未来を掴むのは、幻か真か……   作:なかムー

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 皆さま初めましての人は初めまして、それ以外の人はお待たせしました、なかむーです。今回は新作を投稿します。

 今回は絶賛放送中のアニメ「カードファイト!! ヴァンガード DivineZ 幻真星戦編」の【幻魔星戦】を基にしたD4DJをお送りします。

 それでは、本編をどうぞ。


第一話 流川京介、赫月の脅威を知る!

 リリリリとフォトンのヴァンガードファイトも交えたイベントが終わって早数週間。イベント関係者全員は何もない日常を送っていた。

 

 そんな中、京介は喫茶店バイナルにて誰かと待ち合わせているのか二人用の座席に座って静かにスマホを操作していた。

 

 

 「お待たせしました。コーヒーとガトーショコラになります」

 

 

 暫くすると、京介が注文していたであろう物が彼の席に配膳された。ちなみにたった今京介が注文した物を持ってきた人物は、バイナルのマスターや愛莉ではなく、バイナルで5年ほど働いているという日下部(くさかべ) (とおる)という外見二十代前半の女性であった。

 

 理由としては、愛莉達がアルテミスを再結成した際に一度バイナルを辞めてユニットに専念していたが、落ち着いたという事でバイナルに再就職したのだ(ちなみに、愛莉がアルテミスを再結成して、暫く日本を離れている間は、マスター曰く『機転を利かせて休職扱いにしていた』との事)。

 

 そんな愛莉はアルテミスの活動もあるため、彼女に苦労させまいと、透が愛莉の分まで精一杯働いているのだ。

 

 ちなみに非番は音楽を聞いていたり、DJライブに足を運んでいたりする(更に言えば、給料の大半はDJライブやグッズとかにつぎ込んでいるとの事)。

 

 あとはハピアラやリリリリ…といったユニット達も彼と顔馴染みである(当然京介も、だが)。

 

 そんは透が配膳したコーヒーを京介が飲んでいると、バイナルの出入り口から来客を告げる鐘が鳴り響いた。そこにいたのは希美であった。

 

 事前に話を聞いてたからか、希美はコーヒーとお菓子を注文すると共に、京介を見るなり彼の座席に向かうと、対面になる形で相席するのであった。

 

 

 「お待たせ京介くん」

 「別に待ってないさ」

 

 

 この状況は誰がどう見てもデートにしか見えないが、京介は美夢という恋人が、希美は颯樹に想いを寄せているため、そう見えないのが現状である。

 

 

 「……そういや、アンタはアイドルだったな」

 「ふっふーん♪」

 

 

 希美を見ると、普段とは違う装いに京介は彼女がアイドルであると改めて実感した。正確に言えば忘れかけてた…と言った方が正しいが。

 

 

 「……の、割には颯樹さんからキツめに扱かれてるらしいが?」

 「うぐっ!!私だって頑張ってるんだからー!!!!」

 

 

 だが希美の威厳をぶち壊すかのような指摘をするも、彼女はそれを立て直すかのように弁明した。

 

 

 「それで本題に入ろう、希美。話ってなんだ?言っておくが、金なら貸さないぞ?」

 「いや、お金の貸し借りじゃないからね?」

 

 

 しかし今回の目的は世間話をする事では無いため、早速本題に入る京介であった。しかし全く的外れな事を聞き出したのだが。

 

 

 「えっ、てっきり何かしらのドジ踏んで借金作って地下送りにされる恐れがあるから、その金を工面するために呼んだんじゃないの?」

 「全くもって違うからねっ⁉︎」

 「そしてその後希美は地下帝国にて地下アイドルに…」

 「ならないからねっ⁉︎ていうか勝手に話を飛躍しないで!」

 

 

 まさか自身が想像だにしなかった事を京介が言ってのけるも、今回の本題はそこではないため、希美は一度咳払いをすると、懐から一枚のヴァンガードのカードを手に取って京介に見せた。

 

 

