童実野湾に架けれたネオダイダロス・ブリッジのリングを望みながら臨海道路が緩やかなカーブを描いている。
ミナミはギアを上げて、アクセルを捻った。ボディを傾け、スピードをそのままに海風を切る。ラリーのDスクーターも見かけによらず馬力があるようだが、第1コーナーはミナミがとった。
「先攻はもらいます! 私のターン、ドロー!」
TURN 1
ミナミ LP 4000 手札 5枚 → 6枚
晴れ渡った空の下でDホイールを走らせていると、ついつい職務を忘れてしまいそうになるが、ここからは負けられない闘いだ。最初から全力でいく。
「手札から〈ジュッテ・ナイト〉を召喚!」
ジュッテ・ナイト(攻撃表示)
チューナー/星2/地属性/戦士族/ATK 900/DEF 700
ホワイトライトに並走して、背中に提灯を背負ったデフォルメの同心が躍り出る。そして当然これで終わりではない。
「さらに自分フィールドに地属性・戦士族のモンスターが存在することにより〈ナギナタ・バロネス〉は手札から特殊召喚できます!」
ナギナタ・バロネス(攻撃表示)
星4/地属性/戦士族/ATK 1400/DEF 1600
長柄の
「げっ! これってもしかして、いきなりシンクロ召喚!?」
「察しがいいですね。私はレベル4の〈ナギナタ・バロネス〉に、レベル2の〈ジュッテ・ナイト〉をチューニング!」
薙刀の刃に映った〈ジュッテ・ナイト〉がアイコンタクトする。それを合図に小さな同心がその身を緑のリングに変える。
さらに桃色の女武士が薙刀を振るって跳び、光のリングをくぐると、その身から4つの星が解き放たれる。空中で列を成したそれらが、ひと筋の光となって臨海道路を駆け抜ける。
星4 + 星2 = 星6
「シンクロ召喚! 出動せよ! 〈ゴヨウ・セイバー〉!」
『ふっ、はぁあッ!』
ゴヨウ・セイバー(攻撃表示)
シンクロ/星6/地属性/戦士族/ATK 2300/DEF 1000
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
荒波を轟かせる童実野湾を背に、岡っ引きの女戦士が凛とした
「さらにシンクロ素材となった〈ナギナタ・バロネス〉のモンスター効果! このカードをシンクロ素材とした戦士族モンスターは攻撃力を300ポイントアップさせます!」
ゴヨウ・セイバー ATK 2300 → ATK 2600
「1ターン目から攻撃力2600かよ……。やってくれるじゃんか」
すぐ後ろからラリーの悔しげな声がする。先攻はバトルできないとはいえ、この攻撃力は易々と突破できないだろう。それでも油断は禁物だ。
「カードを2枚伏せて、ターンエンドです」
ミナミ LP 4000 手札 2枚
「よし、オレのターンだな! ドロー!」
TURN 2
ラリー LP 4000 手札 5枚 → 6枚
「オレは〈ワンショット・コンテナ〉を召喚!」
ワンショット・コンテナ(攻撃表示)
星1/水属性/機械族/ATK 0/DEF 0
Dスクーターに並走するようにして、両腕がブルーのコンテナ船になったメカモンスターが海上に出現する。波を割って海面を進む勇ましい姿に反し、そのステータスは攻守ともに0だ。
「攻撃力0を、わざわざ攻撃表示で……?」
ミナミは思わず眉根を寄せた。
(低ステータスで攻撃を誘うにしても、これは露骨すぎる)
そんなミナミをよそに、海上の〈ワンショット・コンテナ〉がこちらを向く。まさか、と直感すると同時にラリーが声を発した。
「バトルだ! 〈ワンショット・コンテナ〉で攻撃!」
「この状況でバトルですか?」
「ああ、そうだ!」
〈ワンショット・コンテナ〉が片腕を〈ゴヨウ・セイバー〉に向け、その船体を変形させる。積載していたコンテナの下からレールが現れ、ジェット噴射したコンテナがミサイルのごとく飛翔してくる。しかし、その攻撃力は0のまま。
「迎撃です〈ゴヨウ・セイバー〉!」
『ふっ』
