ポケモン語の理解はぶっちゃけデバフ 作:チャンピオンズやってる人
…6月になりました。多分更新頻度はあがるかも思います。
オーキド博士の鎮火が完了し改めて依頼人のポケモンを見る。……いや、まさか………。
『……嘘…なん…で……?』
小さく震えた声なのに鮮明に聞こえる。
赤色…というよりは茶褐色の体毛。6本の尾と前髪はカールしておりダークブラウンの瞳は瞳孔を開き俺とフシギダネを交互に見ている。
『…アタシじゃ…ない、の……?…コイツ…なの……ッ!』
そして…フシギダネに対し明確な敵意を向けていた。敵意では収まらないかもしれない。口から漏れ出す炎を見て思う。
『ぴっ』
ビビって足元に隠れるフシギダネ。更に強まる鋭い視線。…攻撃をする様子はない。…いや、正確には攻撃をすることができない…か。
…きつねポケモンのロコン。…ある意味…1番馴染みのあるポケモン…だった…。
美しい毛並みと可愛らしい外見から人気の高いポケモン。たが…目の前のロコンの毛並みはボロボロだった。前髪で顔が隠れて見えないくらいには伸びっぱなし。
…毛繕いはしているんだろう。だからこそ特徴的な前髪と尻尾が際立っていた。全くといっていいほど手入れがされていない。
どうして手入れされていないんだ?…もちろんトレーナーが放っていた可能性はある。けれどそれは絶対…確実にないと証明できる。
…このロコンは……。
「いやー参った参った!元気なロコンじゃのう!」
白衣を脱いだオーキド博士。手には資料を持ち優しそうな目でロコンを見つめる。
『…ッ』
オーキド博士の登場に距離を一気に開けて壁際で警戒する。…オーキド博士も敵として見ている、か。
「……………」
「うむ、とある夫婦からのご依頼でのう。色々と手を尽くしたらしいが駄目で途方に暮れていたところに偶然このサイトを見つけて依頼をしたらしい」
………………。
「体に触れさせてくれないとのことでのう。撫でようと手を伸ばしたり、手入れをしようにも逃げられ終いには威嚇や攻撃をされてしまうらしい。…外で人に怪我をさせてしまう事もあったとも。…わしもナナミに手入れを頼もうと思ってモンスターボールから出した途端に至近距離からかえんほうしゃを受けてしまったよ」
…なんでかえんほうしゃを喰らったのに軽傷で済んでいるのかはオーキド博士だからと納得…したくはない。
そんな事よりも…………。
…そっか。フシギダネもそうだが…あれから2年、なんだよな。
「……夫婦には息子さんがいるらしくてのう。ロコンは息子さんにとても懐いていたんじゃと。手入れは息子さんが毎日それはもう丁寧に仕上げていたんだとか。だが2年前に家を出てしまい行方知らず。…その頃からロコンは元気を無くしてしまったらしい。…ん?……2年前?」
『…え?』
…気付いたオーキド博士が俺を見る。
フシギダネも気になったのか見上げていた。
「……そうですね。多分…その息子は俺のことです」
初仕事の依頼人が両親とは思わなかった。
…別に両親と仲が悪いわけじゃない。寧ろ良好といってもいい。
研究所の騒動に関してとても心配されたし噂が広まった時も気にするなと励まされた。捻くれ者の俺と違って真っ直ぐで優しい両親。
ただ…1人になりたかっただけ。それだけだったんだ。
住所を教えても良かったんだがきっと両親のことだ。一緒に引っ越すとかいいかねなかったからさ。…口を閉ざした。
それでも両親は俺を尊重してくれて…いってらっしゃいと見届けてくれた。
偶には帰ってきてね、そう言葉を…残して。
…ロコンだけが反対していた。連れていって…置いていかないで、と。
当時にそんな余裕なんてあるわけもなく…置いていった。…あれから2年。…忘れてはいない。
ここまで酷くなっているとは思わなかった。
「なんと…そんなことが。ふむ、確かにロコンは君に向けて攻撃をする様子はないみたいじゃな」
『……ぁ…』
青ざめるフシギダネ。
………………………。
ロコンが家にやってきたのは5歳の時。
両親はポケモントレーナーではなかったからポケモンを持っていなかった。…初めてポケモンだった。
……将来ポケモントレーナーになるであろう俺の為にポケモンブリーダーから引き取ったんだと思う。
まだ尻尾も真っ白くて1本しか生えてなくて人馴れをしていて人懐っこくて甘えん坊だった。
聞こえる言葉もたどたどしく初々しさがあっただろう。…それも年月が経てば変わっていく。
高飛車なおてんば娘になり言葉の端々には棘があって俺に限らず両親にもツンケンしていたし扱いに困ったこともあった。
