Sword Art・Online 《Strange Dramas》 【完結】   作:与祢矢 慧

11 / 18

m(__)m
すいません遅れました
待ってるやつなんかいるの?っというツッコミはなしで。

視点変更多めです。
では、どうぞ。


11th 不成:予感

 

 

 這いつくばるプレイヤーとそれを見下ろしているプレイヤー。

 ……偶然にも似ている。人間が違うだけで、その構図は実に似ている。

 俺の復讐が始まった、あの時と。

 

 ――――■■ッ!お前だけでも逃げるんだ!

 

 一瞬、あの日の記憶がフラッシュバックした。

 懐かしく、忌々しい記憶。

 ……もし、あの日にアイツではなく、俺が殺されていたら、アイツは復讐を選んだのだろうか。俺がいないからと言って諦めるだろうか。

 ……もし俺が、復讐を選ばなかったら、俺はどうなっていただろう。

 

 思えば、たった一人の男によってここまで壊されたんだ。……そして、新たな出会いを得たことも。

 親友を殺した男、ザザ。

 

 それが今、俺の足元で這いつくばっている。

 その姿を見て、ふと思った。

 俺はなぜ、何も感じないのか。失望でも、達成感でも、快感でもない。喜怒哀楽すら感じない。

 

 ただ『終わり』があると、わかる。

 

 この剣で首を断ち斬り、HPバーをゼロにする(命を奪う)だけで、決着が着く。

 

 壊された『日常』に区切りがつき、復讐劇と決別する。

 そして、俺は再び(・ ・)生きる意味を失くす。

 

 これが正しいことなのか、答えは解らない。

 俺の生き方は他にも在ったのかもしれない。

 

 だが、するべき事はわかる。

 俺はゆっくりと剣を高く掲げた。

 

「……じゃぁな、赤眼のザザ」

 

 

 静かに、剣を振り下ろした。

 

 

 

 

 

   ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 既に攻略された層のとあるエリアの端。そこにはひっそりと小さな洞窟エリアが存在する。

 特に強いMobがいるという情報もなく、レアアイテムが出るという噂もない。まるで製作者自体が忘れ去ってしまったような場所。

 そこの入口を何故か、その層に相応しくない高レベルの武具で身を包んだ四人が固めていた。

 全員の表情はこわばり、何かを恐れているように口を固く結んでいる。

 

 その様子を茂み(ブッシュ)の中で隠蔽(ハイディング)しながら観察する二人。

 二人、アルゴとヨシナはつぶさに状況を観察している。

 

「……どう、アルゴ。入れそう?」

「う~ん、微妙なとこだネ。四人いるなんて予想外だッタ」

「二人は戦闘、残りの二人が伝令だね。……殺してもいいんだけど、一人はやっぱり逃げちゃうよね」

「血盟騎士団の連中は量より質、だからナ」

 

 二人は中の様子、つまり『笑う棺桶(ラフィン・コフィン)討伐作戦』がどうなっているかを知ろうとしている。

 正確には乱入したロキの安否だが。

 先刻、アルゴの情報を元に洞窟へ辿り着いたが、入り口に居座る血盟騎士団の四人により中に入れないでいた。

 

 当初はヨシナのテイムモンスターであるビショップを使い、おびき寄せようとしたがテイムモンスターはカーソルがグリーンであるため、敵Mobと誤認させられず、またテイマーが近くにいると思われる、と考えこの案はボツとなった。

 それから、数々の方法を考えたがどれも上手くいくとは思えないものだった。

 

「……仕方がないか。アルゴ、あなただけで中に行って」

「……いいのカ、ヨシナ」

「うん。私だと足手まといになるし、アルゴだけの方が行きやすいでしょ」

「ヨーちゃん……。わかったヨ、ちょっくら行ってくる」

 

 言うやいなや、いくつかのスキルを発動して走りだす。

 その様子を見送ったヨシナは投げナイフを取り出す。

 

「……援護くらいなら、できるかな」

 

