お嬢様がGBNにいるわけないだろう!   作:プラ板の削りカス

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【悲報】ロンメルの胃、破壊される

「それじゃあ即席マッチで……お相手は──」

「第七士官学校、ですか」

 

 可愛らしく小首を傾げて、ルカが今回の対戦相手を読み上げる。

 わーお。

 即席のランダムマッチとはいえ、あのフォースランク第2位に燦然と輝く「第七機甲師団」の下部フォースと当たるとは。

 

 でも、私たちの初フォース戦なのだから、これぐらいの相手でないとむしろ滾らないというもの。

 ルカも同じことを考えていたようで、楚々とした微笑みの下には、激しい闘志の炎が燃え上がっているのが伺えた。

 でも、第七士官学校って、油断してたとはいえリクくんのビルドダイバーズにパーフェクト負け喫してるんだよね。本当に大丈夫かこいつら。

 

「お姉さんたち!」

「あら? リクくん、ごきげんよう」

 

 今回も慢心からの舐めプで勝手に自滅するという最悪に萎える結果にならないだろうな。

 などと心配していると、ちょうど頭に浮かべていたリクくんが、ビルドダイバーズのフルメンバーを連れてやってきた。

 おお、アヤメさんとコーイチさんもいる……ということは、やっぱり第七士官学校は原作通りフルボッコにされたのか、可哀想に。ひとえにテメェらが慢心してたせいだけど。

 

「リクくん、この人たちは?」

「えっと、コーイチさん。この人たちは俺の憧れみたいなもので……エキシビジョンマッチでチャンピオンに一歩も退かず喰らいついた、すごい人たちなんです! それだけじゃなく、あのオーガも倒してるんです!」

「その割には名前も知らないのね」

 

 アヤメさんはまだトゲトゲモードだなー、乳スライダー脳死で最大にしてるくせによぉ。

 まあ私も乳スライダーいじりたかったからそれは黙っておくとして、確かに私たちが名乗ってすらいなかったのは確かな落ち度だ。

 っていうか、純粋にここまで原作主人公と絡むことになるとか思ってなかったのよね。

 

「失礼いたしましたわ、私はミキ。こちらは親友のルカとフィアですわ」

「ごきげんよう」

「やあ、ごきげんよう」

 

 三人でスカートの裾を摘み上げ、一礼する。

 別にGBNで演技する必要はないんだけど、一応対外的に非戦闘エリアで接しているんだから、失礼のないようにしておくに越したことはない。

 

「……『鬼狩りのバーバリアン』にしては随分とお淑やかなのね」

「お、おほほほ……なんのことやら……」

 

 このダイバ忍、ツカサくんが原作よりも大人しいくせにしっかり情報収集してやがる。

 まーでもいいか。私の悪名なんてもう取り返しのつかないほど拡散してるだろうし。

 私がヘイトを請け負うことで、ルカとフィアが無事なら安いものだ、不名誉な二つ名の一つや二つぐらい。

 

「お姉さんたちも第七士官学校と戦うんですよね? 俺たちも見学させてもらっていいですか?」

「ええ、ご参考になるかはわかりませんけれど……」

「ありがとうございます! えっと、お姉さんたちのフォース名って」

「ああ、それでしたら──『Lady Build(レディビルド)』ですわ」

 

 私たちはついさっき決めたばかりのフォース名をビルドダイバーズの皆へと告げて、戦いの場へと赴いた。

 初めてのフォース戦で、ギャラリーまでいるなら尚更負けられないというものだ。

 いいね、滾ってくる。だから第七士官学校、テメェらも死ぬ気でかかってきやがれよ?

 

 

 

 

 

 

 私──ロンメルの率いる「第七機甲師団」の下部フォースである「第七士官学校」が先日ビルドダイバーズに手痛いパーフェクト負けを喫してしまったのは事実だ。

 顔には出していないが、少なくとも得意としていた戦術で負けを喫したという事実に、皆が心を傷めていることは間違いない。

 そこで私は、一つ、ケアの手段を考えた。

 

 いや、手段を選ばなかった、というべきだろうか。

 とにかく、第七士官学校の面々には気持ちよく勝利してもらうことだ。

 負けた悔しさは、勝った快感でしか取り戻せないものだからね。

 