 そのカードは《紫炎の幻真獣 カルヴァネイル》と書かれており、何やら特徴的な紋章が浮かんでいた。

 

 

 「何だ、それは」

 「朝起きたら私の枕元にあって……。この紋章、確かカードにも同じ物があったはずなんだよね〜」

 

 

 『なんと突拍子も無い話…』と感じた京介であるが、カードに浮かべられている紋章をよく見ていると、脳裏からある事が浮かんだ。

 

 

 「……ちょっと待て。まさか、アンタもか?」

 「私……も?って、事は京介くんも?」

 「あぁ。俺の場合はコレだがな」

 

 

 京介がそう言うと鞄からデッキケースを取り出して希美に見せるように差し出した。そこから希美は『見てみろ』と捉えたのか、一言断りを入れて京介からデッキケースを受け取って中身を確認した。

 

 

 「《月の門番 ヴェイズルーグ》、《烏輪の幻真獣 レヴノローグ》……なにこれ、《幻真獣》って書かれているカード、私も知らないものばかりなんだけど」

 

 

 デッキの中身を確認した希美の一言が正にそれであった。ヴァンガードの経験が長い部類の京介と希美も、《幻真獣》なんてカテゴリは聞いた覚えも無いし、今現在スマホを使って検索機能を用いて調べても、検索結果は皆無だった。

 

 一体誰が……と頭を悩ませいる二人であるが、突如《月の門番 ヴェイズルーグ》のカードが宙に浮かび始めたのだ。

 

 

 「な、何っ⁉︎」

 「カードが…⁉︎」

 

 

 突然の事で二人は当然驚くが、そんな事など露知らずカードは光り始めた。しかし一分もしないうちに光は収まったが、カードは以前浮いたままだ。

 

 

 「なんでカードが?どうして……」

 『それは我が答えよう』

 

 

 疑問に思う京介の口を挟む形で、誰かが話に割って入った。最初は自分の側にいる希美であるとタカを括ったが、彼女は何も知らないみたいで首をブンブンと横に振った。

 

 

 『此処が地球か。思っていたより空気が綺麗ではあるな。尤も、我の身体はクレイにあるから、感じる事は出来ぬのだが』

 

 

 ……当然この声の持ち主は京介と希美のものではない。それを確認する様に、希美は声をかけた。

 

 

 「あのー、もしかしてあなたの声ですか…?それとあなたは誰ですか?それとあなたの目的はなんですか?」

 『質問は一つずつにして欲しいのと、もう少しゆっくり喋って貰いたいのだが…突然の事態だからそう思うのも無理も無いな。そうだ、君達に声を掛けたのは我だ』

 

 

 恐る恐る声の主に質問にする希美であるが、早口であったのと質問の多さに咎められるものの……声の主はまず一つ目の質問に答えた。

 

 

 「そうだったんですね…それで」

 『分かっている。我の事だろう?我は…』

 「《月の門番 ヴェイズルーグ》、だろ?」

 『そうだ』

 

 

 次に何者か名乗ろうとするも、何か理解していた京介が横から口を挟んできた。

 

 

 「ヴェイズルーグって名前が書かれて、『実は他のユニットでした』なんて余程の事じゃ無い限り無理があるだろ」

 

 

 丁寧に名前まで書いてあるのに別ユニットなのは流石に無理があると京介は指摘した。

 

 

 『我はヴェイズルーグ。月より生まれし災いを打倒せし者だ』

 

 

 ヴェイズルーグの自己紹介を受け、二人は内心困惑していた。それもそうだ、まさかカードゲームのユニットが今目の前にいる状況など絶対にありえないと感じるからである。

 

 

 「……まぁヴァンガードのユニットが何故実在するかはこの際置いておこう」

 「置いとくんだ…」

 「じゃないと話が進まない。それでヴェイズルーグ、最後の質問だ」

 

 

 しかし困惑しているだけでは話が進まないので、気持ちを切り替えてヴェイズルーグに最後の質問を問いかけた。

 

 

 『言わずとも分かる。我の目的だろ?それは簡単な事……『赫月病』の解決だ』

 

