Sword Art・Online 《Strange Dramas》 【完結】 作:与祢矢 慧
夏休みだから比較的早めに書けました。
でも、遅い。
バトルシーンがしっかりと伝わるか、ビクビクと怯えています。
あと、サブタイ思いつかなかったのでテキトーです。
お気に入り登録五十件超え、本当に有難うございます。
転移時に発生する青い光を潜ると、見知らぬ顔の男が見慣れた制服を着て立っていた。血盟騎士団の団員だ。
嫌悪感をむき出しにしているその表情に俺は呆れた。
「……人殺し、お前だけついて来い」
ぶっきらぼうに言うと、男は背を向け歩き出した。
さすがにその態度に苛ついたのか、俺の両隣、アルゴとヨシナから不機嫌オーラがにじみ出ていた。
そんな二人の頭を撫でて諌める。
それでも何か言いたげな二人はこちらを見つめる。目には不安が映されている。
「……心配するな。死にに行くわけ、じゃない」
「でも、相手はあのヒースクリフ。言いたくないけど、勝率なんて有って無いようなものじゃない」
「ヨーちゃんに同意ダ。流石に今回ばかりはロー君も分が悪い」
「……だからといって、辞めるわけにもいかない。……何より、俺のために」
この決闘に負ければ、おそらくSAOがクリアされるまで、または戦力不足になる時まで自由になることはない。
俺はそう考えている。
ならば、全力で刃向かうのみ。
神聖剣の不敗伝説を俺が崩してやる。そう思うと、戦意も向上してくる。
「じゃあ、見てるからね」
「
そう言って観客席へ並んで歩いて行く二人を見ると、少しだけ……寂しさを感じる。
自分の中で、彼女らの存在がこれほど大きくなっているとはな……。
鑑賞に浸っていると、後ろから苛立ち混じりの声が聞こえる。
「おい! グズグズするな、ガキ!」
ガキ、という単語に引っかかったがスルーして大人しくついていく。
この男一人ぐらいどうってことはないが、厄介事は避けたい。
…………これから最大級の厄介事が始まるのだが。
連れて行かれた所は薄暗い小さな部屋。控え室、らしい。
案内の男は着くなり早々に去って行った。
闘技場への入り口からはざわざわとした声が聞こえ、観客の数が窺える。
「……見るのは、構わないが、うるさいな」
俺は
全体は夜の闇のような黒、暗めの赤の縁取り。
カラーリングだけでも特徴的だが、この剣には他の武器と比べ一線を画する特徴がある。
まず両手剣には珍しい、刃の反り。カタナを無理やり両手両刃剣にしたような形。
そして俺がもっとも気に入っている、反り側に直角以上に曲がった切先と同じ側にある三つの波のような突起。
……鎌を連想させる異質な形状。
眺めながら、少し悦に入っていると入り口から雷のような歓声が轟いた。
どうやら、ヒースクリフが入場したようだ。
「……さて、行くか」
ギンッと音をたて鞘に納め、懐から仮面を取り出し俺は入り口へと足を進めた。
俺が姿を現すと同時に、騒々しかった観客は一気に静まった。といってもひそひそ話は無くなっていない。
円形の闘技場には数百人、いや千人ほどの観客が詰めている。
興味津々な物好きもいれば、恨み満載の顔の奴もいる。
前者は俺がヒースクリフに勝てるか見極めに、後者は……解らない。俺はグリーンプレイヤーを殺していない。
ちょうど中央まで進んだ時、真紅を纏い、純白の十字盾を装備したヒースクリフが口を開いた。
