お嬢様がGBNにいるわけないだろう!   作:プラ板の削りカス

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【悲報】黒衣の復讐鬼、降り立つ

「なっ……!?」

「あらあら……!」

 

 NPDを一瞬で蒸発させて迫ってくるガンプラは、全身に黒雷を纏って、禍々しい雰囲気を放っていた。

 恨みは死ぬほど買ってるだろうけど、こんなよくわからんガンプラ使うやつの恨みを買った覚えはない。

 しかし、こいつの声、どこかで聞いたことがあるような。

 

『テメェらに復讐する機会をずっと伺っていた……この身につけられた汚名を雪ぐには、テメェらをぶっ壊すことしかねェ……! わかっているよなぁ、レディビルドの……ミキ!』

 

 わぁ、名指しされちゃったよ。

 ツノが折れて、劇場版機動戦艦ナデシコのテンカワ・アキトかよってぐらいコテコテの黒衣を着ているダイバールックも随分と変わっていたから気づかなかったけど、こいつ……オーガだ。

 いやまあ、確かに恨みを買うようなことはしてたけど、それにしたって随分と変わり果てた姿になってしまって。

 

「負けたからリタマしましょうってのはね、別にそんな気合い入れるようなことでもないのよ……でもリタマ自体は大歓迎よ! ルカ!」

「ええ! この殿方……とても滾っておられて……非常に逞しいですわ。あぁ……期待するだけで、わたくしも……最っ高に滾っちまうなぁぁぁぁ!!!!」

 

 迫り来る機影──黒を主体に塗装したのであろうGP-羅刹がバインダーから放つ拡散ビーム砲を振り切りつつ、私はハウリングバスターライフルを構えて敵に狙いを定めた。

 オーガの性格なら、恐らく狙ってくるのは私の方だろう。

 激昂しながら突っ込んでくるだけの相手なら、ツーマンセルで私がヘイトを請け負いつつ、ルカに仕留めてもらえばいい──そんなことを、考えていると。

 

『テメェらにわかるか……すれ違う度に短小だのなんだのと陰口を叩かれ続け、バトルで勝っても小娘一人に負けたからとナメられ続けてきたオレの心が! だからまずは徹底的に、二度とそのナメた口を聞けねェように、「レディビルド」そのものを潰してやる! 徹底的になァ!!!!』

「ちょっ……フィアから狙うのは反則でしょうが!」

『ほざけ! 勝ったやつが正義だろうが! それを言ったのは……テメェだろう!?』

「わ、わわっ……!? ぼくを狙って……!?」

『往生しやがれェェェェ!!!!』

 

 GNオーガソード弐式を大上段に構えて、混乱しているフィアを仕留めるべく、オーガは咆哮と共に斬りかかっていく。

 まずい。

 ビートνガンダムなら迎撃の手はいくらでもあるけど、咄嗟にそれを出せるほど、フィアはGBNに慣れてない。

 

「随分とやかましいお方でございますね、目覚まし時計の代わりを務められるのは結構ですが、時差ボケを起こしていらっしゃいますよ……ドラゴンロア!」

 

 すると、後方に控えていたピケストがフィアを庇うように前へと出て、強烈なヒットストップがかかる、いわゆるプレッシャー武装を解き放った。

 ただ格闘を振ってくるだけの相手なら、これで止まってくれるだろう。

 そう思っていた時期が、私にもありました。

 

『うるァァァァ!!!!』

「このお方、スーパーアーマーを常時纏って……!?」

「ピケスト!」

『まずは一つだ……食い出のねェ肉だが、いただいたぜ』

 

 オーガはピケストのヴィシャスが放ったドラゴンロアを、スーパーアーマーによるゴリ押しで突破して、GNオーガソード弐式を叩き込んだ。

 機体を両断したオーガの一撃は、一瞬でピケストを戦闘不能に陥らせていた。

 冗談じゃない。ブレイクデカールを使っているわけでもないのにあの異常な攻撃力はなんだ。なんなんだ。

 

