Sword Art・Online 《Strange Dramas》 【完結】   作:与祢矢 慧

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先週まるまる、おもいっきり風邪引いてました。
おかげで授業内容さっぱりわからん。
今回かなり短めです。なんか伸ばすとグダグダになりそうだったので。
というより、短めでテンポよくしたほうが、一話にいろいろ突っ込むよりいいんじゃないのか……。
すでにストーリー終盤に入って思いました。


16th

 

「偵察隊の半数が死亡、か」

「今回のボスはクォーター・ポイントであり、可能性は高かったが、事態は予想以上に深刻だ。」

 

 血盟騎士団本部の会議室。ヒースクリフはこちらを見ず、ガラス張りの壁の外を見ながらそう答えた。

 周囲に席はあるが、誰一人として座っているものは無く、完全に俺とヒースクリフと一対一の状況。

 いま、こうして俺がここにいる理由は、単純に呼び出しを受けたからだ。

 数分前、俺が入室した直後にヒースクリフはこう話を切り出した。「偵察隊が壊滅した」と。その報せに驚いた一方で、やはり、という気持ちもあった。

 かつて二十五層、五十層のフロアボスには多大な犠牲者が生まれた。クォーター・ポイントとは、その百層までの四分の一ずつを示す。

 

「我々は五ギルド合同のパーティー二十人を偵察隊として送り込んだ」

 

 変わらず、外を見続け、抑揚の少ない声で続けた。表情が見えないことが相まって、感情が読めない。

 

「ボス偵察は慎重を期して行われた。十人が後衛として入口前で待機、最初の十人が部屋の中央に到達して、ボスが現れた瞬間に入り口の扉が閉じてしまった」

「……で、開けば中には、誰もいなかった、と」

「念の為に黒鉄宮まで名簿の確認しに行かせたが……」

 

 そこでヒースクリフは口を閉じた。

 マントの向こうの声色からは落胆や悲しみなどの感情は感じられない。

 しかし、扉が閉じたからといって、転移結晶が使えないわけではないはずだが……いや。

 

「結晶無効化空間……だったか?」

「流石、知っているとは話が早い。情報屋を抱き込むことはいい手だ」

 

 いい加減こちらを向いて話せ、と思うが変わらず外を見ている。

 何が見えるのか疑問に思うが、特に重要ではない。

 俺としてはこの後にやりたい事があるから、早めに終わらしたい。

 

「で、俺にどうして欲しい?」

「もちろん、ボス戦に参加してもらいたい。言ったとおり、今回はクォーター・ポイントだ。できうるかぎり、最大戦力をもって戦いに挑みたい」

 

 ……やっぱりか。この様子だとキリト、アスナも呼び出した。あの二人は参加するだろう。一度前線を離れたとはいえ、片やギルドの副団長、片や最強の一角。断ることもできない。

 だが俺は違う。俺は自分の意志でしか、動かない。

 

「悪いが、俺は参加するつもりはない。むしろ俺が、いないほうが士気も、上がるだろ?」

 

 それに、俺はやりたい事がある。たとえ殺されようが、この世界に終わりが来ようが、俺は自分の……やりたいことを貫き通す。 

 集団の中で、まともに戦えるとは思っていないこともある。

 

「……そう、か。残念だが、諦めるとしよう」

 

 この時、初めてヒースクリフは俺の方に向いた。

 かすかに笑みを浮かべたその表情の、眼が印象的だった。

 金属質な眼だが、そこに俺は感情を見た。悲しみでも、苦しみでもない、理解できない感情が。

 

「用はそれだけだな。俺は帰るぞ」

 

 足を出口に向け、進もうとした矢先に、背後から抑揚の少ない声がかかった。

 首だけ向けると、変わらない眼が俺を見つめている。人の内側まで見通しそうな眼だ。

 

「ロキ君。………………ありがとう(・ ・ ・ ・ ・)

 

 思わず息を呑んだ。

 俺は直感的に、その言葉が『ロキ』に向けたものではないと理解した。

 だが唐突すぎた。こいつが、知ってるはずがない。あり得ない。

 僅かながらも動揺してしてまった俺は一言返すのが精一杯だった。

 

「……それは終わってから(・ ・ ・ ・ ・ ・)に、してくれ」

「フッ……そうだな。また会おう」

 

 俺は手を振ることで返事を返し、部屋を後にした。ただ、俺の中には一抹の疑問が残った。

 

 

