1日に2回行動してみました。
今回のお話は前話から少し時間が飛びます。そして、ここが過去で一番大きな転換点となる場所です。一番長くなってると思いますが、ご了承ください。
それでは、どうぞ!
俺がかぐやと会ってからかなりの年月が経った。とは言っても恐らく1、2年程だと思う。
俺はアルスハリヤが持っていた知識、そして俺自身が病院で暇な時に読んで得た本の知識、そして、かぐやの突飛な発想を活用し何とかサバイバル生活を成し遂げる事に成功した。
そして、何とか到達した、少人数の人々が住んでいる集落に現在はお世話になっている。コレはアルスハリヤのアドバイスが無ければ確定で無理だった筈だ。コイツの人身掌握術がここで役に立つとは………当分足を向けて寝られねえな、なんて事をたまに考えていたりする。
まともなコミュニケーションを取れるものもそこまで無いのに、何でこんなこと出来るんだ……?なんて事を考えたりもするが、まぁアルスハリヤだしこれくらいのことは出来るんだろう、という事で自分を納得させている。
まぁそれはそれとして、たまに俺を出汁にして愉悦を得ようとするのは許さねえからな?これが百合じゃなくて本当に良かった……百合の間に挟まったら俺が死ぬ(精神的に)
まぁそんな訳で、今日まで何とか生き延びる事に成功していた。
◯
「ねーねーヒイロー?今日は何するの〜?」
「何するって言ってもな……いつも通り木の実とか採取したり、あとは貝とか集める感じになるんじゃ無いか?」
これでも一応住まわせてもらってる身だからな、ある程度働かねえと。
そんな事を考えていると、肩に乗っているかぐやが話し始めた。
「うーん、いやそりゃそうなんだけどさ〜こう何年も同じこと繰り返してたら流石に飽きるよ〜」
「まあ、そりゃそうだな」
生きる為にやっている事ではあるが、こうやって単調な作業をしていると飽きるというのは分かる。………俺にとってはどれも新鮮な体験だから、なんだかんだ言って飽きては無いけどな。
「けどなかぐや、俺はこうやって生きていけてるだけでも幸運なんだって思うんだよ」
「………幸運?」
「お前が昔居た未来………まあ表現は可笑しい気もするが、前にお前が居た世界にもな、きっとこんな風に、何気ない事を話したりなんて事が出来ない奴も居たんだ」
そう、きっと俺みたいな奴もいた。何も出来ない無力感に苛まれ、日々を苦痛の中過ごし、いつか治るんじゃ無いかって、そんな憧憬を抱いて、砕かれて………そんな奴も居たと、俺は思ってる。
「………そうなんだ、かぐや知らなかった」
「知らなくても無理は無い。お前の話を聞いて思ったが、そこまでその時代にいた訳じゃ無いんだろ?」
「そりゃ、そうだけどさー?けどちょっと無神経な事言ったのかもな〜……なんて事思っちゃう訳よ」
「そうやって少しずつ知っていけばいいさ。人に知らない事なんてのは幾らでもある。大事なのは、知ろうとする事を怠らない事だ。それさえし続けていれば、きっと今の自分よりもいい奴になれる」
「もっとも、俺はかぐやがいい奴だってのはもう分かってるけどな」
「………それ、無自覚で言ってるから腹立つなマジで」
そう言いながらそっぽを向くかぐや。……たまにこういう事あるけど、今だに何でか分かってないんだよなぁ………「何で?」って聞いたら「自分で考えろー!!」って感じのこと返されるのが大半だし……不思議なもんだ。
………ここはご機嫌でも取りに行くとするか。
「なあ、いい奴と言えばさ?かぐやが俺と会ってからよく話してた奴らの話、また聞かせてくれよ。酒寄とか、綾紬とか、色んな奴がいたんだろ?」
「え!?聞いてくれるの!?」
「まあ久しぶりにな。けど、そこまで長々と話すなよ?日もすぐ落ちる」
そりゃ、かぐやと酒寄の百合とか、酒寄とヤチヨ、それからかぐやの三つ巴の百合。綾紬と酒寄の百合などなど、ハッキリ言ってどれもが芸術に等しいものだと俺は思っているが、それをまさか、日を跨ぐまで話されるとは流石に思ってなかったんだよな……いや聞いてるだけで胸は躍ったんだけどな?