…本当は構って欲しくてどうアプローチをすればいいかわからない不器用で優しい子。
ポケモンの中では1番付き合いが長い。
それこそフシギダネやコラッタとは比べ物にならないくらいには身近に存在していた。
ああ……本当に俺はどうしようない馬鹿だ。
今の今まで胡座をかいていたことを昨日気付かされた。
気づくことができたはずだ。……いや、気づいていた上で逃げていたんだ。もし…1度でも実家に帰っていればこんなことにならなかったはずなんだ。
「……オーキド博士」
「なんじゃ?」
「フシギダネを連れて外に出ていただけますか。…ロコンとは2人だけで話がしたい」
自惚れるつもりは微塵もないが…少なくともフシギダネやオーキド博士のように敵意は向けられていない。
「うむ、その方がよかろう。…だが身の危険を感じたら逃げなさい」
「……大丈夫です。ロコンは俺に…そんなことしませんから」
「そうか。…久しぶりに日光浴でもしようかのう!フシギダネ。申し訳ないが付き合っておくれ」
『……ぁ……うん…』
フシギダネを抱え出ていくオーキド博士を見送る。扉がしまった所でロコンの前に歩む。
『……………………』
逃げる様子はない。…ボロボロの尻尾が微かに揺れる。
「……ロコン」
本当にすまなかった。頭を下げ…ることはできなかった。
『………やめて…!』
ロコンが口を開いたから。
近づくために1歩踏み出す。
『来ないでよ…!!』
足元に熱を感じる。下を見れば床が焦げて靴先が溶けて足が露になっていた。ゴム特有の不快な匂いが鼻につく。
少しでもズレていたら足が焼けて悲惨な事になっていただろう。…一瞬でも動きを止めたくなった。それでも歩むことを止めずロコンの眼前に迫り…隣に腰を下ろした。
『…………ッ…』
長い前髪から瞳が覗かせている。
潤ませた瞳が…前髪を濡らしていく。
「……ロコン…」
『…うるさい…』
「……ごめ」
『…うるさい……うるさいうるさいうるさいうるさい…うるさいッ!!なんで?…なんで今なの…!?…なんで…アタシじゃなくて…アイツなのよ…!!…なんで……なんでッ!!』
…何も言えなかった。答えられなかった。
ロコンの言っていることは当たり前のことだ。
どう言葉を取り繕っても言い訳にしかならない。俺には…なにもできない…。
『…ずっと……ずっと待ってたのに…!…パパとママに言われたから…きっと…アンタが戻ってくるって…また一緒にいられるって……そう思ってたのに……!!…なんでよ……!!』
ロコンは両親のことをパパとママ、と呼んでいた。生まれたてで引き取られたからか本当の親を知らないから…なにより両親が愛情を込めていたからこそ……今もそう呼んでいるんだろう。
「………………」
『なんでアンタの人生を滅茶苦茶にしたあのポケモンと一緒にいるの!!…アイツのせいで…ポケモントレーナーになれなかったのに……!!』
悲痛な叫びが木霊した。
胸の中がグッと締め付けられる感覚を覚える。故に自然と言葉を口に出す。
「……違う。フシギダネは悪くない」
俺が…俺が悪いんだ。
『違わない!!…アタシ……知ってるんだから…アイツが…アイツが…殺そうとしたこと…』
小さく低く、そして息を吐くように消え入りそうな声。なのに…耳の奥にスルリと入り込んでいく。
「!…どうして…それを……!」
俺は何も言っていない。ただ…俺がパートナーポケモンに不手際を働いてしまい怒らせてしまったと…そう説明した。
本当のことなんて言えるわけがなかった。
研究員とも出会っていないはずだ。
なんでロコンは…その事を知っている?
『…わかるわよ。アンタがポケモンにそんなことはしないって…パパとママだってわかってる。それに…アンタが出ていってから…研究員がやってきたの。その時に全部教えてもらった。…あのフシギダネが突然…襲いかかったって……そのせいでポケモントレーナーになれなかった。…それに……!!』
…研究員……。
いや、研究員は悪くない。
悪いのは……俺なんだ。
「フシギダネ!待つんじゃ…!」
『そうだよ!トレーナーは悪くない!…ウチが悪いの…!!』
フシギダネ!?
入ってきたフシギダネは力強く叫ぶ。
突如肌がピリつくような殺意が全身に覆われる。
『そうよ。…あなたのせい。あなたのせいで…!!』
熱気が襲う。目の前でロコンは大きくを開く。炎を漏らしながら…大きく息を吸い。そしてフシギダネに向けて──
「やめろ!ロコ──」
『!…ダ……!』
手を伸ば……ががががぁぁ!?
