Sword Art・Online 《Strange Dramas》 【完結】 作:与祢矢 慧
よろしくお願いします
表現等が安定しないかもしれません
誰かが一回は考えたようなストーリーかもしれません
1st 始:決
軽やかな風が吹き、人の髪、木々を揺らす。
そんな好天気の中、フィールド内にあるひときわ高い丘に置かれた小さく黒いオブジェクトの前に膝をつき、手を合わせている少年の姿がある。装備を見るとここ付近を拠点とするプレイヤーではないことが窺える。
数分すると少年はフラリと立ち上がり、丘から眼下の風景を懐かしむような遠い目で見渡す。
「……お前の言ったとおりだな。ここは気分が良くなる」
この地獄のような世界を忘れるほどに、と心で続ける。
視界には街、所謂《圏内》と呼ばれるエリアがある。それ全てを一望できることも含め、ここからの風景は絶景と十人中九人が言うだろう。
少年はまた黒いオブジェクトに視線を移し、ハァと深いため息をつく。
「どうして、お前だけだったんだろうな……。俺はこうやって、生きているのに」
その眼は後悔と困惑を語っている。脳裏に浮かぶのは少年にとって”二つ目の地獄”。
現在の彼の原動力にもなった奇怪な事件。
「…………次に来るときは、終わってからだ。その時まで、待っててくれ」
既にいない人物にそう告げると長く濃い紫のコートを翻して丘を下って行った。
その眼には先程までとは全く違う感情が灯っていた。
沸々と湧き上がってくるモノを少しでも抑えるつもりでここに寄ったのだが、効果は真逆だったようだ。焦るな、ぶちまけるなと言い聞かせてもたがが外れそうになる。感情に身を任せるのは悪手でしかないと、自分が最も理解している。眼が曇り、剣が鈍る。
常に冷静で利己的になれ。
そう、決めたんだ。
『オレってさ、感情任せで猪突猛進だろ? 頭使うのは任せた、相棒!』
眩しかった。憧れだった。まるで物語に出てくる主人公みたいだった。
……なのに、なんであいつだったんだろう? 物語じゃないのは知っている。それでも……信じたくなかった。
……やめよう。こんなこと考えるなんてくだらない。取り敢えず、今することは情報収集だな。情報屋は確か…………。
「アレ? もう終わったんだ。もっとゆっくりしていけばよかったのに」
不意に自分に掛けられる言葉で誰がいるかを認識する。
「此処に長居するのも、な。……欲しいアイテムは揃ったか?」
「うん、揃ったよ。ビショップがたくさん見つけてくれたから」
目の前で座っている、世間一般では美少女と呼ばれるような容姿をしたプレイヤーは、寝転がっている銀色のオオカミを撫でながら返答をする。それだけの動作にどこか人の眼を惹きつける何かが潜んでいる。
そんな人間が何故俺と一緒にいるのか、と疑問を口にしたことがあったが笑ってごまかされた。
「それじゃ、行こっか」
「あぁ、そうだな」
此方の内を知ってか知らずか先を促す。俺は装備一式を登録装備欄から選択し、今の装備と付け替える。
「あれ? もう装備変えちゃうの?」
「あぁ。基本はこっちだからな。」
ふ~ん、とつぶやいてるのを無視して足を進めようとすると
「もう、後戻りは出来ないんだよ。本当にいいの?」
不意な質問故か、自分の心情の核をついたような質問故か体が硬直する。振り返ると彼女の視線が俺を射抜いて、いや俺の一片の動揺も見逃さないとばかりに探っている。
「君は……後で後悔しない?」
「………………わざわざついてくる必要は無い。そう言った筈だが?」
「違う。私は一生君に添って行く、そう誓った」
……一生、か。時に軽く、時に重たい。
「じゃぁ、一体何だ「私はッ、」とッ……。」
「……私はどんな形にせよ、君に苦しんでほしくない。…………ただ、それだけ」
……そんなことを、そんな眼で言うな。俺にはその言葉を受取る資格がない。それをしていいのは、俺じゃなくて…………
「今考えていても仕方がない。後悔するとしてもその時はその時だ」
卑怯者、いや臆病者だな、俺は。自分のではなくアイツの言葉を使っている。目の前にいる者が持つ雰囲気は真剣そのもの。それなのに、自分の言葉で返すことすら出来ない。
「そうじゃなくてッ!…………いや、なんでもないよ」
力なく項垂れるところを見ると、何でもないようには見えないが……。まぁ、いいか。
「じゃ、行くか」
「……うん、目的地は何処?」
「まずは……エギルの店だな。情報収集も兼ねて、アイテムを売買だ。次にアルゴとだ。……調子でも悪いのか?」
「別に。そういえば、情報屋はアルゴだけでいいの?」
「いや、ツテで他の情報屋からも入手する。アルゴだけだと、どうしても攻略方面の情報が、多いからな」
一概に情報屋といってもそれぞれだ。武器情報がメインだったり、モンスターがメインだったりと。
「もっとも、俺が欲しい情報はフロアボスでも武器でもないがな」
武器は以前に最高のドロップアイテムが手に入った。……今の俺に恐ろしいほど相応しい逸品がな。
「…………この剣で、俺は……」
何気なく手のひらを見つめるが、そこには恐怖も歓喜も無い。ただ、ただ事を為し、これから為そうとする手が在るだけだ。
「どうしたの?」
「ッ、いや、なんでもないさ」
さて、そろそろ行くとするか。情報収集にレベリング、アイテム補充とすべきことは多い。といっても、ゲームクリアまではまだまだ時間がある。それまでに果たせばいいだけだ。
「……首洗って、待ってろよ。斬り落としてやる、その時まで……」
どうでしょうか?
感想等お願いしますm(__)m