………ほんとーにお久しぶりです。まだ番外編を待っている人がいるかは分かんないんですけど、投稿しときますね………
一応当作品は完結してるので、番外編の更新はマジで不定期になります。それでも待ってくれている方がいるのなら、ごゆっくり、お楽しみくださせ。
それでは、どうぞ!
突然だが、留年という単語を皆は知っているだろうか。通常、一定の成績を残すことが出来たのなら進級、つまり学年が一年上がる訳だが、もしその一定の成績を残すことが出来なかったのならもう一年、その学年で学生生活を謳歌する事になる、といったものである。
正直どうやったらそんな留年するという事態になるのか、俺は度々疑問に思っていた。何せ俺でも一度は進級できたぐらいだ。よっぽどの事がないとそんなことありえねえだろ、と嘲笑っていた。
「えーつまり、ここを微分すると────」
眠気をなんとか吹き飛ばしながらシャーペンを握り、先生が黒板に書いた式をノートに書く。………何故こんな前置きをしたのかって?そりゃあ…………
俺が留年したからだよクソが!!
『にしてもだが………ヒーロ君は何だかんだ言って数千年は生きている筈だが……なぜ勉学の方面になるとここまで頭が働かないんだ?』
『俺が聞きてえよクソ………何で未だに高二の内容で手こずるんだよ…………』
頭の中で響く声……アルスハリヤの声に頭の中でそう返事を返す俺。流石に授業中に独り言呟くのはやべえ奴だからな……基本的に学校内ではアルスハリヤとの会話はこんな感じで行われている。
にしてもだ、コレが百合論とかユリニケーションとか、そう言った類の授業ならもはや俺が教師となっても良いレベルだってのに……何でただの数学になった途端にこうなるんだよ……
『……俺って特段授業態度が悪いわけでもなく、理解力もある筈なんだよ………にも関わらず、テストは平均レベル、或いは赤点………何でこうなるんだ?』
『君の胸に聞いてみれば答えは明白だろう(呆れ)』
………何でだろうな。テスト前にも関わらず、百合に関するアニメやネット小説を漁っていることは多分関係ないだろうしな………まあ大丈夫だろ!少なくとも隕石とかに比べたらこれしきの危機、簡単に乗り越えられるだろうしな!
あまりにも見当違いな思考をヒイロが重ねていると、気がつけば授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響いていた。
『お、やっと終わったか』
『そのようだ。さて、これで授業とやらも全て終わったようだが、この後の予定はどうなっているんだい?』
これまた頭を悩ませる質問がやってくる。………どうしたもんかなぁ……家に帰る、ってのは芦花が家にいる関係上、出来るだけ避けたい。
なんか最近、というかあの日以降様子が前の芦花とは違うしな………とは言え、家に帰る以外の選択肢がないのも事実だ。
……ってか、よくよく考えたら彩葉とかかぐやがいる可能性もあるのか…………はぁ……何でこんな事になっちまったんだよ………
瞬く間に帰る準備を済ませ、教室を出る。
え?1人で帰るのかって?誰が留年してるヤバい奴と話そうと思うんだよ。お陰で俺はこのクラスで腫れ物扱いされてます。………おかしいな、一応これでも俺、世界救った筈なんだけどな………何でこんな情けない事になってるんだ……?
思わずため息が漏れる。……どうしたもんかなぁ…………
階段を降り、下駄箱の前まで辿り着いた俺は、靴を履き替えようと靴を脱いでいたのだが……
ポン、と、手が置かれた。
「…………ん?」
おかしいな?俺は確か1人で帰ろうとしてた筈なんだが……何だこの手は?まさか、俺以外に百合を語り合える
期待を胸に振り返って見ると────見覚えのあるメンツが三人、俺の背後に立っていた。
「………はぁ、誰かと思えば彩葉達か………」
「流石に失礼すぎない?」
少しジト目で俺のことを睨んでくる彩葉。ごめんって。普段なら何とも思わねえんだが、タイミングがな………
「………まさかとは思うけど、クラスメイトの誰かだと思った、とか?」
「…………………」
「さっすが芦花、ヒイロの事になるとエスパー並みの推理力だねー」
「まあね。伊達に幼馴染してないから」
「………そーだよ!!クラスだとぼっちだからな俺!!なんか文句あんのか!?ええ!?」
………何でこんな悲しい事を言わねえといかねえんだ?私は悲しい……(ポロロン)
と、悲しみのあまり情緒が狂ってしまったのだが。
「…………ならさ、こういうのはどう?」
いい事思いついた!と言わんばかりの表情で俺に語りかけてくる彩葉。
その内容とは─────
◯
「という事でリスナー、今日はお前らの悩みを解決していこうと思う。ある程度やったら俺の悩みも聞いてくれ」
[いやどういう事?]
[まるで意味がわからんぞ!?]
[相変わらず結論から話すやつだなぁコイツ……]
[あ、もしかして等価交換的な奴?]
