遊戯王5D's ガールズ・セキュリティ   作:なら小鹿

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Sp 2-5 激闘! 懲戒免職デュエル!

 

(……猛獣と闘う剣闘士になったみたい)

 

 もしくは両足に鉄球を付けられた気分だった。それでも、ここで足を止めれば二度と踏み出せなくなる気がして、ミナミは半ば無理やり歩みを進める。

 

 第3デュエルフィールド。治安維持局にあるデュエルフィールドのうち他2つが局内で訓練をするために設置されているのに対し、これは外部から対戦者や観戦者を招いてデュエルするための場所らしい。

 

 らしい、というのはミナミ自身もまだその場を見たことがないからだ。入局式後のオリエンテーションでは見学コースからはずれていたし、新人が外部から招待されたデュエリストの対戦相手に選ばれるなんてこともない。それでも先輩から聞いて存在は知ってはいた。

 

 いわく、古代ローマの円形闘技場(コロッセオ)のような場所なのだとか。

 

 当時は形が似ているから比喩に使ったのだろうと思っていたが、今こうして第3デュエルフィールドへ向かっているとそれだけでないことがひしひしと伝わってきた。

 

(怖がってもいい……けど、それはフィールドに着くまで。迷うのも目的地に着くまで)

 

 そう決めて支給端末のナビゲートを頼りに第3デュエルフィールドを目指してきたものの、一向に決心は着きそうにない。

 

 怖れや迷いといっているが、本心をいえば今のミナミが抱えているのは後ろめたさだった。

 

(ティール隊長は確実に懲戒免職にする口実を作ろうとしている。とはいえ、悪辣な手を使ってこられたかといえば……)

 

 隊長執務室での一幕を思い返してみても、ティール隊長は別段ミナミを陥れるようなことはしていないし、上層部との会議で何かしらの権力は行使したのかもしれないが、これまでミナミが嫌悪感を抱いた人種とは違う気がしていた。

 

 あくまで中立で公正。心の底でそう感じてしまっているので、なんとか敵視しようとしてもできないでいた。

 

(それに、どう取り繕っても私に非があるのは確かだし……こればっかりはどうしようもない)

 

 足を進めながら強がっているのが自分でもわかった。無線切断と命令無視の件は認めざるを得ないが、同時にあそこで大人しく引き下がっていたら、と思うと──。

 

(…………)

 

 ミナミはミナミでなくなっていた。それこそ顔と名前が同じだけの人形に成り下がっていたに違いない。

 

 両家の子女として生まれたのなら、ガールズ・セキュリティ以外の道もあっただろう。

 

 そう問われるたび、ミナミは治安維持局に志願した理由を思い出している。人に言えば何を馬鹿なと笑われるだろうが、だとしてもミナミの中にある意思は変わらない。

 

(ティール隊長とのデュエルに勝って、そのうえで謝る……、それしかない)

 

 でなければ、この胸のもやもやは一生消えないだろう。それでも決心できたことで、少しだけ足が軽くなった。

 

 冷え冷えとした廊下が角になっている。あそこを曲がれば、第3デュエルフィールドはもうすぐそこだ。

 

(デッキ調整はきちんとしてきたけど、どこまで食い下がれるか……。いえ、迷っていたら勝てるデュエルも勝てなくなる)

 

 隊長執務室をあとにして、ミナミは30分ほどかけてデッキの内容を調整した。本来であれば時間の許す限りカードを吟味し、デッキを強化すべきなのだろうが、ミナミは早々に切り上げて第3デュエルフィールドへ向かった。

 

(あのまま考え続けていても思考がループするだったし、下手をすれば不安に押し潰されていたかもしれない)

 

 そうなったら、デュエルフィールドに立つことすらできなかっただろう。

 

(それに逃げ回るのは性に合わないし)

 

 角を折れてしばらくすると、支給端末がナビゲート完了を告げた。なんの変哲もない廊下に見慣れつつある電子扉がある。

 

(……ここね)

 