 

 ヴェイズルーグから語られた目的…『赫月病』なるものの解決だったが、当然京介達には馴染みの無い単語なので理解が出来なかった。

 

 

 「『赫月病』?」

 『『赫月病』とは、月特有の異変であり、赤く染まった月から発せられた魔力によって本星の生物を狂わせるものだ。それが惑星クレイにも被害は出ている』

 「惑星クレイ⁉︎クレイって本当にあるの⁉︎」

 『当然。クレイの一ユニットである我がいるのだ、クレイは実在する』

 

 

 その事を既に察していたヴェイズルーグは、二人に『赫月病』がどんなものであるか説明するも、途中で『惑星クレイ』という言葉に反応した希美は目を輝かせてヴェイズルーグに詰め寄った。

 

 

 「ハイハイ、話の腰を折らない。それでヴェイズルーグ、クレイが起こった事なのに何故お前は地球に来たんだ? 此処まで話を聞くと何も関係無いようなんだが」

 

 

 希美をヴェイズルーグから無理矢理引き剥がすと同時に、京介は彼の目的と地球に接点が無い事に指摘した。

 

 

 『関係はある。これから起こる事だから…というのが正確だな』

 「これから?まさか…」

 「もしかして…!」

 

 

 ヴェイズルーグの一言に京介達は全てを悟るのであった。

 

 

 『そうだ。地球にも『赫月病』の脅威が迫っている。だから我は地球に来たのだ』

 

 

 漸くヴェイズルーグの目的が分かってもなお、それでも漠然とした事に京介と希美は黙るしかなかった。まさかそんな事が地球にも被害が及ぶなんて思いもしないのだから。

 

 

 「…ま、まぁお前の話はまだ信じられない点は挙げればキリがない事だらけだから信じるか否かは分からん」

 『だろうな』

 「だけど、惑星クレイのユニットは実在する…というのは確かで、今回の一件の危険性を教えてくれた。それも確かだな」

 

 

 至らない点は山ほどあるものの、それでも自分の前の起きている事を事実として受け入れる京介であった。

 

 

 「……よし分かった。お前に協力するよ、ヴェイズルーグ」

 『流石は我が先導者(マイ・ヴァンガード)、君なら信じてくれると思ったよ。それで君はノゾミと言ったな、君は我の話を信じるのか?』

 「私も京介くんと同じ気持ちです…でも、その『赫月病』…だっけ、それの所為で私や颯樹くんの未来に大きく影響を及ぼすというのなら見過ごせません!」

 『という事は我に協力する…という解釈でいいのだな?』

 「はい!」

 

 

 最終的に京介と希美はヴェイズルーグに協力する選択をするのであった。ヴェイズルーグ本人もやはりと言わんばかりの表情に見えた。

 

 

 「それで『赫月病』の脅威からどうすれば守ればいいんだ?」

 『君達にはヴァンガードファイトをして貰う事になる』

 「ヴァンガードファイト?誰と?」

 

 

 しかしヴェイズルーグの口から聞かされた『赫月病』の対策…それはヴァンガードファイトであると告げられるも、そのファイト相手が誰か……という事までは分からなかった。

 

 

 『『赫月病』によって変化を遂げたユニット…『幻影(ファントム)ユニット』を所有するファイター……幻影(ファントム)ファイターと呼ばれる者達だ』

 

 

 「幻影、ユニット…」

 「幻影ファイターねぇ…」

 『クレイで『赫月病』によって影響を受けたユニットを使用するファイター…と言えば分かるか?』

 「それは理解できるが、影響を受けたユニットはどうなるんだ?」

 『いい質問だ。見た目が変わったり種族に『幻影』が含まれる上に、ユニットの大半は元から所属した国家が変わる者が多い』

 

 

 ユニットに大きく影響を与える事に京介はある種の恐怖を感じるも、それと同時に彼は一つの疑念を抱いた。

 

 