お、察しのいい奴もいるじゃねえか。
「そーそー、実は今の俺、人間関係に致命的な問題があってな……それについて色々聞きたいことがあるんだが……それだと大して面白くねえしなって思ったんだよ」
そこで、どうせならお悩み相談的なやつを先にやってからやればいいんじゃね?って考えた訳よ。
……まあ、リスナーのみんなから意見聞いてみれば?って案は彩葉が出したんだがな。
「ってな訳でだ。何かお悩み相談的なやつないか?ジャンジャン来てくれていいぜ?」
こちとら数千年生きてるからな。伊達に経験積んでる訳じゃねえってところ見せてやるよ。
そして少し待っていると、いろんなお悩み相談がチャットに流れて来たので、そのうち一つを切り取った。
「えー何々?」
『男子にする罰ゲームの候補を教えて欲しいです。因みに相手の特徴として一番に上がるのは、百合好きと言う点です』
「…………成程、罰ゲームと来たか。しかし、その同志は何やらかしたんだ……?できる事なら救ってやりたいところなんだが……まあ、リスナーの事を優先しないとな」
[……………むずくね?]
[人選ミス]
[悪いこと言わねえから、早いとこ別の人に聞いたほうがいい]
「は?お前ら、俺を舐めすぎだろ」
俺を誰だと思ってるんだよ。百合の守護者だぞ?故に、ソイツが一番苦しむことなんて容易に理解できてるんだよ!!
「答えは至ってシンプルだ。────百合に挟めばいい」
[え?]
[仮にも百合の守護者って名乗ってる奴がそれ言うのか……]
[失望しました。白百合のファンやめます]
「いや待てよ。………実際、コレが確実に効く手段だ。俺なら喉笛を描き切りたくなる程度の拷問に等しい』
[………まあ、それはそうだな]
[とはいえ、失礼かもしれんが……そもそも質問した人にそんなに親密な女友達っているのか?]
『失礼な、ちゃんと居ます。………ですが、具体的に何をすればいいのでしょうか?私も考えてみたのですが、中々思いつきません』
………ふむ。考えるだけでもう寒気が酷くなるが、リスナーのためだ、頑張るとしよう。
「………まず、最初はその女友達?といちゃついていてくれたらいい。と言っても、そこまで大層なことはしなくて良い。大事なのは、その女の子とのささやかなやり取り、そこに漢は『百合』を見出すんだよ」
そう、そして、ここからが大事だ。
「コレで仕込みは完了だ。漢は百合を見れた事で幸せの絶頂へ至った。後は…………奈落の底へ突き落とせば良い」
…………正直、何でこんな展開になったか分からない程度にはこの地獄を味わった。故に分かる。頂点から地に落ちるまでの痛みは、すでに底辺付近にいる時のそれとは比べ物にならないのだと。
「ちょっとしたタイミングでそいつに、二人で好意を見せてやれば良いんだ。それだけで簡単に俺は死ねる」
『………なら、白百合さんなら具体的にどんなシチュエーションが一番苦しいとかあったりしますか?』
「おおう………中々きつい質問だな……だが答えてみせる!……えーっと、だな………」
[なんかソイツが可哀想になって来たな]
[何やらかしたんだよマジで]
『………そこはまあ、秘密、と言う事で。あんまり深掘りはしないでくださいね?どうなるかは……保証できないので』
[ヒェッ………]
[こわい]
[闇を感じるな……どことなく]
なんか見ない方がいいようなコメント欄を見た気がしたので記憶から消し飛ばし、俺は渾身の力作を繰り出した。
「………まず、二人でお茶会的な奴に呼ぶんだ。それで、二人で色々準備するんだが、片方の女の子がちょっと不慣れな子でな?それでリスナーさんが────」
『ちょっと、危ないでしょ?もー、全く……◯◯は私がいないとダメなんだから』
『……うん、ありがとう。やっぱりリスナーちゃんは頼りになるね!』
『……別に、そんな事ないけど』
「的な、満更でもない感じでサポートしつつ準備していくんだよ」
[…………良いな、普通に]
[微笑ましい感じ]
[流石だな]
[コレが壊されると思うと吐き気が………]
「二人とも不慣れな状況の中支え合うのも良いかも知れんな」
『………駄目だぁ、全然上手くいかない……どうしたらいいのかな……?』
『だねー……でも、アイツを絶対喜ばせたいし、もうちょっと頑張ろうよ!』
『………!!そう、だよね……私達ならお菓子作りくらい、きっと出来るよね!!』
『『えい、えい、おー!!』』
『………まあそれはさておき、いよいよ準備が終わり、同志とリスナーさん、そして女の子の三人で席に座るわけだが………ここで、準備した茶請けを同志に『あーん』したらソイツのメンタルは見事にハートブレイクされる。何なら、それを『ずるい!!私もやりたいなー』とかいう感じで、奪い合う構図………とか、な…………ガハッ………!!」
駄目だ………これ以上の想像は命に関わる………!!