 襟のブローチに内蔵されたICチップを読み取って扉が自動で開く。狭く薄暗くなった通路の先に真っ白な照明の光が見えた。あそこが第3デュエルフィールドか。

 

「よし」

 

 緊張していないといえば嘘になる。

 

 それでも足を止めはしない。カツ、カツ、と固い足音が薄暗い闇にこだまする。こうしていると、まるでデュエルスタジアムに向かうプロデュエリストになったみたいだが、忘れてはいけない。

 

 これは懲戒免職のかかったデュエルで、相手は敏腕セキュリティのティール隊長。圧倒的に不利なのは百も承知だ。そのうえで可能性がわずかでもあるのなら、ミナミは全力でそれをつかみ取りに行く。

 

 足下真っ白な光が射してきて、閉鎖的だった通路が一気に開けた。

 

(うっ……なるほど。これは確かに、古代ローマの円形闘技場(コロッセオ)ね)

 

 まぶしすぎる照明に目を細目ながら、ミナミは第3デュエルフィールドを見渡した。

 

 贅沢なまでに空間を広々と使った円形のフィールドを、デュエルから逃げることは許さないと言わんばかりに背の高い壁が囲っている。その上はすべて観戦席になっている。超巨大モンスターを想定してなのか、天井だけは嫌味なほど高く、逃げ場がないのに解放感だけは充実していた。

 

「敵前逃亡しなかった気概は評価してやろう」

 

「……っ」

 

 すぐそばで聞き覚えのある声がして、ミナミは条件反射で背筋を伸ばす。横目を向けると、ティール隊長がデュエルフィールドの入口を見張るように立っていた。その目がまたすっと細められる。

 

「どうした。今さら怖じ気づいても帰してはやらんぞ」

 

「心配ご無用です」

 

 カツッ、と踵を鳴らしてティール隊長が入口の前に立ちはだかった。元より逃げる気はなかったが、こうして退路を断たれると嫌なプレッシャーを感じる。

 

「ティール隊長」

 

「なんだ。謝罪や弁明なら受け付けていないぞ」

 

「このデュエルのこと、誰かに話しましたか」

 

「いいや。私はここの使用申請をしただけだが」

 

 その言葉、果たしてどこまで信用していいものか。

 

 ミナミは再び観戦席に目を向ける。100名以上は優に座れるであろう観戦席には、まばらながらも観客がいた。

 

 見慣れた白のライディングスーツ姿。ガールズ・セキュリティの先輩や同期にあたる面々だ。顔見知りではあるが、それほど仲のいい顔触れではないし、むしろ七光り組としてガールズ・セキュリティへ回された面子が多い気がする。

 

「緊張しているのか。人に見られるのは慣れていると思っていたが」

 

「それなりには慣れています」

 

 ティール隊長の声にはどこか確信犯めいたものがあった。お陰でミナミも納得がいった。

 

(このデュエル、七光り組への見せしめということですか)

 

 端から見ればミナミはあそこに座っている親の七光りを浴びた面々と同類だ。そして厄介なことにそんな新人が要注意人物の身柄を確保し、さらに訓練で先輩を負かした。そうすると次に何が起きるか。

 

(噂が広まれば、勘違いしたお嬢様たちが増長しかねない。だからそうならないよう、ここで注目株の新人を叩きのめして晒し者にする)

 

 そうして、あとは次はお前たちの番だ、と観戦席に指差しでもすればいいか。

 

 犯罪捜査でも使われる手法だ。派手な逮捕劇は世間の注目を集め、未だ逮捕されていない犯罪者やその予備軍となる者への抑止力になる。さすがは敏腕セキュリティ、やることが違う。

 

「さて、最後に言い残すことはあるか」

 

 フィールドを挟んで立ったティール隊長が振り返りざまに鋭い視線を向けてくる。それだけで全身を握り潰されるようなプレッシャーが襲ってきたが、気圧されていてはいけない。

 

「そう易々と負ける気はありません」

 

「わかった。では情けは無用ということだな。デュエルディスクを構えろ」

 

(言われずともです……!)

