Sword Art・Online 《Strange Dramas》 【完結】 作:与祢矢 慧
ちなみに読みはキックホッパーです。
前回のことで、ヨシナヤンデレ化?でしたが……。
読者の方々は、ヤンデレ好きなんですか?
作者はどちらでもないですが。
今回は少し短いかもしれません。
タグ追加、タイトル変更しました。
タイトルはなんかしっくりこなかったので変えました。
お気に入り登録ありがとうございます!
『……君、名前なに?』
ーーーー誰の声だ?
『わたし? 私は■■■■』
ーーーーここはなんだ?
『ふぅん……、□□□□っていうんだ』
ーーーー……あぁ、夢か。どうりで見覚えがない景色なわけだ。
『君は、あの大人達と同じ?』
ーーーー……何故、懐かしいと感じている?
『知るか、って。……まぁ、いいよ』
ーーーー俺は知らない……はずだ。
『なんでわたしは、こんな所にいるんだろうね?』
ーーーーまるで隔離されたような狭い部屋。
『もう飽きちゃったよ、想いの篭ってない上辺だけの言葉は』
ーーーー夢ゆえか、何故か見える無数の大人。……貼り付けたような表情の。
『……□□君なら、どんな言葉を紡いでくれる?』
ーーーー達観した、諦めた、そんな表情。
『私は普通じゃないの。……言っても信じないと思うけど』
ーーーーだけど、かすかに希望を持っている。……同類という希望を。
『そんな私に、君は何を言ってくれる?』
ーーーー何か大事な根幹を失ってしまったような笑顔。
それを見た直後、視界は白く染まっていった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
目を開けば何処にでもありそうな簡素な木造の天井がある。もっとも見た目が木造なだけであって、実際は【
広くもない窓から光が入ってきているので、灯りがなくても部屋は少し明るい。
「……夢、か」
誰に聞かせることもなく呟いた。
精神世界であるここで夢を見るとは思ってもいなかった。……しかし、夢を見たということは何らかの『トリガー』があった、という訳だ。
「昨日の、アレか……」
『私にとって唯一大切な存在、それがロキなんだから』
思い出すと形容し難い感情が沸き起こってくる。世間一般で言う甘いモノでなく……。
「……まぁ、いい」
グッと伸びをして思考を切り替える。確認すると時刻は午前九時。窓の外を覗いてみるといくつかのパーティを見えた。チラホラと雲が見えるが天気は良いのでレベリングでもするのだろう。
精々無駄に足掻いてくれよ、と口には出さず呟く。
暫く外を眺めているとドアが開く音が耳に入る。振り返ると帰ってきたヨシナがこちらに気づいた。
「あ、起きたんだね、ロキ。おはよ」
「おはよう。……で、それはなんだ?」
ヨシナの右手にある籠を指さす。大きさはデパートなんかにあるサイズと変わらない。中身は布が掛けてあって見えない。
まぁ、朝食だろう……。
テーブルの上に置き、布が取られると中身は予想通り食事だった。一つだけ予想外だとするとその豪勢さと豊富さかもしれない。
「ごめんね、料理スキル取ってないから手作りは無理なんだ」
「いや、構わない。俺はそこまで、食い物に執着が無い」
「私が構う。……リアルだと上手なんだよ」
「……そうか」
思わぬリアルの情報に言葉が少し詰まり会話が途切れる。
何気に高そうなパンをかじりつつアイテム整理をしていると、新着メールの通知が表示された。
『from Argo』
その二語を見ただけで、嫌な予感がした。手元のパンを口に放り込み、咀嚼もせずに飲み込む。続けてドリンクも煽り、フゥと一息つく。
「……ヨシナ、アルゴからメールが来た。そっちはどうだ?」
「えっと……、来てないね」
メニューウィンドウを可視化してテーブルの中央に移動させ、メールを開く。
件名は無し、本文には短い文が一行だけ。
『重要な話があるからヨーちゃんと前の店に来てほしい。キー坊とアーちゃんも一緒だよ。』
「………………」
「………………」
「……どう思う、これを?」
「キリトはともかくアスナがいるってことは血盟騎士団が関わってるかな?」
「重要、ってことは攻略関係か。……それも、あまり
少人数での会合、さらに言えばSAOダブルトップである。ロキ自身、そこに参加する必要性を感じないのだが相手が相手だ。襲撃した相手ではあるが断って変に勘ぐられるより、堂々と対面したほうがいい。
そう思考をまとめて食事を再開する。
「……食べたら、行くぞ。準備はいいか?」
「いつでもオーケーだよ」
決定事項だけ伝えても、ヨシナはそれに不満の欠片も思っているようには見えない。なぜ、と質問すらしない。それが普通なのかどうかを俺は知れない。この『今』が普通と感じているから。
数十分後、俺達は《アルゲード》の奥にある怪しげなカフェに向かうため宿を後にした。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
目の前に並んで座る二人。どちらもSAO屈指のプレイヤーであり、その佇まいも並のプレイヤーとは違う。