『次はテメェだ……今のうちに念仏でも唱えておきやがれ……!』

「そんな……ピケストが一撃で……くっ、だけど、ぼくは逃げない! ぼくとビートνガンダムなら──」

『御託は沢山なんだよォ!!!!』

「ひっ……!」

 

 ダメだ、完全にオーガのペースに飲み込まれてしまっている。

 試合展開で一番まずいのは、相手の感情に飲み込まれてしまうことだ。

 嬉しさ、怒り、哀しみ、楽観。どれか一つでも一度気にしてしまったら、焦りが生まれて、まともに試合ができなくなってしまう。

 

 フィアが射出したフィン・ファンネルから放たれる照射ビームの網を、いとも容易く潜り抜け、オーガの操る黒いGP-羅刹は、自らのキリングレンジにビートνガンダムを引き摺り込む。

 

「フィア! 後退しなさい! あとは私たちが!」

『甘ぇッ!!!!』

「バインダーからのビームをこちらに……!?」

 

 後ろにも目をつけられるようになったのか、GP-羅刹のバインダーからノールックで放たれるGNアイズブラスターが、私たちの行く手を阻む。

 盾で防御して事なきを得たけど、なんて威力だ。

 ブレイクデカールで強化しているわけじゃないのに、ブレイクデカールに匹敵する強さを叩き出している絡繰りはどこにある?

 

「そのガンプラ……命を削っているよ、とても苦しがっている! それでは……!」

『だからどうしたァ! 命を削らなければ……命をかけなければ本物の弱肉強食の世界には至れねェ! 痛みも苦しみも……全てはオレの目的を達するための必要経費だァ!!!!』

「っ!?」

 

 フィアが構えたビーム・スマートガンを右手のGNオーガソード弐式で断ち切って、左手の斬撃はコックピットを捉える──刹那、バック宙の要領で回避行動をとりつつ射出したロングレンジ・フィン・ファンネルがGP-羅刹に直撃し、微かにオーガの体勢が揺らぐ。

 

「突っ込むんならここしかない! さあ、そんなに恨みがあるんなら初心者狩り(スマーフ)なんかしてないで、私たちと踊れよ短小野郎!」

「さっきのは痛かったからなぁ! 借りを返させてもらうぜ、テメェのライフでよぉ!」

『チッ……まだほざくか! オレはもう過去のオレじゃねェ……テメェらへの復讐のために全てを捨てたんだよォ! 唸れ黒雷! もっともっと……オレに力を寄越しやがれ、GP-羅刹!』

 

 オーガが叫ぶと同時に反応速度が一段と上がり、ハウリングバスターライフルの照射を突っ切りながら、GP-羅刹は突っ込んでくる。

 なんだこいつ、スーパーアーマーも通り越したハイパーアーマーでも持っているのか?

 それに、フィアがさっき口に出していた言葉も気になる。

 

 ガンプラが痛がっている、苦しんでいる。

 そして、オーガが叫んだ、まるでバルバトスに力を乞う三日月・オーガスのような言葉──二つの言葉には、必ず共通項があるはずだ。

 でも、それを探せるほど悠長な状況じゃない。

 

 ハウリングバスターライフルを投棄、シールドからビームサーベルを引き抜いて、私は迎撃体制を取った。

 裏取りはルカに任せて、今回は私が全てのヘイトを引き付けて、タンク役に徹すればいい。

 幸い、あのバインダーから放たれるビームが背面をノールックで撃てるのはさっき確認済みだ。そこにさえ気をつけていれば。

 

『余計なこと考えてんじゃねェ!!!! オレを誘ったのは……テメェだろうが!!!!』

「あっは、その通り……! だったら枯れて死ぬまで踊り尽くそうぜ!!!!」

『黒雷を纏え、GNオーガソード弐式!』

 