 「でも俺達にファイトを任せるからには、何か理由があるんだろ?」

 『そうだ。君達には()()()()()の所有者に選ばれた。だからファイトを任せたのだ』

 「あるカード?」

 

 

 京介と希美にある共通点があったようで、ヴェイズルーグは続けた。

 

 

 『『赫月病』に対抗する唯一のカード…『幻真獣カード』だ』

 

 

 「『幻真獣カード』?」

 「赫月の魔力を受けずに幻影ユニットに唯一出来るカードの事だ。そしてそれを所有する者は『幻真獣ファイター』と呼ばれている。君達二人にもそのカードが手元にあるはずだ」

 「あっ!もしかしてコレの事?」

 

 

 ヴェイズルーグの説明を受けた希美は思い出したかのように懐から《紫炎の幻真獣 カルヴァネイル》を取り出してヴェイズルーグに見せた。

 

 

 『そうだ。それとそのカードに刻まれている紋章は月だ。我は月の守護者を担っている身で、幻真獣の大半は我が所属する国家に属している』

 「だから[ブラントゲート]に幻真獣が多いんだな」

 

 

 デッキを広げて中身を確認した京介はヴェイズルーグの説明で腑に落ちなかった事柄を全て理解した。

 

 

 「それでヴェイズルーグ。一つ質問だ」

 『なんだ?』

 「俺達二人だけで幻影ファイターと戦わないといけないのか?」

 

 

 幻影ファイターの数は把握できていないのに対して幻真獣ファイターは二人…その時点で戦力差は幻真獣ファイターが不利なのは明白だ。

 

 

 『心配するな、幻真獣ファイターは君達を含めて六人いる。幻真獣の使い手はクレイの国家に一体は必ず属している』

 

 

 それでも合計六人だけど、これからの戦いにおいて数は重要になる。一人でも多くいるのは心強いのは当然の事だ。

 

 

 「それじゃ早速幻真獣カードの所有者を探しにいこう!」

 「待て待て」

 

 

 『善は急げ』と捉えたのか、希美は立ち上がって幻真獣ファイターを探すために動こうとするも、京介に待ったを掛けられた。

 

 

 「世界の総人口は約80億と聞くぞ」

 『ほう。地球にはそんなに人間がいるのか』

 「少し黙っててくれ……そんな中からあと四人を見つけるのは10%はおろか1%も満たしてないんだぞ?」

 

 

 この時点で幻真獣ファイターが何処にいるのか全く把握出来ていない。それに『赫月病』の脅威が地球に迫っているため、短期間で残り四人を探さなければならない。

 

 

 『だが安心しろ。残りの幻真獣カードの所有者全員はこの東京とやらに集中している』

 「そうなの⁉︎なら早く探しに行こう!」

 

 

 しかしそれを見かねたヴェイズルーグから補足が入った事により希美が動こうとした。

 

 

 「だから待てって!いくら東京に捜索範囲が絞れたとはいえ、それでも総人口は約1400万だぞ?それでも1%も無いから、目に見えてないタクシーを捕まえるのと同じくらい難しい。見つけるのはそう簡単じゃないぞ?」

 「うっ…!」

 

 

 いくら東京に幻真獣カードが集中しているとはいえ、一つの地区でも人口は50000人ほどいる。それらを加味しても1%も満たしてないのだ。だが探さないと何も始まらないので、何処から捜索するか頭を悩ませるばかりであった。

 

 

 しかしその時、京介のスマホから着信音が鳴り響いたので、スマホを取り出した。

 

 

 『それがスマホという物か』

 「そうだよ。最近じゃ財布代わりにもなるから持ち歩く人も結構いるぞ」

 『人々の生活必需品というわけだな』

 「そんなところだ……どうした美夢?」

 

 

 スマホを見て、地球の現代文明に関心しているヴェイズルーグをよそに、京介は電話の相手…桜田(さくらだ) 美夢(みゆ)からの電話を取った。

 

 

 『もしもし、京介くん。今私、緋彩さんと一緒に居るんだけど……』

 

 

