お嬢様がGBNにいるわけないだろう! 作:プラ板の削りカス
「くたばりやがれぇぇぇッ!!!!」
『ちょこまかちょこまかと……逃げ回ることがテメェの全力ってかァ!?』
「一撃離脱に追いつけもしねぇ鈍亀が一丁前に吠えてんじゃねえよ!」
オーガの懐に入って、一撃離脱でダメージを蓄積させていく。
ウイングガンダム・フェアリアルの長所を活かすなら、必然的にこの戦い方に行き着くけど、まだだ。
まだ、こんな戦いじゃルカは満足しないし、私だって滾らない。
もっと深く食い込んで、互いの命を擦り減らすような戦いでなければ。
でも、オーガだって復讐に目を曇らせているわけじゃなく、冷静に私を懐にそうそう入れさせない立ち回りをしているのだから、難しい。
いや──あえて誘っているのか?
GNオーガソード弐式のキリングレンジに。
自らの剣でトドメをさすことを望んでいるように。
だったら、その誘いから逃げるって選択肢はどこにもないよなぁ!
「突っ切るぜ、ウイングガンダム・フェアリアル!」
『来いよ……そして今度こそ地獄に叩き落としてやらァ!!!!』
GNアイズブラスターの一斉射撃を、左手と盾を犠牲に受け切って、私はオーガの懐に飛び込んだ。
そして、最大出力まで高めたビームサーベルを振るい、GP-羅刹の右手を切り裂いた。
しかし、オーガが左手に構えていたGNオーガソード弐式が、ウイングガンダム・フェアリアルの頭部と胴体を袈裟懸けに切り裂く。
あぶねー。
あと数ミリズレてたらコックピット判定で撃墜されてたところだぞ。
ガンダム・フレームを仕込んでいて正解だったとでもいうべきか。
でもこれで、私に後はなくなった。
逃げることはできない。
かといって、進むことも難しい。けどな、ここで立ち止まったら女が廃るってもんよ。
ドーパミンとアドレナリンに全てを任せろ、後先なんてなにも考えるな。
今、私は最高に気持ちいいことをしているのだから。
最高に気持ちよくなっている最中なのだから。だからもっとだ、もっとスリルと隣り合わせの状況で私を絶頂させてみせろよ、オーガ。
「まだまだ
『ほざけ! 瀕死のテメェになにができる! こいつで……終わりだ!!!!』
黒雷によって強化されたGNアイズブラスターが迫り来る。
こっちのコックピットはレッドアラートで真っ赤っかな以上、直撃を喰らえば間違いなくお陀仏だ。
冗談じゃねえ、そんなシケたマジレスで終わってしまったら、私もルカも乾いちまうんだよ。
ぎりぎりを縫うように、射出されたビームの雨を掻い潜りながら、私は再び最大出力のビームサーベルを振りかぶって、GP-羅刹に残されたもう一つのバインダーを真っ二つに切り裂いた。
これでもうマジレス戦法は取れないな。
あとは互いに耐久値が限界になるまで踊り狂うだけだぜ、オーガくんよぉ!
『オオオオオオッ!!!!』
「きゃんきゃん吠えてんじゃねえ、頭に響くんだよ!!!!」
ビームサーベルとGNオーガソード弐式がぶつかり合って火花を散らす。
クソッ、メインカメラの映像が乱れてるせいでエフェクトも相まって視認性が最悪すぎる。
だからといって、見落としが原因で負けるなんてシケた終わり方はごめんだ。
私はGP-羅刹に全力で蹴りを入れて、マシンキャノンを斉射する。
ハイパーアーマーを相手には所詮豆鉄砲だとしても、目眩しくらいにはなる。
吹っ飛ばされたGP-羅刹も、冷静に体勢を立て直すと、バイザーを下げて畳み掛ける準備をし始めていた。
来るか、禁断の時限強化と時限強化の掛け合わせ──切り札の中の切り札、鬼トランザムが。
『後も先もねえ……だとしても立ち止まるわけにはいかねえよなぁ、鬼トランザムァ!!!!』
「あっはははは!!!! 来やがれよォ!!!!」
もう笑うしかない。
笑うことしかできない。
だとしても、最後に立って笑っていたやつが勝つんだ。強がりでも、虚勢でもなんでも、張れるものは張り通して、勝ちを掴み取るんだ!
