「待っていたぞ、天外の英雄たち」
最初に邂逅を果たしたのは天罰の矛、メデイモス。
「紛争」の神として君臨した今の彼には3千万を越える輪廻の記憶をすべて思い出しているそうで、十三体目のタイタンであるデミウルゴスのこともすでに知っているようだ。
「随分と鍛えたではないか、虎杖悠仁。その威容は王を名乗るのに相応しいと俺が保証しよう」
「クレムノスの王様からそう言ってもらえると安心だよ」
新しく現れる造物や精霊などを薙ぎ払い、モーディスは穹にあるシグネットリングを手渡した。それは彼の誕生と死を幾度となく見届けてきたモーディスの「記憶」が残っている。これを持っていれば彼がいるも同然だろう。
かつての旧友が今もなお心火を燃やして抗っているのを感じ、彼もまたこの砂漠に残り現れる残党どもを一掃するために「紛争」を続けるのだと。
「人間の名のもとに『紛争の覇者モーディス』はここに宣言する。その者は栄光と自由の為に群星へと踏み出し、その願いを果たす者である!進め、英雄達よ。深淵へと攻め入り、オンパロスの願いを叶えるのだ。そして——砕けた焦土の上に再び、活気に満ちた都市国家を築いてくれ」
彼の意志を受け継ぎ、次に出会ったのは飛翔する幣、セファリアだった。
「あっ、来た来た!グレっちと……おやおや〜そっくりな子がいるなぁ……桃みたいなピンクのお嬢ちゃんが『最初の知性の種』デミュ……じゃなくてデミウルゴス。んで頭にお花つけてるのが列車からきたなのっちでしょ〜。それでー……そこの無駄にでかいアンタは誰?」
「俺だよ俺俺」
「あたしはそんなオレオレ詐欺みたいな手口はしたことないって!にゃははっ、冗談だよ冗談。悠っちもおっきくなったね〜」
サフェルが言うには、ファイノンはこの「記憶」の奥地で封じ込めたまま眠りについている。その証拠に彼の衣服の一部である金色の羽を彼女は確かに持っていた。
こちらの声には気づいているようで穹たちが来たことを教えれば、地鳴りが大きく響き渡る。
「まさか、このあたしが英雄に仲間入りする日が来るなんてね。うん、一緒に行くよ。じゃあこんな感じに書いてくれない?『詭術の漂客 サフェル』って。その子の願いは——砂漠にいつも水があって、土にはいつも黄金が埋まってて、コソ泥だって英雄になれちゃうこと!」
猫のマークのついた飛翔する幣を投げ渡し、「詭術」の記憶もまた彼らに託されていった。
次に彼らが出会ったのは暗澹たる手、キャストリス。
「またお会いできて……嬉しいです」
彼女は荒廃した砂漠の中で眠る「カスライナ」の傷跡を見守っていた。彼は怒りの炎で背負ってきた全てに傷を負い、最後に残ったのは冷たい無念だけ。燃え尽きて灰となったフレイムスティーラーの亡骸が動くことはない。
その傷跡に穏やかな花を添え、カスライナの残骸は眠るように静かに消えていく。
「死を象徴する二つ名に別れを告げ、『来生の侍女キャストリス』――この新しい名が星空に刻まれますように……そして人と同じ様に生き……同じ様に死を迎えられますように」
彼女が手渡したのは一輪のアンティリン花。ささやかでありながら力強いこの花こそが彼女の象徴とも言うべき花だろう。
空に浮いた浄世の黄金の血を追いかければ、その先にいたのは金色のハーブを弾くヒアンシーの姿があった。どうやらこれは天空の力によって具現化されたファイノンの残留思念なのだそう。
「待ってましたよ。グレーたんにたんたん、それに悠たんと……」
「待って……これは、記憶パ!悠仁は絶対ぶっ壊れ記憶アタッカーで実装だね!」
「そりゃどうも」
「まあ……間違ってないけど」
お目目キラキラで放たれる穹の狂言にツッコミを入れる者は誰もいなかった。みんな慣れてしまったようだ。
「これでわたしの小さな願いもちゃんと叶えられそうです……ハープを奏でましょう。『天空の医師ヒアンシー』は七色の旋律で虹を紡ぎ、人の子に薔薇色の黎明を届けます。空に虹が架かる時、どんな暗い運命にも、きっと晴れ間が訪れますように」
彼女の託した天空の末裔の箱とともに彼らは次の黄金裔が舞っている場所へと向かう。
そこに待っていたのは他でもない神悟の樹庭のアナイクスだった。