 

 両者の腕で同時にデュエルディスクが起動する。冷静そのものなティール隊長に対して、ミナミは既に胸の鼓動がやかましかった。

 

(まだデュエルは始まってもいないのに……)

 

 もはや闘いの火蓋は切られているにも等しかった。実力も経験も不利であることは覚悟のうえだ。

 

 

 

 

 

 

「「デュエル!!」」

 

 

 

 

 

 

「先攻はもらうぞ! 私のターンからだ! ドロー!」

 

 TURN 1

  ティール LP 4000 手札 5枚 → 6枚

 

 カードをドローされただけなのに、風圧がここまで襲ってきそうだった。だが、それも気圧されかかっているがゆえのプレッシャー。余計な考えを振り払い、ミナミはティール隊長の出方に注目する。

 

「手札より〈増援〉を発動!」

 

 増援 通常魔法

 

「その効果によりデッキからレベル4以下の戦士族モンスターを手札に加える! 私は手札に加えた〈トラパート〉をそのまま召喚!」

 

 トラパート(攻撃表示)

 チューナー/星2/闇属性/戦士族/ATK 600/DEF 600

 

 先陣を切って、尖り帽子のピエロが上下にくっついた奇妙なモンスターが現れる。ステータスだけ見れば脅威ではないが──。

 

「いきなりチューナーですか」

 

「そうだ。シンクロ召喚の気配を察知するのはいい嗅覚だが、この程度で身構えていてはライフよりに精神力が尽きるぞ」

 

 それもそうだ。ミナミだってチューナー1体にビクビクするほど柔ではない。警戒しているのは最初の手札を見てからティール隊長のカードプレイに一切迷いがないことだ。

 

「私のフィールドに戦士族モンスターが存在することにより〈キリビ・レディ〉は手札から特殊召喚できる!」

 

 キリビ・レディ(守備表示)

 星1/炎属性/戦士族/ATK 100/DEF 100

 

 頭巾を被ったデフォルメな女性モンスターが両手の火打ち石を打ち合わせる。門出の安全を祈るのが切り火だが、今のミナミには不吉な予兆にしか見えなかった。

 

(……これは早速)

 

「行くぞ! 私はレベル1の〈キリビ・レディ〉に、レベル2の〈トラパート〉をチューニング!」

 

 フィールドに揃ったモンスターがそれぞれリングと星に姿を変える。宙を舞った輝きが速やかに列を成し、光の柱がフィールドに打ち立てられる。

 

 星1 + 星2 = 星3

 

「シンクロ召喚! 鉄壁なる守護の力、出あえ! 〈ゴヨウ・ディフェンダー〉!」

 

 ゴヨウ・ディフェンダー(攻撃表示)

 シンクロ/星3/地属性/戦士族/ATK 1000/DEF 1000

 チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

 

 右手に十手、左手に身の丈ほどもある大盾を構えた岡っ引きロボが大見得を切って現れる。セキュリティが使用するポリスモンスターであり、ミナミも見覚えがあるモンスターだったが──。

 

「それは収容所警備隊の……!」

 

「あぁ、新人にはまだ知らされていないのか。セキュリティでは隊長職に就くと、他部署に支給されたカードも自由に扱えるようになるのだ」

 

「隊長特権、ということですか」

 

「呼び方は好きにしろ。もっとも、このデュエルで懲戒免職になる貴様には無縁の話だがな」

 

 早速観戦席が騒がしくなるが、ティール隊長はどこ吹く風といった顔でデュエルを続行する。

 

「〈ゴヨウ・ディフェンダー〉のモンスター効果発動! 私のフィールドのモンスターが地属性・戦士族のシンクロモンスターのみの場合、エクストラデッキから同名カードを特殊召喚できる! 言うまでもなく、この方法で特殊召喚された〈ゴヨウ・ディフェンダー〉も同じ効果が使える! 出あえ!」

 

 ゴヨウ・ディフェンダー(攻撃表示)×2

 シンクロ/星3/地属性/戦士族/ATK 1000/DEF 1000

 チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

 

