甘い世界で微笑んで   作:XX

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 だいぶ遅れました。仕事に忙殺され、姪っ子のシッターに翻弄されとても執筆ができませんでした。
 後いつもよりかなり短い。起承転結だと起で終わるみたいな。もっときちんと書き切ってから出すべきかと思いましたが、2週間も放置してるのもなと思いまして、出すことにしました。


好感度測定器 ①

 工廠で明石に好感度測定器を作ってもらい、思わぬ副作用というか機能をつけられて少し。好感度を測った相手に嘘をつけず、電池が切れるまでメガネを外すこともできなくなった俺は戸惑い、途方に暮れ、諦観し、そして──。

 

「まあ、やるしかないか」

 

 開き直っていた。

 

 予想外のリスクを背負うハメにはなったが、逆に言えばまだ何も失っちゃいないのだ。

 嘘をつけないというのも、うまく使えればメリットになることもあるだろう。普段伝えられないようなことも伝えられるということなのだから。それがどんな内容かは思いつかないが、とにかく悪い方ばかり考えても仕方がない。

 

「う〜ん、しかしやるしかないとはいえ。誰に使えばいいんだろうか」

 

 好意を測れる正確な回数がわからない以上、相手は吟味しなければならない。

 低く見るなら1〜2回。多く見積もるなら3〜5回ぐらいか?

 一回の使用でどの程度容量が減るのかわからないから何の根拠もない予測に過ぎないが、それくらいだと見ていこう。多分に希望的観測が入ってることは否定できないが……。

 

 執務室に戻る道すがら、考える。

 

 知りたい相手としてはやはり身体を重ねたことのある朝潮、荒潮、168あたりが優先だろうか。

 本来ならばたくさんの子を……と望んでいたが、状況が悪い。とてもではないが測ることなどできない。

 

 鹿島……はわからないが、金剛、鈴谷といった好意を向けてくれてそうな相手も悪くはない。

 が、敢えて逆を選んで好感度の低そうな子を選ぶ選択もあるか。

 

「いや、流石にないな。選ぶんなら好意を向けてくれそうな子の方がいいわ」

 

 闇雲に出会った子を測るというのは論外だ。

 藪を突ついて蛇を出したくはない。

 嘘をつけないという制約があるのだ。測る相手はできるだけ安牌な子。そしてできるだけ、俺に好感情を向けてそうな子がいい。

 

 だから、まず使うなら──。

 

「君に決めた!」

「ひゃいっ!?」

 

 甲高い、素っ頓狂な叫び。

 ジョウロを片手に花壇の前で水を上げていた少女の悲鳴だった。

 

「誰ですかっ──て、司令官じゃないですか。もう、驚かさないでくださいよ」

「すまんすまん。見かけたのでつい、な」

 

 小さく唇を吊り上げ、怒ってますと表明する彼女は駆逐艦である吹雪だった。

 白いセーラー服を着た純日本人風の少女であり、カラフルでthe 美少女といった外見の多い艦娘の中ではかなり普通よりな──それでも美少女なのは変わらないが──女の子だ。

 

 彼女は艦隊これくしょんの顔とも言える艦娘の1人であり、アニメでも主人公をしていたり、ゲームのトップ画面でセンターにいたりする。

 性格は温厚、というか普通。良くも悪くも尖った性格をしている艦娘の中では埋もれてしまいそうになるくらい地味で普通な性格をしている。

 

 だが、今はその普通さを俺は求めていた。

 

 地味で普通。いいじゃないか!

 普通ということは、仮に嘘がつけないことを知られてもおかしなことになる可能性は低いということでもある。

 普通である子ほど空気が読める。面倒ごと、大事からは遠い。好感度測定器の初めての対象としては当たり障りのない、十分な相手だろう。

 

 敢えてあらを挙げるなら吹雪からの好感度が予測できんという点だが、そこはまあ見てみればわかること。

 俺はメガネの位置を直す仕草で、縁のボタンを押した。

 

「司令官、そのメガネどうしたんですか?」

「明石に頼んで作ってもらったんだ。似合ってるか?」

「へー。明石さん、そういうのも作れるんですね。司令官、そのメガネ似合っ……うん。はい! 似合ってますよ、司令官」

 

 一度喉元まで出かかったであろう言葉を飲み込み、明らかな社交辞令な顔を見せる吹雪。

 世辞であれなんであれ、そういう相手の気持ちを慮れるところ、好きだぞー吹雪。

 

(それはそうと。スイッチは押したし、メガネの効力の範囲である1mの距離に吹雪はいる。これで彼女からの好意の度合いが見えるはずだが、さて……)

 

 にっこりと笑顔を作っている彼女の周囲に視線を彷徨わせる。

 明石の時と同じように見えた数字。それは吹雪の頭上、その少し後ろにあった。

 

