Sword Art・Online 《Strange Dramas》 【完結】 作:与祢矢 慧
何箇所で「あ〜でもない、こ〜でもない」とこんがらがっていました。
素人が何言ってんねん、と思われることでしょうが……。
定期更新ができる方はすごいですね。
最期の辺りなんかは深夜に書いたので、おかしくなってるかもしれません
t23 Senritsu トウキ takuchatto 唯斗 pa-pun 兎角 さん
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現在の最前線層のとある草原フィールド。
激しかった雨はいつの間にか止み、少し霧が出てきている。傾いたグラフィックの太陽が浮遊城を赤く照らしている。
ほとんどのプレイヤーがホームや行きつけの店に向かっているこの時間、そこで激しい剣戟の音が響いている。
それはプレイヤー二人によるものだ。デュエルでも模擬戦でもなく、
疾くて重い
軽快で激烈で
鈍いが鋭い
一人は全身をブラック系の装備で固めている。もう一人は全身をダークヴァイオレットの装備で固めている。
黒い剣士は片手剣を自在に操り右左、斜め、上下と手数多く、そのなかに一撃必殺の気合を込めた斬撃を混ぜる。
紫の剣士は両手剣で的確に防御し、隙を見つけてはその大柄な武器の見栄えに似合わない鋭さの攻撃を放つ。
片や攻略組トッププレイヤー、片や謎のPKK。
対戦者名前を聞いただけなら、ほとんどが前者の勝ち信じて疑わないだろう。
だが、この場にいたらどうなるだろうか?
それはわからない。
周囲には彼ら二人だけに
片手剣の黒い剣士、キリトは行き詰っていた。
『死』を見て、マグマの様に煮えたぎっていた感情は剣を交えるごとに冷えていき、相手の行動を観察できる余裕が出来た。
同時に攻めきれていない自分と攻め切らない相手にもどかしさのようなモノを感じている。
当たると確信した斬りは弾かれ、意表をついて《体術》を繰り出しても風を切るだけ。
更には予想外の速さで振るわれる異形の大剣の鋭さに、どこか『死』の恐怖を感じている。
また、相手の装備している仮面が冷酷非情さを匂わせており、何かのイメージがちらついて集中しきれない。
(……おかしい)
途中から感じた違和感が大きくなっていることにキリトは一つの疑問を隠せないでいる。
彼はフェイントも交ぜつつ剣を振るっているが、仮面のプレイヤーは一切引っ掛からない。
加えて攻撃回数が少ない。
いくら振りの大きい両手剣でも攻撃できるタイミングはいくらでもあったはずだと考える。
(まさか…………手加減されているのか?)
だが、考えるだけでは埒が明かない。
キリトは思い切ってその疑問を明らかにしようと賭けに出た。
滑るような踏み込みと同時に袈裟斬りをするが剣の腹で流され、お返しとばかりの斬り上げをバックステップで回避する。
相手の剣が上に振り切られる前に懐に飛び込み、気合と共に突きを放つ。
しかしそれは無理やり軌道を戻された大剣によって阻まれてしまう。
(……ッ、ここだ!)
ガキィィィインッッ!!
剣のぶつかり合いの直後に『隙』を作る。
読みが外れ、運が悪かったなら死ぬ。
強く弾かれた剣を慣性にまかせて右に流し、わざと体の正面をガラ空きにする。
鈍重な両手斧であっても確実に攻撃を加える事が出来る時間を作り出す。
今のキリトの姿勢は上半身が後ろに仰け反り、右半身をガードする物が無い状態だ。
相手に攻撃の意志があるなら、確実に殺られるだろう。
仮面は大上段に構える。
キリトは目をカッと見開く。
何も見逃さない。見極める。
そう強く思いながら。
…………頭上に構えられたそれは、ゆっくりと持ち主の正面に居座った。
(……やっぱりか)
無防備だったはずのキリトは斬り裂かれず、HPバーに変化はない。
ピクリ、と仮面は『隙』に反応を示したが、攻撃はしてこなかった。
そのことでキリトの中で組み上がっていた仮定が確信と変わる。
(アイツはグリーンを絶対攻撃しない。自身がオレンジになるのを避けている。…………そして、俺の攻撃が当たれば俺のカーソルがオレンジになり、アイツも『本気』の攻撃をしてくる)
が、あくまでも確信を得ただけであって膠着状態が解けるわけでもない。
むしろ余計に手を出せなくなってしまった。
「……フゥ」
溜め込んだ息を深く吐くと同時に緊張感を緩める。
攻撃できないし、されない。
なら何が今できるか?
