お嬢様がGBNにいるわけないだろう! 作:プラ板の削りカス
【速報】第二の悪巧み、開始
その後はマスダイバーたちがチャンプ率いる殺戮モードの有志連合陣営に敵うはずもなく、順当に殲滅されて終わり、というなんとも呆気ない結末だった。
汚いトリニティ以外目立ったネームドもいなかったから仕方ないといえば仕方ないけど、マスダイバーなんてブレイクデカールがなければこんなものよね、といったところだ。
改心してやり直すのもいいし、そのまま腐ってやめるのもいい。それは運営の沙汰を受けた彼らの自由だろう。
もっとも、有志連合が討伐したマスダイバーのダイバーネームとアイコンとIDはお知らせと、ロビーに掲載されるという盛大な晒し首を受けているわけだけど。
不正の証拠が見つからなかった原作と違って、こっちは証拠握って殴りかかってたんだから当然といえば当然か。
彼らにおかれましては、永久BANにされなかっただけ温情だと思っていただきたい。
で、私がその後なにをしていたのかというと。
「やれるかって言ったのは私だけど、本当にやれるの?」
いつもの廃倉庫にルカたちと集まって、私はツカサくんとコーイチさんと顔を合わせて、フィアちゃんサルベージ計画について話し合っていた。
「ブレイクデカールで使ってたセキュリティホールを使わなくても、正規の手段でダイバーのデータをぶっこ抜けるんだろ? ならあとは手間だが、そいつをナノICチップに練り込んで貼り付けてやれば、理論上はGPDのシステムでフィアのマテリアルボディは動く」
ツカサくんは、私の問いに対して顔に似合わない理系な答えを返してくる。
正規の手段……というには怪しいというか黒寄りの黒だけど、ミキがデータベースにアクセスして、フィアちゃんのデータを引っ張ってこれるのは確かだ。
原作ではサラちゃんの因子が飛散しすぎていてどうしようもなかったけど、今回は修正パッチがブレイクデカールの開発元からきっちり適用された状態で始めるから、成功率も遥かに高くなっていることだろう。
「問題はその先だね。フィアちゃんをサルベージしたら、当然サラちゃんやイヴちゃん……他のELダイバーにも手を差し伸べる必要が出てくる」
「まさか、コーイチ様はELダイバー全員を救うおつもりなので?」
「……そういうわけではないけど、もし見つけちゃったときに、助けないわけにもいかないだろう?」
「一理ありますわね」
ルカが一瞬つまんなそうな顔をしていてヒヤヒヤしたけど、コーイチさんの控えめさに免じて許してくれたようだ。
ここ数ヶ月の付き合いだけど、ルカという女はとにかく単純でめんどくさい。
自分が気持ちよくなれるかどうかという基準でしか行動していない、生まれながらの女王様だからだった。
でも、ルカの意見もわかる。
フィアちゃんとサラちゃんとイヴだけならともかく、他にもいるかもしれないELダイバーを全員、GBNを駆けずり回って助け出すとなると、正直言って私もめんどくさい。
それはELバースセンターができてからでいいだろう。私たちがやってるのって、今はバリバリの違法行為なわけだし。
「めんどくせえことはツミキがなんとかする。フィアのサルベージに当たって深刻な問題は他にあンだろ」
「しれっと私に丸投げしたわね、深刻な問題ってなによ?」
『まさか、ぼくのデータになにか大きな問題があるのかい?』
通話機能で参加してもらっているフィアちゃんが、涙目でツカサくんに問いかける。
「テメェのおっぱいを盛るかどうかだ」
『……ぼくの、お胸?』
「ELダイバーを現実に引っ張ってくる。そのために美プラを改造する。そこまではいい。だが、半端なクオリティで妥協するのは、俺の魂が許さねえんだ」
やるのなら徹底的に、とにかく忠実にフィアちゃんの姿を再現する──と、ツカサくんは言いたいのだろう。
そうなると、フィアちゃんの規格外バストも当然再現しなくちゃいけないわけで。
そこらの巨乳美プラを鼻で笑うような大きさのおっぱいを、身体とどうバランスを取って作るかというのは、確かにビルダー的には大きな問題だった。くだらねーけど。
「いや……あまり大きくしすぎるとボディとのバランスが崩れすぎてしまう。ここは素直に大きなタイプの素体から流用して……」
「腑抜けたこと言ってんじゃねえ、コーイチぃ! テメェはいいのか!? 見立てミキシングで見立てだからって違和感のある部分を放置して塗装で誤魔化すような真似をして!?」
「わかってるよ! だけどフィアくんのおっぱいは強力すぎる!」
く、くだんねー。
言いたいことはわかるけど果てしなくどうでもいい。
フィアちゃんに至っては顔を真っ赤にして右往左往しているし、ルカはなんか面白そうだからと放置決め込んでるし。
仕方ない、ここは私が舵を取ってどうにかソフトランディングさせる必要があるだろう。
と、論争を始めたツカサくんとコーイチさんの間に割って入ろうとしたときだった。
すっ、と私を制して、ピケストが前に歩み出る。なにか言いたいことでもあるんだろうか。
「お嬢様、そしてツカサ様。コーイチ様、目下の問題についてですが」
「なんだよ腐れメイド」
「ピケストくんにも、なにか解決策が?」
「ええ。フィア様のボディ、躯体、ドール。呼称はこの際なんでも構いませんが、リアルでは慎ましやかな細身で可憐な少女が、電脳空間という本来のフィールドに戻ると同時に胸の封印を解き放ち、見た者全てが『うおっ、デッッッッッカ』となる。そんなギャップを狙わないのは神に失礼では?」
『ッ!?』
単にそれはお前の性癖だろうがよ。
しかし、そのとき、ツカサくんとコーイチさんの間に電流が走った。
どうやらピケストの斜め上にぶっ飛んだ発想に対して、ツカサくんとコーイチさんは大層衝撃を受けていた様子だった。
「盛るんじゃなくて、あえて削る……!? そんな発想が、いや、でも……!」
「冒涜的ともいえるが……面白ぇこと言うじゃねえか、腐れメイド……!」
おお。
いやなにがおおだよ。
なんか知らんけど、ツカサくんとコーイチさんのビルドイマジネーションは固まってきたようだ。
「まあまあ、お二人とも。古来……ガンプラは自由だと仰られた方がおりますでしょう? きっと美プラもそれは変わらない。自由な発想こそが常に時代の先端を切り拓いてきたのです」
あっ、ルカまで乗っかった。
面白そうだからだろうけど。
というかこの世界にもいたのかな、メイジン・カワグチ。あの人はマジレス聖戦士のチャンプと違ってちゃんとプロレスしてくれるタイプだけど。
「なるほどな、読めてきたぜ。あえてリアルでは薄く細く……そしてGBNでフィアを見たやつは言い知れない衝撃を受ける」
「フィアくんのマテリアルボディを表に出せるかはまだわからないけど……試みとしては面白いね」
「光栄でございます、是非ともお二人におかれましては、リク様の純真な脳を存分に破壊していただきたく存じます」
リクくんの脳をこれ以上焼くんじゃないよ。
サラちゃんも頑張って……頑張って2年後に見せた色気を見せつけていくんだよ!
私はリクサラ過激派なのだから、リクサラキャンセルだけは許せないのだ。おのれピケスト。
『う、うぅ……ぼく、もうお嫁に行けないよ……』
本人の前で性癖談義してたのすっかり忘れてた。
フィアは蹲って床に「の」の字を描いていた。
その、なんだ。マジでごめんね、フィア。