お嬢様がGBNにいるわけないだろう! 作:プラ板の削りカス
シバ・レクイエム計画の発動まで、残り三日を切った。
その間に私たちがなにをしていたのかというと、ひたすらチャンプとロンメル大佐への根回しと、情報工作を行うことだった。
ブレイクデカールの新型を一斉に配布するからラグランジュ4に集まれ、とマスダイバーたちを呼び寄せるための偽情報を流し、今のところ好感度が最低値なチャンプの下に三顧の礼で通って……とにかく疲れた。
「……では、君たちの言葉が本当だったとして、確かにマスダイバーは殲滅できるだろう。しかし」
「彼らの中にもガンプラやGBNを愛する者がいるかもしれない、ですか?」
ヒロトくん経由でAVALONにコネ作ってたおかげでようやく通してもらえた応接間で、私とルカはチャンプと向き合っていた。
原作でもその辺心配してたからなあ。
まあ原作だと相手した汚いトリニティがカスだったから素手で引き裂かれたわけなんですけれど。
「そうだ。確かにブレイクデカールはGBNにバグを生んでいる……しかし、マスダイバーの中にはやむを得ずブレイクデカールに手を出した者がいるかもしれない。そんな彼らを一方的に悪と断じる権利が、僕たちにはあるのか?」
チャンプは微かに目を伏せて、自分へ問いかけるように言った。
その辺を考えたらキリないと思うんだけどなあ。
事情があろうがなにをしようが、チーターはチーターとしてきっちり晒し首にしとかないと、後続のチーターを生み出す土壌を形成しかねないのだから。
「ありますわ」
なんてチャンプに面と向かって言えた立場でもないからなー、とぼんやり考えていると、ルカが楚々とした笑みを浮かべて、どこか挑戦的にチャンプの答えへと言葉を返した。
「……その根拠は?」
「ガンプラやGBNへの愛が本当にあるのなら、わたくしたちがブレイクデカールに頼らずにブレイクデカールの力というまやかしを破ってみせれば、彼らも反省することでしょう。反省しなかったら、それまでです」
要するに少しでも負い目があるのなら、見せしめとしてボコボコにしてやれば、反省の一つもするだろう──と、いうのが、ルカの言い分だ。
私も同じ考えだったから助かる。
ちょっと楽して強くなりたかっただけのカスにはキツめのお灸を据えてやるのが、むしろ力ある者としては正しいやり方だろう。
「……なるほど。『レディビルド』らしい考え方だね」
「ここで私たちがマスダイバーを殲滅し、今後の戒めとすれば被害に遭ったダイバーたちの溜飲も下がることでしょう。チャンピオン──クジョウ・キョウヤ様、どうかご検討を」
「……わかった。リクくんからもブレイクデカールを配布していた黒幕を仕留め、改心させたという報告が入っている。今回、我々は有志連合を結成し、一つの戒めとしてマスダイバーを殲滅することにしよう」
よかった、ノってくれた。
半分以上リクくんパワーのおかげだけど。
でもそこはそれ、使えるものは使うの精神でなんでも使っていかなきゃGBNの崩壊もイヴの消滅もマスダイバーの殲滅もできやしないんだから仕方ない。
「ありがとうございます、では作戦のことはどうかご内密に」
「心得ているよ。ヒロト、君にも出撃してもらうことになるが、構わないかい?」
私たちをここまで案内してくれたヒロトくんに対して、チャンプは問いかける。
どーだったかな。原作だと確かジュピターヴガンダムは完成してたはずだけど。
ヒロトくんは驚いたように目を見開いて、チャンプへと問い返す。
「新入りの俺が出撃して、本当にいいんですか」
「君の実力とガンプラへの愛を僕は高く買っている。戦果を期待しているよ」
「……ありがとうございます」
できればイヴも連れてきてくれればサラちゃんやフィアと一緒にサルベージする計画が捗るから助かるんだけど、そこまで望むのは贅沢だろう。
とにかくこれで、手筈は整った。
原作と違って黒幕のいない殲滅戦──というか虐殺会場になりそうだけど、マスダイバーなんてカスはいくら殴っても良心が痛まないので大丈夫だよね、うん。
†
「ごめんなさい、遅くなりました、ミキさん!」
「ようやく完成したのね、新しいダブルオーが」
「はい! トップコートがさっきようやく完全乾燥したばかりで……」
シバ・レクイエム計画こと形を変えた第一次有志連合戦の決行時刻のギリギリ、日曜日の14時47分ぐらいに姿を現したリクくんは、一皮も二皮も剥けたような印象だった。
きっとコーイチさんとツカサくんに鍛えられたからなんだろうなあ。
原作では色々悩んだ末に完成したダブルオースカイがどうなっているかも含めて楽しみだ。
