Sword Art・Online 《Strange Dramas》 【完結】   作:与祢矢 慧

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前回からかなり間が空いてしまった……。
すいませんでした。

いつもどおりの素人文章です。

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ありがとうございます!


9th 殺:憎

 

 

 赤、青、緑、黄、紫……。見える範囲で七人、それぞれのソードスキルを発動させ接近してくる。先頭の奴との距離は三メートルもない。

 それなりにスキル上げをしたのか、なかなかに速い。同時に七人もの攻撃、それもシステムアシストにより速度と威力を増幅されたそれら全てを見切り、捌き切ることは常識的に考えて不可能だ。

 背後を尻目に見ると、なにやら喚いている奴等が何人かいた。まぁ、「避けろ」だの「逃げろ」などと相場は決まっている。

 助けてもらった人間には死んでほしくない、とかでも思っているんだろうな。

 勘違いも甚だしい。

 俺は助けたつもりなんぞ、微塵もない。

 

「……さてと、そんな馬鹿どもに教えてやるか。格の違いってのを」

 

 流暢な自分の言葉には慣れた。この『仮面』はやはり優れ物だ。視界も案外広い。

 その広い視界には狂気の宿った剣が七本見え、色のついたラインが七本ある。

 既に数えきれないほどのオレンジを狩った両手剣(相棒)を手首だけで上に投げ、一回転した所で逆手に持つ。

 目前に迫る七本のラインで最も紅い左上のそれに沿うように斬り上げると……、

 

 ギャギィィイン!

 

 耳障りな音を鳴らしながら剣の腹で敵の剣を滑らせて軌道を流し、即座に手首を返しガラ空きの胴に向って斬り下ろす。

 

 ズシャッ!

 

 敵の体は容易く斬り裂かれ、胴体が二分割される。

 

 ……残りラインは六本。

 右、左、上と三本の赤が紅へと変わる。

 このラインだけを見ていれば、全て捌ける。

 右から殴りつけるように腕を振る。それだけで二人の剣は弾き飛ばされ、ソードスキルは強制終了となった。

 少し力を込めて真上に跳び、上から攻撃してきた奴より高く上がる。曲げた腕を伸ばし、背中に剣を突き刺す。その勢いのまま地面に降り立つと同時にポリゴンが砕け散る。

 スキルの強制終了により態勢を崩している二人を、回転斬りの要領で……一閃。

 上半身と下半身が分離し、空中に舞い上がる。HPバーは勢い良く無くなり、砕けた。

 

 ……あと、三本。

 ここまで減れば見切ることもない。

 ちょうどいい具合に横に並んでいるから、一撃で終わらす。

 右手は逆手持ちのまま、両手で柄を握る。右肩辺りで構えると、ソードスキルの初動(ファーストモーション)をシステムが検出し、俺の剣が水色に輝く。

 この持ち方を初めて見たのか、三人は目を見開いた。

 

「……特に恨みは無いが、死ね」

 

 輝きが最高潮になった瞬間、剣が動き、同時に右足で踏み込む。体が自動的に動き、三人を武器もろとも斬り裂いた。

 

 ーーーー両手剣単発技《アバランシュ》ーーーー

 

 両手剣スキルを取得した際に最初に得られる技だ。故に使用回数が最も多く、練度も高い。攻撃範囲が広く、前方にダッシュしながら発動するのでリスクも少ない。

 わざと(・ ・ ・)スキル後硬直を受け、三人分重なって割れるポリゴンの音を背中で聞く。

 硬直が解けると、剣を手首だけで上に投げる。

 五、六回転したところで柄を掴み、鞘に納める。

 ふぅ、と一息つき振り返ると、

 

 ガシャアッ!