一人はキリト。真っ黒な衣装で防具らしい防具を装備していない。その見た目から『黒の剣士』や『ブラッキー』、とある事件から『ビーター』などの二つ名を持っている。盾を使わない片手剣というスタイルで所属ギルド無し、パーティ無しのソロプレイヤーを貫いている。背負っている黒剣は無駄な装飾が無く、『魔剣』というイメージがしっくり来る。
もう一人はアスナ。白と赤を基調とした血盟騎士団特有の装備に身を包んでいる。SAOではかなり少ない女性プレイヤーであり、彼女の文句のつけようのない華麗な容姿ーーーー周囲の評価からするとーーーーからファンになる者は多い。また、その実力も確固たるもので血盟騎士団副団長という肩書と《閃光》という二つ名がそれを物語っている。
もう一人、俺達を呼んだアルゴは何故か正面ではなく右隣りに座っている。
正直、くだらない話だったらさっさと退散しようと思っていたのだが……。
「……確かに、重要な話だな」
「そうだ。結果次第だが今後の攻略にも影響を及ぼす」
「キリト君の言う通り、成功すれば犠牲は減り、効率は上がります。でも逆に失敗すれば……」
アスナはそこで言葉を区切り、顔をしかめる。失敗した時のことでも予想したか……。
「……失敗した場合、攻略組の戦力が激減。重ねて士気は、著しく落ちる、だろうな」
「ロキ君、そういうことを言うのは「いや、構わない。」……キリト君」
「……解ってるじゃないか」
以前のPKK対策会議の時のように、事実に向き合う姿勢には好感が持てる。
……だが、覚悟が足りないな。
あの時俺は、俺を殺さなかったキリトには失望した。
今回の作戦での働き次第、といったところか。
「……で、日時は未定か?」
「はい。現在各ギルドのギルマスと話し合いを進めていますが、PKKという件もありますので……」
「そのPKKなんだけド、情報が少ないんだヨ」
「俺も戦った時以来見てないな」
そのPKKが目の前にいるんだがな……。
まぁ、ばれることはまず無い。あの『仮面』を装備している限り、俺は
「不安要素を、考えてたら、キリがないぞ。…………特に、『
『
俺達がここに呼び出された要件であり、最前線で戦うプレイヤー達にとって最大の悩みだ。
血盟騎士団のデータによると、犠牲者は既に五十人を超えたらしい。だがこの数字も確認出来た範囲なので実際はさらに多いはずだ。
殺人に快楽を感じる狂人集団。それが
……俺も殺人者だが、殺す事を楽しいとは感じない。かといって罪悪感がある訳でもないが。
「確かにそうなんだが……」
「PKK会議の時の誰かさんの発言で皆が疑り深くなってるのよ。ねぇ、キリト君?」
表情はにこやかだが、眼が笑ってない。
そんなアスナを見て、キリトの顔が真っ青になる。
…………いくら感情表現がオーバーでも、ここまでは初めて見たぞ。
「え〜と、その、アスナさん? なんで怖い顔をしておられるのでしょうか?」
「怖い顔? 私は別に怒ってなんかいないよ、キ・リ・ト・君?」
パンッパンッ
アルゴが二人の会話を止めるように手を叩く。
「はいはイ、痴話喧嘩はまた後にしてくれヨ」
「ち、痴話喧嘩?!」
「おいアルゴ! これはそんなんじゃない!」
「いや〜、明日の新聞の一面は決まりカナ〜?」
ニヤリと意地悪そうに笑う。
アスナとキリトの顔が真っ赤になる。
「うぅ〜……。ロキ君、伝えたかった用件は以上です。何らかの進展があった場合、また連絡します。行くよ、キリト君!」
「うぇッ!分かったから引っ張るな!じゃぁな、アルゴ、ロキ、ヨシナ!……だから引っ張るなって!」
言葉をまくし立て、慌ただしく店から出て行く二人を見送る。
……金はしっかり払うんだな、アスナ。
「にひひ。実際、お似合いだと思うけどネー」
「からかうのも、ほどほどにしろよ。そんな一面が出てみろ? 色んな意味で攻略が、止まるぞ」
アルゴを諌めるが、俺の言ったことを想像したのかさらに笑いが増した。
気持ちは解らんでもないが……。
「人気が有りすぎるのも考えものだナ。その内『アスナ様』とか出てくるんじゃないカ?」
「……やめろ。あり得そうだ」
「居たら居たで、かなり気持ち悪いけどね」
まれな美貌を持つ少女ーーーー見た感じでは高校生ぐらいかーーーーに跪き、『アスナ様』と崇拝するような中年男性。
…………気色悪い。さっさと忘れよう。
「さて……」
帰るか、と言おうとすると急にアルゴが立ち上がり、俺達の正面に移動した。
「さーてト、ロー君達を呼んだ本当の用事はここからダ」
……ガラリと雰囲気が変わったな。
ニヤリと笑っているが、さっきまでとはその種類が違う。
「……さっきのは、あくまでもついで、だったとでも?」
「イヤイヤ、結構重要なはなしだったロ?」
「作戦への、参加は任意だ。やるかどうかは、気分次第だな」
俺がこう言うと、大げさに手を広げ、やれやれとばかりに首を横に振る。
……策か?
だがこいつともそれなりに長い付き合いだ。この程度で俺が苛つくはずがないと知っているだろう。
なら、狙いはなんだ?
「……オレっちはネ、きっと参加するって思ってるヨ」
「根拠は…………なんだ?」
俺から視線を外さず、真剣そうに口を動かす。
この時、俺は朝の『嫌な予感』が的中したことを痛感した。
「……なぜなら
この時のアルゴの眼はまるで…………新しい獲物を見つけた猛禽類のような眼だった。
どうでしたでしょうか?
感想、評価、アドヴァイス、誤字報告待っています。
短くても作者は喜びますので。