バットの要領で長十手をフルスイングすると、打ち返されたコンテナは意図も容易く空中爆発。燃え盛った破片が攻撃元である〈ワンショット・コンテナ〉に降り注ぎ、本体もろとも爆散する。しかも、この戦闘ダメージはラリーにも──。
「〈ワンショット・コンテナ〉のモンスター効果! このカードが攻撃する時、オレへの戦闘ダメージは0になる! そして、このカードがバトルで破壊された時、デッキから攻撃力0の機械族モンスター1体を特殊召喚できる!」
「なるほど。今の攻撃はそれが狙いですか」
だから、攻撃力0をわざわざ攻撃表示で。とはいえ、ミナミも相手に好き勝手ばかりされているだけではない。
「同じタイミングで〈ゴヨウ・セイバー〉のモンスター効果も発動します。バトルで相手モンスターを破壊し、墓地へ送ったことで〈ゴヨウトークン〉を特殊召喚」
ゴヨウトークン(攻撃表示)
星4/地属性/戦士族/ATK 1600/DEF 0
ミナミのフィールドに青白い霊体の鎧武者が召喚される。戦闘破壊をトリガーにした効果は何もこちらから攻撃した時にだけ発動するものではない。
「うわっ、モンスターが増えちゃった……けど、オレだって……! 〈ワンショット・コンテナ〉の効果で、デッキから〈ワンショット・ロケット〉を特殊召喚!」
海上に残っていたコンテナ船から煙を突き破り、何かが飛び出してきた。火を噴く真っ赤な機体。両腕がロケットになったメカモンスターが、ラリーのDスクーターの頭上を飛ぶ。
ワンショット・ロケット(攻撃表示)
チューナー/星2/風属性/機械族/ATK 0/DEF 0
(また攻撃力0のモンスターを攻撃表示で……)
これは、やはりまた来るか。ミナミが直感すると同時にラリーが叫んだ。
「バトル続行だ! 行け〈ワンショット・ロケット〉!」
左右のジェットエンジンを噴射させ、急加速した〈ワンショット・ロケット〉が〈ゴヨウ・セイバー〉へ突進してくる。格好だけなら、さっきのコンテナ砲よりミサイル然としている。それでも攻撃力は相変わらず0だ。
「再び迎撃です〈ゴヨウ・セイバー〉!」
『はぁッ!』
飛来した〈ワンショット・ロケット〉を回避し、その後方から長十手を叩き込む。標的を失った挙げ句、背後からの打撃をもらった〈ワンショット・ロケット〉はきりもみ回転しながら急降下していく。そして、ちょうどその進路にはラリーのDスクーターがいる。
「うわぁあっ!?」
──ごちーん!
接触したDスクーターとロケットのボディが火花を散らす。黄色いボディが蛇行し、大きく後退する。
「痛ててて……」
ラリー LP 4000 → LP 1400
「大丈夫ですか。クラッシュされては困るので、考えなしに攻撃するのは……えっ」
そこまで言ってミナミはハッとした。バトルで負ければ戦闘ダメージはもちろんのこと、モンスターも破壊される。なのにラリーのフィールドでは未だ〈ワンショット・ロケット〉健在。それどころか両腕のロケットをミナミに向けている。
「考えなしじゃないぞ。〈ワンショット・ロケット〉は自身から攻撃を仕掛けた時、戦闘では破壊されない! そしてオレが受けた戦闘ダメージの半分を相手にも与える!」
「攻撃力0で攻撃してきたのはこれを狙って……!」
「そうだ! やっちゃえ〈ワンショット・ロケット〉!」
噴射音が轟いて、真っ赤なロケットが発射された。今までとは違う、ダメージを与えてくる攻撃だ。ミナミは咄嗟にリバースカードを確認したが、このカードはダメージステップには発動できない。
「オレが受けたダメージは2600! その半分の1300を食らえ!」
「ぐっ、うっ……!」
着弾したミサイル、もといロケットが炸裂し、ホワイトライトの左右から爆風が叩きつけてくる。ミナミは両脚でボディを締め、衝撃に耐える。
ミナミ LP 4000 → LP 2700
「くっ……けほっ、けほっ……ライフを犠牲にしてまで、こちらにダメージを与えてくるとは。なかなかやりますね」
「へへっ、これで終わりだなんて思わないでくれよ」
