奇物:両面宿儺の指   作:二等辺大三角形

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羅浮編入ります。




仙舟 羅浮
生命芽吹く太古の方舟


 

ベロブルグの一件を終えた星穹列車の面々は次の跳躍の場所を決める会議を開いていた。

丹恒は体調が優れていないということで、彼を除いた四人、いや五人プラス一匹がロビーに集合している。

姫子によれば、次に向かう星はすでに決定しているらしく、会議ではその成否を問うらしい。とはいえ穹にとってはどのような星であっても初体験であるため、反対するつもりはまったくない。

 

「それでは、次の目的地を発表するぞ!次は——」

「ん?」

 

列車では聴いたことのない電子的な音が流れる。

何者かの視線を感じた穹は背後を振り向く。そこには、彼にとってよく知っていたはずの人物がいる。

 

『ハーイ、お久しぶりね、星穹列車のみなさん』

 

どういうわけか、ホログラムで映し出された彼女は傘をさしたままこちらへとゆっくり歩み寄ってくる。

突然の来訪に姫子とヴェルトは落ち着いた様子で彼女を睨みつけていた。

 

スターピースカンパニーの重要指名手配犯である星核ハンター……カフカが星穹列車に姿を表した。

 

『あら、勢ぞろいね。早速で悪いのだけど、今からみなさんの行く目的地を——変更してちょうだい』

「星核ハンター……何の用かは知らないけれど、あんたたちと関係を持つつもりはない。お引き取り願おうかしら」

『ふふっ、つれないわね。……姫子、でしょ?君たちは[羅浮]を知っているかしら』

「仙舟同盟の6艘の内の1つ、仙舟・羅浮(ラフ)。もちろん知っている」

 

カフカの問いに対し、ヴェルトが答えた。

 

『でも君たちは知らないでしょう。その羅浮が君たちの近くにまで迫っていて、その上、羅浮にある一つの星核が暴発してしまったことを』

「何を企んでいる?仙舟まで敵に回し、かの巡狩の矢に目をつけられたら、お前たちでさえ逃れるのは不可能だ。もう二度とハンターなどと名乗れなくなるだろう」

『あら、心配してくれるの?案外優しいのね』

「言いたいことがあるならはっきり言いなさい」

『じゃあお言葉に甘えようかしら。簡単に言えば仙舟がその星核の責任を私たちに押し付けてきてね。私の仲間の刃が雲騎軍に連行された。私は彼を取り戻して、星核を手にし、そして疑いを晴らす必要がある』

 

彼女はそう言って、ある一人の男の姿を映し出す。長髪長身の怪しげな風貌の男。肌は死体のように白く、その瞳の瞳孔に光は入ってはいない。

 

その男こそが彼女の言っている刃だろう。

 

星核の暴走が彼らのせいじゃないことを一体誰が信じるのだろうか。もし本当に暴発したのなら、それの原因は星核を追う者こそが原因だろう。そんな連中は星核ハンターに他ならない。

そして、仙舟同盟はヤリーロとは規模が違う。その舟一つ一つが小さな惑星の人口をはるかに超える民たちを有するほどだ。

わざわざ介入しなくても、仙舟であれば星核の一つぐらいどうこうできるはずだ、そちらの言葉に従って関与する必要性はないと列車の一同は主張する。

 

『確かに関わらないこともできるわ。けど、もし君たちが羅浮に行かなかったら、星核はやがて仙舟全体を汚染し、約半数もの人たちが死ぬことになる。勇敢で善良なナナシビトの君たちがそれを黙って見てるわけにいかないでしょ?』

「何それ、ウチらのことを脅してるつもり?」

『いいえ、私はただ来たるべき事実を伝えてるだけに過ぎない。座標はここにある、どうするかは君たちが決めるといいわ。——もちろん、そこの両面宿儺さんも大歓迎よ』

 

そう言い残し、彼女の通信は途絶える。

この場にいるものだけでは判断できないことから、部屋にいる丹恒も呼びあらためて次の行き先を決める会議を開いた。

もし、彼女のいうことが本当であれば、当然羅浮に向かって星核の暴走をとめ、罪のない人々が犠牲になることを防げる。かといって世界的犯罪者である彼女の言葉を鵜呑みにするわけにもいかず、騙されて利用されるのはいいことではない。