[おい、その先は地獄だぞ]
[…………死ねるな、コレは。何より嫌なのが、自分が挟まっているのだという自覚を持たざるを得ないってのが嫌だ]
[想像で致命傷負ってて草。いやまあワイもやけど………]
「………だろ?流石俺ってところだな。お気に召してくれたか?」
『はい!コレで思う存分罰ゲームできます!頑張ろうね?』
「………?そうだな、頑張ってくれ」
…………何だ?この、明らかに自分の首を絞めた様な錯覚は……俺はもしかして、取り返しのつかないことをしてしまったのではないかという錯覚………
いや、流石に俺の考え過ぎ、か………
一抹の不安を残しつつ他の相談にも乗ったので、いよいよ俺の番となった。
「……さて、と。いよいよ俺のお悩み相談だな」
[待ってました]
[割とコイツが悩んでる姿って想像できんから珍しいな]
[で?どんな内容なん?]
「…………簡潔に言うとな、実は諸々の事情で俺は、その………留年してな。で、現在クラスで物凄く浮いてるんだよ。どうすればいいと思うよ?」
[は?]
[草]
[あまりにも情けなさ過ぎるだろこの質問]
[アカン、流石に笑うわこれ]
[諸々の事情の方が遥かに気になる]
「………やっぱお前らに聞いたのが間違いな可能性出て来たな……はぁ……でもな、割と深刻な問題なんだよなぁコレ。流石にクラスには馴染みてえし………」
一体全体どうすればいいのか……
[取り敢えず話しかけてみるしかないんじゃね?]
[だよな。俺もそう思う]
「……でもなあ、向こう側が話したそうにしてねえし………」
[お前がそう思い込んでるだけな可能性ってないのか?]
悩みに悩んでいると、ある一つのコメントが目に留まった。
「………俺がそう思い込んでるだけな可能性、か……確かにあるな」
言われてみれば、俺はクラスメイトとちゃんと交友関係を築こうとしていなかった様な気がする。最初から『流石に留年してる奴と仲良くするのは嫌だよなぁ……』と言った感じでだ。
そういう色眼鏡でクラスメイトの事を見てしまっていた可能性は十分にある。
「………成程な、俺は思いの外、ちっぽけな事で悩んでたのかもしれんな。俺らしくもねぇ……ありがとなリスナー、お前らのおかげで目が覚めたぜ」
[良いってことよ]
[まあその分愉悦させてもらう予定だからな]
[もっと楽しませてくれよ?]
訂正、コイツらは邪悪な存在だ。今すぐ駆除を………◯さないと………(使命感)
◯
「………にしても、中々色んな質問があったな」
恋愛相談だったり、人生の岐路に立っている人達が質問して来たりと、かなり多岐にわたる質問が来た。………俺で良いのか?ってなる様な質問もあったが、まあ、答えられる部分はちゃんと答えたからな。うまくいって欲しいもんだ。
椅子に座りながらひとりごちていると、何やら美味しそうな香りがすることに今更気がついた。
「…………こりゃあ、ハンバーグ、か?」
「せいかーい」
その一言と共に背後から椅子ごと抱きついてくる同居人。………まあつまり、芦花だ。
「………………急に抱きつくなよ、心臓に悪い」
「だって、こうでもしないと意識してくれないでしょ?」
「…………まあ、それはそうだな」
よっぽどの事がない限り俺が動揺することは無い………と、思いたい。
俺がそう自分に言い聞かせていると、柔らかい腕が俺の胴から離れていった。
「でしょー?………それじゃあ、そろそろ晩御飯食べちゃおっか」
「おう。今日もありがとな」
「当番制だし当たり前でしょ?……それに、胃袋を掴むのも大事だしね?」
…………はぁ……ほんと、良い笑顔で言ってくれるよな。
なんだかんだ言って芦花とのこの生活にも少しずつ慣れて来てしまっている自分がいるのを確かに感じる。…………終わってる………絶対高校生がやることじゃねえよコレ……何ならコレって新婚夫婦みたいな─────やめよ、これ以上の想像は死ぬわ。俺が。
安堵と絶望が混じった様な感情の中、俺はサラダやハンバーグ、味噌汁にご飯といった料理が並んでいる机に近づき、座布団に座った。
……相変わらず美味そうだな。なんて考えていると、向かい側にいる芦花は呆れた様な顔で俺に問いかける。
「……にしても、やっぱりヒイロって難攻不落だよね。まぁ、いつか堕としてみせるけどさ」
「ふっ、舐めるなよ?伊達で数千年生きてる訳じゃねえんだ。もっと大人の魅力ってやつを身につけろ、小娘」
「……………へー、そういう事言っちゃうんだ?なら、こっちにも考えが─────」
「いただきまーす!!……おっ、うめえ!!やっぱり芦花のハンバーグは最高だな!!」
「……全く、調子いいんだから」
まあそんな訳で、今日も今日とて、不思議な関係を紡ぐ少年?少女達は、仲睦まじく食卓を囲むのでした。
尚、後日地獄を見る奴が一人いる事を、この時の二人は知らない。
なんだかんだ言ってこの作品を書くのが半年振りなのでキャラが若干ブレてる可能性があるんですが……楽しんでいただけたでしょうか?
次のお話は……まあ、察してる人もいるでしょうが、ヒイロ君が死にます。一応構想は練ってあるので、もしかしたら近日中に出せるかも……?
それでは、また次回お会いしましょう!