いろPとお揃いのスキンの人がかぐいろ達と絡むだけ   作:条約

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ことのあらまし

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──ここは夜の(まち)

 煌々と放たれる光、市を賑わす物品の数々、賑わう人々。

 皆、己が欲望を満たす為に蠢く。

 

 

 

 

「ふふふ……」

 

 

 

 

 幾ら光撒かれ、人で賑おうとも、この(まち)には闇に塗れ、人の目が届かぬ場所が有る。

 この路地裏のように。

 

 

 ──私も、私の欲望を解放する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──よいしょー‼︎」

 

 

 

 

 ──ずるんと取り出されたのは、ゆるくつんとした表情の人間大のキツネ。

 布系素材で作られ、抱き締めればもふもふふかふかのそれは、しかし背中にファスナーが付けられ、中に入って着る事ができる。

 即ち私が取り出したのはキツネの人体着用ぬいぐるみ、──キツネの着ぐるみであったのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 仮想世界ツクヨミ。

 ここでは誰もがクリエイターと宣言する和風VR(バーチャル・リアリティ)空間。

 ここでのクリエイターの条件は何も数々のアイテムや歌にダンスを作る事だけではないのです。

 作ったもので楽しむ人もまた、クリエイター。

 何故なら『楽しい時』を作るのもまた、かけがえの無い創作なのだから──以上、私なりに記憶したツクヨミ管理人兼ライバー月見ヤチヨちゃんの言葉。

 

 

 

 

「ふっふっふっ……」

 

 

 

 

 なので私もまたそれに則るのでした。

 具体的には路地裏で着ぐるみのファスナーを開け、中に潜り込んで行くのです。

 え?何故プレイヤールームではなく路地裏で着替えるのか、ですか?

 たまたま見られた時が、裏方を覗かれた着ぐるみのスタッフさんになったみたいで楽しいからです。

 それに完全に秘匿されないこっそり感があるのもワクワクしません?

 

 

 

 

「よいしょ、よいしょ……!」

 

 

 

 

 たまたま店先で見かけ、そのシンプルにキツネらしい表情がなんともかわいく、即決で買ってしまったキツネの着ぐるみ。

 ところがツクヨミでも現実でも着ぐるみを買うのも着るのも初めてだったので気付かなかったのですが、この着ぐるみ。背中のファスナーが短めだったのです。

 後々ツクヨミや現実の他の着ぐるみを見てみたら、首元から腰までファスナーが開くものが大半の中、この着ぐるみは首元からせいぜい背中まで。

 なのでスキン変更を使わずに着る場合は着る、というより潜り込む、ように着なければなりません。

 

 

 

 

「……ふふっ」

 

 

 

 

 ──しかし『スキン変更を使わずに着る場合』こそが、この着ぐるみの醍醐味の一つだったのです。

 ごそごそと、もふもふふかふかのぬいぐるみの中に潜り込んで行くワクワク感。

 そうして潜り込み、包まれて。

 ふと、見た体が着ぐるみに変わってしまってる驚き。

 自分の体がキツネに変身してしまっている事への驚き、そしてワクワク感。

 ──それらを強く味わい、楽しめるのが短めのファスナーという存在あってのものだったのです。

 

 

 ……まぁ間違ってたら恥ずかしいので、製作者さんに確かめてはいないのですけどね?

 

 

 

 

「うふふ、っ」

 

 

 

 

 そうこうしてるうちに着ぐるみに首元まで潜り込んで、私のアバターは残すところ頭だけ。

 ……もう既に楽しくなってしまってるので、着ぐるみになった自分の手を見たり、くるっ、くるっ、と小さく踊ったりしていわゆる『自萌え』のお時間。

 

 

 

 

「ふっふっふっ……」

 

 

 

 

 ……しかし本当のお楽しみはここからなのです。

 体の前に下がったキツネの頭を着ぐるみになった手で持ち上げ、人間として残された私の頭も着ぐるみに変えてしまうのです……!

 ……なんかそう考えると、始めは『人間の私が着ぐるみに入っていく』だったのが、終わりには『着ぐるみになった私が人間の私を着ぐるみに引きずり込んでしまう』形になるのは不思議ですね?