 どうやら京介に相談事があるようだ。そこから京介は事情を大まかに聞いた。内容は、『自分達でも分からない事が起きたから会って話す事が出来ないか』というものである。

 

 

 「……分かった。数十分で来るから待っててくれ。それじゃあ」

 

 

 約束を取り繕って電話を切ると、早速退店準備に取り掛かる京介であった。

 

 

 「……てな訳で行くぞ、希美」

 「ちょっと待って京介くん!幻真獣カードはどうするのっ⁉︎」

 「そんなのは後だ。今は嫁とママンからの相談事に乗るのが最優先だ」

 

 

 これから起こる事以上に譲れない物が強い傾向のある京介は、希美の分まで支払いを終えるとそのままバイナルを後にするのであった。

 

 

 『嫁?ママン?キョウスケは一体何を言っている』

 「あー、京介くんはね……斯く斯く然々で」

 

 

 事情の知らないヴェイズルーグは疑問符を浮かべるも、希美は大まかに説明を施した。

 

 

 『なるほどな。自らの心を許した者が幻真獣に選ばれている、そう信じているのだろう』

 「かもしれないね……えっ、今……何て?」

 『今し方向かったキョウスケは何れ知るだろうな。そのミユやヒイロとやらが、各々幻真獣に選ばれた者である事を』

 

 

 ヴェイズルーグが語った真実…これから合流する幻真獣ファイターを暗示していた。元を辿れば、幻真獣はヴェイズルーグと関連性が深いユニット。ヴェイズルーグの先導者である京介は直感で理解していたのだ。

 

 

 「……ちなみに、ヴェイズルーグってさ」

 『何だ』

 「幻影ファイターの居場所、ってわかったりするの?それがわかると行動がしやすいんじゃ」

 

 

 数が分からずとも、居場所さえ分かれば幻影ファイターとファイトする際に効率が良かったり、何処にいるかの傾向も把握出来るのだ。

 

 

 『我とてそこまで把握出来る訳では無い。然し、幻真獣となれば話は別だ。月の守護者である我の加護を受けた幻真獣……その行く先ともなれば、我なら大凡の見当は着けられる』

 「えっ、じゃあ何でさっきは……」

 『己の眼で見てこそ、その光景は真実と言える。我らも追うぞ』

 「う、うん!」

 

 

 京介とは違い、ヴェイズルーグには幻真獣カードが誰の手に渡っているか把握は出来ているが、最初から最後まで教えなかったのは、二人に真実を見てもらうために敢えて肝心な事は隠していたのだ。

 

 そしてヴェイズルーグに京介を追うよう促された希美はバイナルを後にするのであった。

 

 

 「あっ、そうだ。この事は透さんに聞かれてないかな?」

 『そこは安心しろ。我等の会話を誰にも聞かれないように特殊な結界を張ってこれからの事を説明した。周りから見た君達は普通に会話しているだけにしか見えない筈だ』

 「それならよかった…」

 

 

 一方、バイナルでは……

 

 

 「(そういえば、あの二人色々会話していたけど、まさかスキャンダルものじゃないだろうな…?)」

 

 

 ズレた方向を心配する透であった。

 

 


 

 

 バイナルを後にした京介達が向かったのは緋彩の住んでいるマンション。多少距離はあったものの、ものの15分ほどで到着したのであった。

 

 

 「遅いぞ希美。ぶったるんでるんじゃあないのか?」

 「京介くん、が…異常な、ほど…早い、だけ、だから……」

 

 

 何ひとつ変化のない京介に対して希美は息を切らしていた。

 

 

 「しかし、ほんとに数十分で着くんだね…」

 「当然だ。俺は約束は守る主義だからな」

 

 

 当然の事だと言わんばかりの京介であった。その後はエントランスに入ってインターホンを押して緋彩を呼び出してロックを解除して、行き慣れているのか、真っ直ぐ緋彩の部屋まで進む京介とそれを後ろからついていく希美とヴェイズルーグであった。

 

 そして今一度部屋の前のインターホンを押して暫くすると、扉が開かれて緋彩が出迎えていた。

 