 一糸乱れぬ動きで、新たに特殊召喚された〈ゴヨウ・ディフェンダー〉2体がミナミに向かって大盾を構える。即座に鉄壁の包囲網を敷く、収容所に監視の目を光らせる警備隊の常套展開だ。

 

「1ターン目からシンクロモンスターを3体も。本当に容赦ありませんね……」

 

「そんな軽口を叩けるとは、まだまだ余裕ようだな。それとも単なる虚勢か」

 

 軽口だったなら、どれほどよかったか。まだターンが回ってきていないというのに、油断すれば膝が震えてしまいそうだった。

 

「まだ終わらないぞ。手札から魔法カード〈シンクロ・クリード〉を発動」

 

 シンクロ・クリード 通常魔法

 

「このカードはフィールドにシンクロモンスターが存在する場合に発動でき、カード1枚ドローする。そして、フィールドのシンクロモンスターが3体以上の場合、ドロー枚数は2枚になる」

 

「ティール隊長のフィールドには〈ゴヨウ・ディフェンダー〉が3体……」

 

「そうだ。よって私はカードを2枚ドローする」

 

 減ったかに見えたティール隊長の手札が瞬く間に増強される。

 

〈シンクロ・クリード〉のカードはミナミも知ってはいた。シンクロモンスター3体という条件の厳しさから余程のプロプレイヤーでもないとデッキには入れないと思っていたが、こうも容易く発動されるとは。

 

「カードを1枚伏せてターンエンドだ。さぁ、貴様のターンだぞ」

 

 ティール LP 4000 手札 4枚

 

 

 

 

「私のターンです、ドロー!」

 

 TURN 2

  ミナミ LP 4000 手札 5枚 → 6枚

 

 ドローする手が震えないよう指先に力を込める。デュエルはまだ始まったばかりなのに、張り詰めた緊張感はラストターンのそれだった。

 

(けど、ここでへこたれてはいられない……!)

 

 見せしめにされているからではない。ミナミはミナミ自身がガールズ・セキュリティを志したあの日のために闘う。そして、今あるこの手札がミナミにとっての武器だ。

 

(〈ゴヨウ・ディフェンダー〉は攻撃対象にされた時、味方の数×1000ポイント攻撃力をアップさせる)

 

 ティール隊長のフィールドには3体の〈ゴヨウ・ディフェンダー〉がいる。一見すると攻撃力1000の下級モンスターだが、迂闊にバトルを仕掛ければ、彼らは攻撃力3000になって迎撃してくる。こうして対峙してみると、なかなかに厄介な布陣だ。

 

「よく考えてから手札を使え。ここでミスをしたのでは一生後悔するからな」

 

「ご忠告、感謝します」

 

 それでも既に敵陣を突破する手札は揃っていた。あとはこの一撃を通すのみ。

 

「手札から〈ランランタン〉を特殊召喚!」

 

 ランランタン(守備表示)

 星4/光属性/炎族/ATK 800/DEF 1200

 

「このカードは相手フィールドにモンスターが存在し、自分フィールドにモンスターが存在しない時、手札から特殊召喚できます!」

 

 何もなかったミナミのフィールドに、灯りをともした御用提灯(ごようちょうちん)のモンスターが現れる。

 

「そして、チューナーモンスター〈ジュッテ・ナイト〉を召喚!」

 

 ジュッテ・ナイト(攻撃表示)

 チューナー/星2/地属性/戦士族/ATK 700/DEF 900

 

 提灯の隣に十手を構えたデフォルメな同心のモンスターが躍り出る。デュエル訓練でもたびたび目にした、セキュリティに支給されるチューナーだ。

 

「ふん、貴様もシンクロ召喚狙いか。そう来なくてはな」

 

 ティール隊長のフィールドにはリバースカードが1枚。伏せた本人も発動する素振りを見せていないのが不気味だが、恐れていてはせっかくの勝機を逃してしまう。

 

「行きます! レベル4の〈ランランタン〉に、レベル2の〈ジュッテ・ナイト〉をチューニング!」

 

