しする必要がある。私もしかりだ。私の立ち振る舞いが優美なのは、当たり前のことだろう?」

 

「ねぇ五里羅さん、これ煽られてる?」

 

「煽りではないと思いますが、それはそれとして苛立ちますわね」

 

「貴女は己の長所を把握しているだろう。自信が伴ったその美しさ、ほれぼれするな」

 

「素晴らしい持論ですわね。難癖付けないでくださいまし加奈さん」

 

「相変わらず五里羅さんの手首はモーター付いてるのかってくらい回転するね」

 

「貴女が反面教師ですからね」

 

「え、なんで!?」

 

 

 あんまり理想に真面目過ぎると、疲れて道を見失うものです。

 彼女のように、妥協を許せず進もうとする方は、特に。

 芯すら失えば立つことすらできませんが、回り道するくらいは許容なさいな。

 

 

「本題に入るぞ、朝宮よ。私は、お前という人材が欲しい。気の置ける学友としても、優秀な配下としても。同性であれ、私を傍で支える恋人としてもな」

 

「前者二つは納得するとしても、恋人はなんで……?」

 

「お前が何処とも知れぬ馬の骨と結ばれるくらいならば私がその席を奪いたい」

 

「わ~滅茶苦茶言ってる」

 

「そうさな。だが、戯れのつもりはないぞ、朝宮加奈」

 

 

 自信あふれる笑みをうかべて、神山様は加奈さんへと迫っています。

 その眼には確かな真剣さが伺え、何処か執着じみたものを感じる程。

 恋心は色々あれど、確かに彼女の瞳もまた、恋した乙女のそれなのでしょう。

 それが、肉食獣の如き捕食者のものである、というだけで。

 

 

「お前が欲しい。手元に置いておきたい。例え法律が認めずとも、同性のカップルなぞこの日本においてもそう珍しいものではなくなった。ましてやお前に恋する女なぞ幾らでもいただろう。その中に、私と言う傑物が隠れていた、というだけだ。簡単な理屈だろう?」

 

「……いや、まあ。理屈は分かるけど」

 

「もう一度言う。私の物になれ。そのためならば、お前の言うことを何だって聞いてやろう。財力はある。能力もある。精神面においても、お前の好みとそう外れるものではあるまい。性別以外に憂うべきことはあるまい。さあ、返事を聞かせろ、朝宮加奈!」

 

 

 かなり強引な告白ですが、加奈さんをよく理解していらっしゃいます。

 あんな雰囲気の癖に割と押しに弱い上、彼女は割とメルヘン思考。

 例え性別は同じでも、彼女の言う所の王子様の如き輝きを神山さんは持ってらっしゃる。

 加奈さんは押されながら、少しの間だけ間を置いて。

 

 

「ごめん。色々考えたけど、やっぱり受けられないや」

 

「……そうか。考えたならいい」

 

「理由は聞かないの?」

 

「聞いたところで何になる?私がお前の好みとは外れるから、それを直せと?くだらんな。私にとっての告白とは確認行為だ。今の私こそが完璧であり、それを変える必要性は感じない。その私を否定するということは。お前にとっての完璧は、私とは別のところにいるのだろう」

 

「……アハハ、私にも分からないけどね。けど」

 

 

 少しだけ、悔しく思いますわね。

 加奈さんの瞳が、あんなに色づいているのは。

 それを成したのが、わたくしではないという事実が。

 

 

「もうすぐで、見つけられるかもしれないから」

 

「そうか。ならば、貴様の気が変わったころにでも再挑戦してみよう」

 

「あ、一回で終わりじゃないんだ!?」

 

「人の心など簡単に移ろうものだろう。それに、恋人としてでなくとも、私の覇道を支える者として、お前と十六夜の奴はこれ以上ないほど適任だ。あいつとは好みは合わんが、努力に伴う実力の高さはよく理解しているとも」

 

「……相変わらずだなぁ」

 

「言っただろう?これが完璧な私だと」

 

 

 実に強固な自己を持つ、今時珍しいくらい誉れ高い方ですわね。

 まあ、こんな口調で今までを生きてきた私が言うのもなんですが。

 少なくとも、今日一番脈があったのは、彼女なのでしょう。

 

 

「さて、今日の分はこれで終わりですわね。帰りますわよ加奈さん」

 

「あ、うん。行こっか」

 

「クソー!奢りは私かぁ!」

 

「ふっふっふっ、甘いのぉ負け犬め。このゲームには必勝法があったのさ……!」

 

 

 騒がしくしながら、この学園で縁を繋いだご友人方と帰路に着く。

 加奈さんは優斗さんとよく一緒に帰るので、少しだけ珍しい光景ですわね。

 この点においては、役得な気分ですけれど。

 

 