 オーガのGP-羅刹が放出している黒い雷の一部がGNオーガソード弐式の刀身にまとわりつき、バチバチと火花を散らす。

 こっちもビームサーベルの出力を迷うことなく最大にして、オーガの一撃を受け止めた。

 スパークする火花に黒雷が混ざり合い、視覚的に大変よろしくないことになっていたけど、それどころじゃない。

 

 ──ダメだ、これは。

 根本的にパワー負けしている。

 しかも相手は切り札の鬼トランザムも発動していない状態だぞ。

 

「……だったら、こっちも切るしかねぇか……!」

『その前に終わらせてやらァ!!!!』

「ミキ!」

 

 鍔迫り合いを強引に振り解いて、一旦体勢を立て直そうとしたところに、オーガのGNアイズブラスターが迫ってくる。

 終わったか、と感じた刹那、ルカのイカロス・ユニットが私を庇うように前に出て、GNアイズブラスターの一撃を受け止めた。

 自分が気持ちよくなりたい一心で動いているはずのルカが、私を庇った──そこにどんな心境の変化があったのか、正直戸惑う。

 

 でも、ここでルカがくれた一瞬を逃してしまえば、あの子の献身だって無駄になってしまう。

 だから、私は。

 躊躇うことなく必殺技のスロットを選択して、トリガーを押し込む。

 

「リミッター解除……さあ、全力で死合おうぜ、オーガぁッ!!!!」

 

 胴体にガンダム・フレームを組み込んだことで発動できるようになった鉄血系の特性が発現した必殺技を切って、私は墜ちていくルカに感謝を捧げつつ、オーガへと切り掛かった。

 

『喰らいついてきやがったかァ! いいぜ、全力のテメェをブチのめさなきゃあ、どのみち意味なんかねェんだ! かかってこいよ、ミキ!!!!』

「二度目の地獄に叩き落としてやるぜ、オーガ!!!!」

 

 赤い眼光を滾らせて、私のウイングガンダム・フェアリアルが振るったビームサーベルが、オーガのGP-羅刹のバインダーを切り裂く。

 そして、ようやく理解に至った。

 切り裂いたバインダーの断面からは、血液がこぼれ落ちるようにテクスチャがモザイク状になって解けている。

 

 間違いない、オーガが発動している必殺技は、機体の耐久値を犠牲にして、様々な強化効果を得るタイプのバフだ。

 奇しくもそれは、ウイングガンダム・フェアリアルの必殺技と──私の技と、酷似していた。

 これが運命だとしたら、嫌な運命もあったものだ。

 

 だったら……いっそのこと、オーガが自らの必殺技によるスリップダメージで自壊するまで、逃げ回ってしまうか?

 遅延戦術を取れば、確実に勝ちは拾える。

 それにこれはただのバトルではなく、無双ロワイヤルミッションだ、オーガだけにかまけているわけにも──

 

「つっまんねぇなぁぁぁぁ!!!!」

「ルカ……!?」

「テメェのガンプラバトルで威勢がいいのは所詮優勢だったときだけか!? シケてんだよこの線香花火が! 違うだろ!!!! わたくしを最高に滾らせて! 最高に濡れさせてくれるのは! 後先なんてもんを考えずに全力で突っ込んでるときのミキだろうが!!!!」

 

 中指を立てて、ルカが通信ウィンドウ越しに吼える。

 ……そうね。

 忘れていた。後先なんてものを考えている時点で──その場で全力を出し尽くさない時点で、負けているんだから。

 

「吼えてイキってんじゃねえよクソビッチがぁ!!!! だったらそこで股座濡らして見ておけよ、私の全力ってやつをよぉ!!!!」

「ああ、見せてみろよ!!!! 最っ高に滾る──テメェのガンプラバトルをよ!!!!」

 

 ルカの声援を受けた以上、半端な戦い方で負けるわけにはいかない。

 さあ、ここからが地獄だぞ。

 オーガも、私も。




どっちが悪役なのかわからない構図
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