ホワイトライトに横付けしてきたDスクーターで、ラリーが好戦的に笑う。
「メインフェイズ2、オレは手札から〈ワンショット・ブースター〉を特殊召喚!」
ワンショット・ブースター(攻撃表示)
星1/地属性/機械族/ATK 0/DEF 0
「このモンスターは自分が通常召喚に成功したターン、手札から特殊召喚できる」
頭にシグナルランプ、そして両腕を射出機にしたブースター。これまでの2体と同型の黄色いメカモンスターがスクーター型Dホイールに並走する。
(また攻撃力0……だけど)
油断はできない。これまでのモンスターも攻撃力0でありながら何らかの特殊効果をもっていたし、ラリーのフィールドにいる〈ワンショット・ロケット〉はチューナーだ。
コースのすぐ外で波が水しぶきを上げ、海風が吹き付けてくる。次なる一手はモンスター効果か、それとも──。
「行くぞ! オレはレベル1の〈ワンショット・ブースター〉に、レベル2の〈ワンショット・ロケット〉をチューニング!」
「そう来ましたか」
真っ赤なロケットが2つリングに変わり、黄色いメカモンスターがブースターを最大噴射して、その中へ飛び込む。黄色いボディから解き放たれる星は1つ。
星2 + 星1 = 星3
レベルの合計としては低いが、それに負けじとまばゆい光が臨海道路を駆け抜けていく。真昼の海がシンクロ召喚の光を浴びて波間をきらきらと輝かやいている。
「オレだってサテライトから輝く星になるんだ……! シンクロ召喚! 現れろ〈ワンショット・キャノン〉!」
ワンショット・キャノン(攻撃表示)
シンクロ/星3/炎属性/機械族/ATK 0/DEF 0
「ワンショット・ロケット」+チューナー以外のモンスター1体
爆炎のごときジェット噴射を決め、光の中から近未来的なシルエットのモンスターが飛び出す。
メタリックな白色をベースとしたボディに、両腕には本体よりも巨大なキャノン砲を備え、きらりと陽光を反射させる。そして案の定というべきか、そのステータスは攻守ともに0だ。
(それでもあのモンスター、何かある……!)
ここまでのわずかなターン数だけでもミナミはそう確信できた。もしかしたら、この警戒も潮風に乗って後ろから追い迫ってくるラリーに伝わっているのかもしれない。
「さらに手札から装備魔法〈ニトロスター〉を発動! このカードを〈ゴヨウ・セイバー〉に装備する!」
「私のモンスターに装備カードを……?」
ニトロスター 装備魔法
「そうだ。〈ニトロスター〉は装備モンスターの攻撃力を、そのレベル×200アップさせる」
「〈ゴヨウ・セイバー〉はレベル6、ということは1200の攻撃力アップですか」
ミナミが横目を向けた先で〈ゴヨウ・セイバー〉が全身から力強いオーラを立ち昇らせ、そのステータスをぐんぐんと引き上げていく。
ゴヨウ・セイバー ATK 2600 → ATK 3800
「どういうつもりですか。このままでは自滅しますよ」
ラリーのライフはわずか1400、そしてフィールドには攻撃力0の〈ワンショット・キャノン〉。ここでターンエンドすれば、次のミナミのターン、ダイレクトアタックにも等しい攻撃でオーバーキルになるのは火を見るより明らかだ。
しかし、そんなことは百も承知だと言わんばかりにラリーがウィンドゴーグルの下で目を細める。
「セキュリティなのに、意外とお人好しだな」
「それはどうも」
「けど、すぐにオレの心配なんてしてられなくなるぜ。〈ワンショット・キャノン〉の効果発動! 1ターンに1度、フィールドのモンスター1体を破壊して、そのコントローラーに攻撃力の半分のダメージを与える!」
「攻撃力の半分!?」
咄嗟にミナミはフィールドを振り返った。轟々と強い潮風の吹き付けるフィールドで、攻撃力3800になった〈ゴヨウ・セイバー〉が藍染の衣をはためかせている。
そこへ〈ワンショット・キャノン〉がメタリックに輝く砲口を向ける。瞬時に照準がロックされた。これは──まずい!
