東方妖刀鬼〜人斬り侍の幻想入り〜   作:塩焼きそば啜郎

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東方は原作未プレイだから描写の荒さはお許しを(懇願)


人斬り侍と渡し船

早朝。日の出と共に小鳥のさえずりが響く中、野道に散乱していた鎧がカタカタと震えだした。それはやがて宙へと浮かび、人の形を成していく。

 

「……」

 

ビシャモンは、昨夜を思い出しながら辺りを見渡した。黄金帷子を発動して、自らの霊体を維持出来なくなり、鎧だけの状態に戻ってしまったのだ。

彼が気になったのは、あの鴉天狗がどうなったのか?という事だけだった。

見れば、確かに血の跡はある。しかし森に逃げ込んだ訳では無さそうだ。つまり……逃げられた。

 

「…………クワアァァァッ!!不覚ッ、あそこまで斬っておきながら逃がすとはァ……!!」

 

ビシャモンは怒りのままに刀を手に取り、辺りの木々を斬りつける。同時に、今後の明確な目標が出来た。

 

「もっと魂を喰らわねば……次こそは確実に斬り捨ててやるワイ!」

 

自ら『鬼の使いっぱしり』と呼んだ鴉天狗。しかしその鴉天狗に苦戦しているようでは、鬼を斬るなど到底叶わない事はよく分かっていた。

しかしどうしたものか。今まで喰らってきた下級妖怪の魂では幾らあっても届きそうに無い。より強い魂を喰らう必要があった。

 

「待っていろォ、女鴉めが!!」

 

気合十分と言わんばかりに、ビシャモンは大岩を一刀両断した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……う〜ん、……ん?」

「あ、起きた」

 

妖怪の山にひっそりと建つ山小屋で、文は目を覚ました。体を起こそうとするが、全身に鋭い痛みが走る。

 

「っ……」

「動かないで下さい。……昨夜は止血するだけで大変だったんですから」

「椛……ありがとうございます、ご迷惑をおかけしましたね」

 

一礼で返したのは、白狼天狗の犬走椛。文の部下にあたる天狗である。

 

「それにしても、随分とやられましたね。一体何があったんです?」

「いやぁ、お恥ずかしながら……」

 

文はぽつぽつと事の顛末を話し始める。噂の鬼武者と遭遇し、戦った事。最後の最後で重傷を受けた事……聞いている椛の目には若干の呆れが浮かんでいた。

 

「何やってるんですか……血塗れで帰って来た時は皆大慌てだったんですよ」

「……本当に、お恥ずかしい……」

「……まぁ、とにかくお休み下さい。絶対安静ですよ」

「はい……」

 

しょんぼり顔の文を置いて、椛は小屋を出る。丁度、彼女への食事が運ばれて来た所だった。

 

「ゆっくり食べさせてあげてね。また出血したらキリ無いから」 

「はい!」

 

仲間の天狗にそう言うと、椛は山の警備へと戻る。妖怪の山の警備は、より一層厳しいものとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幻想郷でのビシャモンの凶行は、より凄惨なものとなっていた。日夜を問わず、出会った妖怪をひたすら斬っていく。

 

「まだじゃァ、足りぬ足りぬ!もっと魂を寄越せィ!!」

 

たった今も、哀れな妖怪が彼の凶刃に斃れた。本来なら三途の川へと向かう魂は、その鎧に取り込まれる。

 

「チィ、もうこの辺りには居らぬか……」

 

ビシャモンは辺り一帯の妖怪を一通り斬り伏せた事を悟る。直ぐに別の地へ向かおうとしたが、不意に足を止めた。

再び、何者かに見られる気配。だが今度は見渡しても相手は見つからなかった。丁度太陽を背にしていたのが、彼の幸運だったのかもしれない。

 

「!!」

 

自らの影から伸びた一振りの刃。同時に、気配が格段に強まった。

 

「ありゃ……防がれたか」

「貴様……」

 

咄嗟に振り返り、降ろされた大鎌を刀で受け止める。相手はそれを見て、瞬時に距離を取った。

 

「ほう、鴉天狗の次は死神と来たか!」

「お、分かってるね。にしてもあんた……短期間でポンポン殺し過ぎだよ。おまけに魂まで根こそぎ喰っちまうときた。いっその事、私と一緒に渡し船として働いてみるかい?」

「断る!既に死んだ者の魂なぞ、ワシにとっちゃあ残飯と同じよ!」

「そりゃ残念。やっぱりあんたを成敗してやるしかないみたいだねぇ」

 

自身を渡し船と称した赤髪の少女は、湾曲した大鎌を構える。

 

「元凶を見つけたら連れて来いって上司からの命令なんでね!この小野塚小町、今日はサボらずいかせて貰うよ!」

 

小町の大鎌はビシャモンの刀を越えるリーチを持つ。しかも彼にとって戦い慣れない武器という事も相まって、中々攻勢に移れないでいた。

しかし、それも僅かの間。昨夜に文と戦ったビシャモンにとっては小町のスピードなど取るに足らないものだった。大振りな攻撃に生じる微かな隙を突き、彼女の脇腹に刀を振るう。

 

「貰っ……!?」

「おや、危ないね。運が良かったかな?」

 

確実に射程内に捉えた筈だったが、刀身は虚しく宙を空振る。ビシャモンは逆に鎌の柄で殴打を食らってしまった。

 

「……目測を見誤ったか!!次は外さぬぞ!!」

 

今度こそは斬り伏せるべく、再度ビシャモンは突撃を仕掛ける。鎌を躱し、小町に向かって刀を突き出した。

 

「おっと危ない危ない」  

「何ィ!」

 

しかしこれも、小町には当たらなかった。重い大鎌を持つ相手に避けられる程、自身の剣術は鈍く無い筈。ビシャモンは文の風の鎧と同じく、彼女が何かタネを握っていると確信した。

 

「小細工ばかり使いおって。後悔させてやるワイ!!」

「やってみなっ!!」

 

小町の攻撃は尚も続く。鎌を仕掛けては離れ、カウンターに備えて構えれば何故か逆に引き寄せられて殴打を食らう。変幻自在な戦い方に、啖呵を切ったは良いもののビシャモンは対応出来ずにいた。

 

「おのれェ、これでも喰らえィ!!」

 

ビシャモンは霊気を込めた居合斬りで小町に斬りかかる。当然二人の距離が開いたが、彼は咄嗟に両肩の霊魂を彼女に飛ばした。

  

「行けィ!」

「そんなの、効かないねぇ!」

 

小町はそれを鎌で両断する。しかし、刃が当たる寸前に霊魂は自ら二つに分かれていた。そしてそのまま彼女を捕縛する。

 

「貰ったァァッ、辻疾風(つじはやて)じゃアアァァー!!」

「しまっ……!?」

 

身動きが取れない小町に向かい、ビシャモンは高速で突進。彼女が辛うじて身を捩ったせいで脊髄までは届かなかったが、刃はその胴体を深く斬り裂いた。

 

「あっ、ぐ……!」

「そらもう一丁、これでトドメェーッ!!」

 

身を切り替えしたビシャモンは、無防備な(うなじ)に狙いを定める。

 

「死ねぇィ!!」

「……!」

 

思わず目を瞑った小町。しかし、凶刃はいつまで経っても彼女の首には届かない。

 

 

 

 

 

 

「安心なさい、目を開けても良いわよ。……霊はまだくっついているけど」

 

不思議に思い、小町は目をゆっくり開ける。視界には、おびただしい数の目。そして、金髪を優美に揺らめかせる、賢者の姿が。

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