 

 「待たせた、緋彩さん」

 「大丈夫よ」

 「(そりゃそうだよ。だって電話が終わってバイナル出て15分しか経ってないもん…)」

 

 

 数十分と言いながら、実はそんなに時間が経ってない事に苦笑いする希美であった。しかし早いに越した事は無いので、その後は緋彩に促され、部屋に入るのであった。

 

 部屋に案内されてリビングに入ると、そこには美夢が紅茶を優雅に啜っていた。

 

 

 「待たせた、美夢」

 「京介くん!私は大丈夫だよ」

 

 

 京介は美夢に声を掛けると、彼女は啜っている紅茶を止めて立ち上がると彼に飛びつくように抱きついた。京介もそれに応えるかのように美夢を優しく抱きしめた。

 

 

 『ほう。心を許した者だとあのようになるのか。人間は実に興味深い』

 「なんか、もう甘い……ブラックコーヒーが飲みたくなってきた……」

 

 

 この光景を目の当たりにしているヴェイズルーグは興味深そうにしているも、希美は頭を抱えて今でも胃もたれを起こしそうになっていた。

 

 

 「京介くん、美夢ちゃん。私は見ているだけで幸せよ……」

 

 

 しかし緋彩はその光景に尊く思いながら見ていた。その眼からは涙が流れていたのは言うまでもなかった────。

 

 

☆☆☆

 

 

 「さて、俺に相談ってなんだ?二人とも」

 

 

 緋彩の配慮により、暫く京介と美夢(ふたり)だけの世界を満喫していた京介であるが、気持ちを切り替えて本題である相談事に乗った。

 

 ちなみに今は京介の隣に希美、美夢の隣に緋彩が座っており、二組が対面するようになっていた。

 

 

 「もしやと思うが、ストーカー被害じゃあないだろうな?もしそんな輩がいたら、俺がソイツの居所を特定した後に再起不能になるまで殴り倒して二人に懺悔させるから安心しろ」

 「何処も安心できる要素が一個もないんだけどっ⁉︎少しは慈悲を与えようよ!」

 「そんなもんは無い」

 「即答っ!」

 

 

 もしそんな流血沙汰を起こしたりしたら自分や周りもイヤなので、希美は少しでも穏便に済ませるよう京介を諭すも、即座に一蹴されるのであった。

 

 

 「ダメよ京介くん。そんな事すれば美夢ちゃんや私が悲しむわよ?」

 「……仕方ない、そうなったら穏便に済ませるか」

 「いや、私が説得しても即座に拒否したのになんで緋彩さんが諭すと二つ返事で了承するのっ⁉︎」

 「それで2人とも。相談事って?」

 「いや、勝手に話進めないでっ!」

 

 

 理不尽に感じた希美であるも、京介はそんな事微塵も感じずに本題に移るよう催促した。

 

 すると美夢と緋彩は机の上にカードを置いた。

 

 

 「そのカードは?」

 「今日起きた時に枕元にあったの」

 「私もよ。葵依クンに相談しようと思ったけど何故か連絡がつかなかったから、京介くんに頼んだの」

 

 『朝起きたら枕元に突然…』。その聞き慣れた言葉に心当たりのある京介と希美は無意識に目を合わせた。それもそうだ、二人の目的のものが今此処で半分達成されたも同然なのだから。

 

 

 「そのカードって、もしかしてヴァンガードのカードで、名前に《幻真獣》って書かれてなかった?」

 「えっ、そうだけど……《幻真獣》って聞いた事が無いから京介くんのようなヴァンガードに精通してる人なら詳しいと思って…」

 「「それだっ!」」

 「どういう事なのかしら…?」

 

 

 確証を得るために京介は美夢に確認を取るも、自分達が追い求めているカードであったため、希美と手を取り合って喜びを分かち合った。

 

 しかしこの光景に美夢と緋彩は理解が追いついてなかったので困惑していた。

 

 