「行っけぇ、ファイナル・キャノン!」
ラリーの発射宣言に〈ワンショット・キャノン〉の砲口から白熱したビーム砲が放たれる。水面で照り返した日光すら霞むほどの光量。堪らず目を細めたミナミの見ている先で〈ゴヨウ・セイバー〉が光に飲み込まれ、その中から爆炎が漏れこぼれる。次に来るのは衝撃とダメージだ。
「……ッ、リバース罠オープン! 〈ダッジ・ロール〉!」
「うそ、このタイミングで!?」
ダッジ・ロール 通常罠
「〈ダッジ・ロール〉の効果により、このカードの発動後、プレイヤーが受ける戦闘または効果によるダメージを1度だけ0にします!」
白熱したビームの中から粉塵をまとった暴風が襲いかかってくる。ミナミはアクセルを離して急ブレーキを踏んだ。ホイールが甲高い音を鳴らし、ホワイトライトが急減速する。その直後、暴風がフロントをかすっていった。
「……ちぇ、躱されちゃったか」
「そう易々とライフを削れらると思わないでください」
ラリーのDスクーターと並走しながらミナミは毅然とした態度を見せる。あまり柔な相手だと思われてはガールズ・セキュリティ全体の株を落としかねない。
「けど、こっちはもう防げないだろ。装備されていた〈ニトロスター〉の効果!」
「まさか、またダメージですか!?」
「そうだ! 〈ニトロスター〉は装備モンスターが破壊された時、そのレベル×200のダメージをコントローラーに与える! 〈ゴヨウ・セイバー〉のレベルは6! 1200のダメージを食らいやがれ!」
再び頭上で爆発が起きる。可燃物に火花が引火したような赤々とした炎と衝撃がホワイトライトを襲う。
「うあっ、ぐっ……うっ……!」
ミナミ LP 2700 → LP 1500
(これは……かなりまずい!)
ハンドルを握りしめながらミナミはホワイトライトを走らせる。風を切るヘルメットの下で冷や汗が垂れた。
さっきは間一髪〈ダッジロール〉でダメージを回避したが、ラリーの〈ワンショット・キャノン〉の効果が通っていれば──。
(攻撃力3800になった〈ゴヨウ・セイバー〉を破壊された私へのダメージは1900……)
つまり、ライフ1500のミナミはこのターンだけでライフを削りきられ、敗北していた計算になる。油断も隙もあったものではないが、同時に確信できたこともある。
(間違いない、あのデッキは〈ワンショット〉モンスターを主軸にしたバーンデッキ! それを相手にここまでライフを削られたのはかなりの痛手……!)
バーンデッキを相手に最悪なのは弱気になることだ。バトルを介さずにライフを削ってくる戦術は焦燥感を煽ってくるが、守りに徹していては相手にバーンカードを使う隙を与えてしまう。そうなれば、ますます敵の術中にはまるだけ。支給されたテキストにはそう記されていたが。
(とはいっても……)
実戦ではガリガリとライフを削られるこの感覚は正直堪える。
(いえ、まだこっちのライフは残っている。それにライフが残りわずかなのは相手も同じ!)
ミナミは頭を振って、弱気な考えを振り払う。そして前方を走るラリーに向かって宣言する。
「どうしました。まさかクラッシュすることを祈ってダメージを与えてきていたのですか」
「そんなこと期待してねーよ。オレはカードを2枚セット」
黄色いDスクーターの左右にそれぞれリバースカードが現れる。あれもまたライフに直接ダメージを与えてくるカードなのか。
「ターンエンド。さっ、そっちのターンだ」
ラリー LP 1400 手札 1枚
「……私のターンです! ……ドロー!」
TURN 3
ミナミ LP 1500 手札 2枚 → 3枚
バーンダメージに気圧されて、弱気になっていてはいけない。童実野湾で荒波が砕ける音が響く。それに負けぬようミナミは声を張って、ドローカードを見確かめる。
(よし、このカードなら……)
〈ワンショット・キャノン〉はラリーのターンにしか効果を発動できない。そして、攻撃力0をさらしている以上、ミナミの攻撃を誘って、リバースカードでダメージを反射してくるのは火を見るより明らかだった。
「どうしちゃったんだ。オレのモンスターは攻撃力0だぞ。それとも伏せカードにビビっちゃったか」
「生憎と、そんな安っぽい挑発に乗るほどガールズ・セキュリティは直情的ではありません。手札から速攻魔法〈サイクロン〉を発動!」