なんて、そんな事を思っていた。
「じゃあ改めて話そっかな〜!まずはかぐやと彩葉の馴れ初めから──」
◯
日は過ぎて、俺は少し遠くまで狩りをしに行っていたので、危ないと思いかぐやを置いて行き、終わったので帰っているところだ。かぐやが物凄い駄々を捏ねていたが「次から当分こんな事はしない」と約束してから来たのだ。
「ヒーロ君、君には問題点がいくつかある事に気が付いているか?」
そう問いかけるアルスハリヤ………まあ、それは分かってる。目を逸らしてただけで、本当はずっと前から気付いている。
「まず、この世界には外因性魔術演算子が存在しない。いくら内因性のものが体内で作り出せ、貯蓄出来ると言っても、肝心のそれが無ければ意味がない」
まずこれだ、俺は本来なら魔法が使えるが、この世界では使うことが出来ない。今となっては弓とか槍で何とか動物を狩りに行ってるからな。
故に、
「そして、最も致命的な二つ目の問題点………寿命だ」
「…………それが一番ヤバいよな〜実際」
これが一番の問題点だ。俺は生きていく上での目的を、取り敢えず『この物語をハッピーエンドまで持っていき、百合の鑑賞に努める観葉植物となる事』にしているのだが………どう考えても寿命が持たない。
持ってあと8.90年くらいだと思う。それ以上は恐らく無理だ。だからこそ現代にはどうやっても辿り着くことが出来ない。はっきり言って、詰んでいる。
たまーに考えたりもするのだが、何をどうしたらいけるのかが全く分からないので放置しているのが現状だ。
………だが、俺が何かを見落としている気がするんだよな……
なんて、そんな事を考えていると───
「おいヒーロ君、あれを見ろ」
そうアルスハリヤに言われ、見た方向には、煙が立ち上っていた。
「………煙…………?」
確かあの方角……集落がある所じゃ……ってマズイ!!
「ヤベェ!!かぐや達が危ない!!」
畜生!!最近上手く行き過ぎてたせいで油断してた!!早く行かねえと!!
そう思い、狩りで得た成果物を放り投げ、全力で走った。
走って集落に着いた頃には──何もかもがメチャクチャになっていた。
家は壊され、人々が住んでいた形跡も、何もかもが炎に包まれていた。幸いな事に人が亡くなっているような形跡は無かった為、恐らく逃げたのだと思う。そこは一先ず一安心だが………その中央に、佇んでいる奴がいた。
「……………」
熊だった。それもかなり大きい。恐らくこれに対処でき無かったのだろう。俺はこの集落の人のことは覚えてるからな。多分これを対処できる奴はここには居なかった。
そしてそれは───俺もだ。
「───────」
目が合った。ただそれだけで足がすくんだ。まるで勝ち目が見えない。たとえ逃げようとしても、逃げ足ですら勝つことは出来ないだろう。
どうする、どうすれば良い?逃げても戦おうとしてもどうしようも──
「避けろヒーロ!!」
そうアルスハリヤに言われて、すぐさまその場をバックステップで避けると───既にそこに熊は爪を振るっていた。
「………ハハッ……………怖い、な」
膝が笑っている。鳥肌が止まらない。……やっぱ勝てないな、コレ。……死んでも良いなんて言っておいてこの様だ。結局俺は今の生活が心地良いのだ。手放したくなんて無いのだ。結局俺はどこまで行っても中途半端な人間で───
と、そんな事を考えていると──近くにかぐやの宇宙船があり、そこを守るようにかぐやが居ることに気が付いた。
「…………は?」
マズイ、宇宙船が壊されたらいよいよかぐやは実体化すら出来なくなる。それだけじゃ無い、そうなったら、きっと、あの時の俺みたいにずっと寂しいまま過ご────
そう思った時にはもう体は動いていた。流れるような手つきで矢を放ち、ソイツの体を射抜く。
「グオオオオオオオオオォォォォォ!!!???」
どうやら相手さんは随分ご立腹しているようで、すぐさま俺を敵と見定めるような目つきをし始めた。
「…………上等だ」
体の震えは止まらない。ずっと恐怖が俺の心の中を蠢いている。何もするなと俺の本能が囁く……それでも、そうだとしても!!かぐやが悲しい思いをするかもしれない可能性なんて、見逃すかよ!!