「ひっっっく!?」

「えっ?」

 

 そこに見えた数字に思わず驚きが溢れ落としてしまった。

 見えた数字は39。

 平均である50を下回る。好きどころか、なんなら嫌いにまで片足を突っ込んでそうな数字。

 

 好きかどうかはともかく、まあ嫌われてはないだろうとたかを括っていた俺を嘲笑うような結果に、平静を取り繕うこともできずがっくりと肩を落とした。

 

「あの、どうしたんですか司令官。そんな落ち込んで」

「いや、実はこのメガネな、相手からの好意を推し量れるって優れものなんだが、そこで見えた吹雪からの数値が思った以上に低くて。俺のこと嫌いだったのかと」

 

 メガネの副作用のために、スラスラと口から出ていく。止めようもない機能に辟易とするが、あからさまに気を落としてしまった自分の落ち度でもある。吹雪が疑問に思うのは仕方がなかった。

 

「好意をって……えぇえええええっ!!?」

 

 背後から声をかけた時とは比べ物にならないほどの叫びが吹雪から上がる。

 彼女の反応は当然。誰だって、相手の好意を見れるメガネなんてものがあると知れば驚く。無論、それを信じてくれるかは別としてだが。

 

「す、すごいですね。でも、なんでそんなものを?」

 

 おやっ、と首を傾げそうになるほどに、吹雪はあっさりとその効果を受け入れていた。

 

 普通ならば、そのような不可思議極まりないメガネの力など一蹴するか半信半疑となりもっと深く切り込んでくるところだが、彼女自身がそういう存在であるからかも知れない。或いは単純に疑うことを知らない純粋さを持っているのか。気になるところだが、ともかく彼女は予想に反しこのメガネの力を信じるようだ。

 

「お前たちからどう思われてるかを知りたかったんだよ」

 

 メガネにより自動的に出てこようとする本音。セクハラ目的という部分だけは死守せんと、気合いで抵抗しながら話す。

 意外にも、それは功を奏しているようで、口から溢れでる理由は上辺をなぞるだけで済むようだった。

 

「なるほど。えっと司令官、私はなんて見えてるんです?」

「数値は39。平均の50より下なんだ」

「あー」

 

 どこか納得という吹雪に俺の顔が萎む。

 嫌われるようなことをした覚えはないが、平均以下であるということは知らぬうちに何かしたかも知れない。

 

「吹雪、俺はお前に嫌われるようなことをしただろうか」

「いえ、そんなことは。ただ、なんていうか関係が薄くて。出撃もあまりありませんし。つまり、司令官のことがよくわからなくて。それで低いんだと思います」

「あー」

 

 今度は俺の方が納得といった反応をする番だった。

 

 他の艦種に比べて、駆逐艦の数はべらぼうに多い。出撃する機会はあっても、実際に海に出るのはその中の一部だ。

 さらに俺は一部の艦娘ばかり重用していたから、色々と普通すぎて影の薄い吹雪は後回しになりやすい傾向が……とそこまで思い、俺は彼女に頭を軽く下げた。

 

「すまない吹雪。もっと多くの艦娘を出撃させてやればよかったんだがな。そこまで考えていなかった」

「いえいえ! 司令官が謝ることはありませんよ。仕方ないです。駆逐艦は多いですから。それより司令官、司令官はこれから他の娘の好意も確かめにいくんですか?」

「ああ、そのつもりだが」

 

 まだメガネは外れそうにはない。

 吹雪1人では、電池切れにはならないようだ。

 

「でしたら私もついていっていいですか?」

「えっ、吹雪がか?」

「はい。他の子が司令官をどう思ってるのか興味がありますので………あと、司令官を知れるいい機会ですし」

 

 興味があるといった後に小さく呟く吹雪に、俺は考える。

 正直なところ、1人の方が動きやすいし、リスクも低く済む。だからあまり来てほしくはない。

 が、先程のやり取りのこともあり、少し断りづらい。

 なにより女の子に一緒にいていいかと聞かれて断れるほど、俺は冷たくはなれん。

 

「わかった。一緒にいこうか」

「はい! よろしくお願いします!」

 

 まあ、実際1人の方がよかったが、吹雪の嬉しそうな顔が見れたならこれでよかったのだろう。

 断ろうかと考えた際の心苦しさも消えて、胸が軽い。

 

 吹雪を隣に、歩き出す。

 ふと横を見ると、ひっそりと、彼女の頭上の数字が45に増えていた。

 

 





 書いてみてわかるということもあるもので、自分、別に性的な話が書きたいわけじゃないんだろうなって。読むのは好きだけど、書くのは好きじゃないっていうか。書きたいのは別にあるっていうか。

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