「げぇ!?」
サイクロン 速攻魔法
ドローカードをそのまま発動すると、ウィンドゴーグルの下でラリーが露骨に嫌そうな目をした。しかし、それをどこまで信じていいものか。
「その効果によりフィールドの魔法・罠1枚を破壊します」
「んんっ……、どっちを破壊するんだ」
ラリーの声が勝負をかけたデュエリストの気配がにじむ。今のミナミはわずかライフ1500。やはり、あのリバースカードのどちらかがダメージを与えるカードで、このターンでミナミのライフを削りきるつもりなのか。
それでも迷うことはない。
「私は、そちらのカードを破壊します!」
ミナミが指差したのはラリーのDスクーターから見て右のカードだ。宣言すると同時に潮風が竜巻となってラリーのフィールドから伏せカードを巻き上げ、ぐるぐると表裏を反転させたカードが砕け散る。
ディメンション・ウォール 通常罠
「うわっ……よりにもよって、そっちか……」
「なかなか危ないカードを伏せていますね」
〈ディメンション・ウォール〉は相手が攻撃してきた時、その戦闘ダメージを相手に跳ね返す罠カードだ。
ミナミのフィールドには攻撃力1600の〈ゴヨウトークン〉がいるが、もしあのまま攻撃していれば、攻撃力0の〈ワンショット・キャノン〉との戦闘ダメージ1600がそのままミナミに跳ね返ってきて、ライフ1500のミナミは敗北していた。
(逆にいえば、今の〈サイクロン〉でその勝ち筋は途絶えたはず。それなのになぜ──)
なぜ、あんなにも堂々としていられるのか。
ちらり、と並走する黄色いDスクーターを見る。ウィンドゴーグルの下で、ラリーは未だ勝負を諦めていない眼をしている。デュエリストとしての直感が、まだ何かあると叫んでいた。
「どうしたんだ。オレのライフはたったの1400だぞ」
「そうですね」
明らかにラリーは攻撃を誘ってきている。見え透いた罠だが、ここで臆病風に吹かれていては、それこそガールズ・セキュリティの
さらにいえば、攻撃すれば勝てるかもしれない状況で手をこまねいていられるほど慎重な性格はしていない。臨海道路のすぐそばで岸壁に打ち付けられた荒波が砕ける。
すでに決心はついていた。
「バトルです! 〈ゴヨウトークン〉で〈ワンショット・キャノン〉を攻撃!」
青白い霊体の鎧武者が素早く抜刀し、ラリーのフィールドへ迫る。敵は無防備をさらした〈ワンショット・キャノン〉。攻撃力0のメタリックボディに半透明の刀を大きく振りかぶる。
(この攻撃が決まれば──!)
ラリーのライフは尽き、ミナミの勝利となるが、果たして──。
「攻撃……したてきな?」
「ええ、しましたよ」
ラリーのウィンドゴーグルがギラリと光る。何かあるとすれば、ここしかない。そして相手の態度からしてまだ隠し球があるのは確実だった。
「だったらこのデュエル、オレの勝ちだ! リバーストラップ発動!」
霊体の刃が〈ワンショット・キャノン〉を斬り裂く直前で、ラリーのフィールドに残っていた伏せカードが開いた。そのカードが妖しげなオーラを放つ。
「罠カード〈闇よりの罠〉発動!」
闇よりの罠 通常罠
「それは確か墓地の罠を……!」
「へぇ、セキュリティなのに拾ったカードまで知ってるんだ。こいつはライフが3000以下の時に、さらにライフ1000を支払うことで発動できる! うっ、うぅ……!」
ラリー LP 1400 → LP 400
「くっ……これで〈闇よりの罠〉はオレの墓地にある罠カードと同じ効果を得る! オレがコピーするのはさっき破壊された〈ディメンション・ウォール〉だ!」
墓地につながった穴が開き、そこから〈ディメンション・ウォール〉のカードが甦ってくる。
「あの余裕はそういう意味だったんですね」
さっきの〈サイクロン〉でどちらを破壊されようと、結局は変わらない。本命の〈ディメンション・ウォール〉が残れば問題ないし、もし破壊されても〈闇よりの罠〉がそれをコピーし、ミナミに引導を渡せる。
「読み合いはあんまり得意じゃないからな。確実な方を選ばせてもらったぜ。〈ディメンション・ウォール〉の効果で、この戦闘で発生するダメージは相手プレイヤーが受ける! これで終わりだ!」
「それはどうでしょうね」
「……えっ」