「すまないな。まさかこれほどギャラリーが集まるとは、思ってもいなかった」
苦笑しながら言うその姿からも、やはり威厳がにじみ出ている。
「……稼いだ分の、五割は貰うぞ」
「いや、君が負ければ我がギルドの団員だ。任務扱いにさせて頂こう」
「……勝てば貰える。そうだな?」
ヒースクリフはただ謎めいた笑みだけで答えた。
恐らく、肯定だろうが……どうにも信用ならない。……あの笑みを、どこかで見た気がするせいか。
そう思っていると、彼は笑みを消し気迫とともに視線を飛ばしてきた。思わず、半歩下がりそうになるが堪える。
深く、息を吐く。目を閉じ集中する。
思考をクリアに、精神は静かに。冷静さを失うな。同じ間違いを繰り返すな。そう自らに言い聞かせる。
ゆっくりと目を開き、殺気を乗せた視線を真正面からぶつける。スキルが発動していないにもかかわらず、俺の眼には奴の数通りの初動が映っている。
ヒースクリフは視線を外すと、十数メートルほど距離を取り右手を挙げた。出現したメニューウィンドウを操作すると、俺の前にデュエルメッセージが現れる。『受諾』を押し、『初撃決着』を選択。
カウントダウンが始まる。
意識を目の前の男だけに集中させる。
愛剣を抜き放ち、柄に左手を添える。両腕に力を入れず、ぶらりと垂らし自然体になる。
ヒースクリフも細身の剣を抜き、構えた。
カウントが一桁になることを確認し、正面を見据える。ヒースクリフはウィンドウすら見ていない。
そして奴は【DUEL】の文字が光った直後に地を蹴った。十字盾で体を隠しつつ、凄まじいスピードで迫って来る。
選択する行動は……迎撃。
ヒースクリフの右腕側からライトエフェクトが見えた。同時に、俺の視界にその軌道が映る。だが姿勢は変えない。
――引きつけろ。
袈裟斬りは光の軌跡を残しながら、軌道をなぞりながら剣は迫る。
――まだ。
剣の輝きが最高潮に達し、軌道の終着点に先端が辿り着こうとする、その刹那。
――ここだ。
俺は愛剣を鋭く振り上げた。
狙いはただ一点、ヒースクリフの……右手首。理由は単純、そうすれば勝てるからだ。
奴の強さはあの反則的な防御力にある。完璧に攻撃を防ぎ、できた隙を強力なスキルで確実に叩く。これ以上ない、最強最堅のバトルスタイル。
ならどうやって勝つか?
……簡単だ。崩せばいい。
盾と剣が揃って初めて奴のバトルスタイルは完成する。片手を使えなくすればヒースクリフは十字盾のみで戦うか、剣を取るか、どちらかになる。盾を選べば攻撃手段を失い、剣を選べば防御を失う。
部位欠損が治るまでの時間、その間に一撃を与えればいい。
しかし、そう簡単にはいきそうではなかった。
「ぬおッッ……!」
「チッ……!」
ガンッ、と俺の剣が左に強く弾かれた。
ヒースクリフはあの瞬間にソードスキルをキャンセルし、盾で防いだのだ。
その判断力と実行力は流石、としか言い様がない。
だが、体勢が崩れている今は好機。
慣性に逆らわず、右足を中心に体を回す。
左足を曲げ、蹴りの一つ手前の動作中に足がライトエフェクトを放つ。
《体術》スキル、《烈蹴》。言うならば、後ろ回し蹴り。
システムの導くまま、俺はヒースクリフの十字盾の中心の少し下を蹴り飛ばす。
ダァンッと重い音がしたが、感覚でわかる。……ダメージが通っていない。
