「まず、名前はなんだ」
リビングにてテーブル越しにお互い向き合って座り、男は口を開いた。
茶など出すはずがない どこの世界に不法侵入者に茶を出す馬鹿がいようものか。
「ケイです……天童ケイ」
「……はぁ?」
一番聞きたくなかった答えに男は冷や汗をかく。
「ふざけてんのか?」
「名乗った名前にその返答は失礼ではないですか?」
名前に文句を言われ明らかに目を細め苛立ちを見せるケイ、男は俯き頭を抱えた。
(不法侵入者+コスプレイヤー+自認天童ケイとか1番ヤバい奴が来ちまったァァァ!!
話も成立するか怪しくなってきたぞ……
つーかこんな奴に礼儀まで問われるのかよ……っ! ふざけてんのはテメーの方だろうがァァァ!)
男は絶望感を覚える、警察ではなく頭の病院を呼ぶ必要がありそうだからだ。
「……どっから来たんだ? 身分証は?」
気を取り直し再び質問を続ける、
流石に身分証さえあればふざけた事を抜かせないだろうという算段だ。
ケイは無言でなんの躊躇いもなく学生証を机の上に置いた。
ミレニアムサイエンススクールが印字された学生証、
天童ケイの名前も写真も描かれている。
(か、かなり気合の入ったコスプレ道具だな……)
学生証を確かめながら男は思った。
学生証自体、クレジットカードを思わせるような重厚感のある造りだ。
しかし、その完成度の高さも男を苛立たせる要因にしかならなかった。
ただでさえ誰にも言ってない好きなキャラクターなのだ。
声もそっくり容姿も一致している極めつけには不法侵入、
中途半端になぜかヘイローが無いのも詰めが甘い。
不法侵入を問い詰めたら、正体を隠し天童ケイのロールプレイ。
男は自分をおちょくってるとしか思えなかった。
「……どうやってうちに入った」
怒りを抑えながら男は口を開く。
頬がひくつき 漫画的表現なら怒りマークが頭についてるだろう。
「おそらくですが、そこから」
ケイは真っ直ぐと机の上の男のスマホを指さした。
―――――もう耐えられない。
男は机に蹴りを入れながら勢い良く立ち上がる。
「いい加減にしろよクソガキィ!黙って聞いてりゃ訳のわかんねぇ事をベラベラと!
コスプレして人んち勝手に上がり込んで挙句の果てに貴方のスマホから来ましただぁ!?
こっちがまともな答え期待したら調子づきやがって!!
エミュの精度は大したもんだがなぁ、
こちとら好きなキャラで煽られてるとしか思えねぇんだよ!!」
つい大声で捲し立てる、男からすればケイは頭のおかしい犯罪者の他ならない、少しでも下に見られたら終わりだという考えからだった。
「……わかりました 私がキヴォトスから来たと証明すればいいんですね」
しかしケイは冷静に反論する。
説明をするにしても自分がしっかり”別の世界”から来たという事を信用させないと話が進まないだろうという判断だ。
事実ケイの立場は不法侵入者、
通報等というトラブルにならないように、男の話を聞きながら身分を明かしていくしかない。
(頭のおかしいコスプレイヤーにしては妙に冷静だな……)
男は動じないケイにたじろいだ。
「……随分自信ありげじゃねぇか」
「ヘイローがあれば話は早いでしょうがどうやらこちらでは
存在しないか視認ができないか……どちらかのようですので」
なおもケイは冷静に分析する。
もはやその態度からは不法侵入者と思えない、
まるで当然キヴォトスから来たんだという風に。
「窓を開けていただけますか?」
巨大なレールガン……ルミナス・ノヴァをいじりながら窓を指さす。
「何のつもりだ?」
男は眉を顰めた。
「いまからその証明をします、それに私が開けたら逃走の危険があるでしょう」
レールガンの調整を行いながら至極当然のようにケイは言う。
「わかったよ……」
男は半ばあきらめ気味に窓を開けた、
窓の外には風に揺れる大きな木が一番に目に入った。
「出力と射程は最低に……こんなものでしょうか、すみません木の下に誰かいないか確認できますか」
レールガンの設定を確認しながらケイは男に聞く。
男はもうここまで来たなら何をするか大体予想は付いていた。
あとは真実か見守るだけだ。
「誰もいないよ 大丈夫だ」
「ありがとうございます 危険なので窓から離れて下さい」
男は言われた通り離れると壁にもたれて腕を組んで見守る。
そしてケイはルミナス・ノヴァを窓の外に向けて構えた。
「――――光よ」
ケイが静かに言い放つと銃口から赤い閃光が放たれる。
細く弱い閃光だが正確に標的に命中した。
腕の太さほどあるだろう木の枝を焼き切ったのだ。
そう―――焼き切った。
現代の科学出来るものなのかは定かではないがどちらかと言えば無理な方ではないだろうか。
それにハリボテだと思っていた機械が本物のルミナス・ノヴァであるとは。
「……何……だと……」
男はまさに空いた口が塞がらないという表情だ、
さながら雷の能力者がゴム人間に驚愕したかのような。
「これでわかりましたか?」
レールガンを降ろすケイ。
男は口をパクパクしながら言葉を紡ごうとする。
「…………す」
「す? 何が言いたいんですか?」
驚きで言葉が出ない男にケイは呆れながら言う。
「すみませんでしたァァァ!!!」
男は床に顔を叩きつける勢いで土下座をする。
あまりの勢いにケイは怯む。
「まさか本当にキヴォトスの方だとは!大変失礼なことを!」
「あ、あの状況なら誤解は当たり前ですから……」
ケイは男をなだめる、
自分も同じ状況であれば男のように警戒するのは当たり前だと思うからだ。
「ど、どうか命だけは……」
「そんなことしませんよ!私を何だと思ってるんですか!」
命乞いをしだす男にケイは反論する。
「だって初めて見たし……生の泥棒」
「いやそっちの誤解は解けてないんですか!!!」
コスプレイヤーの誤解は解けたが未だに不法侵入者扱いをされていたようだ。
評価、感想、お気に入りありがとうございます
ブルアカ二次創作においてマイナーなジャンルのプロローグだけでここまでいただくとは驚きです
流石ケイちゃんパワーですね
小説初心者なので至らぬ所は言っていただけると励みになります