「キヴォトスに帰れない!?」
リョウは青ざめながら言う、ケイも同じ表情だ。
「いや、そんなはずありません!!確かに帰れるはず!!」
「そうだよな!?天童ケイともあろう人がそんな無計画なわけないもんな!!」
「あああ、当たり前じゃないですか!」
ケイはリョウのスマホを手に取る。
ぺしっ。
軽く手のひらで叩く。
「おい」
ぱしっ。
「ちょっと待て」
バシィ!
「流石に強すぎない!?」
その瞬間だった。
ケイの手の平の隙間からスマートフォンの画面が光り、電子音とともにアプリが起動する。
『ブルーアーカイブ!!』
リョウの顔が固まった。
「は?」
ケイは首を傾げている。
「どうかしましたか?」
『リョウ先生!今日もお疲れ様です!!』
アロナちゃんの元気な挨拶が響き渡る。
「イヤァァァァァァ!!!!」
絶叫しながらケイからスマホをふんだくる。
「きゅ、急になんなんですか!?」
―――最悪の展開。
リョウは絶望する。
(誰にも言ってないのに……しかも初めてバレるのが推しのケイちゃんだと?)
だが、リョウにはそれより痛いことがあった。
(興味本位で実名でプレイするんじゃなかったァァァ!! めっちゃ恥ずかしいやつじゃねぇか!)
「すみません、スマホを叩いてしまって、ついパニックで」
「いや、いいんだ、バレたもんはしょうがねぇ」
「……?何のことですか?」
ケイは首をかしげる。
「え、さっきアプリ起動して音もなってたじゃん」
「音どころか画面も真っ暗でしたが……」
リョウは疑問に思いケイにスマホを見せる。
画面を覗き込むケイ。
しかし、すぐに眉をひそめた。
「……?」
「どうした」
「やはり、何も表示されていません」
「は?」
リョウは画面を見る。
そこには確かにゲーム画面が表示されている。
そしてロビーには―――天童ケイの姿。
目の前の本人のケイは首を傾げたままだ。
「黒い画面しか見えません」
「いや、普通に見えてるけど」
リョウはスマホを持ち上げ、ケイに近づける。
当番を変えてアリスにしてみたり、タップしてボイスを流す。
しかしケイの反応は変わらない。
「やはり何もありません」
数秒、沈黙が流れた。
ケイは黒い画面に映った自分の頭上を見る。
いつも見慣れたものがない。
「やっぱりヘイローがありませんね……」
「……そういえばさっき存在しないか、視認できないと言ってたな」
ケイは静かに続けた。
「ええ、最初は玄関の姿見で軽く確認してそういうものかと受け入れましたが……」
リョウは腕を組む。
「それが帰れない理由とか?」
「推測ですが、可能性は高いです。」
ケイは頷いた。
「あぁ……身体が気怠いだの言ってたのはそれが原因か」
リョウはケイとの口論を思い出す。
「私の今起きている異常と言えばヘイローの有無ですからね、レールガンもいつもより少し重かったです」
「俺のスマホが原因のパターンは?」
「貴方から見て異常がなければ正常なハズです、私から見えないということは……」
ケイが思案する、その後鼻で軽く笑う。
「なるほど、そのアプリはブルーアーカイブですか」
「いいいいいいやいやいや、そんなわけねぇ!!」
リョウの目がクロールの如く泳ぐ。
「その反応はもう正解と言ってますよ……」
ケイが目を細める。
「どうやってアプリが起動したブルアカって証拠だよ!!」
動揺のせいかリョウの文法が滅茶苦茶だ。
「考えても見てください、私は現代からしたら異世界の存在……そんな私が認識できないものというのは状況的に一つしかないでしょう」
ケイの説明にリョウは落ち着きを取り戻す。
「なるほどな……そっちの世界で知っちゃまずい事情もあるだろうしな」
「なぜそこまで取り乱したんですか……」
リョウが目を反らす。
「なんか……恥ずかしいから?」
言えるわけない一番の好きなキャラが貴女ですなんて、どんな公開処刑だ。
そもそもリョウからしたら、ケイは”シャーレの先生”といるべきであると思っている。
自分なんかがおこがましい—――
(まじで他のユーザーに刺されるんじゃねぇかな)
そうリョウが考えるとケイが口を開く。
「成程……私たちのゲームが恥ずかしいと?よくもまぁ本人の前でそんなこと言えますねぇ」
ケイの張り付いたような笑顔、普通に怒ってる。
「いや、そういうんじゃないって!」
「ではどういう意味ですか!」
ケイの声が少し強くなる。
「あなたはさっき言いましたよね」
「……何を」
「『好きなキャラで煽られている』と」
リョウの顔が固まる。
「あと」
ケイは続ける。
「『来てくれるのは嬉しい』とも言いました」
「い、言ってねぇよ!んな事!」
明らかに自分で発言してたのに否定をするリョウ、その態度に対しケイはヒートアップする。
「自分の言葉に責任もって下さいよ!」
「るっせぇ! 君だってあれだろ?図星突かれて事実陳列罪とか意味わかんねぇ事抜かしてたの知ってんだぞ!」
「ななな、なんでそんな事知ってるんですか!?」
「おーい」
リョウがゲーム内での発言を掘り返す
ストーリーの細かい所は違うとケイが言ってたのでまさか図星とは思わなかった。
さらにヒートアップする2人、もう1人の男が既にリビングに入って話しかけてるのに全く気づかない。
「スマホを寄越して下さい! 全て確認します!!」
「君見えてないって話したよなぁ!?」
「ちょっと」
スマホに手を伸ばすケイ、ブルアカを認識出来ない事を突っ込むリョウ、だがまだもう1人の男に気づかない。
「じゃあ破壊します!」
「待てゴラ!流石に聞き捨てならんわ! 後先考えてくれ!頼むから!」
「ずいぶん盛り上がってるな2人とも!」
後ろから声がした。
2人の動きが止まり、ようやくもう1人の男の声を認識したようだ。
揃って振り向く。
そこには腕を組んで立っている男。
「ただいま」
リョウの顔から血の気がひく。
「と……父さん」
感想、お気に入りありがとうございます
一応終わりまでのプロットはありますがそこまでの肉付けに四苦八苦しております。
日常って書くの難しいですね
小説初心者なので至らぬ所は言っていただけると励みになります