 

最終的に彼らは多数決をとって羅浮へ向かうかどうかを決めることにした。

 

「3、2、1————」

 

4対2。反対票はなのかと丹恒。

賛成票は姫子とヴェルト。そして何故か両手をバンザイとあげている穹だ。

 

「ちょっと!一人で二票入れるのはズルだって!」

「いや、悠仁の分」

 

いくら穹とはいえ、列車の行き先を決める大事な時に子供じみたおふざけはしないだろう。…………たぶん。

 

「決まりね、次の目的地は仙舟【羅浮】よ。丹恒はどうする?列車に残っておく?」

「ああ、今回は遠慮させてもらう」

「じゃあ、今回の旅はあんたに任せるわね、ヴェルト。彼らのことよく見てあげてちょうだい」

「俺もいるからそんな心配しなくていいって」

「ヤリーロ-VIで穹の星核の暴走を止めなかったのは誰だったかしら?」

「はい……すんません」

 

結果的に良かったからいいじゃん!とは言えない。前回の旅で姫子の怖さを彼らは身に沁みて理解した。

触らない神になんとやら。どの時代においても共通認識である。

 

「行き先が決まったようじゃな。それでは総員、しっかりと席に着くことを忘れずにな!」

 

パムの号令に一同は頷き、跳躍の衝撃へと備えるための準備に取り掛かった。

 

『あー、あー!まもなく跳躍を始める。5.4.3.2.1————!』

 

身体全体を無重力が覆いつくし、一線へ向かって強く引っ張られた。

瞬く星々が流星のように尾を引いていき、それはある地点で終わりを迎える。

 

窓の外を見れば、そこに星の姿はなく、巨大な門のような入り口だけがある。

仙舟は宇宙を漂う巨大な船。その大きさはヤリーロ-VIを超え、列車のサイズがまるで鯨にひっつくコバンザメのように小さく見えるほどだ。

 

「こちら星穹列車。繰り返す、こちら星穹列車。私たちは仙舟の空域に入ったわ。甲板への着陸許可が欲しい。……繋がらないわね」

 

なにやら早速トラブルが発生したらしい。

姫子がどれだけ仙舟へ連絡しようと、返ってくるのは機械的な合成音声の入った信号のみ。

なにか立て込んでいるのだろうか、そのわりには返ってくる信号もノイズ混じりで安定していない。

 

「も、もしかして、星核ハンターの言う通り、羅浮で何かあったんじゃ……」

「ずっと同じ信号を繰り返してる……あっ、繋がったわ!」

 

おぼつかない反応を繰り返していた信号は確かに応答した。

しかし、その音声は途中でプツンと途切れ、いよいよ信号すら送られなくなってしまった。だが、仙舟の中へと入れる玉界門という門は開いているらしい。

これ以上ここで待ちぼうけているわけにもいかないため、彼らはここで仙舟を訪れることを決める。列車には丹恒と姫子がいるため、万が一のことが起こる確率は低いはずだ。

 

「俺たちもそろそろ行くとするか。出発する前に今回の旅の目的をはっきりさせておこう」

「美味しいご飯ー!」

「綺麗な景色の写真ー!」

 

丹恒が不安げな視線を送ってきている。

 

「星核な、星核」

「ああ、星核ハンターの言葉を鵜呑みにするわけではないが、仙舟に星核があるのは間違いないだろう。問題は仙舟と列車の間に何の同盟もないことだ。歓迎されるとは限らない。だが、俺たちがやるべきことは変わらず、仙舟に手を貸して星核の問題を解決することだ」

 

とはいえ仙舟はヤリーロ-VIとは異なり、他の星との交流も盛んだ。突然の来訪者であっても宇宙にその名を轟かせている星穹列車なら前回の旅の時ほど敵対心を剥き出して襲ってきたりはしないはずだ。

 

「このことを心に留め、『探索』、『理解』、『構築』、『連係』を実行しよう」

「えい、えい、おー!」

「おー!」

「ああ、出発だ」

 


 

 

彼らが降り立ったのは多くのコンテナが綺麗に置かれている無人の港。小舟が無数に停泊しているが、どの船にも人が乗っていたような痕跡はない。少なくとも人の乗り降りが盛んな場所ではないのは見てわかる。