「思ったよりも早かったですね」
「おっ、ゴラスンじゃん。久しぶ「あなたは一回死になさい」うおっ、危ね!?」
アナイクスが放った銃弾が悠仁の頬を掠め取った。
せっかくの再会なのに銃をブッ放つなんてひどい!と言えば、アナイクスは苛立ちを隠そうともしない表情でその抗議を切り捨てる。
「よくもまあ、私の前に人畜無害そうな呑気な表情でノコノコと顔を出せましたね」
「あれ、俺なんか悪いことしたっけ?」
「自覚もないのですか?あれほどあの珍妙なあだ名を他者に漏らすなと言っておきながら、次の輪廻の私に最悪の呪いを残して勝手に消滅しに行ったでしょう。忘れたとは言わせませんよ。あなたの残していった課題は穴だらけの粗悪なものでしたから」
「そこはゴラスンを信じてた。実際、いい仕事をしてくれたろ?」
「…………はあ。その圧迫感のある肉体で私のそばに近寄らないでください。暑苦しいです」
「ひどい」
これまで出会ってきた黄金裔と等しくアナイクスもまた3355万337回の記憶を持っている。
かつて友人だった頃の記憶と一巡後の託された記憶も持っているからか、どこか彼の悠仁に対する態度はつんけんとしていた。
「なぜ私のまわりにはこうも問題児ばかり集まるのでしょうね」
「ゴラスンも大概だけどな」
周囲には「世負い」の火種の紋章の刻まれた巨大な結晶の破片が散らばっている。これらは琥珀に閉じ込められた救世の願い。ファイノンが残した鉄墓へ続く道を開くための試練でもある。
「じゃあ、こう書きましょう?『開拓』が見届ける中、星々は記憶する——アナクサゴラスは神に反論し……」
「いえ。『理性の学者、アナイクス』で結構。シンプルな方が後の人々も疑問を呈しやすいでしょう。珍妙なあだ名をつけられるよりは遥かにマシです」
「ゴ、ゴラスン!?大丈夫?体調悪い?」
「今までにないほどの動揺を見せないでください」
「でもゴラスンの方がシンプルだと思うけどなぁ。親しみも込めてどう?」
「どう?ではありません。はっ倒しますよ」
残されたファイノンの願いを受け継ぎ、血で作られた賢者の石を託されてアナクサゴラスの意志もまた叙事詩の一幕に残された。
「どうやら僕たちは隔離されているようだな」
「悪いこととも限らないがな。おお、カイザー。灰色の小魚たちが来たぞ」
砂灰の廃墟をくぐり抜け、その最深の下にあったのは聖都によく似た古代都市の残骸だった。
草木は生い茂り、神聖な水が植物たちを育んでいる。その先を進んでいけば、彼らは二人の英雄たちと邂逅を果たす。
「そこの大きいのは……もしや銀色のシャチか?」
「ああ、だいぶ見た目変わっちゃったけど久しぶりだな二人と——いっっっだぁい!!」
挨拶を交わそうとした悠仁が悶絶した理由は単純。
むき出しになった裸足にケリュドラのヒールが勢いよく刺さったからだ。肌を突き抜け、機械である体の配線がショートを起こす。元がザンダーの肉体とはいえ、痛覚は人間の状態とほとんど変わらない。不意に訪れた痛みはいくら呪いの王とはいえど会心ダメージを喰らわざるを負えなかった。
「誓いを破っておきながらよくも僕の前にノコノコと顔を出せたな貴様という人間は」
「この流れさっきもやったって!痛ぇ……」
「しかもなんだその無駄に大きい邪魔な体は。このカイザーをそこから見下ろすのはさぞいい気分だろうな」
2人がこの場所で隔離されているのはこの空間自体が2人を拒んでいるからなそう。ファイノンと彼女たちの活躍した時期が違うことや理性を保っていた頃の輪廻ですら「協力」以上の関係を築けなかったことも考えられる。
「すぐ戻れなくて悪かった。でもなんだかんだでこうして戻ってこれただろ?だから……その……カイザーの寛大な御心で恩赦をー……」
「しゃがむな、無礼だぞ。その首を刎ね落として死んで詫びると言うのなら話は別だがな」
「理不尽……」
友人たちにここまでされると流石の悠仁も涙目である。最も自業自得なので誰もそのことに擁護をしてくれる訳ではないが。余所でその光景を見ている他の3人は苦笑いを浮かべ、セイレンスもどういうわけか微笑ましげな表情を浮かべて止めようとしてくれない。