黒雷を纏った鬼トランザムによる加速は凄まじく、それに比例してGP-羅刹が自壊する速度も加速的に上昇している。
もう、耐久値はほとんどミリといったところだろう。
GP-羅刹の背面に装備されているGNドライヴ[T]も黒煙と共に悲鳴を上げていた。
『オラァッ!!!!』
「こいつ……ッ!?」
その超加速を以て、オーガが選んだ答えは、ウイングガンダム・フェアリアルが持っているビームサーベルを右手首ごと叩き切るというものだった。
なるほどこの野郎、ここに至ってなりふり構わず勝ちを選びとりに来やがったか。
クソがよ。そんなつまんねー結末、本当はテメーもGP-羅刹も望んじゃいねえだろうがよ。
「つっまんねぇなぁぁぁぁ!!!!」
『なんとでも言え……オレはもう二度と! テメェには負けられないんだよ!!!!』
バトルジャンキーとしての誇りより、復讐心が勝ってしまったか。
だったらこっちも情けをかけてやる必要はどこにもない。
最高の花火を咲かせてやんよ、ルカ。目ぇかっぽじってよく見ておきやがれ。
「背面、取ったぁッ!!!!」
『ッ……まさか、マシンキャノンで擬似太陽炉を──』
「そんなつまんねぇシケた真似するかよ!!!! テメェはここで私と死ぬんだよ!!!! ここまできたら勝ち負けもなにも関係ない……さあ、最っ高に……
そして、私は躊躇うことなく残された手足でGP-羅刹をがっちりとホールドして、最後の最後に残された切り札、自爆ボタンを押すのだった。
†
とても凄まじいものを見た。
ぼく──フィアは、イエローに染まっているビートνガンダムのコックピットで、オーガとミキが繰り広げていた、壮絶な死闘を見届けていた。
互いに誇りと闘志をかけて戦う、それがガンプラバトルだとは、皆の戦いを見てわかっていたけど、こうしていざガンプラに乗って戦場に出ると、また違って見えてくる。
ああ、ぼくも──ぼくも、そっち側にいきたい。
ミキも、ルカも、ピケストも、きっと尋常じゃない努力を重ねて、高みへと至ったことはわかっている。
だから、一朝一夕になれるものじゃないにしても。
『棒立ちのポイントみっけ! 美味しくいただかせて──』
「ぼくの前で……雑音を奏でるな! ぼくが聴きたいのは……もっと純粋で研ぎ澄まされた殺意が奏でる、美しい
背後から襲ってきたブリッツガンダムのコックピットを予備ビームサーベルで貫いて、ぼくはロングレンジ・フィン・ファンネルを回収、腕に取り付けて、ブーストを噴かした。
もっとだ、もっと強くなりたい。
強くなって、あのセッションに交われるようになるんだ!
NPDを薙ぎ倒し、ときにはプレイヤーと刃を交えて、ぼくは今、最高に「生きている」ことを実感していた。
きっと、ミキとルカとピケストが、そしてぼくをサルベージしてくれたツカサたちがいなければ、見ることのできなかった景色。
最高に楽しくて、熱くて、ワクワクする。
ミキ、ルカ、ピケスト……これがGBN──ガンプラバトルなんだね!
満面に笑顔が咲いてしまう。
ロングレンジ・フィン・ファンネルを腕に装備してビームサーベルで並み居る敵を薙ぎ倒しながら、ぼくはひたすら前に進んで行った。
──そして。
『純粋に獲物を求めて彷徨うその姿、まるで冬眠から目覚めたクマのようだ……』
「貴方は……!」
『クマの戦いに言葉はいらない、くるといい……!』
「胸をお借りするよ、クマサキ!」
『……クマサキ?』
エンカウントしたクマサキのガンダムテルティウムに、ぼくは果敢に突っ込んでいった。
目覚めよ、その蛮族