至近距離で放たれたかえんほうしゃ。焼け付くような得ないのしれない痛みが広がり襲いかかる。
「…ぐぅぅ……!ぁぁ…っ!」
服は焼き焦げていき炎が被る。
痛みを堪えることはできず情けなく声を上げ燃え続ける腕を床に叩きつけた。
『トレーナー!?…ダメ……!!やだぁ……!!』
「下がるんじゃ!!」
二股に裂けたかえんほうしゃはフシギダネを綺麗に避けていくのが痛みに悶え苦しみ最中見ることができた。…ああ、良かった……。
グズグズと皮膚が爛れていく…繊維が張り付き同化する。…泣きじゃくるフシギダネ。オーキド博士は熱風の中を駆けていく。
『…ぁぁ!…違…アタシ…そんな……つもり…じゃ……ちが……』
顔を震わせ後ろに下がっていく。
肩まで焼けていき意識が朦朧とする中。足音が近づき頭上から全身にかけて水をかけられた。床に広がっていく。…空になったバケツを置くオーキド博士。意識が覚醒し…痛みが激しく加速する。
「やけどなおしを……!」
オーキド博士…っ……ぐぅ……!はぁ…はぁ………。熱いもんじゃない。…痛い……。
…やけどなおし。やけどの状態を直すスプレー式の回復アイテム。黒焦げまではいかないが焼け爛れた腕に満遍なく吹きかけられた。
……ポケモン用だが名前通り火傷直し。多少痛みが引いた気がする。まだ内側から熱を感じるが……それでもマシになった。
「……ありがとうございます」
深呼吸し息を整えていく。
『トレーナーぁ!!……うぅ…よかったぁ…ごめんなさい…ごめんなさいごめんなさい』
勢いよくしがみつき泣きじゃくるフシギダネ。
「……お説教は後じゃ。先にロコンを…」
「…わかってます」
フシギダネを撫でて立ち上がる。
壁を背にし取り乱しながら呟くロコンに向けて歩く。
『…ちが…アタシ……なんで…なんで…』
「ロコン」
『……ちがう!…ちがうの!…アタシは…アタシは!!』
「ロコン!!」
痛む腕に鞭を打ち両腕を広げロコンを抱き締める。…強く……強く抱き締める。
『…ぁ』
「ロコンは悪くない。…俺が悪いんだ。…俺が逃げたから……逃げていたからロコンをこんなに苦しめた。……許してくれなんていわない。だけど…ごめんな。本当に…ごめんな」
ロコンは動かない。…ただ……胸の中で小さく…消え入りそうな声で……泣いていた。……泣き止むまでずっと…抱き締め……今、この瞬間を目を閉じ確かめた。
ロコンが泣きやみ落ち着いたところで俺はオーキド博士に連れられ病院まで搬送。正直我慢できる痛みにまで落ち着いたしロコンのこともあったから断ったがオーキド博士に本気に怒られた。
フシギダネとロコンも負い目はあったが控えめながらもオーキド博士に同意。タイミング良くか悪くか外出していたナナミさんも帰ってきて大惨事に絶句しながらもオーキド博士から説明を受けて俺に説教をかました。
病院に行く間ナナミさんがフシギダネとロコンを見ておくと言っていたが不安で仕方なかった。…病院の医者も腕の火傷に驚きつつも適切な治療を施され帰り道で痛みは殆ど引いていた。
……帰ってきて直ぐにオーキド研究所に入る。
『トレーナーはね!とってもやさしいんだよ♪』
『知ってるわよ。何年一緒に居たと思ってるの?』
?????
蟠りは無く仲良く談話していた。
険悪な雰囲気は晴らされたかように消え去っていた。
あ、えっと……は?
これは…あれか?女心は秋の空…とでもいえばいいのか?
…杞憂だったか。
ホッと息を吐く。
『あ!トレーナー!…だいじょうぶ?』
『…んっ…火傷は大丈夫そうね。…ごめんなさい』
「…あ、ああ。大丈夫だから気にするな」
足元に集まった2人。ナナミさんが申し訳なさそうに駆け寄る。
「ロコンのお手入れできなかったわ。私じゃ無理みたい…」
…ナナミさんなら俺よりも手入れは得意のはず。ゲーム内でも手入れでポケモンを懐かせることができた。…なんでだろうな。
『ふんっ…アタシにだって選ぶ権利はあるわ』
あー…仕方ない、のか?
ロコンだし……なぁ。
しかし…酷いなこれ。…数ヶ月は手入れできてないだろう。
所々に泥や砂が見受けられる。外に出ていたのか…?
