就職超氷河期世代。
団塊とバブル世代を守る為に切り捨てにされた世代だ。
バブル崩壊後の長い長い不況の果てに、
気付けばやって来ていた長い長い好景気。
俺たちはやっと報われるのだろうか?

1 / 1
バブルを知らない俺たちは採用バブルを知っている

小学生になってまだ低学年の頃にバブル経済がはじけた。

という事を知ったのはもう少し後の事で、

当時の俺は、ニュースで右往左往している大人の事なんか

気にもしていなかった。

だからバブル景気の時代なんて一度も実感した事はない。

でも、高校3年生になり、就職を考え始める歳になると、

途端に『バブル崩壊後の社会』というものが現実味を帯びてくる。

「それでも…」

と、また景気は回復するかもしれないと一縷の望みを託し、

時間稼ぎの為に大学に逃げた、高3の夏。

結局、おかわりで一浪までさせて貰い、時間を2、3年稼ぐことは出来たが、

景気は一向に良くならず、失望の中、就活を行う事となった。

 

「はあ?アンタ、そんな志望動機で通用すると思ってるの?」

心底くだらねぇという顔で面接官が就活生に小言を言っている。

中には半泣きになっている女の子もいる。

そんな子にさえ、

「おいおい、君は仕事で失敗しても泣いて誤魔化すんだろうね」

と追い討ちの様に嫌味を言う。

さっきからそんなやり取りが30分以上続いている。

圧迫面接だ。

 

バブルの崩壊後、日本中の企業が採用枠を削った。

それまで「人は宝」と綺麗事を言っていた企業経営者達は、

掌を返して「人件費はコスト」と主張したのだ。

もっとも割を食ったのは就活生。

自分たちは「金の卵」と持て囃され大事にされた人達は、

自分達の雇用を守る為に、未来ある若者を犠牲に差し出した。

就活生はベビーブーム世代だった事もあり、就活は困難を極めた。

大半の学生が100社近く会社を訪問するが、

内定はごく一部の誰が見ても優れた人材に集中し、

一般の学生達は日々ディスカウントされる自分の価値を甘んじて受け入れた。

 

ウハウハだったのは企業側だ。

就活の現場は完全なる買い手市場。

良い人材を選び放題。

まだ学歴社会の風潮が少し残る中、

本来だったら来てくれるはずのない高学歴の人材が面接に来る。

まさに採用バブルだ。

今まで大卒の人材なんて来てくれなかった会社にも

大勢のリクルーターが殺到した。

採用する側よりも良い学歴にやっかみもあった。

それ以上に少ない採用枠で外せないというプレッシャーもあったのだろう、

そんな風潮で生まれたのが圧迫面接だ。

 

建前上は、追い込む事で逆境にも耐えうる人材かを見極めるというものだった。

しかし、実際は自分より頭の良い相手に舐められたくないという劣等感の裏返し。

そして、何より気持ちいいのだ。

大学に行っていない自分が、大学生相手にやり込めるというのは。

相手が有名大学であればあるほどエクスタシーなのだろう。

 

そんな状況下で俺も、就活で疲弊と摩耗していく中、

なんだかんだでなんとかブラック企業に就職を決める「俺」。

その後、配属された飛び込み営業で色々あり、

なんだかんだで採用係に部署替えとなる。

飛び込み営業という毎日罵声や塩を投げつけられる毎日から

何はともあれ採用側に立つ事になった。

あの圧迫面接の日々を受ける側から、やる側に変わったのだ。

しかし、俺は圧迫面接をしなかった。

いや、出来なかったのだ。

「大丈夫!仕事は現場で優しい先輩が手取り足取り教えてくれるから」

「頑張れば、年収一千万も夢じゃない!」

「君、なんか最短で支店長になった吉田さんと雰囲気似てるわ!」

毎日がおべっかと、嘘の日々。

採用といってもブラック企業の採用は営業と同じで、

使い捨ての駒を常に補充し続ける為の機械だ。

毎日ノルマと現場からの欠員補充の催促に磨耗していく俺。

 

毎日、毎日、数字を追いかける。

「人材なんて放っておいてもどんどん集まるんだから、

 そいつらを取りこぼさずに入社させろ。」

それが会社からの指令であった。

「出来ない」

なんて言えない。

言えば、即会社を辞めさせられる。

辞めるように仕向けられるのだ。

毎日の様に、

「給料泥棒」

「お前のせいで他の仲間に迷惑がかかる」

と言われ続けて壊れていった人を何人も見た。

怒鳴られるなんて当たり前、直接、暴力を振るわれるなんて事も日常的だった。

パワハラやモラハラなんて言葉すらない時代、

労働基準監督署すら役に立たなかった。

役に立たない所ではない。

労基に相談に行ったが最後、

労基から

「おたくの会社の〇〇さんからこんな相談受けたけどそんな実態はあんの?」

と即企業に会社の内情をチクッた事がバレるのだ。

何分個人情報なんて概念すら無かったし、

当時は1人でも多く雇ってくれる企業が貴重だったから、

為政者サイドは企業の言いなり。

雇用の確保の為にも、企業に文句を言う人材は排除されたのだ。

会社側もそれを見張る役所も助けてはくれない。

まさに地獄だ。

 