そうして決意を固めているうちに、熊はこちらへ走ってきた。
「かかって来いよ獣風情が!!俺は百合の守護者だ!!例え敵わねえ戦なのだとしても、ここで逃げるなんてことは絶対にしねえ!!」
そう自分に発破をかけ、鼓舞するが──そこまで甘い敵じゃなかった。
弓も確かに効いていた。だがそれだけで死に至らせることは出来なかった。すぐに矢が尽きた。
ならば接近戦をと槍を使ってリーチを生かし、傷を与えていくが──途中で槍が折れた。そして、その隙を利用され、俺は左腕に傷を負った。
「っく………痛えな……」
何とか木の裏に隠れはしたが、血の匂いを辿られるはずだ………
マズイ、このままじゃ確実に殺される。そうなればそのまま標的をかぐやに変えるはずだ。きっと怖い思いをするはずだ、苦しい思いもするかもしれない…………
どうすれば良い?どうすれば………いや、待てよ?
「アルスハリヤ」
「何だ?もうハッキリ言ってこっちは諦めてるんだが?魔法も使えない、おまけに負傷までしている。この状態でどうやって勝利を掴みに行くんだ?」
「俺を
「………それは、もちろん可能だが……どうするつもりだ?」
「俺の頭でも覗けよ」
「…………コレは、正気か?最悪すぐに消滅する危険性すらあるぞ?」
「そんな事を言ってる場合じゃねえんだよ……!!もう俺には、
そういうと、アルスハリヤは腹の底から可笑しいとでもいうように笑い出した。
「……フフッ、ハハハハハハ!!!!良いだろう!その博打、この僕も乗ろうじゃないか!!君が命を賭けて何を魅せてくれるのか、それに『興味』が湧いた!!」
そして、俺は───人の身を捨て、この世ならざるモノになった。
○
ヒイロが目の前で戦ってくれている。それはきっと、かぐやのせいだ。かぐやの本体はこの宇宙船。コレはかぐやだけじゃ運ぶのに時間が掛かる。だから身動きが取れない………どうしよう。
ヒイロが使っていた矢が尽きた。槍も折れた。───痛そうな傷も負っていた。
「────いやだ」
すぐヒイロは木の影に隠れたけど、このままじゃヒイロが死んじゃう。どうすれば……どうすれば良いの……?かぐやには何も出来ないし……
なんて、そんな事を考えているうちに──目の前にそいつはいた。
「─────」
怖さの余り言葉が出なかった。そして、振るわれる爪を見て、自分の結末を察してしまったから、目を瞑った。
けど、死にたくなんてない。彩葉に会いたい。みんなにまた会いたい。それに………ヒイロと、もっともっと一緒に過ごしたい!ハッピーエンドにしたい!
