ゼロバンゲート番外編〜芦毛のノワール〜   作:茶坊主(ぽんぽん)

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第9話

結局、私は何もできないまま選考会な当日を迎えた

 

敷地内のレース場は関係者以外立ち入り禁止なのに

 

まるで公式レースの日みたい

 

いちばん盛り上がっているのは、

ワラビーラッシュ陣営

 

仲間の数もファンの数も物凄く多い

 

指笛を鳴らすやつ

紙吹雪を投げるやつ

手作り団扇をかかげるやつ

 

日本の推し活、ここまで浸透してるの?

 

ワラビーラッシュはその期待を一身に受けて

パドックで手を振っていた

 

続いて入ってきたのは、アフォガート

包帯は外れているが、どこか表情は暗い

 

私は、彼女を直視できなかった。

 

アフォガートは、

その場でトントンと足を揃えて小刻みに跳ねた

 

一瞬だけ、眉間にシワがよった…ように見えた

 

???

「バンディ!バンディ!

俺やー!俺がついてるぞー!!

頑張れバンディ!!!」

 

ワラビーラッシュへの声援をかき消すくらいの大声

 

ラム酒の瓶を振り回し、酒焼けした声で

騒いでいる男がいる

 

ずんぐりむっくり

目はこれでもかってくらい見開いている

 

バンダバーグ

「親父!!うるさいっ!!!」

バンダバーグは耳まで真っ赤にしたまま

ギリギリと歯ぎしりの音を立てる

 

あの子も地元の期待の星なのね

少しだけ嫉妬した

 

ーー

 

ワラビーラッシュ

「優等生さん、戯言なのだけど聞いてくださる?」

 

アフォガートは不意に呼び止められて

目を見開いた

 

「私、本来ならあまり勝敗には興味無いのだけれど、今日はあなたに勝つ理由ができたわ。」

 

ワラビーラッシュは観客席を見つめる

私と目が合う

 

「あなたを完膚なきまでに負かして、

あの芦毛の子をレースに引っ張り出して差しあげます。

もちろん、”白いだけヒロイン”ではなくて、

”芦毛のゼロ”さんとしてね。」

 

アフォガート

「…!?」

 

ワラビーラッシュは目を細めてから

ゲートの方へ静々と歩いていった

 

 

ゲートに入ると、

ワラビーラッシュは優雅に手を振り、

観客の歓声を受け止めていた。

 

その隣に、アフォガートが並ぶ。

 

普段の涼しげな微笑みはない。

代わりにあるのは、

静かな怒りと、揺るぎない覚悟。

 

アフォガート

「一言だけ言わせて。

 あなたの相手は私。」

 

声は震えていない。

むしろ、いつもより低くて強い。

 

ワラビーラッシュはゆっくりと横目で見た。

その瞳は、まるで獲物を見つけた猛禽類のように細められる。

 

ワラビーラッシュ

「ふふ……ようやく“走者の顔”になりましたわね。

 でも、あなたを倒すのは”手段”でしかありませんの。

 本命は――あの子。」

 

アフォガートの眉がわずかに動く。

でも言い返さない。

言い返す必要がない。

 

走りで答える覚悟ができているから。

 

スタートのフラッグが上がり、

金属音とともにゲートが一斉に開く。

 

アフォガートは迷いなく飛び出した。

まるで、

ワラビーラッシュの挑発も

私の罪悪感も

全部振り払うように

 

その加速は、

普段の優等生の走りじゃない。

 

もっと荒くて、

もっと必死で、

もっと“人間味”がある。

 

勝負を賭けたもののスタートダッシュだった

 

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