ゼロバンゲート番外編〜芦毛のノワール〜 作:茶坊主(ぽんぽん)
待ちに待ったご飯タイム
色々あったけど食べてる間は幸せ
さぁ、次は何を取りに行こうかな?
お皿を持って立ち上がった時だった
アフォガートが、口を開く
みんな席に座り直す
アフォガート
「みんな食べ終わったな。
聞いてくれ。
トレーナーは所用で到着が遅れる。
それまで、揉め事は何としても避けたい。
慎重に行動しよう。
夜は自室から出ないこと。
いいな。」
揉め事って……私のこと言ってるよね?
でも、口には出せない。
出したら本当に“そういう子”になってしまう気がする。
いや、でも……先に絡んできたのはバンダバーグって子のほうでしょ
そう思っても、
アフォガートの100点の言い方の前では、
全部が私のせいみたいに聞こえてしまう。
みんな一斉に返事をする
はい……
とりあえず、そう答えるしかなかった。
―
日が暮れて自室に案内される
テレビもない
トレーニング本でも読むのが正解なんだろうけど、私は食べ損ねたスイーツが気になって仕方なかった
こんな広い敷地なら、コンビニくらいあるよね
私は真っ黒なパーカーを羽織り、フードを目深に被って、自室を抜け出した
夜風が気持ちいい
星ってあんなに近いんだな
散歩に気を良くして、
部屋を抜け出した目的も忘れかけていた時だった
ウマ娘の集団が睨み合っている
先頭にいるのはバンダバーグ?
もう片方の集団にいるウマ娘も腕を組んだまま黙っていた
バンダバーグ
「今日は勘弁してくれ。
こっちは走れるやつがいない。
今夜は負けでいい」
???
「ふーん…、そういうことなら見逃してやってもいいけど。タダじゃね…。
ペナルティ付きならどう?」
バンダバーグ
「クソ…、それでいい。
海外遠征の奴らさえ来なきゃ練習場所の取り合いなんてしなくて済むのに…」
彼女は俯いたまま返事をし、踵を返した。
やりとりが聞こえてしまった
練習場所の取り合い?
私たちのせい?
その場所から動くことができなかった。
バンダバーグがこちらに気づく
「おい、そこに誰がいる!?」
どうしよ…、逃げたら余計怪しい
でも、白状したら明日、アフォガート達に怒られる
あーもう考えるのめんどくさい
そうだ日本のトレセン学園で騒ぎになったヤツいたわね
こっちでは知られてるわけないし…
よし!
私はフードで顔を隠したまま
前に出て名乗りを上げた
「ゼロバンゲート、通りすがりの最速スプリンターよ!」
夜の空気が一層冷えた
お呼びでないのは分かってる
そそくさと立ち去ろうとした時だった
???
「スプリンターですって。
バンダバーグ、あなた、面白い子を隠してたんじゃない。
この子が私に挑戦する気?」
バンダバーグと睨み合ってた集団の先頭にいたウマ娘が私の目の前に立ち塞がる
???
「ゼロバンゲート?
私がこの学園のスプリント女王、ワラビーラッシュって知って言ってるんでしょう?」
いやいやいやいや、知るわけないし
なんで臨戦体制になってるの?
バンダバーグはニヤリと笑った
「今日は出すつもりなかったんだけどな…」
こいつ…!
私をケンカに巻き込むつもり!?
ワラビーラッシュは口許に手を当ててわざとらしく笑う
ワラビー
「そういえば、今日やって来た子達のところ、有名な芦毛がいるんでしょ。
オグリなんとかだっけ?
芦毛は怪物になるんですって?
それとも白いだけかしら」
ピュアノワール
「今…なんて?」
ワラビー
「白ければ、大食らいで力任せに走ってても、才能があるように見られるから羨ましいって、言ってるの」
ピュアノワール
「芦毛なめんなよ!
白いってだけで特別扱いされたら、だれも苦労してないわ!
練習場のとりあい!?ケンカ!?
何でもいいけど、私を巻き込むな!」
ワラビー
「勝負するなら早くしてくださる?
ここは速さを求める者たちだけの社交場なの。」
ワラビーの口角が上がる
目は笑っていない
これは完全に下に見られてるわ
ピュアノワール
「やってやろうじゃないのよ…」
優等生も模範解答も
速いも遅いも関係ない
とにかく暴れてスッキリしたい
バンダバーグは私の肩をそっと掴む
「すまない…。
今日だけ助けてくれ。 靴は私のを貸すから。」
ピュアノワール
「うるさい!こんなやつ、裸足で十分!」
私はお気に入りのルームスリッパを天高く放り投げた
弧を描き地面に落ちたスリッパ
誰も動かない
それは決闘の合図だった。