 

 ビビって後ずさりした奴らの鎧の音が響く。

 それほど俺が怖いか。まぁ、常識外れな事をした自覚はあるが……。

 取り敢えず、聞くだけ聞く。

 

「……それで、討伐隊(お前等)はどうするんだ?」

 

 と、問いかけてみたが反応は無い。予想はしていた。

 

 人を殺すぐらい(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)で躊躇う馬鹿の集まりだ。

 俺が来なければどうなっていたのか……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今日この日、秘密裏に進められていた『笑う棺桶(ラフィン・コフィン)討伐作戦』が決行された。

 数日前、ラフコフ側からの裏切り者の密告により、アジトの場所が判明。

 《聖竜連合》、《血盟騎士団》を筆頭とした有力ギルドやソロプレイヤーの実力者が参加し、五十人規模の討伐隊が組織された。

 そして、アジトに突入してラフコフを不意打ちで捕まえる。……という作戦だったはずだ。

 

 そもそも、俺はこの作戦に参加していないので、中で何があったのかを詳しく知らない。

 『ロキ』より『PKK』の方が都合が良いと考え、不参加の意思を伝えた。

 彼らの出発を見送るとすぐに装備を変え、アルゴ先導のもとこの洞窟に忍び込んだ。

 見張りや敗走者に遭遇しないよう慎重に進み、戦闘が行われている場所にたどり着く。

 壁に身を隠し、中を覗いた。

 

 そこで、仮面越しに目を疑った。

 乱戦の中、瀕死のラフコフのメンバーに討伐隊三人が殺され、敵前で頭を抱えてうずくまっている馬鹿がいた。

 

 

 これを見た時、俺の中に激しい怒りが沸き上がってきた。

 

 

 『アイツ』は生きたかったのに、殺された。

 俺に『力』が無かったから、殺された。

 

 馬鹿どもには『力』がある。

 生き残れる『手段』を、『技術』を持っている。

 

 それなのに。

 殺人という恐怖に怯え、ただ死に甘んじる姿が、俺に剣を抜かせた。

 持ちうる『力』を棄て、現実を直視しない弱さが、俺の足を動かした。

 碌な覚悟も持たず、ハリボテの正義感で動く醜さを、俺は壊したくなった。

 

 気がつけば、俺は討伐隊の一人を入口近くに投げ飛ばし、ラフコフの一人を斬り捨てていた。

 

 そうでもしないと、『アイツ』の死が、穢される。

 

 そんな思いが、体中を駆け巡った。

 

 

 

 

 

 その後、俺は討伐隊全員を投げ飛ばして一人でラフコフを殺していた。

 さっきの殺したのは七人、残りが二十人ほど。

 警戒されてるのか、襲いかかってこない。

 奴らは聞く耳持たないだろうから、再び馬鹿どもに聞く。

 

「……もう一度聞く。お前等はどうするんだ?」

 

 二度目の問いかけでやっと空気が動き始める。

 《聖竜連合》の幹部らしき人物と《血盟騎士団》副団長のアスナが全員に声をかけ、拙いながらも臨戦態勢を取る。

 細剣(レイピア)を俺に突きつけ、アスナは口を開く。

 

「……助けて頂いたことには感謝します。ですが、私達はあなたを信用できません。プレイヤーネームを教えて下さい」

「断る。……ついでに言うが、お前等を助けたつもりはない。邪魔だったから、投げ飛ばした。それだけだ」

 

 教えるつもりがないから、この『仮面』を付けている。

 『仮面』の効果の一つに、装着者のプレイヤーネームを隠すという効果がある。

 デメリットは視界が多少狭くなること。

 

「……そうですか。……私達はラフコフを捕まえ、黒鉄宮の監獄エリアに送ります。協力してもらえますか?」

「知らん。俺の邪魔をするなら、容赦はしない」

 

 俺の言ったことにアスナは頷き、全員にその旨を伝える。

 見たところ、馬鹿どもの士気はかなり落ちているが、それなりに覚悟を決めた奴らもいる。

 その一人、キリトが剣を抜いてこちらに来る。

 

「……久しぶり、だな。もう二度と会いたくないと思ってたよ」

「そうか。……空に投げ出された気分はどうだ?」

「……意外とおもしろいかった。今度、お前も投げてやるよ」

 

 一メートルほど距離を開けて、軽口を叩き合う。

 こいつが俺の正体を知った時はどんな表情をするだろうか。

 そんな想像をしていると、キリトは重い表情で俺に聞く。

 

「……あんたは、なんで殺せたんだ?」

 

 その声には純粋な疑問が込められていた。

 

