ゼロバンゲート番外編〜芦毛のノワール〜 作:茶坊主(ぽんぽん)
バンダバーグ
「落ち着け!アイツの速さは本物だ。
裸足で挑むなんて無謀だぞ。」
ピュアノワール
「あーもう!うるさい!
アイツの次はアンタの番よ!
頭下げさせるまで、気が済まないの!」
ワラビーラッシュ
「あらあら、仲間割れ?
見苦しいわね。」
彼女は優雅な所作でスタートラインに立った
ワラビー
「怪我されても困るので、直線で私に追いつけたら認めてあげてもよろしくてよ?」
ピュアノワール
「本気じゃなかったとか言い訳なしだからね!
そこのウマ娘!
ちゃんとゴールライン見とけよ!」
ワラビー側のウマ娘がピュアノワールの気迫に押されて、ゴールラインに走って向かう
バンダバーグ
「いいんだな?
スタートの合図、いくぞ…。
よーい…スタート!」
ワラビーラッシュは理想的なスタートを切る
足音も聞こえないくらい軽やかなステップ
ああ、この子も最適解を地で行く
私の本気は…模範解答よりもずっと遠い
だから――
ピュアノワール
「ドスこぉーい!」
足を踏みしめる
地鳴りがするくらいの1歩
芝が抉れ、土が舞う
かっこ悪いでしょ?
でも、それでも私は前に出る
ワラビーは遠ざかっていく
だから何?
走り出したら前に進むしかない
届かないから諦める?
ここは勝負するところじゃない?
いちいち駆け引きなんかしてられないのよ!
ワラビー
「な、なに?
この揺れ…、気のせいよね?」
ピュアノワール
「退きなさーいっ!!」
私はワラビーの背中だけを追いかけた
衝突しようが知ったことじゃない
ワラビー
「な、なんなの…
私を追い抜くんじゃなくて、跳ね飛ばすつもり!?」
ピュアノワール
「私を本気にさせたあんたが悪い!
ぶつかったら…、ごめん!」
ワラビー
「キャァっ!?」
ワラビーは恐怖を感じ、脇に逸れた
私は彼女を抜き去り、ゴールラインを踏み越え…前のめりに倒れた
遠征初日の勝利は、泥と芝と土の味がした…。
―
ウマ娘
「ワラビーさんが直線勝負で抜かれた…?」
バンダバーグが駆け寄ってくる
「大丈夫か?
頭、打ったのか?」
私は徐々に怒りが収まるとともに、恥ずかしさが込み上げてきた
やってしまった…
こんな走りを見せないために、真面目にやってきたのに…
きっとみんな私を笑い者にする
正しい勝利じゃない
泥まみれの芦毛って…もうヤダ…。
バンダバーグの取り巻きも、ワラビーラッシュの取り巻きもみんな、私を囲んでる
ピュアノワール
「なにジロジロ見てんのよ!
見世物じゃないよ!」
バンダバーグ
「いや、十分、見どころあったが…」
ピュアノワール
「うるさいバカー!!
知らない!!」
私は裸足のままその場を逃げ出した
足の裏に芝が刺さる
痛い、でも、止まるよりはよかった
ワラビーラッシュ
「バンダバーグ…、あの子…?」
バンダバーグ
「芦毛のゼロ番目…、冗談だろ」
伝説を作るのは裸足の芦毛
その場にいた者は誰も語らない
けれど、同じ姿を想像していた
―
日が昇る
爽やかな朝が来た…とは言えない
朝練
みんな同じフォームを意識して走る
遠征組ウマ娘
「見た?
アフォガートの末脚、馬場が変わっても衰えないどころか、洗練されてない?」
ウマ娘
「タイム、伸びてる…。
ここで練習する時間なんてなかったのに。
やっぱり天才は違うわね」
アフォガートは自分の走った跡を見ていた
「なんだこの抉ったような足跡…」
ワラビーラッシュ
「ねぇ、遠征組の人。
芦毛のゼロ番目をご存知ない?」
ワラビーは同じ足跡を見ながら尋ねた
アフォガート
「アシゲノゼロバン…??
そんな名前のウマ娘はいない」
ワラビーラッシュ
「あら、残念。お気になさらないで。
申し遅れたわね。私はワラビーラッシュ。
この学園随一のスプリンターよ。
うふふ…あなたも速いけれど、
次の選考会は、芦毛のゼロ番と私が選ばれる。
今のうちに観光でもしておいたら?」
アフォガート
「忠告痛み入る。
選考対象になるよう努力するよ。」
ワラビーラッシュはフンと鼻をならして、踵を返した
昨日の嫌味なやつ
私を笑いに来たのかしら…
ウマ娘
「ノワール〜、次、あなたの番よ」
ピュアノワール
「あ、はい!行きます!」
正しいフォーム、背筋を伸ばし足をまっすぐ前に出す
今度は転ばないように走る
ウマ娘
「うん、まあまあね。はい、次!」
やっぱり天才の影に隠れる
芦毛のゼロ番目なんて、幻だったのよ。