「おっぱっぴーとか言わなくて良かったな……あぶねぇ……」
「貴様はそのような腑抜けたことを言う前に何か僕に言うことがあるだろう」
「勝手に死んですんませんでした!」
ファイノンの心は一見空っぽだが、それでも憎しみは残り続けている。そんな彼が世界の頂点に立つ皇帝とその剣を受け入れるはずもなかった。
「それじゃあ2人はウチらと一緒に進めないってこと?」
「僕たちを『記憶』にして連れていくつもりなのか?」
「ええ。そうすれば星空は偉大な君主とその臣下の物語を永遠に刻むことになるわ。——法の君主、ケリュドラ。そして海洋の剣士、セイレンス」
「その本を通してでしか、僕たちは歴史に名を残せないのか?」
「紡がれた物語」はただの媒介でしかない。「記憶」の力で歴史を凝縮させる方法などいくらでもある。しかしケリュドラはその申し出を断った。
「定義づけられるぐらいなら、忘れ去られた方がいい。もしお前の言葉が真実なら、僕たちはきっと……後世でまた会える」
「ならばワタシが迷う必要はないな。灰色の小魚よ、その胸に渦巻く波で暗黒の潮の罪を洗い流せ。星々を戴くあの海はキミが凱旋の楽章を奏でるのを待っている」
彼らが託したのは「約束」。たったそれだけ。
しかしそれだけがいずれ名を轟かせるカイザーの軍にふさわしいものでもあった。
先を進んだ先に待っていたのはトリアンとトリノンの2人。彼女たちはあちらこちらから出てくる「記憶」の残滓や巻物を集めては整理していた。ファイノンの憎しみが徐々に抑えきれなくなっている。その「壊滅」が噴出することはそれだけファイノンと鉄墓の繋がりが色濃くなり始めているのだろう。
しかしそれは彼がまだこの世界を背負い続けている証左でもある。
「そうだぞ、だから前へ、下へ進むんだ。ファイちゃんのところへ行ってあげてくれ」
「ああ、また明日!」
「へへっ、グレーちゃん。今度こそ、思いっきりやってやろうな!」
さらに進んでいけば、その先はアナイクスの第二の試験会場。
もう半分の世負いの結晶片が散らばっている。それは希望ではなく絶望の積み重ね。幾度となく積み上げられた彼の絶望を解きほぐし、空白の彫像に自由が与えられた。
「記憶」の中でよく笑うどこにでもいる平凡な少年。優しい世界の中で3千万回の「願い」と「絶望」を深い記憶の中へと誘っていく。神託のない世界へと彼らは足を踏み入れていく。
「やっと来ましたね、救世主」
「みんな、久ちぶり!」
物語の終着点。彼が眠る花園にいたのは他でもないアグライアとトリビーの2人。
視線の先には「世負い」の英雄を模した石像と彼らとは違うもう1人の呪力の痕跡。上手に消されているからこそ、気が付いたのは同じ身体を使っている悠仁だけだった。
ふと彼が感じたのは知識に囚われた天才への憐れみだった。あの盲人がすべてを投げ捨ててなお囚われ続けたことに対する憐憫。そして英雄たちの興を削がないために密かに消えていった馬鹿な後輩への呆れ。
「ったく、拗らせすぎだっての」
「ん?悠仁なんか言った?」
「いんや、ただ独り言」
こうしてこの地で戦っていた十二のタイタンと合流を果たした一行。
ここまでの道のりに残っているのはファイノンの肉体、記憶、怒り、嘆き。様々なものが数あれどたった一つだけ存在しないものがあった。
それは「自我」
殞落したと思われていたケファレは、僅かな「自我」を頼りに千年もの間、人々を暗黒の潮から守り続けてきた。
セプターがもたらしたのは温もりのない名前と意味のない神託。しかし「開拓」と「創成」の筆で書かれた物語は違う。
「門と道の聖女、トリスビアス——浪漫を織る者、アグライア——」
「火追いの果てに、彼女たちは再び黄金を浴び……」
「幾千万の門と道をくぐり抜けた後に、失ったすべてを取り戻すだろう」
輪廻の果てで全てが消え去る。
英雄は夢の中で笑顔の似合う少年に戻る。
いずれ「憎悪」の炎は風に飛ばされ、「愛」だけが残って時を刻みつける。
アグライアとトリビーの姿が消え、残されたのは人形と小さな腕輪。