「なんで、か。……俺にはすべき事がある。その邪魔をする者は、排除する。そう決めただけだ」

「……すべきこと、か。……わかった」

 

 わかった、と言いつつもやはり苦しげな表情だ。

 こいつは命のやり取りとは無縁の世界で生きてきたんだ。仕方がない。

 

「……理解しろ、とは言わない。……だが、割り切れ。そうでないと……死ぬぞ」

「……でも、やっぱり俺はっ! 後ろだッ!」

 

 その声で後ろを振り向こうとした瞬間に、頭を吹っ飛ばされそうな衝撃をくらった。

 

 

 割れるような鋭い音が鳴り響き、視界が急に広くなる。

 完全に不意を突かれた攻撃によって体勢は崩れ、軽く後方に飛ばされた。

 無理やり体の向きを変え、足を地面につける。素早く抜剣し、相手を確認しようとして顔に違和感を感じる。

 あるべき仮面が無い、と。

 何処に行った、など探す前にカラン、と目の前で音が鳴り、そして…………砕け散った。

 

 

「Oops……。この有り様はどういうことだ?」

 

 パリンッ、という音の向こうから声がした。

 艶やかな美声、だがイントネーションに仄かな異質さが潜んでいる。

 

 ゆっくりと視線を上げると、ラフコフの後方にその声の主が見えた。

 膝上まである、艶消しの黒いポンチョ。目深に伏せられたフード。

 気怠げに肩を叩く右手に握られているのは、中華包丁にように四角く、血のように赤黒い刃を持つ肉厚の大型ダガー『友切包丁(メイトチョッパー)』。

 

「…………『PoH(プー)』……」

 

 誰かの口から声が漏れた。

 ユーモラスなプレイヤーネームに反して、冷酷非情な長身の男。

 PoHは俺を見て、納得するように微笑った。

 

 ふと気づけば、視界に一本の赤いラインがあった。

 ソードスキルにはない、一直線のライン。それが投擲スキル特有のそれだと気づくと同時に、飛来したモノを右手の人差指と中指で挟む。

 それは刀身が緑に濡れた、細身のナイフ。

 

 バキッ。

 

 俺がそれを握り折ると、PoHの更に後ろから甲高い声が発せられた。

 

「はぁーっ?! ありえねぇだろ、なんでわかるんだよっ?!」

「……やはり、貴様か。…………『ジョニー・ブラック』」

 

 PoHがいる時点で、予想はしていた。だからこそナイフを察知することができた。

 ブーツからアーマーまで非金属、かつ黒で統一されている装備。

 頭部には、頭陀袋のような黒いマスクに覆われていた。目の部分だけが丸く繰り抜かれ、そこから狂気と怒りに染まった視線が注がれるのを感じる。

 

「……PoH、ジョニー・ブラック。貴様等が、いるということは……」

 

 この時になってようやく俺は、俺を斬った奴を見た。

 

「……まさか、避けられるとは、思っても、いなかった。だが、お前の、仮面を、取ることは、できた」

 

 全身に襤褸切れのようなものが垂れ下がっている。

 顔には髑髏(どくろ)のようなマスクをつけ、眼は赤く光っていた。

 右手にあるのは、エストック。血の色に発光するかのような地金の煌きが、スペックの高さを伝えている。

 

 忘れようのない、その出で立ち、そのプレイヤーネーム、その武器。

 

 

 あの時『アイツ』を、俺の親友を殺した、復讐の標的。

 殺すべき、敵。

 俺は正体がばれることも構わず、叫んだ。

 

「……『赤眼のザザ』っ!」

 

 

 

 PoH。

 ジョニー・ブラック。

 赤眼のザザ。

 

 SAO最大級のお尋ね者であり、恐怖の対象。

 殺人ギルド『笑う棺桶(ラフィン・コフィン)』のトップスリーが、彼ら討伐隊の僅かな希望を絶望で塗りつぶした。

 

 




……どうでしたか?

そろそろ、話の展開を進めないと……といった感じでラフコフ戦でした。
中途半端に終わってますが。
終わり方もなんか……。

次もできるだけ早く書きます。
関係無いアイディアばっかり出てきますが。

感想、アドヴァイス、誤字報告等待っています。
批判カモンです。
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