(……とりあえず、話が通じる相手かどうかだな)
「……なぁ、アンタ。名前、なんて言うんだ?」
「………………」
「だんまりか……。ネーム表示がないのは裏ワザか? 見たこと無いぜ」
対峙する仮面のプレイヤーには頭上にあるはずのプレイヤーネームが表示されていない。
装備品の新しい付与効果か?それともシステムの抜け道か?
どちらもあり得る話だ。
付与効果なんて探せばいくらでもあるだろうし、抜け道もあったとしてもおかしくない。
言ってしまえばPKKだってある種の抜け道である。オレンジにならずに『殺す』ことができる、つまり『合法』なのだ。PKをしても《圏内》に入ることもできるし、そのあたりの有象無象プレイヤーに紛れることだってできる。誰かに見られない限り、『普通』に生きれるのだ。
キリトが感じているのは、危険。
目の前の存在が、いつオレンジになるのも厭わずに殺戮に走るか。
レッドのように、殺人に快楽を覚えるモノになるか。
「一つ、聞きたい事がある。……なんで、人殺しなんかするんだ?」
「………………」
「それに狙ってるのはオレンジ、いやレッドばかり」
「………………」
「お前は…………一体何がしたいッ、グァッッ!!」
質問の返答は、強烈な斬撃だった。
刹那の間に距離を詰められ、横薙ぎの一撃を食らった。
間一髪ガードに成功したが、キリトは二つの意味で驚愕している。
(コイツッ! 俺が反応する前に間合いを詰めた?! それに……なんで攻撃ができる?!)
攻略組トッププレイヤーと自他ともに認めるキリト。
いくら気を抜いていたといっても、攻略組ですらないプレイヤーにこうまでも接近を許すほど馬鹿ではない。
つまり、相手はキリトの察知速度を超えて移動と攻撃を行ったことになる。
そして、相手はオレンジになることを恐れ攻撃できない、と予想していたにもかかわらず確実に殺る気で攻撃してきた。
この二つの事実がキリトの混乱に拍車を掛ける。
(……もしかして俺よりステータスが上なのか? なぜ、攻撃が出来た? オレンジになってもいいっていうのか?!)
たかが雑魚PKを相手にしてるPKK、とどこかで高を括っていた。
攻略組じゃないならレベルは低いだろう、と勝手に決めつけていた。
オレンジにはならないから直接攻撃は無い、と想定していた。
それら全部が一挙にひっくり返された。
再び斬撃がキリトを襲う。
間一髪、片手剣のガードが間に合う。
ギャギギィィギャァァァィィィン!!!
金属のこすれ合う耳障りな甲高い音が鳴り響く。
お互いに、いや片方は仮面で表情が判らないが顔をしかめる。その原因は音だけでは無いだろう。
仮面のプレイヤーがバックダッシュで距離を取ろうとすると、逃さないとばかりにキリトは交差している剣を押し出す。
その行動が予想外だったのか相手は一瞬バランスを崩す。
それを見逃さずキリトは押し飛ばすように力を込めるが、瞬時に体制を立て直した仮面のプレイヤーもまた力任せに押しだす。
容赦の無い鍔迫り合いがギリィ、と交叉する二振りの剣を不吉に鳴らす。
「グゥッ、…………フッざけんなよッ!!」
SAOトップクラスのSTRにものをいわせて、ガッと押し切る。
流石というべきか相手は力を抜きバックステップで後方に跳ぶ。
「ハァ、ハァ…………スゥ、ハァ。もう一回、聞く。……なんで、こんなことをする?」
「………………」
「確かに、あいつらは人殺しだ。だけど、彼らにも家族はいるんだ。……お前に、その家族を不幸にする権利なんてあるのかッ?!」
「………………」
「黙ってないで、なんとか言えッ!」
『これはゲームであって、遊びではない』
茅場晶彦の言葉。キリトは今まさにそれを感じ取っている。
SAOとは、
ほとんどのプレイヤーには帰りを待っている人がいるだろう。そして、今も悲しんでいる人がいるだろう。
PKだろうがPKKだろうが、家族がいる以上帰らなければならない。たとえどんなに粗悪な仲であっても。
そう、キリトは思っている。
だがこれはあくまでもキリトの持論だ。
他人に、ましてや会ったこともない人に共感ができるだろうか?
「…………フッ、それがどうした?」
くぐもった声。仮面装着によりエフェクトがあるのだろう。
キリトは驚愕した。
一つは喋ったこと。もう一つは…………声が若かったこと。
多少わかりづらいが、大人というには声が低くなく、子どもというには高くなかったからだ。
(……こいつは、まさか…………ほとんど同年代じゃないのか?)