 七十五層に転移すると、広場にはすでに攻略チームと思われるハイレベルプレイヤーと、彼らの応援に駆けつけた一般プレイヤーが集まっていた。

 ちなみに俺は転移門ではなく、転移結晶を使用した。あまり人の目につかない方法が、今は望ましい。

 一旦、道から建物の陰に入り、装備を確認する。

 両手剣、槍、そして最近入手した刀身が長めの短剣、二振り。いつもの防具に、新しい仮面。効果は隠蔽(ハイディング)率上昇。

 

「……よし」

 

 表の道に戻ると、ちょうどヒースクリフと血盟騎士団の精鋭達がゲートから現れた。同時にプレイヤー間に緊張が走る。

 レベルには反映されない、結束力という強さではやはり血盟騎士団がずば抜けている。 

 今回のボス戦に限らず、こういった戦いは個より集団の力が重視される。

 俺は考えられる限り対人戦に重きを置いたステータスにした。つまり、こういったMob相手の集団戦は苦手だ。

 しかし、ヒースクリフにキリト、アスナ。その他ギルドのトップ陣が勢揃いだ。奴は言ったとおり、可能な限りの最大戦力を揃えたらしい。

 

「――解放の日のために!」

 

 考え事をしているうちにヒースクリフの声掛けも終わったようだ。

 奴が腰のパックから濃紺色の結晶アイテムを取り出すと、周囲のプレイヤー達からは「おぉ……」という声が漏れた。

 《回廊結晶(コリドークリスタル)》。それがヒースクリフの手にあるアイテム名だ。使用者のみを転送する通常の転移結晶と違い、任意の地点を記録し、そこへ向けて瞬間転移ゲートを開くことができるアイテム。売れば高く売れる。

 NPCショップでは販売しておらず、強力なMobからのドロップでしか出現しない、レアアイテムだ。さっきの声はそんな回廊結晶を躊躇いなく使用するヒースクリフに驚いた声だろう。

 

「コリドー・オープン」

 

 結晶を高く掲げた奴はそう発声した。高価なクリスタルは砕け散り、奴の目の空間に青く揺らめく光の渦が出現した。

 

「では皆、ついてきてくれたまえ」

 

 周囲を見渡すと、ヒースクリフは青い光の中へと足を踏み入れた。瞬時にその姿は閃光に包まれ、消える。間を置かず、KoBメンバーも続く。

 ボス攻略の話を聞いて見送りに来たプレイヤーが転移門広場を囲み、次々と光のコリドーに飛び込んでいく剣士達に激励の言葉を飛ばしている。

 俺は誰にも見つからないよう《隠蔽(ハイディング)》を発動し、攻略組の中に紛れ込む。俺はそのまま光の渦へと身を滑り込ませた。

 

 

 

 軽い浮遊感覚のあと、目を開けるとそこは迷宮の中だった。……広い、と感じる。壁際には太い柱が列をなし、その終着点に巨大な扉がある。

 周りのプレイヤー達は数人で固まってメニューウィンドウを開き、装備などの確認をしている。その隙に俺は壁際に移動し、身を潜めた。仮面を装着してさらに隠蔽率を上げる。

 扉の正面ではヒースクリフが十字盾をオブジェクト化させ、プレイヤーたちに声を掛けている。「――行こうか」とソフトな声で締めくくり、扉に近づき右手をかけた。よりいっそう緊張が走る。

 その様子を傍から見ている俺は、目の前の剣士たちの行く末を知ることはできない。誰が死に、誰が生きるか。判っているのは、ラスボスとヒーローだけ。そこに邪魔者はいない。

 その舞台を作ることこそ、俺がやることだ。

 完全に開ききった扉の中へ消えていくプレイヤー。彼らは今から文字通り、死闘を繰り広げる。命の駆け引きをする。

 そして俺も、ここで戦う。アインクラッド解放のために戦う彼らと違い、戦いたいから戦う。理由はすべて俺のため。死闘とは程遠いが、命の駆け引きだ。

 最後の一人がその姿を消すと、扉は鈍い音をたてながら閉まった。

 誰もいない中、俺は隠蔽状態のまま隠れている。

 

「……さて、やるか」

 

 俺の呟きは、広い空間の沈黙にかき消されていった。

 ……もう少し先になる戦いを思い、俺は拳を握りしめた。

 




どうでしょうか?
長さはどれくらいがいいのでしょうかね〜。

ゴッドイーターリザレクション買いました。
懐かし楽しいですね。

誤字、質問、アドバイス、感想等あればよろしくお願いします。
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