地面に五メートルほどの二筋の線を作ったヒースクリフはバランスを崩しながらも、屈しなかった。
「……恐ろしい集中力だな」
「貴様こそ、硬いな。……右手首、奪えたかと思えたが……」
「まさか、攻撃を引きつけて手を狙うとは……。まずあり得ない戦い方だ」
「……だろうな」
対プレイヤー戦の経験だけはヒースクリフに優っている、と自負できる。
勝機はそこにある。
再び突進してくるヒースクリフを見据え、剣を肩に担ぐように構える。
剣の黒色とライトエフェクトが混ざり、独特の色を創りだす。
同時に《ラピッド・ステップ》を使い、コンマ一秒もかからずヒースクリフの目の前まで移動する。
ヒースクリフが目を僅かに見開くが、とっさに盾を割りこませた。俺は構わず《アバランシュ》を発動。STRをフルに使い、奴が構えた十字盾に剣を叩きつける。
「……ラァッッ!」
「ぐぉッ!」
ズガァァンッ! と炸裂音が響き、再びヒースクリフを跳ね飛ばす。
今度は少なからずダメージが『通った』。目を凝らせば、奴のHPバーが一割弱減っていることが判った。
「君のような強プレイヤーは是非とも攻略組に欲しい。どうだね?」
「……雑魚の馴れ合いには、反吐が出る」
「副団長の座を用意すると言っても?」
「……俺は縛られるのが、嫌いなんだよ」
剣を逆手に持ち替え、左前の半身で間合いを詰める。ヒースクリフも構え直し、地を蹴った。
そこからはステータスの限界を行く、超高速の応酬が始まる。
俺の斬撃はことごとく十字盾に遮られる。
奴の狂いない剣を俺は的確にいなし、弾く。
手数に差は無いと予想していたが、どうやら十字盾にも攻撃判定があるらしい。そこを考えると現状は俺が不利なはず。
だが互いに小技すら当たらず、状況は膠着状態になりつつあった。……いや、違う。ヒースクリフが過剰に防御を気にしている。だから俺に隙ができた時も攻撃をしてこない。
ヒースクリフのソードスキルをあえて正面で防ぎ、後方に飛び距離を取る。
しかし、使えばさらにややこしくなることは目に見えている。
――どうする?
負けることは論外。引き分けはシステム的に難しすぎる。
……残された選択肢は一つ。
剣を地面に刺し、素早く右手を振りメニューウィンドウを開く。スキルウィンドウから選択しているスキルを変更。所持アイテムのリストから幾つかの武器を空白になっている部分に設定。
最後にOKボタンを押しウィンドウを閉じると、自分の中に新しい力が宿ったような感覚を感じる。
ヒースクリフを見ると、盾を構えたまま動いていない。
「……隙だらけ、だったはずだが?」
「なに、君の本気を見てみたいと思っただけだ。そのほうが面白いだろう?」
「……なら、その選択が、間違っていることを、証明してやるよ」
俺は剣を掴まず、無手のまま一歩踏み出しスキルを使用。さっきと同じようにヒースクリフの目の前まで瞬時に移動する。
十字盾を左手で横殴りして、ヒースクリフの正面を開く。深く踏み込み、腹部に向けて右腕を打ち出す。
ヒースクリフはすぐに左足を後ろにずらし、俺の拳を避ける。そして、右手に持つ剣を俺に振り下ろす。いや、振り下ろそうとして、バックステップで俺から距離を取った。
すかさず俺は
予想外だったのか、ヒースクリフは横に転がって避けた。
――それは悪手だ、ヒースクリフ!