「で、その紫ハロがツカサ様……失礼、こちらではアンシュ様でしたね」
「その通りだよ腐れメイド、俺は別にGBNに魂を売ったわけじゃねえからな」
「コーイチさんとの二人乗り機体作っといてそれは流石に言い訳できないんじゃない?」
「うっせえよ」
ガルバルディリベイクは優秀なタンク役だったけど、火力不足を懸念したツカサくんによって、ロードアストレイダブルリベイクも前倒しで作られたという報告がコーイチさん経由でもう伝わっているのだ。
このツンデレめ。
しかしツカサくんはマスダイバーを生み出した元凶なのも事実、ここできっちり自らが蒔いた種を刈り取ってもらわねば。
「ツカサさんとはGPDで何回もバトルして新しいダブルオーの調整をしてもらったんです、だからこんなギリギリになっちゃって……」
しっかりリクくんの面倒も見てるんじゃねえか。
「別にテメェのためじゃねえよ、ダブルリベイクは1から作り直さなきゃいけなかったからな、ついでだついで」
「ツカサ……口は悪いけど、いい人?」
「そんな目で俺を見んじゃねえよ」
サラちゃんに抱きしめられて慈愛の目で見られているハロボディのツカサくんは、どこか恥ずかしそうにそっぽを向いた。
うんうん、原作よりも関係が改善されているのはいいことだ。このツンデレめ。
この分だと、ダブルオースカイも私が知っている姿じゃなくなっているのかもしれないけど、それも含めて楽しみよね。
「さあ、間もなくパーティーの時間ですわ。皆様方」
「そうね、マスダイバー殲滅作戦の首尾は上々だってロンメル大佐も言ってたし、私たちも出撃しなきゃね」
「ふふふ、このピケスト、お嬢様と共にGBNを楽しめる日をお待ちしておりました。存分に力を振るわせていただきます」
「いいなあ……ぼくはまだガンプラを使えないから、皆が羨ましいよ」
フィアがちょっとだけ羨ましそうに微笑みかけてきたけど、大丈夫。
これが終わったら私がやるべきことは、ELダイバーサルベージ計画なのだから。
必ず、イヴの消滅も回避して、サラちゃんを現実に受肉させて、フィアにガンプラバトルの楽しさを教えてあげるんだから。
「……君たちが、ビルドダイバーズ?」
などと意気込んでいたら、多分欠員の確認のために、ヒロトくんがやってきた。
傍らには、お清楚なお姫様みたいな格好をした下ツインテールの女の子ことイヴもいる。
おお、これでELダイバーが3人揃ったことになるなぁ。
「はい! 遅れてすみません、俺たちも有志連合としてこの戦いに参加します!」
「……よかった、キョウヤさんが心配してたから」
「ありがとうございます!」
こうして原作主人公と次回作主人公に接点ができたのも個人的には望ましかった。
イヴをサルベージするときに話が通りやすくなる。
ヒロトくんの敗因はリクくん周りの人間関係に干渉できなかったことだからね、ちゃんとこの辺の地固めはやっておかないと。今回は偶然だけど。
「……あなたは、誰?」
「サラ?」
ハロボディのツカサくんを抱えたまま、サラちゃんは前に歩み出て、イヴに問いかけた。
「初めまして。私はイヴ。あなたの……お姉ちゃんみたいなものかな」
「と、いうと……きみはもしかして、ぼくたちと一緒なのかい?」
「そういうことになるかな、フィア」
「なるほど……そうなると、きみのことはお姉様、と呼んだ方がいいのかな、イヴ?」
フィアもイヴに感じるものがあったのか、サラちゃんに続いて問いを投げかける。
恐らくファーストELダイバーのイヴは確かに、サラちゃん含めたELダイバーのお姉ちゃんみたいなものだよなあ。
でも、長身で中性的な外見のフィアが童顔で小柄なイヴの妹、って考えると脳がバグりそうになる。
「……イヴ、知り合い?」
「知り合いっていうか……うーん……」
「イヴお姉ちゃん……」
「妹たちです、えへ」
サラちゃんがハロボディのツカサくんをモモちゃんにバトンパスしてイヴに懐いているよ、尊いね。
あまりの出来事にヒロトくんは出撃前なのに目を白黒させて驚いていたけど、仕方ない。
多分ELダイバーの前世の記憶とか本能でわかるんだろうなー、そういうの。
「……君に妹がいたなんて、初めて知った」
「会えると思ってなかったから……黙っててごめんね、ヒロト?」
「……なんだか複雑な事情があるんだな。でも、そろそろ行かなきゃ」
「うん! お話はまた後でしようね! サラ、フィア!」
手を振って、イヴとヒロトくんはゲートの中に飛び込んでいく。
さあ、これからが正念場だ。
マスダイバーのカスどもにお灸を据えて、目指せ完全無欠のハッピーエンド──とついでに私とルカが気持ちよくなるために!
サライヴ……そういうのもあるのか!