これまで黄金裔たちが残してきた足跡が「記憶」の残響となって集い、キュレネの手元に収束していく。
「火を追う旅は喪失の道。でも……すべてが風に消えても、『記憶』は残るわ」
「心」が放った「記憶」の矢がこの世界の「門と道」を貫きすべてを繋いだ。
「「「徒労は皆、ここに実る……」」」
「「「孤独で苦しい旅路も終わりにしよう/しましょう」」」
そして辿り着いた本当の終着点。「彼」の自我が残るそこは「壊滅」の因子が刻まれた荒野だった。
遠くには巨大な黒渦がブラックホールのように胎動を繰り返している。これこそセプターの中枢であり、鉄墓の温床。
「ついに姿が見えてきたな」
「そこらじゅう真っ赤なのに、雰囲気が冷たい……なんか不気味だよ」
まさに死に絶えた太陽のようだ。
これから訪れる戦場に戦慄の意を隠せない一同だったが、そこに一つの通信が入る。
『それが「知恵」の冷徹さです。しかし、それが「壊滅」に呑まれるまであまり時間はありません』
『ついに世界の外と中が繋がったよ。オンパロスは今までで一番、銀河に近づいている』
それはヘルタとスクリューガムの2人。
彼らの友人である天才スティーブン・ロイドの助力もあり、この世界に流れている時間は完全に現実世界と同期している。
「俺が一番大好きな宇宙戦争がついに目の前で始まっちゃうのか!?」
「呑気か。ほらもっとしゃきっとしなさい」
「悠仁が最近冷たい!俺のこと嫌いになっちゃったの……?」
「嫌いだったらそう何年も同じ身体で過ごしたりしねぇって」
「「えへへへへ」」
「漫才やってる場合?誰もがあなたたちみたいに楽観的なら良かったんだけど」
それはさておき天才からの報告はそれだけではない。
ヌースがオンパロスに視線を向けた。この戦いは「知恵」の計算における新たなアンカーとなる。
つまり「鉄墓」の誕生は初めからヌースの予測通りのうちに入っているということだ。
「でもきっと大丈夫。オンパロスで最もありふれたものは『運命に打ち勝つ』奇跡。そうでしょう?」
「ああ、結果の意味は『開拓』が定義するものだ」
「そうだよね、ウチらの実力を見せつけちゃお!」
天才たちからの通信を終え、彼らはファイノンが眠る「鉄墓」の封印場所へとやってきた。
「ファイノン、あの時の約束覚えてるか?」
その場に佇むのは空白の願い。振り返った少年は青年になっていた。
『ああ、ずっと待っていたよ、相棒。旅立った時の信念を忘れることだけは決してない』
鉄墓は今、「ファイノン」の胸で息づいており、彼の体は運命に定められた棺となっている。
「ファイノン、俺と一緒に英雄になろう!」
『そうだね。叙事詩の最後、三千万もの輪廻の光が消えたのは……今この時、真の黎明を迎えるためだ』
やがて魂は黎明へと返り咲き、三千万を超える輪廻の象徴たる姿となってカスライナは君臨した。暗黒の潮に染まった翼を広げ、鉄墓の半神が降り立つ。
ここが火を追い求める者の終着点。広い星空の下で会うためにはその肉体を完全に破壊しなければならない。
「ミュリオン」
「あなたの言葉は彼女の代わりに心に刻んでおくから」
「いや、大丈夫だ。僕には見える。彼女もここにいるよ。犠牲になった仲間たちも、願いも、みんな。……僕たちはやり遂げた。そうだよね?」
「ええ、そう思うわ」
掠れた声で静かに微笑む無名の英雄。
もはや「鉄墓」と対峙するためにはその壊滅の巨人をこの手で殺すしかない。
「鉄墓の憎しみは底なしだ。君なら迷わずにこの身を砕ける。そうだろう?救世主」
「……それは」
「酷な願いを言っているのはわかっている。でもやるしかない。時が来たら、浄世の黄金の血ですべてを焼き尽くすと約束してくれ」
バットを持つその手が震える。
どれほど覚悟できようと、いずれ再会できようとも自らの手で親しい友を殺すのは開拓者にとってはひどく堪えるのは間違いない。
そのプレッシャーを察してか、肉の張った手が穹の肩を押し戻しカスライナの前に一歩踏み出したのは他でもない悠仁だった。
「無理すんな。こういうのは俺の方が慣れてる」
「悠仁……」
「……すまない。君に損な役目を背負わせてしまって」
「気にすんな。オマエほどじゃないさ」