 

「誰もいないな」

「ああ、少なくとも門を開けた誰かがいるはずなんだが……」

「コンテナを曲がった瞬間、ウワー!って来たりして」

「ちょっと!怖いこと言わないでよ!」

 

門を開いてくれた人物を探すため、警戒を続けながら彼らは進んでいく。

コンテナを曲がり、ようやく人の営みのある出口のような扉を見つけた一同。

 

「そこのお三方、手を貸していただけませんか!?」

 

見知らぬ女性から唐突に声をかけられた。

そこには狐耳のついた栗色の髪の女性と、彼女のそばに二人の兵士が人型の化け物に襲われているところであった。兵士と似たような姿ではあったが、その肉体からはイチョウの葉が無数に生え、どう見ても人間と思えるような雰囲気ではない。理性どころか生気すらも失っている。

 

奴らは此方を見るなり、複数に分かれて襲いかかってきた。

存護の槍を構え、怪物の持つ刃を受け止める。剣を弾けば、奴はあっけなく吹き飛ばされた。

 

「退け」

 

ヴェルトが手に持つ杖を使って、その場に重力を発生させ怪物どもの動きを鈍らせ、それによってできた隙をなのかが丁寧に氷の矢で一体ずつ射抜いていく。

 

「とぉ!」

 

その矢は怪物の頭を確かに貫き、呻き声を上げながら倒れ込んだ。

 

「やったね!大勝利!」

「ああ」

 

そこまで強い敵ではなかったため、大した消耗もなく倒せ———-

 

「いえ、まだです!魔陰の身は一度死んでも復活します!」

 

狐耳の女性の言葉にはっとなって死んだはずの怪物の方を向けば、彼女の言う通りその死体は発光して蘇る。地面に落ちていたイチョウの葉が時を巻き戻すようにその身体に集束していく。

氷の矢で貫かれた状態のまま、息を吹き返したことに驚愕する一同を他所に、怪物は再び彼らに襲いかかった。

 

(武器に呪力を込める!)

 

焦ることなく彼は槍に呪力を込める。

赤い琥珀の槍先には青暗いオーラが付与された。まだ安定しているとは言い難いが、当初と比べればその動作一つ一つには無駄がほとんどない。

 

「でやぁ!」

 

灼熱に染まった呪力の束が魔陰の身の身体を真っ二つにした。そばにいる他の魔陰の身たちもその余波で身体の半分を削り取られそのままあっけなく息絶えた。

 

「あの子、あんなに強かったっけ……!?」

「なるほど、あれが呪力による影響か」

 

彼らにそのオーラは視認できないが、彼の強さが以前よりも上がっていることは分かっていた。

魔陰の身をすべて片付け、周囲の安全を確保した後、その女性が彼らの元へやってきた。狐耳を生やしていること以外はとくになんてこともなさそうな一般的な現地の人間のようだ。自動で動くロボットは見たことがあるが、獣耳を生やした人間は初めて見る。もふもふしてて触ってみたい。

 

「助けていただきありがとうございました。私は停雲。この仙舟・羅浮の天舶司の商団の一員を務めております。恩人様のご尊名を伺ってもよろしいでしょうか」

「ウチは三月なのか。こっちはヨウおじちゃん、じゃなくてヴェルト・ヨウさん。で、そっちの子は——-」

「俺は銀河打者」

「銀河打者……!素敵なお名前ですね」

 

彼女はセンスがある。

 

「この人は穹。自己紹介の時いっつもふざけてるから気にしなくていいよ。あとそうだ!えーっとね多分驚くだろうけど……」

「虎杖悠仁だ。よろしく」

「まあ……!」

 

穹の瞼の下から現れた目と口に停雲は優雅な動作で口元を覆い目を見開く。

 

「天外の方にはこのような身体をお持ちの方もいらっしゃるのですね。私も商人としていくつもの種族の方々を見てまいりましたが、ここまで特徴的な身体、ご容姿をお持ちの方は初めてです」

「つまり俺がかっこいいってこと?」

「そういうことじゃないから……。ええっと、この子の身体は特別なんだ」

「なるほど、お助けいただき感謝いたします。でも、星槎海は今封鎖されているはず。仙舟の者でない皆様が、なぜこのような場所に?」

 

