天童ケイの現代転移   作:Hayatbusa

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第六話【掃除機】

外出の準備をするケイ、

壁に立てかけられたレールガン―――ルミナスノヴァに手を伸ばそうとした。

慌ててリョウが止めに入る。

 

「ちょ、ちょっと待て!それは持ってくなよ、現代には銃刀法ってのがある」

「あ、そうでしたね、向こうでは持ってるのが当たり前ですが……現代はそうですもんね」

 

キヴォトスでは銃が日常の一部なので無意識的に取ろうとしたようだ。

 

「こんなデかいもん家に置いとくのもなぁ、しまうにしても……まぁ最悪、掃除機って誤魔化すか」

「掃除機ではあるな、ある意味、消滅させる的な意味の」

「そ、掃除機……ですか……」

 

巨大なレールガンを見て冷や汗をかくキヨツグに、旨いこと言ったといわんばかりのリョウ。

ケイは掃除機扱いに改めてキヴォトスと現代の認識の差を実感する。

 

「あ、そういえばこれもありましたね」

 

ケイは上着の内ポケットを探ると何かを取り出す。

ゴトリ。

机の上に置かれたそれに、空気が止まる。

――それは、現代日本では“ドラマの中だけの存在”。

だがキヴォトスでは当たり前の――

 

「ととととと、とんでもない掃除機出てきたァーー!!!」

「どこが掃除機ィ!?落ち着け父さん!完全に銃だろ!いやある意味掃除機だけども!人の命掃除する的な!!」

 

白い銃身に黒いグリップの拳銃だった。

 

「一応、レールガンでは取り回しききにくい際の武装で……」

 

ケイは補足するが、親子二人には届かない。

 

「おおおお落ち着けとりあえず、おおお落ち着いて、きゅきゅきゅ救急車を呼ぼう」

「呼ぶなら警察だろーが!てか通報もダメだわ!!」

 

大混乱のキヨツグを取り押さえるリョウ。

 

「それ、アウトだからな!!ここじゃ銃持ってるだけで終わりだ!!」

「分かってますよ、郷に入っては郷に従えですよね」

 

全力で注意するリョウ。

ケイはそういうとマガジンを取り出し弾を抜いていく。

 

「…………」

 

手際よく作業するケイを2人は茫然と見つめる。

 

「何を見つめてるんですか?」

「いや……映画でよく見るシーンがそのまま拝めるとは」

「……」

 

顔が引きつるキヨツグに無言で頷きまくるリョウ。

弾を抜き終えたケイは改めて薬室を確認する。

 

「終わりました、湿気を避けられる場所での保管をお願いします」

「う、うむ……そうだな、俺が責任をもって保管しておく……」

 

キヨツグは机の脇から新聞紙を取り出し、拳銃と弾丸を包んでいく。

 

「すみません……持っていることを忘れていました」

「いいっての、キヴォトスじゃ銃は体の一部みてぇなもんだし……」

「なんつー修羅の国だよキヴォトスは……」

 

謝罪するケイにフォローを入れるリョウ、キヨツグが額を押さえる。

 

「とりあえず、大事になる前に見つかって良かったよ……」

 

げんなりして立ち上がり、リョウはケイに問う。

 

「そろそろ出れるか?」

「はい、問題ありません」

 

ケイも準備万端といったところだ、

いつものジャケットとブレザーを脱ぎ、ワイシャツにリョウの母のパーカーを羽織っている。

黒いヘアバンドは外しているが大きなリボンはそのままである、お気に入りなのだろうか。

 

「気を付けて行ってこい」

 

キヨツグの軽い調子の一言、その目はどこか優しかった。

 

「はい」

 

ケイは小さく頷く。

一瞬だけ――視線が家の中を巡った。

見慣れないはずの空間、けれど

 

(……不思議と、落ち着きますね)

 

そんな感覚を胸に、玄関へ向かう。

リョウが扉に手をかける。

 

「んじゃ――行くか」

 

ドアを開けた瞬間、外の空気が流れ込む。

昼過ぎの光が差し込み、視界が一気に開けた。

ケイは一歩、外へ踏み出す。

外の空気。

街の音。

人の気配。

そのどれもが、キヴォトスとは違う。

 

「……これが、“現代”」

 

小さく呟いた。

 

─────────────────────────────────────

 

家を出て電車に乗り、しばらくして駅に到着する。

ケイにとってはミレニアムでも変わらぬ移動方法、不思議と違和感はなかった。

二人は並んで、デパートへと続く道を歩いていく。

車の走行音、人の話し声、信号の電子音――あらゆる音が重なり合う。

ケイは無言のまま、周囲を観察していた。

 

「……やっぱ気になるか?」

 

リョウが横目で見る。

 