 そこで私が考案したのは、腹心のクルトを第七士官学校へと出向させて、彼らのメンターを務めてもらうことだった。

 戦術の未熟さを補ってもらい、バトルでも頼れる存在がいるという安心感を与え、なりふり構わず勝ちを掴み取る。

 クルトは第七機甲師団のナンバー2なのだから、万一力押しで戦術を踏み倒すようなダイバーを相手にしても心配はない、これで安心して彼らに飴を与えられるというものだと──そう、考えていたのだが。

 

『ハウリングバスターライフル最大出力だ! 悪りぃが一曲目から全力でぶっ飛ばしていくぜ!』

『なにも考えずにわたくしが飛んでいると思いましたか? ふふっ、浅はかなんだよこのヒヨッコ共が!』

 

 なにこれ?

 ランダムマッチの相手に選ばれたフォースの相手は2人……そこに「鬼狩りのバーバリアン」が混ざっていたのは想定外だったが、数の暴力で封殺できると考えていた。

 しかも地形は我々が得意とする密林ときた以上、負ける要素の方が少ないはずだった。

 

『こ、こちらチャーリー! 敵はトラップごと森林地帯を焼き払ってこちらにまっすぐ突き進んできます!』

『なんて出力のビームなんだ……このままでは倒木に巻き込まれる、一旦第二防衛ラインまで下がって陣形を──』

『甘ぇぇぇぇっ! テメェ今ルカをビームで撃ったよなぁ!? 射線割れてんだよタコが!』

『そしてスナイパーに護衛はつきもの、ですものねぇ……? あっははは! 後退なんて萎えることしてんじゃねえよ!!!! テメェのイチモツおっ勃てて前進してこいよ玉無し野郎共!!!!』

『ひ、ひぃぃぃぃ! クルト副隊長、我々はどうすれば──』

 

 機動力が高いあのウイングガンダムとイカロス・ユニットに捕まった以上、チャーリーたちに未来はあるまい。

 ビーム・リフレクターを失念していたのはこちらの不手際だった。

 しかし、それにしたってトラップを大火力で焼き払って森林火災を起こすなんて、思考がいくらなんでも蛮族すぎる。

 

『な、なんてやつらだ……クルト副隊長!』

『挑発には乗るな。我々は最終防衛ラインを維持し、数での勝負にかかる。デルタ以下には後退命令を、残った隊員たちで彼女たちを迎え撃つ』

 

 クルトが冷静なのは幸いだった。

 それならば立て直すことも容易だろう。

 士気を削がれて戦線が崩壊することこそが最大の負け筋、ここからならいくらでも巻き返すチャンスはあるのだから。

 

『ルカ』

『ええ、ミキ』

『あいつら、挑発に乗らないで撤退していく。恐らく私たちを数でコマそうとしてるわよ』

『まあ、素敵♡ ならば、とってもハードな溶け合いを見せつけて、身も心も一つになる乱戦をいたしましょう♡』

『最っ高……! それじゃあ……パーティー会場に乗り込んでやりましょう!』

 

 彼女たちはバカなのかね?

 思わずリクくんたちに聞いてしまうところだった。

 乱戦になれば多少勝ち目はあるといえども、こちらが失った戦力は僅か2機、残った4機で真正面から挑めば、ツーマンセルでの挟撃でいとも容易く対処できる。

 

 いや、しかし──なんだ、この寒気は?

 GBNだから気のせいだとはいえ、どうにも嫌な予感が拭えない。

 乱戦の負け筋は、連携を乱されて各個撃破されることだ。その点はクルトという優秀な指揮官が統制している以上、問題はないはずなのだ。

 

「あら、ロンちゃん。顔が青いけど大丈夫?」

「ご心配には及ばないよ。勝つさ、我々は」

 

 ビルドダイバーズの付き添いで観戦に来ていたマギーくんからの気遣いが、今は刃のように、震える心へと突き刺さる。

 わかっている。私は信じている。

 クルトならば、必ず……必ず第七士官学校の隊員たちをまとめ上げて、勝利に導いてくれると。

 

「ねえ、リク……たまなし? いちもつ? って、なに?」

「さ、サラは絶対に知らなくていいことだよ!」

「うへー……相変わらずすごい腕前とひどい言葉遣いだなあ……でも、なんだか僕、あの二人を見てると変な気持ちになっちゃうかも……」

「たまなし?」

「……モモくんも知らなくていいことだからね」

「最低……」

 

 ビルドダイバーズの面々がもう「レディビルド」が勝ったとばかりに緩んだ空気を出しているが、決して、決して私は揺るぎはしない!

