ゼロバンゲート番外編〜芦毛のノワール〜 作:茶坊主(ぽんぽん)
ワラビーラッシュ
「芦毛のゼロ番!
また会えるなんて、とても嬉しい!」
なんで?
私が暗闇から顔を出した途端、ワラビーラッシュは手を引っ張ってきた
ワラビーラッシュ
「あなたの昨日の走り…、私の目に焼き付いて離れませんの。
さぁ、共に速さを求める同志になりませんこと?」
ワラビーラッシュの目は輝いている
昨日の挑発的な眼差しじゃない。
ずっと欲しかったものを見つけた子どものような純粋な目だ。
バンダバーグ
「待ちやがれ!
こいつは私が最初に目をつけたんだ!
芦毛の伝説の再来を引き抜くのは私だっての!」
バンダバーグは、ワラビーラッシュに掴まれた手とは逆の手を掴んで引っ張ってくる
ピュアノワール
「両方から引っ張んないで!
特にあんたは力強いのよ、この歯ぎしり女!」
バンダバーグはまた奥歯を噛み締める
ググッと音が聞こえた
ピュアノワール
「そもそも芦毛の再来って何?
なんでこんな時間にあんた達、睨み合ってんのよ!」
ワラビーラッシュ
「…は?」
その場にいる全員の目が点になった
バンダバーグ
「夜露に濡れた芝の方が、本番の馬場に近いし、本格的な練習ができる。
どっちが練習場を使うかを賭けたレースをしてるんだ。
そんなことは誰でも知ってるはずだが…」
ワラビーラッシュ
「あなたもしかして…この学校の生徒じゃない?」
私はフードを更に目深に被った
…マズイ、また地雷を踏んだ。
その場の空気が一瞬で変わる。
夜露の冷たさが、肌に刺さるように感じた。
ワラビーラッシュは、フードの影を覗き込むように続ける
「本当に芦毛の伝説が降臨してきたのね…。
さぞかし不安だったでしょう?
私のチームは速ければ大歓迎よ。
さぁ、私と共にいらっしゃい」
彼女は細く白い指がフードの中に入る
ち、違う!
なんか変な方向に話が進んでる!
私は後ろに飛び退いた。
ピュアノワール
「そ、そそ!私は昨日、ここに降臨したのよ!
だから、ちょっと色々と不便で…事情に疎いのはそのせい、多分!
と、とにかく…スリッパ返して?
そしたら、帰るから、勝負でも何でもご勝手にね?」
バンダバーグの顔が強ばる
「…だめだ。私と勝負しろ。」
は?
バンダバーグ
「昨日みたく勝負して決めようや。
お前が勝ったら、スリッパは返す。
私が勝ったら、あんたはウチのチームに入る。それでどうだ?」
私が得してないんだけど?
でも、断れる雰囲気じゃなかった。
ワラビーラッシュ
「あら、そんなこと言って、恥をかくのはどちらかしら?
まぁ、いいわ。味方にするにしても、敵同士になっても競い合うことには変わりない。
今夜は私が見届けて差し上げます。」
ワラビーラッシュは、軽やかな足でスタートラインに立った
私は…どうしたらいい?
正解を教えてくれる人はいない
芝の匂いが鼻をくすぐる
脚が芝を踏む感覚を思い出させる
―やるしかない
どうせメインレースで出番はないんだ。
旅の恥はかき捨てよ。
私はスニーカーの靴紐を固く結び直した。
バンダバーグ
「裸足じゃなくていいのか?」
彼女は少し残念そうに見下ろしてくる
ピュアノワール
「じゃかましいわ!
後悔させてやるんだから! このスリッパ泥棒!」
バンダバーグはフンっと、鼻を鳴らしスタートラインに立った
風が吹く
私も深呼吸を一つしてスタートラインに並ぶ
芝の匂い
足の感覚
昨日のことをちゃんと覚えている
普段の私だって十分速い
それを証明してやるんだ