ラリーが慌てた表情でフィールドを見回す。発動させた〈闇よりの罠〉には〈ディメンション・ウォール〉のカードが重なり、今まさに効果をコピーしようとしているところだった。
しかし、注目すべきはそっちではない。
「忘れていませんか。リバースカードなら、私にも1枚ありますよ」
ミナミのフィールドには1ターン目に伏せ、まだ発動していないセットカードが1枚残っている。
「げぇ、そのカードって、まかさ……」
「【セキュリティ】を相手にするなら、このカードは警戒すべきでしたね! カウンター罠〈ギャクタン〉!」
ギャクタン カウンター罠
「うわっ、それって……!」
「〈ギャクタン〉は相手が発動した罠カードの発動を無効にし、そのカードをデッキに戻します!」
ミナミのフィールドで開いた〈ギャクタン〉のカードが光り〈闇よりの罠〉が砕け散る。そして音をたてて割れた破片がラリーのデッキへ吸い込まれていった。これでもう攻撃を跳ね返されることもない。
「バトル続行です! 〈ゴヨウトークン〉、〈ワンショット・キャノン〉を一刀両断せよ!」
「うわぁあっ!? ちょ、ちょっと待って!」
慌てふためいたラリーのDスクーターが大きく蛇行する。しかし問答無用と言わんばかりに青白い霊体の鎧武者は鋭利な刃を振り下ろす。
──ザシュンンン! ドガァァアンン!!
霊体の刃が〈ワンショット・キャノン〉のメタリックボディを袈裟斬りにする。わずかに間を開け、火花が散り、次の瞬間には真っ赤な爆炎と轟音が広がる。
「うわっ、あっ、うわあああぁぁぁぁぁ!!」
ラリー LP 400 → LP 0
衝撃をまとった爆炎がすぐ下を走っていたラリーとDスクーターへ襲いかかった。
攻撃力0ゆえ、ダメージはダイレクトアタックのそれに等しい。ライフの尽きる音と共に白煙を吹きながら激しく蛇行して停車するDスクーター。
「よし」
しかし、ガールズ・セキュリティとしての職務はここからだ。ミナミはホワイトライトを停め、臨海道路を駆け戻る。
被疑者を確保して初めて職務をまっとうしたことになる。もしここでも逃亡を図るようであれば、とミナミは強化捕縄につながれた手錠を用意する。
「けほっ、けほっ……あぁ、ずっと掃除してなかったから煙が……けほっ」
強制停止したDスクーターに跨がったまま、ラリーはマシンから吹き出したスチームを真っ正面から浴びていた。ミナミが近づいても逃げる素振りは見せなかったが、カツッと足音を鳴らすと露骨に肩を縮こまらせた。
「…………あー……え、えーっと……」
「今度こそ、ご同行願えますね」
1度目ならまだしも、これは2度目の同行願い。それなりに圧をかけさせてもらう。ミナミの影の中でラリーが小動物のように小さくなるが、そんなことをしても逃がすつもりはない。なかったのだが────。
「ご、ごめん! ちゃんと連行されるから、この配達だけさせて! どうしても今日中にパーツが必要なお客さんなんだ!」
ぱんっ、と両手を合わせて深々と頭を下げてくるラリーに、ミナミはどうしたものか迷ってしまった。
◆ ◆ ◆
──ぴーんぽーん♪
配達先でインターホンを押す瞬間は今でも緊張する。押してから往生際悪くごわごわの髪を整えたり、バッグに入れた部品が間違ってないか確かめたりして、なかなか気持ちが落ち着かない。
『あいよー、どちらさんだ。修理依頼なら予約してくんねぇと受けられないぜ』
「えっと、配達で来た『Junk☆Star』のラリー・ドーソ──」
『おぅ、もう来てくれたのか。ちょっと待っててくれ』
言い終わらぬうちからガレージのシャッターが動き始めた。オイルを注していないであろう音がして、シャッターの隙間から汚れたタンクトップ男が現れる。
「よっと、こんな格好のままですまねぇな。しっかし、本当にその日のうちに届けてくれるんだな。注文しといて言うのもなんだが、正直驚きだぜ」
「ははっ、身軽なのが売りだからね。はい、これが頼まれてた部品」
ラリーは背負ったバックパックから注文されていたDホイールの部品を取り出す。
ここのガレージは彼を含めた数人で、機械修理を請け負いながらそれを元手に自分たちの手でDホイールを製作しようとしている。
今でこそサテライトとシティをネオダイダロス・ブリッジがつないでいるが、こうしてスクラップからパーツを集めて自力でDホイールを作る人たちを見ていると、昔を思い出してしまう。
「代金はこれでちょうど……って、おいおい」