〈ジュッテ・ナイト〉が背中の提灯を光らせ〈ランランタン〉がその灯火を星にして解き放つ。2つのリングと4つの星。それらが宙を舞って列を成す。

 

「古の時代より受け継がれし法治の魂! 今ここに蘇り、曲者を引っ捕らえろ!」

 

 星2 + 星4 = 星6

 

 フィールドに光の柱が打ち立てられ、長十手がその光のヴェールを斬り裂く。

 

「シンクロ召喚! 出動せよ! 〈ゴヨウ・セイバー〉!」

 

『はぁあっ!』

 

 ゴヨウ・セイバー(攻撃表示)

 シンクロ/星6/地属性/戦士族/ATK 2300/DEF 1000

 チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

 

 舞い散る光を桜吹雪のようにして、岡っ引きの女戦士がミナミの前に着地する。墨色の髪に、凛とした(かんばせ)、藍染の衣。そして手には銀にきらめく長十手が握られている。だが、これで終わりではない。

 

「さらに手札から装備魔法〈アサルト・アーマー〉を発動! その効果で〈ゴヨウ・セイバー〉の攻撃力を300ポイントアップ!」

 

 ゴヨウ・セイバー ATK 2300 → ATK 2600

 

「涙ぐましい努力、と言いたいところだが、その攻撃力では〈ゴヨウ・ディフェンダー〉の包囲網を突破することはできないぞ。もっとも貴様が狙っているのは攻撃力アップではないようだがな」

 

(手の内を読まれている……! だけど、見えた勝機をみすみす逃すわけにはいかない!)

 

「〈アサルト・アーマー〉の第2の効果! このカードを墓地に送ることで、このターン〈ゴヨウ・セイバー〉は2度の攻撃ができます!」

 

 ゴヨウ・セイバー ATK 2600 → ATK 2300

 

「バトル! 〈ゴヨウ・セイバー〉で1体目の〈ゴヨウ・ディフェンダー〉を攻撃!」

 

 両手で長十手を握りしめた〈ゴヨウ・セイバー〉がフィールドを蹴った。青い衣の肢体が瞬く間に〈ゴヨウ・ディフェンダー〉の大盾に肉薄する。振り上げられる長十手。銀のきらめきが大盾ごと敵を一刀両断しようとした瞬間。

 

 ──ジャリリリリリッ!

 

『くっ……!?』

 

 連続する金属音に〈ゴヨウ・セイバー〉の動きが止まった。

 

 長十手を大上段に振り上げた姿勢のまま、禍々しい色の鎖がその両腕を縛り上げている。腕だけではない。胴から脚、それから首にまで。身動きひとつ許さないといわんばかりに鎖が巻き付いている。

 

「この鎖は……!」

 

「リバースカードを発動させた。永続罠〈デモンズ・チェーン〉だ」

 

 デモンズ・チェーン 永続罠

 

 ティール隊長のフィールドを見れば、いつの間にか伏せられていたカードが開いていた。

 

「このカードの対象になったモンスターは攻撃できず、効果も無効化される。いくらもがこうと、その鎖はほどけないぞ」

 

 未だ抵抗を諦めていない〈ゴヨウ・セイバー〉だが、悪魔の鎖は四方八方に互いを引っ張り合っていている。身じろぎすればするほど鎖が体に食い込み、その顔が悔しげに歪んだ。

 

「惜しかったな。あと一歩で私のライフを0にできたというのに」

 

「なんのことですか」

 

「とぼけなくともいいだろう。それとも、私が考えもなしに〈デモンズ・チェーン〉を発動させたと思っているのか」

 

 フィールドの向こうでティール隊長が切れ長の目を細める。それだけで背筋に緊張が走った。こちらの戦術を見透かされていることを、否応なしに突き付けられる。

 

「貴様の〈ゴヨウ・セイバー〉は攻撃対象にした相手モンスターの効果を無効にする。つまり、あのままバトルを続行していれば〈ゴヨウ・ディフェンダー〉は攻撃力1000のまま。しかも〈アサルト・アーマー〉により貴様の〈ゴヨウ・セイバー〉2回攻撃ができる」