 必ず勝利を掴むのだ!

 やだやだ、二度目のパーフェクト負けなんて絶対の絶対に許さないんだからね!

 

『L字取って挟撃すんのは基本中の基本だよなあ! けどな、マニュアル通りにやってますっていうのは……アホの言うことなんだよぉぉぉ!!!!』

『ぶ、ブラボーをノールックで背面撃ちした!? どこで位置がバレていた!?』

『テメェも油断してる場合じゃねえぞアルファくん!!!! さあ……こっからはタイマンだ、全力でセッションしようぜ!!!!』

 

 鬼狩りのバーバリアンが操るウイングガンダムは木陰に潜んで一斉射のタイミングを伺っていたブラボーのザクキャノンをバスターライフルの背面撃ちで消滅させると、そのままビームサーベルを引き抜いてアルファへと斬りかかっていく。

 うっ、仕方あるまい。

 しかしアルファくんもあれから腕に磨きをかけたのだ、そう簡単には負けないはずだろう。

 

『あらあら……あらあらあらあら! 飛行スキルをお持ちでない? まさか存在すらご存知ではない!? でしたらここの制空権はわたくしのものですわねぇ!!!! すっとろいジャンプでこのイカロス・ユニットを捉えられると思わないことですわねぇ!!!!』

『がっ……あ、ああ……や、やめろ、なにをするつもりだ、やめろーっ!』

『狼狽えるな。今、支援を……!』

『読めてんだよぉッ!!!!』

 

 バイアラン・カスタムの腕が接続されている真紅のイカロス・ユニットはデルタのアクト・ザクをクロー・アームで捉えると、コックピットを握り潰し、クルトのギラ・ドーガへと質量弾として放り投げた。

 まるで、「機動戦士クロスボーン・ガンダム ゴースト」に出てくるサーカス機、ガラハドのように。

 や、野蛮すぎる……あまりにも、野蛮がすぎる……しかし、彼女たちは、強い!

 

『知ってるか? シールドってのは投擲武器にもなるんだぜ!!!!』

『こ、こいつ!?』

『目の良さが命取りだってなぁ!!!! こいつで……イっちまいなぁ!!!!』

『も、申し訳ございません! ロンメル大佐ーっ!』

 

 アルファが投擲されたウイングガンダムのシールドを、ガトリングシールドで撃ち落とそうとしたのが運の尽きだった。

 それを目眩しにした鬼狩りのバーバリアンは、事前に引き抜いていたビームサーベルを、一気にコックピットへとアルファの旧ザクへと突き立てた。

 ……どうやらこれで、戦局は完全に逆転してしまったようだ。

 

 しかし、クルト。信じているぞ。

 私の右腕として数々の鉄火場を潜り抜けてきたのならば、必ず。

 多少の数的不利ぐらい──

 

『な、なんだこのマニューバは……っ!?』

『虹ステをご存知でない!? ただ単に格闘攻撃を強烈なスラスター噴射で事前にキャンセルしただけだよ! やっちまえ、ルカ!』

『もう……ミキにばかりお熱で妬いてしまいますわね。だから……テメェのコックピットをじっくり炙って焼いてやるよ!!!!』

『く、クローアームにこれほどの力が……っ!?』

『パテ詰めてプラ板貼って延長とシャープ化してんだよ! ビームサーベルでじわじわ焼かれてイっちまいな!!!!』

『私に生き恥を晒させるつもりか……くっ、一思いに殺せっ……!』

『たまりませんわねぇ、猛者がわたくしに跪いて命乞いをするのは! でしたら……お断りですわ♡』

 

 じわじわとビームサーベルにコックピットを焼かれながら、クロー・アームに握り潰されて。

 これが実際のガンダム作品でなかったことだけが幸いだったと言わんばかりの惨状を呈して、最後の希望だったクルトも撃墜されてしまった。

 仕方あるまい、結果は結果として反省すべきところは多々あるが……ところで誰か、私に胃薬を買ってきてくれないかね。

 

 それも、とびきり強いのを。




姫騎士クルトさんが蛮族二人に襲われる図
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