 

 

 

 

「よいしょっ……!」

 

 

 

 

 まぁ私が望む事なので嬉々として着ぐるみの中に引きずり込まれます。

 ファスナーに顔を突っ込み、もぞ、もぞ、とキツネの頭の中に潜り込みます。

 

 

 

 

 

「……!」

 

 

 

 

 そうして着ぐるみの中に全身潜り込んだら、

 背中のファスナーを、上げて、閉じて、っ……‼︎

 

 

 

 

「わー……!(※周辺配慮で小声です……!)」

 

 

 

 

 私はキツネの着ぐるみに変身しましたっ!

 

 

 

 

「えへへ……!」

 

 

 

 

 ぺたぺたと顔を触れば、それはもふっとしたキツネの形……!

 ふりふりと腰を揺らせば、ふんわり尻尾が揺れる……!(※……私のアバターは角とか尻尾が無いので自在には動かせないのです……)

 私の体はもふもふふかふかの体のキツネになってしまいました……!やったー!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すいませーん、一緒に写ってくれませんか〜?」

 

「いいですよ〜」

 

「ありがとうで〜す」

 

 

 

 

 そうして路地裏から通りに足を運んだ私はいつも通り写真撮影を求められました。

 着ぐるみとして積極的に踊ったり芸をしたりはしない私ですが、こうして写真撮影(スクリーンショット撮影)には応じているとたまにおひねりを貰えたりします。

 

 

 

 

「いきますよ〜。ぱち、っ。ありがとうございました〜」

 

「お気になさらず〜」

 

「ではでは〜。 (流行ってんのかな〜、あれ?)

 

 

 

 

 ……しかし行なう事はいつも通りですが、撮影を求められる頻度はいつも通りではないですね……?

 具体的にはちょっと多いです。

 『流行ってんのかな〜?』という事はどこかで別の人がこの着ぐるみを着てるのでしょうか?

 このふかふかもふもふのキツネは、特にオーダーメイドでも高額アイテムでも限定販売でもないですからありえない事ではありません。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あーっ‼︎おそろい‼︎」

 

「えっ……」

 

 

 

 

 気になって少し探してみると確かに居ました、垂れ下がるウサ耳が特徴のアバターの隣に私と同じ姿のキツネの着ぐるみが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それが後にツクヨミのみならず、配信者の歴史に巨大彗星の如き伝説を刻み込むライバー・かぐやさんといろPこと彩葉(いろは)さんと、(わたし)天地混沌(てんちこんとん)こと雨土(あまつち)鵬呼(おうこ)の出会いなのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 






 ……実のところ見に行く決め手となったのは彩葉さんのいろPとしての姿を知ったから。


 ……最終的に決め手など吹っ飛んでグズグズ涙がこぼれた。


 ……吹っ飛んだけど消え失せたわけではないのでこうなった。




○雨土鵬呼/天地混沌
 いろPと同じキツネの着ぐるみを愛用するツクヨミユーザーの一人。
 その着心地をじっくり味わう為、スキン変更のシステムを使って着るのではなく、オブジェクト化させて手に取りながら着ぐるみを着ている。
 もちろん脱ぐ時もファスナー開けて、ごそごそ脱いでる。そしていちいち閉まっては取り出してる。
 (※ツクヨミでのスキン変更のシステムが謎なので捏造設定です‼︎)

 なお、着ぐるみはお揃いだが、アバターは普通のヒトミミであるなど彩葉のアバターとは違う。
 違う、が、どこか似たものがある……という感じ。
 ゆるふわお姉さんといった感じなのに本名もユーザーネームもやたらいかつい。

○かぐや
○彩葉
 作者が見た限り身バレを気にする彩葉に手に入れた着ぐるみを押し付けたかぐや……、という感じに見えた。
 身バレ防止の為に着ているだけなので、彩葉は今のところ特に着ぐるみへの思い入れは無い。

○キツネの着ぐるみ
 作者が知る限りでは正式名称もどのような経緯のあるアイテムなのかも不明。
 とりあえず本作では普通に店売りで買えるスキン変更アイテム……としときます。
 ファスナーの長さは作者は背中の中程より下には無かったと記憶してますが、そうでなかったらオリ設定です。
 (規約上、ツクヨミでは全裸になれない。なので衣装がスキンと呼ばれてる……みたいな所だろうか?そのあたりとりあえずオリ設定になりそう)

 (ちなみにかぐやのアバター作成で選べる衣装の中に一瞬、ウサギの着ぐるみが写ってた……はず)

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