財布から紙幣を出したタンクトップ男が、ちらりとラリーの背後に目をやった。振り返らずとも何を見ているのかはわかった。
「……ありゃセキュリティだろ。あんた、なんかやらかしたのか」
「えへへ、実は……ちょっと駐禁しちゃって」
Dスクーターを見張るように立っているであろうガールズ・セキュリティに聞こえないようラリーは小声で返す。
本当は何の容疑かわからないが、店に押しかけて来られて、逃げたところをデュエルで拘束された……なんて口が避けてもいえない。
「そうかい。災難だったな。まっ、俺らも気を付けねぇと。それじゃな」
「うん、またよろしく」
タンクトップ男は作業を続けるべくガレージへ戻っていった。シャッターが閉まると、急に現実感が戻ってきて、肩が震えてしまった。
「終わりましたか」
「う、うん……」
すぐ後ろでガールズ・セキュリティの声がした。ずっと前に自分を庇ってくれたサテライトの仲間なら、かっこよくセキュリティを撃退していたかもしれないが、自分はまだあんな星にはなれそうになかった。
「はぁ……それで、オレはこれからどうすればいいんだ。手錠かけられて護送車にでも乗ればいいの」
本来ならデュエルに負けた時点で強制連行されていてもおかしくなかったのに、このガールズ・セキュリティはお人好しなのか、ラリーの配達先まで着いてきてくれた。
デュエルで負けた挙げ句、ここまでされたら逃げるに逃げられないし、大人しくお縄を頂戴するしかない。そうしおらしくしていると。
「あなたはひとつ大きな誤解をしています」
「誤解って」
顔を上げると、ガールズ・セキュリティは妙に真剣な表情をしていた。真昼の日差しがその顔にくっきりとした陰影をつけている。
「落ち着いて聞いてください。ラリー・ドーソンさん、あなたの身に危険が迫っています」
To be next true ……
▼ミナミの使用オリカ▼
ナギナタ・バロネス
星4/地属性/戦士族/ATK 1400/DEF 1600
(1):自分フィールド上に「ナギナタ・バロネス」以外の戦士族・地属性モンスターが存在する場合、このカードは手札から特殊召喚できる。
(2):このカードをシンクロ素材とした戦士族シンクロモンスターの攻撃力は300ポイントアップする。
【セキュリティ】における〈BF-黒槍のブラスト〉〈真六武衆-キザン〉みたいなカードであり、貴重な展開要員です。
カード名は〈ジュッテ・ナイト〉〈サムライソード・バロン〉にならって「昔の日本武器+西洋の爵位」からとっています。
▼ラリー・ドーソンの使用オリカ▼
ワンショット・コンテナ(攻撃表示)
星1/水属性/機械族/ATK 0/DEF 0
(1):このカードが攻撃する場合、その戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは0になる。
(2):このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時に発動できる。デッキから「ワンショット・コンテナ」以外の攻撃力0の機械族モンスター1体を特殊召喚する。
投稿時でも遊戯王ニューロンで検索をかけると、攻撃力0の機械族は60体以上いるので、以外とリクルート範囲は広いです。ちなみにアニメオリカを含めると各種〈機皇帝〉のコアも特殊召喚できます。
ニトロスター 装備魔法
(1):装備モンスターの攻撃力は自身のレベル×200ポイントアップする。
(2):装備モンスターが破壊されることによって、このカードが墓地へ送られた時に発動する。装備モンスターのレベル×200ポイントのダメージを、装備モンスターのコントローラーのライフに与える。
攻撃力アップがあるものの、バーンダメージが付いてくるので、基本的には相手モンスターに装備するカードですね。レベル10の〈壊星壊獣ジズキエル〉を送りつけて〈破壊輪〉で爆破すると、相手に合計5300ダメージが入ります。自分も3300ダメージはもらいますが、勝てれば良かろうなのです。
試験的にオリジナルカード一覧を巻末に載せています。
オリジナルカードWikiの投稿方法について質問です( ・ω・)∩シツモーン
-
今までみたくカードWikiのみでいい
-
話の巻末に一覧として附属していい