 肩の上あたりで構え《投擲》を発動、狙いを定める。

 チラリとアルゴを見て鋭くナイフを放つ。ライトエフェクトを纏いながらナイフは思い通りに飛んで行く。

 いち早くそれに気づいたのは四人の内、一人。

 ナイフの向かう先に気づき、とっさに叫ぶ。そして、蹴り飛ばす。

 

「攻撃だ! 避けろ!」

「どわっ!」

 

 顔から地面にダイブした男が立っていた場所でナイフが、カンッと弾ける。

 すぐさま一人が抜剣しつつ、走りだす。

 うずくまっている者を残りの二人が守るように、陣形を取る。

 

 この時すでにヨシナはその場を離れて、後方の丘へと移動していた。

 

「……思ったより余裕だったね。さて、アルゴは……」

 

 眼を洞窟の入り口に向けると、ちょうどアルゴと視線がぶつかった。

 親指を立ててサインを送ってきたので、ヨシナも同様にすると…………一瞬、思考が交錯した。

 

(ありがとう、アルゴ。……ごめんね)

 

 アルゴはにやりと笑い、ローブを(ひるがえ)し、奥へと消えて行った。

 

 

 

 

 

「なんとか入れたナ。……ま、ヨーちゃんのおかげダ」

 

 上手く洞窟内に潜入したアルゴは《消音(スニーキング)》を使いながら、小走りで移動していた。

 薄暗い通路には松明の一本も無い。数分ほどで彼女は目的地に到達した。

 常に身を隠すようにしていたが、途中でプレイヤーには出会うことなく順調に進め、それにアルゴが少しの疑問を感じた。

 通路には少なからず見張りや、敗走兵がいると思っていたのに、気配もない。

 

「……おっかしいナァ。ヨシナの読み(・ ・)だと討伐隊がさっさと崩壊するはずなんだけど……」

 

 ――――……多分だけど、攻略組の連中はかなり『もろい』。あいつらは『勝てる』ってことしか考えてない。

 

 実際、彼らは崩壊したのだ。殺人への意識の違いは確かに三人の死をもたらした。

 だが、皮肉にもロキの乱入によって余裕が生まれ、態勢を治せた。これはロキ本人が自覚せず、また討伐隊のほとんどもそう認識していなかった。

 

 アルゴは笑う棺桶(ラフィン・コフィン)と討伐隊との戦闘場所の入り口近くで息を潜め、内部を見渡す。

 数カ所で斬り合いは続いているが、ほとんどは討伐隊に捕われていた。

 

「あんまり死んでないネ……。それはともかく、ロキは何処に……」

 

 突然、一際大きな音が響いた。剣と剣がぶつかり合うような音だ。少し遅れて、歓声が起こる。

 自然とアルゴの眼はそちらに向いた。

 そこには、髑髏(どくろ)を模したマスクを装備した男が踏みつけられていた。

 アルゴは持っている情報から、その男は《赤眼のザザ》と判断した。

 

 つまり、ザザを踏みつけているのは……

 

(……ロキ。目的は、そいつだったんだ……)

 

 ヨシナとアルゴ。この二人、特にヨシナはロキと行動を共にする時間が多い。しかし、ロキの復讐の対象が誰なのかを知らなかった。

 それは単にロキが話そうとせず、二人も聞こうとしなかったからだ。

 

 ロキが剣を振り上げる。

 ゾワリ、と空気が変わった。異形の剣への恐怖か、死ぬことへの緊張感か。

 周囲にいるプレイヤー達に止める意思はない。少なくとも、アルゴはそう見た。

 皆が皆、うっすらと嘲笑(わら)っている。

 

「殺人犯なら殺しても問題ないのかヨ……。やっぱり、あんな連中なんて……。ん、あれは……キー坊?」

 

 視界の端に疾走する黒いプレイヤーを捉える。特徴的な装備でキリトだと一目でわかる。

 向かっている先にはロキがいる。

 彼は今、まさに復讐を果たそうとしている。

 

「………………まさかっ?!」

 

 アルゴの中で最悪の事態が思い浮かぶ。

 とっさに走りだそうとして…………踏みとどまった。

 彼女の予想通りならキリトはロキの復讐を阻止するだろう。

 

 ――――それはダメだ。命をかけてでもキリトを止めなればならない。

 そう考えた。

 

(……だけど、ボクがあそこに行ってどうにかなる?)

