「いやね、泥棒はいかんよ泥棒は」
「だからなんでそこは頑なに犯罪者扱いするんです……」
土下座をやめ未だに天童ケイ犯罪者説を提唱する男にケイはげんなりした。
「じゃあどうやって入ってきたんだよ」
「だから貴方のスマホからですよ……」
「俺の型落ちスマホにそんな機能あるか、ジョブズが墓から出てくるわ」
男は肩を竦める。
「気がついたら玄関に立っていたんです。
靴のまま上がってしまって……慌てて脱いだら、足元にスマホがあって
そしたら玄関の鍵を開ける音がして……」
「そして俺が帰ってきたと」
ケイは、玄関先にいた理由を話した。
(嘘ならもっとマシな嘘つくだろうしな……)
ケイに対する誤解が解け始めた事もあり、男は冷静に思案する。
「他に質問はありますか?」
「あるな、キヴォトスから来たことも信じる、スマホから来たとか言うのも……トンチンカンではあるが、この状況なら有り得る、だが”こっち”に来たのは故意か?それとも事故か?」
1番の疑問点をぶつける、
男からしたらケイがわざわざ現代に来る理由も分からない、事故であるならば早急に帰らないとならないだろう。
「故意です、恐らく……貴方に会うためかと」
「はぁ?」
持って回った言い方をするケイに、男は首を傾げた。
「私は“本当”の先生に会うためにやってきました、それが多分貴方です」
「おいおい、そいつは聞き捨てならないな、そっちのシャーレの先生は偽モンってか?
思ったより薄情なヤツだな」
ケイの説明を聞き男は鼻で笑いながら言う、
男は物語の詳細まで把握しているわけではないが、ケイがシャーレの先生と共に激闘を潜り抜け
”key”から“天童ケイ”になるまでをブルーアーカイブを通して見てきた。
先ほどのケイの発言はその先生を蔑ろにしていると取ったのだ。
「いえ、どちらも本物ですよ 少々言葉を間違えてしまいましたね
いうならば貴方は先生の”起源”……とでも言いましょうか」
「はぁ……俺は先生なんかとはほど遠い高校生なんだが……意味が分からん」
突拍子もない言葉を聞き頬をかきながら男は言った、対してケイは男を指さした。
「”起源”だからといって容姿や性格は一致するとも限りませんから、ただ”本質”は同じです」
「本質ねぇ……仮にマジで本質が一緒だとして何が一致してんの?」
ケイに問いかけ男は思案する、自身とシャーレの先生との共通点など思い浮かばない、
その質問に対しケイは伏せがちに目を反らした。
耳のあたりが赤くなっているようだが思考を巡らせている男は気づいていないようだ。
「……声、じゃないですかね?」
誤魔化すかのようにぶっきらぼうに回答するケイ
何とも要領を得ない回答に男は驚愕する。
「し、しらねぇぇぇ!!ぜってぇ誤魔化したろ!!俺ろくに課金してねぇのにそんな理由で来られたら全国のブルアカユーザーに刺されるわ!!」
「うっさいですね!私だって本当の先生が声しか共通点ない人とは思いませんでしたよ!!」
事実先生と男の声は多少声色が少し違うだけで似ている。
”本質”とは実は声と全く別の所ではあるが。
「おうおう!悪ぅございました!じゃあ人違いなんじゃねぇの!?」
「人違いなわけないでしょう!貴方のスマホから来てしまったんですから!!」
「来てもらえるのは嬉しいけど! 俺、こんな二次創作みたいな事態は認められねぇよ!」
「何訳わかんないこと言ってるんですか!?嬉しいならいいじゃないですか! 」
お互い睨みあう、暫くすると二人ともため息をつき元々座っていたソファに腰掛ける。
「なんか疲れた……なんでこんな訳の分からん議論を……」
「私もですよ、こっち来てから身体が気怠い気がしますし……」
ソファで項垂れる二人、そして男は口を開いた。
「……茶でも飲むか?」