「大丈夫です。ご迷惑お掛けしました。…ロコンは1度自宅に連れて帰ろうと思います」
帰ったら風呂で洗って手入れだな。
…久しぶりか。腕が訛ってないといいが。
「うむ、その方が良いだろう。折角だからご両親に連絡してあげなさい。…ロコンもこれじゃ。…ご両親も気が気ではないだろう」
『…ぁ……ぅ…』
…ああ…この機会を逃せば…きっと俺はまた逃げるだろう。だからこそ足を止める訳にはいかない。
ロコンのこともある。…俺のことも、か。
「はい、わかりました。今日はありがとうございました」
「うむ、怪我が怪我じゃ。明日はゆっくり休みなさい」
……はい。
オーキド博士とナナミさんに深々と頭を下げて帰路についた。
自宅について直ぐにロコンと…一応フシギダネも風呂に入れた。ついでに俺も入った。
…どこ触ってんの!?変態!!などロコンに罵倒を浴びせられたが容赦なく洗いまくった。
反面フシギダネは気持ち良さそうに目を細めてなすがされるままだった。…フシギダネを見習ってくれよ。
風呂を出てからはご飯は食べて…今は途方もない手入れをしている。1時間は経っただろう。フシギダネはベッドの上で丸まり寝息を立てていた。
ロコンは膝の上で………。
『ああああああああっ!!!』
「…うるさい。近所迷惑だしフシギダネが起きる」
叫んでる。…動くなって。誤って切ったら取り返しがつかなくなるだろ。
『…ぅぅう…最悪…もう…燃え尽きたい…』
暖色の顔色が更に真っ赤になったロコンは両前足で顔を隠し唸っていた。…まぁ…うん、今の今まで俺が言葉を理解していることを知らなかった。
人間でいえば5年間の黒歴史を知られていたぐらいの破壊力。…あの時は感情的になっていたから気づかなかったんだろう。
…顔隠されちゃ前髪整えられないだろ。
『ぅーぁー……じゃ、じゃ…アタシがお…アンタのことをなんて呼んでるのかも……』
「初めはお兄ちゃんで…後におにぃに変わったな」
『うがぁー…!!』
じたばたしたら毛が散るって…。
別に恥ずかしがることもなかろうに。
…いや…理解…認知されないからこその安心感もあるのか。
ポケモンがトレーナーをなんて呼んでいるかなんて分からないもの。トレーナーと呼ぶ子が多いと思いたい。ロコンのように良い?意味もあれば……逆もある。
人間とポケモンは違う。それを前提に考えなければ共存は難しい。寧ろ…何も知らないからこそ共存ができているんだろうな。
はぁ……灯台もと暗し、か。
他所のトレーナー様の事情に口を突っ込むつもりはない。基本は見て見ぬふりをしよう。
「…ロコン」
『ぅ…なによ』
「…かえんほうしゃ…手加減してくれただろ。ありがとう」
本気のかえんほうしゃを喰らっていたら黒焦げだったかもしれないな。…いつの間にかかえんほうしゃを使えるぐらいに強くなって…。汚れから頻繁に外へ出向いていた。…聞く…のは無粋か。
だとしたら尚更なんでオーキド博士は至近距離でかえんほうしゃを喰らってピンピンしていたんだ?
……本当になんでだ。手加減でも病院行きだろ?
被害も白衣が焦げただけでほぼ無傷だしどうなって……そうだな。オーキド博士だし…なぁ。
レッドもシロガネ山をあの服装で歩き回るぐらいだ。…ああ、考えても仕方ない気がしてきた。そういうものだと納得しよう。…理解はしたくない。
今回は大事にはならなかった。…ただこの先の依頼によってはどうなるかわからない。…気を引き締める。
旅より命懸けかもしれない。
「…別に……おにぃに当てるつもり…なかったし……」
丁度手入れが終わった。
馴染みあるロコンの姿。…目が合うとぷいっとそっぽを向かれた。
…疲れた。今日はもう寝よう。
明日両親に連絡して…話さないとな。
毛を片付けてベッドに倒れる。
フシギダネを抱き寄せて……ロコン……。
動かないロコンに手招き。
『…ん……』
ベッドを上り胸の前で座るロコンを抱き寄せた。
「……おやすみロコン」
『…ぁ……うん…おやすみ…おにぃ…』
懐かしい夜を思い出し眠りについた。
同時に寝相の悪いロコンに蹴られ噛まれて最悪の目覚めだった。
…顔と首がべとべとする。…洗ってこよう。
実はロコンに限らずですが初めは両親のポケモンを予定していてガーディならわがままわんこ風やポニータなら走り屋風とかにしようと思っていました。ガーディなら無傷?ポニータなら肋ぐらいいってたかもしれません。この先の依頼ポケモンによっては大怪我を負うかもしれませんね。またアンケート投げときますので宜しければ適当にポチってくれるた助かります。
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