リョウの父はリビングを見回した。
息子、見知らぬ少女。
数秒の沈黙の後。
「……リョウもそういう時期か」
リョウの脳が止まる。
「は?」
リョウの父は深々とケイに頭を下げる。
「うちのリョウをよろしくお願いします、彼女さん」
「違う!!」
「違います!!」
リョウが叫びケイも同時に否定した。
声がきれいに重なる。
リョウの父は肩を揺らして笑った。
「息ぴったりじゃないか」
リョウが頭を抱える。
「父さん違う!これはその!」
「まぁ冗談はさておいてだな」
咳払いをして自己紹介をする。
「初めましてお嬢さん、俺は嵯峨野キヨツグ、リョウの親父だ」
ケイが一歩前に出て、軽く頭を下げる。
「初めまして、天童ケイです」
キヨツグは頷いた。
「うむ、天童ねぇ……まぁ、よろしくな」
リビングを見回してから続けた。
「うちの息子が女の子連れて騒いでる理由を聞こうか」
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「ふ~んキヴォトスねぇ、中々面白れぇとこからやってきたもんだな」
「信じるのか?」
ケイから一通りの説明があった後、キヨツグは顎を撫でながらいう。
あっさりと信じる様子にリョウは驚く。
「決めつけはよくないぜ、誰も無いことが証明できない世界があっただけだろ
異世界だろうがゲームの世界だろうがな……世の中な、信じられねぇ話なんて山ほどある」
ケイは少し驚いた顔をする。
「理解が早いのですね」
キヨツグは笑う。
「あ、ついでに帰れないのならウチを使うといい、部屋も余ってるしな」
「ついでなのか……」
「いいんですか?」
あまりに軽い了承にケイとリョウは驚く
「リユ……じゃなくて母さんの部屋があるんだ、そこを使うといい」
その言葉に、リョウの動きが止まる。
「……いいのかよ」
「ああ」
キヨツグはあっさり言う。
「使われねぇままより、マシだろ」
「それは嬉しいですが……お母様の了承は」
「気にすんな!母さん娘欲しがってたしな!」
ケイの疑問を笑い飛ばすキヨツグ。
「まぁ……いいんじゃねぇの、男の二人暮しで良ければよ」
ケイは少し驚いた顔をする。
「本当に、大丈夫なんですか?」
リョウは一瞬だけ黙る。
父を見る、ケイを見る。
「……行くとこねぇんだろ」
ぶっきらぼうに言う。
「だったら、ここでいい」
「ありがとうございます」
ケイが小さく頭を下げる。
その声は、ほんの少しだけ弱い。
「おう、リョウがそっちの先生に近づけるようキッチリ教育してやろうぜ」
礼を言うケイにニヤリと笑い答えるキヨツグ。
その場にいない母親の了承もなしに部屋を使ってもいいのか一抹の疑問が残るケイだが、
流石に家庭の事情に踏み込めない。
「それはそうとして、リョウ」
リョウを睨むキヨツグ。
「な……なんだよ」
「困ってる人を犯罪者扱いとは偉く出たもんだな」
説教モードの目つきになるキヨツグ。
リョウは中学時代に何度も見てきた目つきにたじろぐ。
「いや、それは……」
「鍵かけてた上に窓ガラス割れた形跡もないんだぞ、普通じゃねぇだろ」
「……」
何も言えなくなる。
「普通じゃない状況なんだ、異世界転移なんて事もあるかもな」
「キ、キヨツグさん……流石に説教は」
割と不条理なことを言い出すキヨツグにケイは思わず口をはさむ。
「ジョークだ、説教なんざしないさ、ちょっと厳格な感じ見せたかっただけだ」
ガハハと笑い飛ばすキヨツグ。
ケイとリョウは安心したかのようにため息をつく。
「ゆ……愉快なお父さんですね」
「愉快だけど切れるとこえぇんだよ……」
「そんなに叱られてたんですか……?」
目を反らすリョウ、あまり思い出したくない中学時代がよぎる。
「おうおう聞いてくれよ、このわんぱく坊主な」
キヨツグがリョウの頭をつかむ。
「中学の頃はなぁ、まぁ色々やらかしてくれてな」
キヨツグが肩をすくめる。
「喧嘩ばっかで勉強サボるし問題起こすし……親としては頭が痛かったもんだ」
「……」
リョウは目を逸らす。
ケイがちらりとその横顔を見る。
「ま、今はこうして笑い話だがな」
キヨツグは軽く笑った。
「……別に、今も大したもんじゃねぇよ」
リョウがぼそっと言う。
「そうか?」
キヨツグは少しだけ目を細める。
「少なくとも、昔よりはマシだと思うがな」
「そういうことですか、これで最初の態度は理解できました」
「ほぉ?最初に何があったんだ?」
腕を組み納得するケイ、キヨツグが問いかける。
「やたら高圧的でしたからね、大声出すわ机も蹴るわで、元不良少年なら納得です」
「おお!何て酷いやつなんだ!こんないたいけな少女を威圧するとは!」
ケイの発言にキヨツグがおどけた振りをする。
「あの状況はしょうがねぇだろ!」
リョウが突っ込む。
「正直とても……怖かったです」
ケイがそう言って、少しだけ目を伏せる。
一瞬、空気が止まる。
リョウは言葉を失う。
「――なんて」
ケイの口元が緩む。
「いや、絶対嘘だろ!怖がってる顔じゃねぇよ!」
「何を言うあんなに震えてるじゃないか」
キヨツグも小刻みに頬が震える。
「笑いこらえてる震えじゃねぇか!」
ケイとキヨツグは堪えきれなくなり笑いだす。
リョウはバツが悪そうな顔をした。
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笑いが落ち着く。
ケイはふと、部屋の奥を見た、見知らぬ家、見知らぬ天井。
それでも────迷うように視線が揺れる。
「……本当にここにいてもいいんですね」
小さな声だった。
遠慮と、不安と、ほんの少しの期待が混ざった声。
リョウは視線を逸らしながら
「……今さら追い出すかよ」
ぶっきらぼうに言った。
ケイは一瞬きょとんとして────少しだけ、柔らかく笑った。
感想、お気に入りありがとうございます
あんまり盛り上がり所ない回ですみません
ケイちゃんのこういうシーン見たい!
とかあれば採用させて頂く可能性はあります
小説初心者なので至らぬ所は言っていただけると励みになります