助けてもらった恩人とはいえ、人の進入を禁止と定められている港にわざわざ来訪した人物に、少しだけではあるが不信感を抱いている様子だ。

彼女の疑いはもっともなので、彼らは仙舟に降り立つ直前の出来事を正直に話す。

停泊を申請しても返ってくるのはただの機械音声のみ。かと思えばとつぜん門が開き、入港することができた。しかし、誰が開けたのかなどは一切不明で自分たちも不思議に思っている、と。

すると彼女はそんなことはありえない、と首を横に振った。この星槎海は彼女の船が入ったきり一度もその門を開けていないと。おまけに門を開けたのも彼女ではないらしい。

 

「皆様は星穹列車の……?」

「その通りだ。俺たちを知っているのか?」

「もちろん存じ上げております。……はあ、皆様訪れる時期を誤りましたね。現在、仙舟では問題が発生しており、お客様をもてなせるような状態ではないのです」

 

それどころか観光、ビジネスといった興業まで停止した状況になっているそうだ。

やはり、カフカが言っていたように星核が暴発したのは事実らしい。

 

「仙舟で起きていることは少しであるが把握している。俺たちは星核の暴走を止めるために来たんだ」

「まあ!それはなんと喜ばしいことでしょうか。助けていただいた時から善人だと確信しておりました……しかし、私にはどうしようもできません。皆さんは部外者ですので、御空様の許可がないと行動を大きく制限されてしまうでしょう」

「もしかしてまたトップの人に会うのかな……」

「ご心配なさらないでください。御空様はお優しい方です。きっと事情を話せばご理解していただけるはず。皆様、ついてきてください」

 

なのかと穹はデジャヴを感じ、一抹の不安を抱きながら彼女の後についていく。

門を出た先に広がっていたのは、一つの都市だった。まるで船の上とは思えないほどに横に広がっていく桟橋や建物。遠くの遠くまで人の営みが続いていて、地平線すら見えない。

古風でありながら未来的な雰囲気が調和している街並みを彼らは一望した。

停雲の所属する天舶司は仙舟の空域、航行、貿易に関することをすべて成しており、星槎海はそんな商人たちの仕事場でもあるため、封鎖状態でありながらそれなりに賑やかだ。

 

彼女に連れられて、天舶司の本部へと案内される星穹列車の一同。

中はこちらの想像以上に騒々しく、ピリピリとした空気感がこちらにも伝わってきていた。個別で報告をするという停雲とは別れ、その司令部の中央へと向かう。

 

「被害データを景元将軍に報告してから、太卜司の人間を呼んできなさい。これほどの騒ぎ知らないとは言わせないわ」

 

そこで部下たちに指示を出していたのは、停雲と同じ狐耳を持った———狐族の女性。停雲よりも妙齢でその所作はベテランの雰囲気を醸し出していた。

こちらの来訪に気がつき、通信を中断してこちらに笑顔を向ける。

彼女こそがこの天舶司のリーダーを務め、停雲の上司でもある御空だ。

 

「星穹列車の旅人たち、ようこそ。停雲からそなたらの来意はすでに聞いている。本来なら私の職務の範疇ではないのだけれど……星核の存在を聞き、羅浮に協力すると聞いている。ならば当然、直接伝えるのが筋だろう」

 

……とてつもなく嫌な予感がしてきた。

今回の話し合いについてはヴェルトに担当させることにしていたのだが、そんなタイミングでさえ向こう側は用意してくれなさそうだ。

 

「謝絶の言葉を」

「…………」

「たかが星核、同盟がそれを知ったのなら、いずれ対処法も生じるでしょう。8000年もの間、幾度となく滅亡の危機を乗り越えてきた仙舟がよそ者の力を借りてまで解決する必要はない」

「俺たちの目的は星核の脅威から罪のない人々から守ることだけだ。そちらの迷惑にはならないと誓おう」

「わかりやすく伝えたつもりだったのに————これは仙舟の事情であり星穹列車の手を借りるまでもない。この結論が覆ることにはならないわ」

「ヨウおじちゃん、あの人もそう言ってるし、今回は無理に手を貸さなくてもいいんじゃない?ウチらも手間が省けてよかったじゃん」

 