 『そこからは我が説明させて貰おう』

 「えっ、カードが……」

 「喋った⁉︎」

 

 

 此処で待ってましたと言わんばかりにヴェイズルーグが話に割って入ってきた。当然カードが宙を浮いて喋りかけてくるなんて事は普段生活している上で絶対あり得ない話だから美夢と緋彩は当然驚いた。

 

 

 「まぁ、カードが宙を浮いて話し掛けるなんて事が起きたらそんなリアクション取るのは当然の事か。ヴェイズルーグ、済まないが手短に説明してやってくれないか?」

 『当然だ。事態が事態だからな』

 

 

 その後ヴェイズルーグはこれから何が起こるのか、何故こんな事が起きているのかを、先程の京介と希美と全く同じ内容を美夢と緋彩に説明するのであった。

 

 

 「まさかヴァンガードのユニットが実在するなんて思いもしなかったわ…」

 「まぁ、そりゃそうなるわな」

 「でも惑星クレイのユニットとお話しできるなんて素晴らしいです…!」

 

 

 ヴェイズルーグの説明を聞いた緋彩は話が漠然としていると捉えたのか困惑気味であるが、美夢は眼を輝かせていて、そんな彼女に対して希美は苦笑いしていた。

 

 

 『それでミユとヒイロと言ったな。我の話を聞いて、我やキョウスケ、ノゾミと共に『赫月病』の脅威に立ち向かってくれるか?』

 

 

 仕切り直してヴェイズルーグは、再度美夢と緋彩に自分達に協力をしてくれるか、今回の本題である今の話を持ち掛けるのであった。

 

 

 「そうね……私は未だに信じられないのが正直な話だけど、今の話を聞いて流石に「いいえ、イヤです」なんて言える訳ないわね。それに…」

 『それに…なんだ?』

 「可愛い弟のような存在の京介くんも協力しているなら、私も協力しないと話にならないじゃない?だから協力するわ」

 「私もです。この地球に脅威が迫ってるなんてSFのような出来事だけど、このまま放置しておく事なんて出来ません!だから貴方に協力します」

 

 

 二人とも各々に思う事はあるものの、協力する姿勢をヴェイズルーグに見せるのであった。

 

 

 『ほう、流石我が先導者(マイ・ヴァンガード)が心を許した者達だな』

 「俺には勿体ないくらいだけどな」

 

 

 そんな二人にヴェイズルーグは関心するも、京介は照れ臭そうにそっぽを向いた。

 

 

 「京介くんの分身がヴェイズルーグさんなの?」

 『そうだ。まだ我の授けたデッキを使ってないから、正確にはこれからなる…だがな』

 「そう……そうだ、いい事思いついたわ」

 

 

 ヴェイズルーグの説明を聞いた緋彩は何か閃いたようだ。

 

 

 「これからそのデッキを使ってみない?私もこれから幻真獣(この子)に合わせたデッキを組まないといけないから」

 

 

 緋彩は自身が持つ幻真獣…悠久の幻真獣 ニルズベイグを見せながらテストファイトの提案をしてきた。

 

 

 「でも緋彩さんってヴァンガードやった事あるんですか?」

 「私はないわ」

 「えっ、それじゃ初心者…」

 「でもルールとかは全て把握してるわ」

 「えっ、なんでですか?」

 「京介くんと葵依クンがヴァンガードファイトしている所は片手の指じゃ数え切れないほど見ているの。だから見ているうちにルールとかは頭に入ってるの♪」

 

 

 まさかファイト経験が全く無くてもルールを把握しているとは思いもしなかったようで、希美は戸惑いを露わにした。

 

 

 「それじゃ、カードショップに行って実際にテストプレイしてみるか。俺と緋彩さんで」

 「あっ、京介くん。それなら私も美夢ちゃんとファイトしていい?私も美夢ちゃんも、普段使ってるデッキと《幻真獣》の国家と軸が合わないから…」

 

 

 そう言って希美も京介に自分達のファイトの提案をしてきた。二人もヴァンガードのデッキを持っているが、自分が持つ幻真獣カードと普段から使用しているデッキと噛み合ってすらいないのだ。

