ゼロバンゲート番外編〜芦毛のノワール〜 作:茶坊主(ぽんぽん)
ワラビーラッシュが手を振り下ろす
「よーい!スタート!!」
私は低い姿勢のまま地面を蹴った
日本のトレセンと違って、芝が深く土が軟らかい
一歩ごとに足を捕まれる感覚
-けれど!
それだけ踏み込みには力が入る
蹴れば蹴るほど前に飛び出せるのがわかった。
-いける!
私は普段通りでも速い!
バンダバーグを後ろに見ながら、私は最初のコーナーを回った
内を回り、位置取りもうまくいってる
ふふん、どう?
私も真面目に努力してきたんだから!
ワラビーラッシュ
「あら、今日は意外と大人しいのね…。
相手を選んでいるのかしら?」
ワラビーラッシュが首を傾げた
その直後だった
背後に黒い影が迫る
第二コーナーの手前、大外からバンダバーグが飛び出てきた
大股、がむしゃらに手を振っている
ちっとも綺麗じゃない
ーでも、速い!
距離が詰まる
私は脚を解放して引き離す
これくらいのせめぎ合いなら、何度も経験してきた
気圧されたら負け
もう少し…!
次のコーナーを抜ければ、直線はない
逃げ切る!
そう確信した瞬間、
視界の端に影がすり抜ける
ゴールラインを先に割ったのはバンダバーグ
バンダバーグ
「はぁ…はぁ…、こんなもんじゃないだろ。
本気でやれ。」
バンダバーグは歯を食いしばって、睨みつけてくる
ピュアノワール
「本気だけど…」
私は肩で息をしながら、にらみ返した。
バンダバーグ
「昨日のお前はもっと速かった。
何よりも、力強さがあった。
なんで、その走りを見せないんだ」
昨日の私…、あんなもの私じゃない
地面を踏んづけて、身体を揺らして
まるで暴走してるみたい
あんな走りを見せたら笑われるだけ
やっぱりこいつら、
私を笑いものにするつもりなんだ
私は俯いて芝を見つめていた
バンダバーグ
「まぁ、いい。勝ちは勝ちだ。
今から私らがこの場所を使う。
芦毛のゼロ番、お前も残れよ」
ワラビーラッシュ
「今日のところは退散いたしますわ。
またお会いしましょう、芦毛のゼロさん。」
ワラビーラッシュと取り巻き達は、立ち去っていく。
誰も足音を残さない。
優雅な走りが身についている。
ー忌忌しいと思う
バンダバーグ
「おい、いつまで俯いてるんだ。
練習始めるぞ」
バンダバーグに腕を捕まれたその時、
「ピュアノワール…!」
黒い影が駆け寄ってくる
アフォガートだ。
いつも最悪のタイミングで現れるのよね。
アフォガート
「ピュアノワールなんだろ?
寮から居なくなったって、みんな探してる。
ここで何してるの?」
いつもの“優等生”の声じゃない。
バンダバーグ
「いや、こいつは…ウチのチームの新人で…」
ピュアノワール
「そ、そうよ!
何を隠そう私が期待の新人、アシゲノゼロバン…なんちゃって…、ア…、アハハ…」
手で目元を覆い隠す
そんなことしても、意味ないのに
……見えてないはずなのに、視線が刺さる
呼吸がうまくできない
もう最悪だ
あの走りを見られていたら――終わりだ
消えてしまいたい
アフォガート
「何言ってるんだ。早く戻ろう。
みんな心配している…。」
アフォガートの声色がいつもと違う
本気で心配してくれている…?
バンダバーグ
「海外から来た優等生には関係ない。
こいつは私がチームに引き入れたんだ。
お呼びじゃない。さっさと帰りな。」
バンダバーグがアフォガートの腕をつかんだ
アフォガート
「君こそ口を出さないでくれ。
彼女は私たちの“仲間”だ。」
掴まれた腕を掴み返して振りほどく
普段は見せない様子
空気が重くなる
私は呼吸が浅くなる
もうどうしたらいいのかわからない
脚が勝手にうしろずさりしていた
そして、芝を蹴って逃げ出した
アフォガート
「待って!どこに行くつもり!?」
ピュアノワール
「どこだっていい!
あんたたちのいないところよ!!」
必死で踏みつけた芝が抉れる
まただ。
かっこ悪い走り方
地面を揺らして、大きな音を立てて
でも、逃げ切るにはこうするしかない
もう戻れない
バンダバーグ
「あの走り方…やっぱりマグレじゃないんだよな…」
時計が深夜0時を告げていた