ケイの同居が決まった後、キヨツグが考えながら言う。
「とりあえず日用品の買い出しがいるな……」
「そうだな……時間は……」
リョウが時計を見ると、昼過ぎごろだ。
「時間的には問題ねぇな」
「よし決まりだ、リョウこいつを持ってけ釣りはケイのもんでいい」
そういいキヨツグは無造作に複数枚の一万円札をリョウに差し出す。
その枚数にケイが目を見開く。
「さ、流石にそんなに……ドラッグストア等で一通り揃いますし」
「ドラッグストアぁ?何を言ってるんだ」
キヨツグは目を細めて言う。
「おいリョウ、駅前のデパートあったろ、そこ行け」
「あいよ、あそこなら服もコスメとかもそれなりに上等なもんあるしな……父さんは行かねぇの?」
「母さんの部屋片づけとくからな、そっちは任せた」
遠慮するケイを置いて話を進める親子2人。
「か、過度に高価なものは不要です!申し訳ないですし……」
「いーんだよ、うら若き女子の日用品にはこのくらい要るわ」
キヨツグは腕を組んで言い切る。
「せっかく整った容姿してんだ、安モン使うことは俺が許さん」
「は……はい」
有無を言わさぬ言い方にケイは小さく同意した。
「まぁ、服に関しては……ケイは母さんより少し背丈が小さいくらいだし着れるだろうな、そこまで沢山買わなくていいだろう」
「問題はコスメ絡みだな、肌に合うかもあるしちゃんと選ばねぇと……」
親子二人で勝手に話を進める。
キヨツグは先ほどの金額のやり取りからケイは遠慮しがちなのだろうと思い、
ある程度強引に進めてケイの逃げ場をなくす考えのようだ。
リョウもそれに同調し話に乗っている。
「あーそうだ、こいつも渡しておく」
キヨツグは財布からデビットカードを取り出した、嵯峨野家の生活費用のものだ。
「荷物多くなったらタクシーでも何でも使って帰ってこい」
「あいよ」
「本当にすみません、キヨツグさん……」
あまりに至れり尽くせりで謝罪するケイ。
キヨツグは鼻を鳴らす。
「謝罪ではなく感謝するとこだぜ、まぁここは家主特権ってことで頼む
知らない場所にいることになったんだ、お前に不自由させるわけにいかんしな」
「はい、本当にありがとうございます」
ケイは小さく頭を下げる。
その様子を見て満足げに頷きキヨツグは言う。
「……でだ、外に出るにあたり……ケイの名前の話なんだが」
「名前、ですか?」
ケイの問いに、キヨツグは顎に手を当てる。
「今までの話で、君が現代でいうブルーアーカイブの世界から来たのは分かったが……」
少しため息をつく。
「駅の広告とかでも見かけたことあるぜ、“天童ケイ”、軽い有名人レベルだ」
「そ……そんなことにまでなってるんですか……」
ケイの顔がわずかに引きつる。
「容姿的には問題ねぇと思うぞ、今の格好でも上着変えたり、アクセ変える程度でいけるだろ」
補足をするリョウ。
「なるほど、“天童ケイ”をそのまま名乗るのはまずい、ということですね」
「そういうことだ、下手したらリョウみたいにパニック起こして土下座して命乞いするぜ」
「なぁ!?掘り返すのやめてくんねぇ!?」
ケイとリョウの最初のいざこざを持ち出すキヨツグに即座に食いつく。
キヨツグは笑いながら手を振る。
「悪い悪い、まぁいっそ苗字だけでも変えとこうぜってことだ」
「……え?」
リョウが一瞬止まる。
「うちの使え」
「はぁ!?」
リョウが思いきり立ち上がる。
「何言ってんだ父さん!」
「何って、そのまんまだ」
キヨツグはケイを見る。
「とりあえず、嵯峨野ケイってことで」
ケイはその名前を一度、小さく繰り返す。
「……嵯峨野、ケイ」
「まぁ苗字なんてそうそう名乗らんくていい、何か言われたら親戚ってことで誤魔化す、そのためさ」
「それなら旧姓とかでいいんじゃねぇのか……?」
リョウが当然の疑問をぶつける。
そもそも自分の好きなキャラが自分の苗字を名乗る異常事態に混乱してるだけだが。
「それじゃ意味ないだろ、お前覚えてないのか?」
キヨツグが目を丸くする。
「母さんの旧姓だ」
「……?」
リョウが首を傾げた。
「最初名前聞いたときマジで焦ったぜ“天童”って、親戚かと思った」
「……は?」
本気で固まるリョウ。
ケイも目を瞬かせる。
「偶然、ですか?」
「まぁな、出来すぎだけどよ」
キヨツグは肩をすくめる。
「“どこの天童だ?”って一瞬本気で考えたぜ」
リョウは黙る、そんな話は初耳だ。
「まぁ俺が婿入りしてたら家は天童家だったってことだな」
ガハハと笑い飛ばすキヨツグ。
(……母さんの旧姓……天童)
ちらっとケイを見る。
ケイも少しだけ考え込んでいる。
「……では、何かあれば嵯峨野を名乗ります」
顔を上げはっきりと言った。
キヨツグは満足そうに頷く。
「決まりだな」
「よろしくお願いします」
頭を下げるケイ。
「おう、よろしくな」
そしてキヨツグはニヤリと笑う。
「リョウもな」
「は?」
「家族だろ」
「待て待て待て待て」
リョウの顔が一気に赤くなる。
「何当たり前みたいに言ってんだよ!!」
ケイが首をかしげる。
「何か問題が?」
「そ……そんなことは……」
言葉に詰まると、キヨツグが追撃する。
「いいじゃねぇか、お似合いだぜ、良かったな“姉貴”が出来て」
「俺弟かよ!!」
頭を抱えるリョウ、家庭の立場はどうなることだろうか。
「クッソ生意気な弟ができて悪いな、ケイ」
「いえいえ、しっかり面倒みますねキヨツグさん」
「んががががが」
完全に意気投合していた。
リョウは頭を抱えて奇声を上げるしかできない。
(待て待て待て……情報量多すぎだろ)
好きなキャラと同居してるだけでも意味分からないのに、
苗字同じで、家族扱いで、姉ポジションにまでなったのだ。
(何だこれ、どこのラブコメだよ……いや違ぇだろ、現実か?これ)
「だーもう!!」
リョウは机を叩く。
「買い出しだよな!!準備しろケイちゃん!!」
「誰がケイちゃんですか!?」
予想通りの反応、リョウのささやかながらの抵抗だった。
感想、お気に入りありがとうございます
特に誤字脱字報告の方、こちらの確認不足で申し訳ございません
ご指摘ありがとうございます
水曜、日曜更新を目指してますが私用で日曜のみになる可能性もあります
ご理解の方よろしくお願いします
小説初心者なので至らぬ所は言っていただけると励みになります