「……どうした? お前が答えろといったから答えてやったぞ?」
「わるいな。もっと焦らされるもんかと思ってたよ」
すると、仮面はクックックと声を抑えて笑い出した。
「……同類の質問を無下にするほど、馬鹿じゃない」
「同類? ……どういうことだ、俺は人殺しなんてしていない」
「……そうか、わからないか。ならいい」
そう言うと右手の両手剣を逆手に持ち、それに左手を順手で添える。まるで居合のような構えを取り、ピタリと動きが止まった。
警戒するキリトは何時もの構え、右半身を後ろに引き剣を正面から隠すように構える。
ピリッと空気が肌を刺す。
決着。
言葉はなくとも二人は無意識に合意していた。
物音一つ、しない。
Mobのポップ音もプレイヤーの足音も無い。
剣戟も咆哮もさえずりも掛け声も無い。
(先手必勝。アイツが踏み込む前に、接近するしかない)
先程の異常なスピード、反応がコンマ一秒遅れていたらキリトは二分されていただろう。だから、先に相手の懐に飛び込む。これが仮面のプレイヤーに勝てる最良の一手。
「…………ッ、ハァッ!」
AGIをフルに使って、彼自身が出せる限界のスピードで
ーーー片手剣重単発技《ヴォーパル・ストライク》ーーー
これまで数えきれないほど使ってきた愛技。
ソードスキルの加速補正も相まってトップスピードからさらに加速する。
相手は動かない。
構えた姿勢から微動だにせず、ただジッとキリトを見ている。
(なんで動かないんだ? このままだと直撃だぞ?!)
すでに二人の間の距離は二メートルもない。
軌道を変えずに直進すればHP激減、もしかしたら全損もあるかもしれない。
ーーー俺が、殺す……?
ふと、キリトの頭に浮かぶ。
視界が、思考がスローになる。
アイツが避けなかったら、死ぬ?
ーーーアイツは人殺しだ。死んでもいいじゃないか。
殺してしまう?
ーーー躊躇うことはない。
俺が人殺しになる?
ーーー人殺しを退治した英雄だ。
アイツの家族を悲しませる?
ーーー人殺しの家族なんてろくな奴がいないに決まってる。
殺すなんて……。
ーーー殺セ、殺シテシマエ。
(俺は………………)
剣の輝きがピークに達する。残りの距離は一メートルもない。
空間を切り裂くように突き進む一振りの剣。
その切っ先は…………
(………………できないッ!)
…………そのまま虚空だけを疾走り抜けた。
「ハァ………………」
何かに失望したような溜息がキリトの耳にいやに大きく聞こえた。間を置くこと無く視界の端でナニかが鈍く光った。
ガキィィイイィィィンッ
リアルだったら血がにじむほど強く握りしめていたものが消え、突然の衝撃に尻もちをつく。
ジャキン、という音とともに首筋に冷たい感触が伝わる。
見上げれば無機質な仮面がキリトを見下していた。
視線をチラリと左に向けると、さっきまで右手に会った相棒が無様に転がっている。
(負けたのか…………)
屈辱も絶望も面恥も感じない。
生への執着も忘れた。
敗北という事実、それだけしか考えられない。
「………………フン」
スッと首筋から剣が離れ、ゆっくりと所有者の背中に収まる。その所有者は飛ばした剣を拾い、キリトの左側に突き刺す。
ーーー質問に答えてやろう、
ボソリ、とくぐもった声でささやかれた。
聞き逃してしまいそうなほど小さな声。だが、はっきりとキリトはそれを聞いた。
それだけを言うと、仮面のPKKはどこかへと霧のように消えて行った。
その去っていく姿隙だらけだったが、すでにキリトの戦意は霧散していた。
しばらく呆けていたキリトは思考がスローになった一瞬を思い出した。
ーーー殺セ……
ゾクリと背筋が震えた。言いようのない恐怖が体中に広がる。
あの時、感じた衝動は……
…………殺意。
僅かだとしても、確かに殺そうする意思を持った。
生きている人間を。
自身が何か恐ろしい怪物に思えた。
感情のままに、殺す。そこに理由はない。
右手の手のひらを目に入る。
それは異形のモノではなく、怯えるように震える彼の手だった。
鼓膜にドロリとした仮面の声が響く。
狂っている。
異常だ。
『殺す』ことが存在意義なんだろうか?
『俺が俺であるため。俺が俺として在るため』
キリトは生きるためにMobを狩る。
それと同じなのだろうか?
答えが在るか解らない疑問を帰路の間、考えていた。
ホームのベッドに倒れ伏し眠りが意識を奪う直前、仮面の隙間から覗く双眸を思い出した。
寂しく、苦しげな眼だった。
茅場晶彦が望んだ世界はこんなものなのか。
窓の外で二つ、涙のように流れ星が消えていった。
どうでしたか?
アレですね。
ゲームし始めたら、夢中になってしまいます。
デュティー(vita)とか、レイジバースト(vita)とか、SAOホロフラとか。
誤字、意見、感想などなどよろしくお願いします。