 

 ステータス差は歴然。時間稼ぎにもならない。

 もしかしたらロキが不快に思うかもしれない。

 

 さらにキリトが距離を詰める。

 

「……アァッ! くそッッ!」

 

 ダンッ!

 力の限り壁を殴った音が洞窟内に響く。それでも小さな音だ。

 気づいた者はいない。

 こうしている間にキリトは走る。

 悔しさに奥歯を噛みしめる。

 

 

 

(……ボクは、無力だっ!)

 

 

 

 

 

   ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

「……何故だ」

 

 彼自身でも分かるほど声が震えている。

 いや、声だけじゃない。剣を持つ右手も、震えている。

 それだけ、この現状が彼を混乱させている。

 

「……何故、お前は……」

 

 いくら力を入れようが、腕はびくともしない。

 あと、たった、数十センチ、その距離が途轍もなく永い。

 

 彼の剣先(復讐)は、あと僅かという所で届かなかった。

 

 ――――やっと、終わる。

 

 そう、確信していた。

 彼の腕が掴まれるまでは……。

 

「……お前は……、お前如きが、何故邪魔をッ!」

 

 振り解こうとすると、予想外に簡単に腕を離された。

 そのまま、腕を掴んだプレイヤー、キリトの首を狙って剣を振る。

 

 ――絶対に当たる。

 ――逃げ場はない。

 

 完璧、とまでいかずとも鋭い一撃。

 だが………………

 

 ガキャンッッ!!

 

 キリトはロキに傷を負わすことなく、剣のみを弾き飛ばした。

 衝撃で一、二歩よろめきながら後退する。

 遠くで金属のぶつかる音が聞こえた。

 

「……かっ、くそっ。…………何故だ……」

 

 それでもなお、殺意は眼に篭っている。

 キリトは自然体で剣をぶらりと持っている。表情は俯いているせいで見えない。

 

 右足を引き、拳を腰にそえるように構える。

 ロキの右手から光が発せられる。

 

「……ラァァアッッ!」

 

 およそ言葉には聞こえない叫びを上げて、『邪魔者』に肉薄する。

 ただ、本能が繰り出した一撃。

 そのスピードは《閃光》のアスナが、一瞬見失うほどだった。

 

 しかし、計算も読みも備わっていない攻撃は軽くあしらわれる。

 受け流すように避ける。隙だらけのロキの足を、HPバーが減らない程度の力で蹴り払う。

 

 ロキは、無様に転んだ。

 

「……クソ。……負け犬が、邪魔を「もう、いいだろ」す…………」

 

 キリトがようやく発した言葉。ロキはその真意が解らなかった。

 倒れているロキを見下ろすキリト。彼の表情には『悔しさ』と『哀しさ』が現れていた。

 何故キリトがそんな表情をするのか、冷静になったロキでもやはり理解できなかった。

 

「……もう、いいんだ。これ以上、お前が背負う必要はないんだ」

「…………は?」

 

 ――――こいつは、何を言っている?

 突然の意味不明な言葉に、ロキの思考が混乱する。

 そんなロキを無視して、キリトはさらに続ける。

 

「……人殺しの汚名を被らなくてもいいんだ」

「…………何を、言って……」

 

 キリトがしゃべり続けば、それだけロキの混乱が加速する。

 まさに支離滅裂。

 キリトはロキの行動を、つまり自己犠牲だと言っている。

 当たり前だが、ロキにそんな思惑は、なかった。

 

「………………」

 