「はい、ミレニアムとはだいぶ違いますから」

「あそこと比べられたらどこも田舎になるわ」

「そういうわけでは……人々が向こうと雰囲気が違いますから……」

 

キヴォトスの人々で明確な人間は先生と生徒だけ、ロボや動物市民がいないのでケイが不思議がるのも無理はない。

 

「ははっ、人種違うしドローンとかもないもんな」

 

そう言いリョウは鬱陶しそうに眼鏡を外し目頭を抑える、掛けなれていないようだ。

ケイの視線がふと止まる。

 

「……その眼鏡」

「ん?」

「そういえば家ではつけてませんでしたね」

 

黒縁のシンプルな眼鏡だ。

 

「ああ、これか」

 

手に持った眼鏡を軽く振って見せる。

 

「伊達だよ、度入ってねぇ」

「……なぜ、そのような物を?」

「んー……まぁ、気分?」

 

曖昧に濁す、だがケイはじっと見ていた。

 

「つーのは冗談で……変装っつーか、面倒な奴に喧嘩売られたくねぇし……」

 

リョウは肩をすくめる。

 

「余計なトラブル避けるための予防線みてぇなもん、中学の時の奴とかな」

「……なるほど」

 

ケイは小さく頷くが、その視線はまだ外された眼鏡に向けられていた。

 

「昔は、そういった状況が多かったのですか?」

「まぁな」

 

短く答えてから、少しだけ間を置く。

 

「……でもさ」

 

再び眼鏡をかけながら、どこか面倒そうに言う。

 

「“俺も昔は悪だった”みてぇな話、あんま好きじゃねぇんだよ……武勇伝みたいに語るやついるだろ」

 

吐き捨てるように続ける。

 

「ダサいっていうか……別に誇れるようなもんでもねぇし」

 

ケイは黙って聞いている。

 

「今ちゃんとしてりゃ、それで十分だろ」

 

その言葉に、ケイは一瞬だけ目を細めた。

 

「……そうですね」

 

静かに返す。

否定も肯定も強くはしない、ただ受け止めるような声だった。

やがてケイが口を開いた。

 

「似合っていますよ、リョウ君」

「―――んぽらっ!!」

 

唐突なケイからの名前呼びに奇声を上げるリョウ。

ケイはジト目を送る。

 

「変な声上げてどうしたんですか……」

「いやいやいや、家じゃ嵯峨野呼びだったろ!」

「家にはキヨツグさんもいますし、形式上は親戚なのですから名前呼びが妥当でしょう」

 

親戚というワードに家の出来事を反芻する。

 

(嵯峨野ケイ……)

 

リョウの頭の中で何度も再生される。

 

(いや無理だろ……)

 

さらに勝手に意識してしまい、リョウは頭を抱える。

名前呼びに至ってもアロナ以外のブルアカキャラから名前を呼ばれることなどありえない。

リョウからすれば確かに嬉しいが、それが現実で起こっていることの戸惑い、

さらには何故課金もしてないお前なんだというブルアカユーザーの怨嗟の声を想像してしまう。

 

「それとも――」

 

ケイが一歩だけ距離を詰める。

 

「呼ばれると、困りますか? リョウ君」

 

少しだけ、ケイの口元が緩む。

 

「ぐっ……」

 

完全に遊ばれている、どこか余裕のある表情だ。

 

「君なぁ……絶対分かっててやってるだろ」

「どうでしょう?」

 

視線を逸らし、しれっとした態度。

だが否定はしない。

 

「……チッ」

 

軽く舌打ちする。

余裕綽々のケイに少し苛立ちを覚える、中々見ない表情で可愛いとは思うがそれはそれ。

先生の前だと顔真っ赤にして騒ぐ割に、リョウ相手だとあしらっている感じだ。

―――まぁ推しキャラとバレているのでしょうがないかもだが。

 

「いいぜ」

 

ぼそりと呟く。

 

「その余裕、いつまで持つか試してやる」

 

リョウからしたらその余裕は着火剤にしかならない。

 

「キミに“先生”だって認めさせてやるよ!」

 

その言葉に、ケイは一瞬だけ目を瞬かせた。

少しだけ考えるように視線を落とし――

そして、ふっと小さく笑った。

 

「……期待しています、リョウ君」

「言っとけ」

 

リョウは即答するがその声にはどこか余裕が戻っていた。

からかいでも照れでもない。

――まだ少しだけ、不思議な距離感。

そのまま二人はデパートへと続く道を歩いていった。




評価、感想、お気に入りありがとうございます

因みにサブタイトルは非常に適当です

一応ラブコメなのでそれらしいシーンを早く書きたいですが
初日は処理するイベントが多いのなんの

今更・(中黒)と…(三点リーダー)の違いを把握し急遽修正しました
小説初心者なのでその他至らぬ所は言っていただけると励みになります
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