 

「2連続の攻撃で私への戦闘ダメージは2600。さらに2度モンスターを戦闘破壊したことで、2体の〈ゴヨウトークン〉が特殊召喚される」

 

「私のフィールドにはまだ〈ゴヨウ・ディフェンダー〉が残っているが、1体ではそもそも効果を使えず、攻撃力1600の〈ゴヨウトークン〉にも容易く戦闘破壊される。これでさらに600のダメージ、そして2体目のトークンでダイレクトアタックを決めれば──」

 

「戦闘ダメージは合計で4800。私は新人にライフを削りきられ、1ターンキルで敗北する様を同僚に晒し、明日からは笑い者になるはずだった」

 

 再びティール隊長がこちらを見た。隠し立てや誤魔化しを許さない眼光が胸を突き刺してくる。気分は追い詰められて犯行を暴かれた犯人のそれだった。

 

「貴様の報告書にもあったな。公犬狩りのリョナーとのデュエルでも同じコンボを使っていただろ」

 

「……はい」

 

 絞り出すようにしてミナミは言葉を返す。

 

「見えた勝機に向かって突き進むのはいい。だが、決着を焦って敵の術中に囚われているようでは敗北の可能性を高めるだけだぞ」

 

(それは確かに……)

 

 今の攻撃は勝負を焦ったがゆえのミスだ。ティール隊長がブラフで伏せカードを出しているなんてことは、あり得ないし、もっと警戒すべきだった。

 

(とはいえ、あまりターンを費やすのも得策ではない……いや、焦ってはダメ……冷静に、落ち着いてカードをプレイしないと……)

 

 ミナミは小さく頭を振る。デッキ調整の間、何度もティール隊長とのデュエルをシュミレーションしてきた。ミナミ自身、ティール隊長のデュエルする姿はおろかデッキやカードも知らないが、それでもひとつだけ確実なことがあった。

 

 ティール隊長は強烈無比な攻めのデュエルをしてくる。

 

 入局式の合間に先輩が語っていた武勇伝を思えば、パワーデュエルをしてくるのは間違いない。

 

 地力(じりき)では確実にミナミが負けているし、ターンを重ねれば重ねるほど、その差は如実に現れてくる。正直に言わせてもらえば、この状況下で焦らない方がどうかしている。

 

(だから、速攻で勝負を決めたかったのだけど……)

 

 そう上手くはいかない。攻撃を許された後攻なら1ターンキルが狙える。しかし、それを防がれた今、ミナミが警戒すべきはティール隊長からの反撃だ。

 

(フィールドには3体の〈ゴヨウ・ディフェンダー〉が健在……くっ……たった攻撃力1000とはいえ、あそこまでモンスターを残したままターンエンドしたら……)

 

 相手にシンクロ召喚をしてください、と言っているのにも等しい。まずい、また焦りがぶり返してきた。

 

「どうした。カードをプレイする気力も尽きてしまったか」

 

 フィールドの向こうからティール隊長の声が飛んでくる。さっきまで変わらない声色だ。さすがは敏腕セキュリティというべきか。だが、無防備なままターンを返すわけにはいかない。

 

「……リバースカードを2枚セット」

 

 ミナミの足下に2枚のリバースカードが現れる。デッキ調整で防御カードは多めに入れてきたし、それを手札に引き込むこともできた。

 

(それでも、耐えきれるかどうか……)

 

「ターンエンドです……」

 

 じりじりと高まっていく緊張の中、ミナミはそう宣言するしかなかった。

 

 ミナミ LP 4000 手札 1枚

 

 

 

 To be next true ……

 





お待たせしております。今回からミナミ vs ティール隊長のデュエルを書いていきます。
お察しの読者さんもいるかもしれませんが、長期戦になる見込みです、はい。
なので、何卒お付き合いよろしくお願いします!!!

オリジナルカードWikiの投稿方法について質問です( ・ω・)∩シツモーン

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