「……失礼。少々用事を思い出しましたわ。先に行っておいてくれますか?」

 

「ん、忘れ物?校門で待ってようか?」

 

「フフッ、お気持ちは嬉しいですけれど……」

 

 

 少しだけ面倒ですが、最後の仕事が。

 わたくしなりのおせっかいが、まだ残っていますわね。

 そうでしょう?そこでちらちら見てるおバカさん。

 

 

「少しだけ、塩を送ってあげるだけですわ」

 

 

 

 

【エントリーNo.0 元恋人の十六夜(いざよい)様と】

 

 

「と言うわけで。あなたの恋敵になりそうなのは今のところこの三人ですわね」

 

「……すっごくありがたいけど。いいのかい?こんなの貰って」

 

「構いませんわ。全員分の特徴と、加奈さんの反応をしっかりと記しているので。それを参考に、あの方に本気で好かれるよう努力なさい。今のところ、彼女の愛を得られる一番の可能性を持つのは、あなたなのですからね?」

 

「アハハ、ありがと。少しだけ勇気が出てくる」

 

 

 まったく、茶番なことこの上ないですわね。

 彼は、十六夜優斗は未だに、彼女のことが大好きで。

 加奈さんも加奈さんで、彼に対して今更、本気で恋に落ちかけているのですから。

 誰がどう告白しようとも、加奈さんがどれだけ思い悩む羽目になろうとも。

 選ばれるのはきっと、彼でしょうに。

 

 

「……強敵だなぁ、神山さん。まさか女の人にここまで危機感を抱くとは」

 

「同性にも異性にも好かれているようですわね。あなたにとっては周りは敵だらけ。少しだけ同情しますわ。自業自得ですけれど」

 

「うん。自業自得だ。けど、今までで一番、前に進めてる気がする」

 

「……ええ。二人とも、ようやくという感じですけれど」

 

 

 ずっと止まったまま、恋愛ごっこにしか見えなかった二人の関係性。

 それがようやく、ピンチを作りながらも、それを糧に進みだしている。

 友人としてはとても嬉しく、その関係を祝福すべきなのでしょうが。

 

 

「あなたもあなたで、告白くらいは受けてそうですけれど」

 

「うん、何度かね。全部しっかりと断ったけれど」

 

「モテるお方は大変ですね」

 

「加奈程ではないけどね。それに、五里羅さんだってモテる方でしょ」

 

「あなた達程ではありませんわ」

 

 

 家の名がコンプレックスだったことがある。

 自分の名前と、自分の筋力が人と違うことに、悩んでいた時期がある。

 それを受け入れてくれたのは加奈さんで、関係性としてはこちらのが長い。

 彼はあくまで、あの施設に後から入ってきた新人でしかないのだから。

 

 

「そういえば。ついでに言っておきたいことがありました」

 

「ん?なにかな?」

 

「わたくし。実はあなたのことを慕っていました」

 

 

 それでも、加奈さんの眩い光に気圧されて、もがいていた彼の姿は。

 そんな状況でも決して折れずに、何度でも立ち上がり続けた十六夜優斗の姿は。

 彼女程でなくとも、ずっと一緒に仲良く遊んだ、幼馴染の男の子は。

 王子様と言う程でなくとも。わたくしにとって、初恋を奪われるのには十分で。

 

 

「……ごめん。僕、今でも加奈のことが大好きなんだ」

 

「知ってますよ。本気で、負けに来ましたから」

 

 

 それでも、例え勝てないと分かっていても。

 自分じゃない誰かを好きになったその姿を、好きになってしまった時点で。

 抱いた恋が、どうしようも無い負け戦だと分かっていても。

 勝負自体から逃げたことを、ずっとずっと後悔していました。

 

 

「わたくし、しっかりと協力してあげますから。ちゃんとわたくしの親友を幸せにしてあげてくださいまし。どこぞの馬の骨に奪われるような結末になったら、殴り込みに行きますわよ?」

 

「うん。分かってる。その時はよろしく、五里羅さん。腑抜けた背中、思いっきり叩いてくれる?」

 

「……ハァ。あなたも負けず劣らずですわね」

 

 

 自己満足だ。それでも、わたくしを産んでくれた今は亡き家族の名を。

 五里羅の名を穢さぬように、何時だって気高く生きていこう。

 親友たちの背を、思いっきり叩いて。前へ進ませられるような人生を。

 

 

「頑張りなさいな。ここからが正念場なのですから」

 

 

 新しい恋を見つけるためにも。

 しっかりと、幸せな姿を見せつけてくださいまし?

 その時は思いっきり、心の底から泣いて、笑って。

 祝福してさしあげますわ。




まさかの五里羅さんメイン回。
やたらキャラが強くて好きな子です(
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