なのかの言う通り、あちらが頑なに協力を拒む姿勢なら、無理してまでこちら側もそれを請う必要はない。仙舟の歴史は長く、その規模は他の惑星のなかでも群を抜いている。

高度に発展した技術も持ち合わせているため星核に対処できる方法も学んでいるのだろう。星穹列車の出番が無い、と言う言葉もあながち間違いではない。

 

しかし、彼女が次に発した言葉によって事態は大きく変わることになる。

 

「いいえ、行かせるわけにはいかないわ」

「は?さすがにそれはひどいんじゃない?」

「では聞くが、そなたらはどのようにして星核の情報を知り、この仙舟へと足を踏み入れた?数日前にシステムがハッキングされ、玉界門が開かれた痕跡が残っていた。そこに残っていたのは星核ハンター『銀狼』のマーク。あの銀河に名を轟かせている犯罪集団と星穹列車にどのような関係があるのか説明してもらえないかしら」

 

困った、非常に困った事態だ。

ヴェルトが列車を降りる前に危惧していた状況にまんまと陥ってしまった。星穹列車と星核ハンターの間には何の関係もない。口にするのは易いがそれを事実だと証明する方法はないのだ。

実際、星穹列車が仙舟に訪れたのは星核ハンターが原因である。しかし、それを馬鹿正直に言ってしまえば両陣営が密接な関係を持っていると誤解されかねない。この状況なら尚更だ。

 

そこに彼らにとって救いの手が差し伸べられる。

 

『そこまでにしておきなさい、御空。このことが知られたら銀河中に仙舟同盟は客人の扱いが粗雑と噂されてしまう』

 

その男は通信越しに姿を現してきた。

身なりの整った気品の高そうな衣装に身を包み、その白く長い髪は獅子のタテガミのようにも見える。

 

「将軍様……」

『星穹列車が星核ハンターと手を組むわけないだろう。彼らはライバル?なんだから。———皆さんの面会を邪魔してすまない。私は景元。ここ仙舟・羅浮の雲騎将軍の責を受け負っている』

 

若々しい容姿にそぐわないゆったりとした口調で景元は謝罪の言葉を述べる。

その老獪さの滲みでた話し方は嘘かまことか判別がつきにくい。

 

『私は御空の言葉に賛成だ。皆さんには申し訳ないが星核については仙舟の問題。諸君の手を借りるわけにはいかない。……しかし、わざわざ来てもらっておいて、手ぶらで帰らせるというのも酷だろう。ゆえに別件で頼みたいことがある』

 

そう言って、彼はとある女性の姿を通信を使って映し出した。それは先刻、彼らがよく見た人物そのものである。

太卜司という組織が仙舟に身を隠して入りカフカの通信を傍受したらしい。太卜司は列車がハンターたちと繋がっていると主張したのだが、景元はそれを奴らが列車側を害するための愚策と判断し否定した。

星穹列車の噂を彼は耳にしていたため、列車があのような雑輩と組むような集団とは思わなかったそうだ。

彼が提案したのは、星核の対処で忙しい仙舟の代わりに星穹列車がカフカを捕えることだ。そうすれば、こちら側も濡れ衣を晴らすことができる、と。

 

『どうだい?そちらにとっても悪くない話だろう』

「…………君たちはどう思う」

「いいんじゃないの?ウチもあのカフカって人にはムカついてたんだ」

「どうせ、それ以外選択肢はないんでしょ」

『ははは、それに関しては本当にすまないと思っているとも。では、話も決まったようだし、すぐに御空に伝え情報を共有するように精鋭を用意させるとしよう。では、私はこれで失礼する』

 

そう言い残し、景元の通信は途切れた。

掴みどころのない男だ。嘘をついている様子はまったくないが、かといってすべて本心で話しているわけでもない。いままで見てきた人々の中で彼ほど相手にしたくないと思った相手も初めてだ。

 

話し合いが終わり、彼らは天舶司から外へと出る。これから星穹列車はどのように行動するべきかを話し合わなければならない。

今回の旅にも多くの困難が待ち受けていそうだと溜息を吐きかけながら、穹は遠い空を眺め続けた。

 

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