 

 だから幻真獣を使いこなすために、その幻真獣カードにあったデッキを一から構築しないといけないのだ。

 

 

 『ふむ。それでは一度カードショップに立ち寄ってみるか?』

 「もしやそれは幻真獣カードの所有者の情報を集めるためでもあるのか?」

 『そうだ』

 

 

 確かにヴェイズルーグの言い分には一理ある。幾らある程度幻真獣カードの所有者の見当をつけるからと言っても完全ではないため、情報収集をする必要はあるのだ。

 

 それに、カードショップに行けば当然ヴァンガードファイターもいる。もしかしたら幻真獣カードの所有者と邂逅する可能性もあるため、訪れる価値は充分にあるのだ。

 

 

 「それじゃ、早速行きましょうか」

 

 

 緋彩にそう言われた一同は、彼女の家を後にしようとした。

 

 

 「でも、ヴェイズルーグってさっきから宙にカードが浮いている状態だから目立つと思うんだよね……」

 

 

 しかし出発前に今のヴェイズルーグの状態を指摘した。それもそうだ、カードが宙を浮いている所を誰かに見られたら、悪い意味で注目を浴びる上にこれからの行動に支障をきたす危険も高いからだ。

 

 

 『ふむ。それでは、地球の現代文明に頼るとしよう』

 「えっ、それってどういうい…⁉︎」

 

 

 京介が言い終える前に急にヴェイズルーグのカードが光り始めた。しかしものの数秒で光が収まると、そのカードは京介の手元に流れるように収まった。

 

 

 「なんだったんだ、一体…」

 「そういえばヴェイズルーグさんは?」

 「おっとそうだ。おーい、ヴェイズルーグー?」

 

 

 ヴェイズルーグに声を掛けるも、何も反応は無かった。

 

 

 「アレ?どうしたんだ…」

 『我は別の所に移動させて貰った』

 

 

 その直後、ヴェイズルーグの声が聞こえた。当然『何処から?』と一同は戸惑うも、突如京介のポケットからスマホが勝手に出て浮かび始めた。

 

 

 「あら?なんで京介くんのスマホが宙を浮くのかしら?」

 『それは我がいるからだ』

 

 

 緋彩の疑問に対し、その者が答えた。当然その声はヴェイズルーグの物であった。

 

 

 「……って、えぇぇぇぇぇぇぇぇっ⁉︎」

 「京介くんのスマホにっ⁉︎」

 「オイオイ、なんでもアリかよ……」

 

 

 当然希美と美夢は驚きの声を上げた。京介は頭を抱えて今の状態に悩ませた。

 

 

 「スマホに乗り移るなんて凄いわね」

 『うむ。先程スマホを見させて貰ったが、地球の現代文明は素晴らしいと感じてな。だからキョウスケのスマホに乗り移る事にしたのだ』

 「「(あっ、気になってたんだ……)」」

 

 

 そんなヴェイズルーグは自信ありげに地球の現代文明…というよりスマホに関心したようで、憑依した理由を説明するのであった。しかし何処か嬉しそうに見えたのは此処だけの話である。

 

 

 「それじゃ改めてカードショップに行こうか」

 

 

 気を取り直してデッキ構築とテストファイトのためにカードショップに向かう幻真獣ファイター一同であった。

 

 彼等が掴むのは(まぼろし)(まこと)か……それを知る者は、今は誰知らない────。




 まずは最新話の読了とお気に入り登録をしてくれた皆様、ありがとうございます。こんな拙作にお付き合いいただいた事に感謝感激です。

 今回は投稿日である本日4月10日に発売された最新弾【赫月ノ使者】に合わせました。次回の投稿以降は土曜日を中心に投稿しようと思います。

 纏まって作品が書き上がていれば週一投稿になりますが、基本は書き上がり投稿になります。

 次回は4月18日を予定しております。それまでお楽しみにください。

 それでは、次回をお楽しみに。
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