 言葉が出ない。

 何を言えばいいのか解らない。

 ふとザザの方を見る。彼は拘束され、連れて行かれていた。

 一瞬、ロキに顔を向け、なにか呟いた。最後に微笑(わ ら)うと、大人しく回廊結晶の光に入って行った。

 その姿がロキに実感させた。剣を握ろうとして、右手には何もなかった。

 

「…………ミスった、か」

 

 ふらりと立ち上がる。

 軽く息を吐き、キリトの所へ歩いて近づく。

 未だに悲痛な顔をしているキリト。唐突にロキはその首を鷲掴みにする。

 

「……いいか、俺に罪悪感なんぞ、無い。自己犠牲も、無い。負け犬の妄想は、ドブに棄てておけ」

 

 小枝を払うように、キリトを投げ捨てる。

 何か言いたげだったが、無視する。ロキは出口へと足を向ける。

 

 誰も、声をかけることが出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 コツコツと、足音だけがもの寂しくロキの耳に入る。

 漠然とした疲労感が彼から漂う。不安定な歩き方に、ロングコートが不規則に揺れる。

 洞窟の出口に続く廊下に一歩踏み出すと、見知った顔がいた。感情を我慢しているような顔だ。

 

「……アルゴか。……どうした?」

「……これ、飛んできたヨ」

 

 差し出したものは、キリトに飛ばされた愛剣。

 魔剣(エリュシデータ)の攻撃をもろに受けていながら、壊れていない。

 それを受け取り、背中の鞘に収める。

 

「……すまないな」

「別に。……言っただロ、もっと頼りなさいってネ。だから、さ……」

「……だから、って。どうした?」

 

 唐突に抱きついたアルゴ。その様子を怪訝に思った。

 するとロキの胸元辺りから、嗚咽が聞こえた。

 落ち着くまで、待つか。 

 そう考えたロキはされるがままに、アルゴの涙を受け止めていた。

 

 

 

 

 

 

 

「……落ち着いたか?」

「……ウン」

 

 場所をヨシナの所まで移動した二人。

 いつの間にか空は黒くなり、雨が降っていた。

 アルゴは自分のしたことを思い出し、顔を赤くして俯いている。

 ロキがそんなアルゴの頭を撫でると、小柄なアルゴがさらに縮こまる。

 それを面白くなさそうに見ているヨシナ。

 

「…………さてと」

 

 手を止めて、立ち上がる。

 眼下には撤収する討伐隊がいる。作戦前のような賑やかさは無く、誰も彼もが重い雰囲気を背負っている。

 すこし強まった雨がよりいっそう景色を暗くする。

 ロキはその中の一人、キリトを射殺すような眼で睨みつけた。

 

「……次に邪魔をするなら、容赦はない」

 

 言い切るその後姿は、ヨシナの印象に残った。

 肩は少し震え、拳を握りしめていた。声も少し、震えていた。

 

「……行くぞ、二人共」

 

 そう言って、足早に歩き出す。

 だが二人は見逃さなかった。

 

 

 

 彼の頬を伝うモノは、雨だけではなかった。

 

 

 

 

   ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

「今回の作戦の報告です。とくにお伝えすることもありませんでした。詳しくはここに」

「……ご苦労。下がってくれたまえ」

「では、失礼します」

 

 ドアの閉まる重い音が広くない部屋に響く。

 バタン、と完全に締まり静かになる。中にいるのは一人。

 その人物は、先程渡された紙に目を通す。上から順に見ていると、ある部分で視線が止まった。

 そこからじっくりと視線を下ろしていく。

 読み終わると、机の上に落とした。

 

「……ふむ。やはり、()の行動は興味深い」

 

 その人物は左手(・ ・)でウィンドウを開き、手を動かす。

 一度、手を顎に添えて考え、納得したようにウィンドウを閉じた。

 

「……一度話し合ってみるべきかな?」

 

 ヒースクリフは静かに呟いた。

 

 





はい、変わらずの低クオリティー。
正直、終わりまで間近です。

感想、アドヴァイス、誤字報告等待っています。
短くてOK。
批判カモンです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。