だから、願ってしまったのだ。自分勝手に、相手のことも考えずに……ただ、自分を助けて欲しかったから。
「ヒイロ……………助けて………」
「そんな事!!!!!させるかよおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!」
ザシュッと、そんな音に続き、何かが蹴飛ばされたような音が響いた。
「……………もう、目を瞑る必要なんてねえぞ」
聞き覚えのある声を聞き、その声に従って目を開けると──あの熊は、もうどこにもいなかった。
そして、ヒイロがそこに立っていた。
「もう大丈夫だ。俺がアイツをぶっ倒した。だから──安心しろ」
………そっか、やっぱりヒイロっていつもかぐやを助けてくれるんだ。初めて会った時も、孤独で潰れそうなかぐやを助けてくれた。今だってそうだ。まるで、まるで───ヒーローみたいじゃん。
そんな事を思うと、少し胸がトクン、となったような気がした。不思議とどこか心地良いような、そんな鼓動だ。……いつか、これの意味もわかるようになるのかな?
「…………ありがとね、私の
そして、そのまま安心感に包まれながら、私は意識を落とすのだった。
○
「……ふぅ、良かった」
何とか間に合った…………どうやら、意識を失ってるだけみたいだな。
そして、少し遠くまで歩く。
ここなら───抑えなくても良いよな。
「………ぐっ、ああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁ!!!!!!!!」
身体中に激痛が走る。そしてそれと同時に、自分が無くなりそうになるあの感覚に身を悶えさせる。
「………コレは、当分魔法の使用は禁止だな。僕でも制御が難しい。何より、コレを高頻度ですれば、君の体が維持出来ない」
二条ヒイロは考えた。魔法が使えない最大の要因は『外に魔術演算子が無いこと』だと。なら話は簡単だ、
魔人になることで得られるメリット。その最たるものは、『自身の身体が魔術演算子で出来ており、体の変形、再生まで自由に出来ること』である。
ヒイロはコレを利用し『自身の体を構成している魔術演算子の一部を身体の周囲に纏うように薄く展開、尚且つ自分から決して離れない』ようにした。こうする事で擬似的に外因性魔術演算子を再現したのだ。
もちろんそんな事をすればタダでは済まない。自身を構成しているものの密度が下がるため、耐久力も下がる。当然、その状態で動けば全身にかかる負荷は計り知れないものになるだろう。
それに、そもそもの話だが───人が、自分の肉体が段々無くなっていく感覚に、そう簡単に耐えられるのだろうか?
否、断じて否である!故にこそ、魔法を此処で使うならば常にその感覚に耐え、尚且つ自身の意識を失わずに体を維持しなければならない。狂気の所業だ。
魔人の助けがあるとはいえ、そう出来るものではない。───少なくとも、この男を除けば。
「…………よく、そこまで出来るな?確かに僕もサポートはした。だが、負荷は君にしか掛かっていない。君にとっては愚問ではあるのかも知れないが、改めて聞かせてくれ………何故、そこまでする?」
魔人は問いかける。そこまでする意義は、意味はあるのか、と。
それに対し、人であった者は当然のように解を返した。息を切らしながらも。
「………………何度も、言ってるじゃねえか。俺は、百合の守護者なんだよ。……目の前で苦しんでる、女の子が居るなら、何が何でも助ける。………それに」
そう言い、かぐやの方をまるで助けてくれた
「………いつか、言ったろ?俺は、この子達が紡ぐ物語に、どうしようも無く救われたんだよ。例えそれで病が治らないのだとしても、見てる瞬間だけは、心が救われた、ような気がしたんだよ」
とても先程まで苦しんでいたとは思えないくらいの、温かな表情をヒイロは浮かべていた。
「俺にとっちゃ、光り輝く星みたいなもんだったんだよ、アイツら。だから、裏切りたくなんてなかった。───星を、何が何でも守り抜くっていう、自分の誓いを」
「…………そうか、相変わらず理解はできないな。だが───そのイカれ具合は、見ていて飽きない」
そう、魔人は微笑みながら、呟いた。
はい、と言うわけで、コレがヒイロ君が現実でも魔法を行使できる理由です。かなりメチャクチャな事してますが、その分の代償はしっかりとあります。少し前に魔眼を使用した時に感じた物はコレだったんですね。
さて、恐らく後1、2話で過去編も終わります。良ければ高評価、お気に入り登録などなどしてくれたら有り難いです!
それでは、また次回!