3355万337回の輪廻への労いと共にその手がカスライナの手元へと迫る。
彼は抵抗する素振りすら見せず、胸を差し出し最期の時が訪れるのを静かに待ち受けていた。
「捌」
「壊滅」に包まれたその肉体は次第に割れていき、内側に宿っていた金色の光がまろび出ていく。
「◾️◼️これで▪️◼️◾️いい——◾️▪️⬛️やっと◾️▪️金色の麦畑⬛️▪️◾️星空……暖かい◾️⬛️炎」
「そうだな。けど——すまん、まだその時じゃない」
光が次第に収束し、割れ物の肉体は軋む音を立てながら自壊する。
しかし、"呪いの王"は寂しく虚しい理不尽なその最後を許容しなかった。
眠るように目を閉じていくカスライナの胸に、悠仁は"呪力"を宿した右腕を突っ込んだのだ。奥で掴んだ彼はそのまま崩壊していくカスライナの肉体から何かを引っ張り出した。その何かは他でもない黄金の血に染まっていない青年の頃のファイノンそのもの。再誕した彼のその表情は戸惑いを隠しきれていない。
「これは……」
「今の俺には管理者権限がある。全部使えるわけじゃねぇけど、データの切り離しぐらいなら『御厨子』で代用できるからな。今からオマエは新しい"ファイノン"だ」
これまでの旅で彼は「御厨子」への新しい解釈にたどり着いた。
「魂」でも「肉体」でもないデータの身体にも通用する「御厨子」は"カスライナ"から"ファイノン"を取り除いた。「壊滅」の使令となって新たに得た彼の魂を保護し、「記憶」と「神秘」の力で現実にも匹敵する仮初めの肉体を作り上げたのだ。
管理者たるザンダーの肉体を持っているからこそ成し得た離れ技。実質的な生命の創造。
ぶっつけ本番ではあったものの、上手くできて悠仁は一安心である。
「でもこの身体は呪力を感じないような……」
「ああ、新しい世界に”呪い”なんてもんは必要ないからな。今のファイノンはこの銀河における最初で最後の
"呪力"をあえてゼロにする"縛り"でその仮初めの肉体は天与の暴君のソレと同等の力を持ち得ている。今までのように星々を燃やすほどの「壊滅」は残されてはいないものの、そんなものは今の彼には不要だろう。今の彼は絶滅大君などではなく叙事詩に名を刻む英雄なのだから。
「はは、君ってやつは。ほんとになんでもありだね」
「眠るのはまだ早いってことだ。相棒」
呆れ笑いを浮かべるファイノンに悠仁が取り出したのは一本の剣。
太陽を模したかの大剣——ヘリオスのレプリカであった。どうやって創り上げたのか、その精巧さは真作にも並び立つ鋭さを誇っている。かつての愛刀をまじまじと見つめるファイノンの背中に一本の影が迫っていた。
「ファイノーーーーーーン!!」
「お、デジャブ」
「うおっと。ははっ、元気そうで何よりだよ相棒」
子供のようにはしゃぎ飛んできた穹をファイノンは朗らかな表情で受け止めた。その顔にはもはや幾億年もの間の憎しみも苦しみも存在してはいない。旧友との再会を喜ぶ青年の顔だけがそこにはあった。
「さて、感動の再会しているところ悪いが……行けるか2人とも」
「ああ!」
「応!」
2人は自分の得物を構え、空から訪れる災厄に備える。
カスライナの抜け殻はやがてチリとなって消えていき、残された鉄墓のコアが世界と融合し始める。
空間が解れ、真空の中から巨大な手が顔を出した。その骨ばんだ手のひらは世界を開いていく。繰り返されてきた「壊滅」の方程式。その解が惑星を飲み込む四つ腕の首なし巨人となって姿を現す。
「知恵」の絶滅大君——「鉄墓」が完全体となって銀河に解き放たれた。
虎杖悠仁両面宿儺verの衣装に関してはだいたい新宿決戦前の伏黒宿儺と同じ感じ。半裸はヘルタさんが許してくれませんでした。そこにスタレっぽい装飾をじゃらりと飾って完成。ただベースがライコスの身体なので胸に穴があったり、ガタイはいいが平安宿儺よりもスラッとしていて筋肉量は控えめだったりとちゃんと見てみると平安宿儺ではないことがわかります。顔つきは宿儺より倭助に似ていて、右側についている複眼はない。虎杖がしっかり老いて成長できたらこうなるかもしれないIFのような姿
あと余談ですが、
……余談ですよ?