「……いただきます……」
─────────────────────────────────────
ケイは男の入れたルイボスティーを受け取り一息つく、
男は不法侵入騒動でかなり気を張っていたのか二杯目に突入していた。
「そういえば貴方の名前を聞いてませんでしたね」
そんなケイの言葉に男は投げやりに答える。
「人違いなら答える必要ねぇだろ」
「何を拗ねてるんですか、私だけ名乗ってるんですから自己紹介してもらわないと」
正論をぶつけられ渋々と名乗った。
「嵯峨野だ、嵯峨野リョウ、17歳 高校2年」
「サガノリョウ……ですか、よろしくお願いしますね」
自己紹介を終え、リョウが再び問いかける。
「一応聞いときたいんだが、君はどこまでこっちの世界の事情を知ってるんだ?」
「そうですね、私が把握していることをお伝えします」
ケイは”現代”の認識を語った。
かつてG.Bibleがあった廃墟周辺から入手したデータを調べた事により”現代”の情報を得たという。
”現代”とはキヴォトスの外に近しいが違う世界であるという事、
ゲーム”ブルーアーカイブ”としてキヴォトス側の出来事はある程度伝えられている事、
シャーレの先生の”起源”がそこにはあるという事を。
その廃墟のデータを元に”現代”に行くための装置を作ったという。
「そして先生がキヴォトスと現代を繋ぐ存在……キヴォトスから移動すればその”起源”に接触できるんです」
「それでその出入口がスマホになったというわけか……常識外れもいいとこだが、目の前にキヴォトスの人間がいるんじゃ信じるしかないな」
リョウはため息をつく、あまりにも情報量が多すぎるからだ。
「一つ気に入らない点があるとしたら、私たちがゲームで見世物になってるのは気に入りませんね」
ケイは少し不満そうに眉を寄せた。
「まぁ確かにそっちからしたらいい印象ではないよなぁ」
「売り物としてのエンタメ重視なのかストーリーの細部は正確ではないようですがね」
「え!? そうなの!?」
衝撃的な事実にリョウは目を見開く。
「私も細かくは把握してませんがね」
「そうだったのか……」
実際にファンのリョウとしてはどう違うのか気になるところではあるが。
「で、これからどうすんだ?お望みの先生の”起源”はこの有様だぜ?」
リョウはおどけてみせる。
しばしの間ケイは思案すると一気に茶を飲み干し立ち上がった。
「サガノくん!これから貴方には先生に相応しい人になってもらいますから!」
ケイの提案にリョウは声を荒げる。
「はぁ!?何でそうなるんだよ!」
「ふん!貴方が”起源”だと先生も不安でしょうから!これは先生の為です!」
腕を組みフンと鼻を鳴らすケイ、リョウは愕然としていた。
「とりあえず今日は帰りますから!これから覚悟することですね!
さぁスマホを出してください」
未だ状況を呑み込めないリョウは言われるがままにスマホを机に置く。
(そんなホイホイ帰れるもんなのか……)
「確かこうして……」
ケイは手のひらをスマホの上に乗せた。
「…………」
長い沈黙が訪れた、ケイはスマホに乗せる手を変えた。
「…………」
再びの沈黙、その沈黙を破ったのはリョウの一言だ。
「そんだけ?」
「い、いや!そんなはずは!も、もう一度……」
ケイはいろんな指で押さえたり色々試す。
目がグルグルして完全に混乱している。
そんな姿を見てリョウは頬を引きつらせながら言う。
「も……もしかして……」
ケイは口をあわあわさせながら叫んだ。
「か……帰れなくなったーーー!!!」
評価、感想、お気に入りありがとうございます
ケイが現代の情報を入手した下りはかなり雑で申し訳ありません
流れ上話さないと不自然なので・・・
小説初心者なので至らぬ所は言っていただけると励みになります