それだけではない。

さらに追い打ちをかけるかの様に、

「スキルアップ」

だの、

「キャリアアップ」

と称して、仕事と責任はどんどん増えていった。

もちろん昇給も昇進もない。

あっても名ばかりの管理職が関の山。

サービス残業、サービス休日出勤でなんとかその業務をこなすのだった。

 

そんな生活が10年以上続いた。

給料は増えず、むしろ社会保険料などの控除で手取りは少なくなっていた。

しかし、その頃から変化が起き始める。

人が集まらなくなってきたのだ。

理由はいくつかあるが、要するに景気が良くなっていたのがまず一つ。

テレビでは相変わらず不景気を叫んでいたが、

その比較対象が「バブル期の景気」なのだから、笑ってしまう。

異常な状態だったから「ハジケた」のだ。

それを引き合いに出すのだから笑ってしまう。

実際はバブル崩壊から緩やかではあっても徐々に景気は上がっていたのだ。

だからこそ人手が必要になり、人材が回らなくなる。

しかも、少子化による新卒の絶対数の減少もそれに拍車をかけた。

ついに買い手市場、すなわち採用する企業が人材選び放題だった

「採用バブル」は終わりを告げたのだ。

 

各社は競って採用に力を入れ出す。

内定を出しても辞退される事が増え、内定式や懇親会など、

新卒へのおもてなしが積極的に行われた。

もてなすのは他でもない、俺たち超氷河期世代だ。

自分の就活の時より遥かに高い、むしろ今の給料よりも高い初任給を

提示しながら、ろくに敬語も使えない新卒たちをよいしょする毎日。

そのうち、モラハラ、パワハラ、アルハラなどの言葉が生まれ、

それを主張する世代に対応するのも俺達だった。

買い叩かれた俺達の世代は今も変わらず報われないのであった。

 

「はい」と「やります」しか言え無かった俺たちは、

今日もヘラヘラと笑いながら、激動の時代に今ももがき続けている。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

3級フィクサーパンチ(作者:アリマリア)(原作:Lobotomy Corporation)

▼ 一般転生者がLに関わるめんどくさい奴らを3級フィクサーパンチでぶん殴りながら、脱都市のため指定司書を目指す話。▼ なお主人公は別に3級フィクサーではない。▼ 今更ながらにLCとLORを履修して意気揚々と二次創作を読み漁ろうとしたのですが、好みの作品が少ない上失踪しているものが多すぎるので衝動的に自給自足します。▼ 好きなキャラはL社に関わる全員です。対戦…


総合評価:18421/評価:9.35/連載:77話/更新日時:2026年05月21日(木) 18:00 小説情報

アホみたいなオーラ量に対して、貧弱すぎる出力でどうしろと?(作者:村ショウ)(原作:HUNTER×HUNTER)

転生先はHUNTER×HUNTER。▼特典は「オーラ量メガ盛り」。▼勝ったな、と思ったら増えてたのは総量だけだった。▼潜在オーラ量は化け物級。▼でも顕在オーラ量はしょぼい。▼要するに、巨大なバッテリーを抱えてるのに出力が足りない。▼なので、真正面から最強を目指すのはやめた。▼蓄える、支援する、情報を集める、必要な時だけ倍率をかける。▼そんな感じで念能力をシス…


総合評価:9523/評価:7.77/連載:13話/更新日時:2026年05月12日(火) 22:32 小説情報

【街の解体屋】魔物解体配信、はじめます【初見歓迎】(作者:解体新書が泣いている)(オリジナル現代/冒険・バトル)

ダンジョンと魔物が当たり前に存在するこの世界で、解体師は慢性的な人手不足に悩んでいた。▼解体師の田中悠一、二十六歳。この現状をどうにかしたいと考えた彼は、実際に解体の様子を配信して仕事の魅力を発信しようと思いつく。▼「実際にやって見せれば伝わるはず」という至極真っ当な動機のもと、今日も淡々と魔物を配信で解体していく。▼ただ一つ誤算があったとすれば、独学で磨き…


総合評価:18625/評価:8.28/連載:31話/更新日時:2026年05月16日(土) 21:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>