俺はヒースクリフが立ち上がる前に槍を叩きつける。それを奴は盾でガード。続けて左、右、下、右と両端の槍でひたすらに連撃を続ける。盾と剣にぶつかるごとに火花と破裂音が散る。
時折、掠っているせいか奴のHPバーが少しずつ減っていく。このまま行けばHPが半分以下になり、俺の勝ちとなるだろう。
だが、そんな終わり方を俺は望んでいない。
この決闘は観客に俺の力を見せつけるという目的も含めている。だから、確実に一撃を決める。
「ぐぅッ、ぐぉっ!」
僅かにヒースクリフの反応速度が落ち、口から苦悶の声が漏れる。不自然に奴の防御行動が鈍り、俺の槍に追いつかなくなっていく。
槍を縦に半回転させ、十文字槍をヒースクリフに真上から振り下ろす。奴はそれを剣と盾を交差してかろうじてガードする。
そして俺の槍はその二つをすり抜け、真紅の鎧をもすり抜けた。
ここで初めてヒースクリフが目を大きく見開いた。
その隙を逃さないように、三叉槍を下から掬い上げるように振り上げた。
ガァンッ! という音が響き、ヒースクリフの剣は高く飛び、盾も振り上げた状態になった。
即座に槍から愛剣の両手剣に持ち替え、盾を持つ左手を斬り落とす。
ガラ空きになったヒースクリフにとどめを刺すべく、間髪いれず
「せ……やぁッ!」
轟く金属質のサウンドとともに、灼けるような赤の煌きを纏った愛剣がヒースクリフの鳩尾を捉え、突き飛ばした。
視界にはウィナー表示が大きく映っており、俺が勝者であることを表していた。
俺はヒースクリフの所まで歩いて行き、声を掛けた。
「……言ったとおり、五割は貰うぞ」
「はは、私の完敗だ。君のユニークスキルの技術、実に見事だった」
「……対人戦でこそ、真髄を発揮する、使い勝手の悪いゲテモノだ」
「この私に勝てたのだ。誇れば良い、ロキ君」
そう話すヒースクリフの表情は爽やかだった。
俺はこの表情をどこかで見たような……。そんな気がしたが、気のせいだと割り切ってヒースクリフに背を向けた。
背中の鞘に剣を収め、出口へと足を進めようとすると後ろから声がかかる。
「ロキ君、また機会があればリベンジを申し込んでもいいかね? もちろん、プライベートだ」
「……断る、といつもなら、言うところだが、相応の対価を、用意するなら、考えてやる」
「ありがたい。これを機に個人的な交友関係を持ちたいが……」
「……それは却下だ。わざわざ面倒事に、巻き込まれる、趣味はない」
残念だ、と苦笑しながら言うヒースクリフを無視し、俺は控え室へと歩いて行った。
第二十二層の南西エリアにある、それなりに大きいログキャビン。今回の決闘で貰った金で買った、そこのデッキの柵に座りながら俺は今日の新聞を眺めていた。
『PKK、決闘でヒースクリフの伝説を破る!』
『二人目のユニークスキル使い現る?!』
この一報は電撃的な速さでアインクラッド中に広まり、プレイヤー達に驚愕と畏怖をもたらした。
裏では、ヒースクリフが手加減した、チートを使ったなどと馬鹿な噂が流れているがそれら全てをヒースクリフが否定している。
奴は全てのギルドに俺、ヨシナ、アルゴに対しての不干渉を力づくで決めさせたらしい。
予想外だったのが、アルゴ以外にもあの闘いを記録していたプレイヤー達がいた事だった。おかげで俺のバトルを研究され、至った結論が『ユニークスキル』。
全体像を知られたわけではないが、これは少々痛手だ。
「……といっても、ヒースクリフには、バレていか」
新聞を四つ折りにし、ビリビリと引き裂いて外に投げる。
散り散りになった紙片は風に舞いながらポリゴン片へと変わって行く。満月の夜と相まって、幻想的な光景を生み出す。
それはまるで侵し難い、神聖な空間のようで……。
「……暗黒剣、か」
ふと、自分のユニークスキル名を口に出す。
《神聖剣》とはある意味、正反対のスキル。
スキル名からしたら《神聖剣》は正義、《暗黒剣》は悪。
「……今回は、悪が勝った、というわけだ」
『勝った』。
何故だろうか。勝利という言葉がひどく甘美に感じる。
今までレッドを殺した時は感じ得なかった、この感覚は初めてではない。
「……ああ、そうか。俺が初めて、人を殺した時、以来だな」
久しぶりに、俺は自分が
まだSAOに出会うより前、現実世界で初めて殺した時のように………………。
どうでしたか?
クオリティは簡単に上がりませんね。
バトルシーンは難しいし、終わり方も無理やりな感じが……。
暗黒剣のスキルの詳細は最後に書きたいと思ってます。
感想、アドヴァイス、誤字報告等あればお願いします。
いまさらですが、非ログインの方でも感想書けますのでよろしくお願いします。