お嬢様がGBNにいるわけないだろう! 作:プラ板の削りカス
あの後、オーガになにか思うところがあったのかと聞こうとしたけど、私がロビーに帰還する頃にはもういなくなってたのよね。
それについては本人の選択だからどうしようもない以上、一旦脇に置いておくとして。
無双ロワイヤルミッションの成果は上々だったんじゃなかろうか。
「すごいよ、ミキ! ルカ! ピケスト! ぼくの中でなにかが騒いでいるんだ、1秒でも早くガンプラバトルがしたいんだって……こんなに胸が高鳴ったのは、ビートνガンダムを完成させたとき以来だよ!」
こんな具合にフィアも立派なバトルジャンキーとして育ってくれたわけだし。
流石にクマサキくんとの一騎打ちは負けちゃったみたいだけど。
結局無双ロワイヤルミッションで優勝した相手だから仕方ないとはいえ、それでもフィアのレベルは初心者から中級者ぐらいまで急上昇したといってもいい。
「ふふっ、フィアさんも来られたのですね。『こちら側』に……同じ
「ありがとう、ルカ! 生きることが、こんなに楽しいなんて思わなかった……早くサラお姉様やイヴお姉様にも教えてあげたいよ!」
「その件でしたら、既にサラ様のサルベージは完了しているとの報告がツカサ様からきております」
「マジぃ?」
どうやら私たちがフィア育成計画を進めている間に、ツカサくんたちは原作のさらなる前倒しに成功していたようだった。
サラちゃんもあの愛らしいモビルドール姿になったのなら一度見てみたいなぁ、という気持ちもある。
ただ、今はフィアの欲求を満たしてあげることが暫定後見人としては優先だろう。
それに、リクくんたちからもその内お誘いとかくるだろうし。
……くるよね?
こなかったら地味に傷つくけど。
「ミキさん! ルカさん!」
なんてことを考えていたら、リクくんがやってきた。
傍らにはハロボディのツカサくんを抱えているサラちゃんも一緒だ。
いつも儚げな表情をしていたけど、今日は心なしか生き生きして見える。
「あら、リクくん。お久しぶりですわね」
「はい! ミキさんたちのおかげでサラのサルベージも無事に終わって、お礼を言いたくて!」
「モビルドールのサラちゃん、すっごく可愛くて! 今は私とナナミさんとリクの家を交代交代で泊まってるんです!」
モモちゃんが興奮した様子で目を輝かせる。
おお、ナナミさんにも知れ渡ってたんだ。
いや、コーイチさんの妹だから当然だろうけど。この分だとナナミさんがGBNに参加する日も近そうだ。
「サラお姉様、どうでしょう? 生きるという感覚は。とても素晴らしいものではありませんか?」
「うん。フィア……リクと同じ世界を生きるって、とっても楽しい……!」
「ふふっ……早くイヴお姉様にもこの感覚をお伝えしてあげたいところですね」
「イヴお姉ちゃんのモビルドールは、ヒロトが作ってるから……もう少しだけ時間がかかるって」
サラちゃんとフィアがELダイバー談義に花を咲かせているよ、かわいいね。
それはともかく、そうか。
イヴのモビルドールはコーイチさんとツカサくんじゃなくてヒロトくんが単独で作ってるのか。
見たところ美プラ作った経験とかなさそうだから、苦戦してて、息抜きに無双ロワイヤルミッションに参加してたのかな。
まあなんていうか……美プラって突き詰めれば突き詰めるほど現実の女の子のメイクとかと似通ってくるところが出てくるから、そういう意味では苦戦しそうだ。
逆にツカサくんやコーイチさんはなんでその手のあれこれに詳しかったのか謎だけど、多分コーイチさんがナナミさんから聞いたんだろう。めいびー。
「ふぅ、このピケストとはいえ、秒間16連射でフィア様とサラ様のスクショを撮るのは少々苦労いたしました」
「あんたはなに無断スクショしてんのよ、晒されるわよ」
「レディビルドの悪評ならこれ以上広がりようがないので差し引きプラスマイナスゼロでは?」
急に正論をぶつけてくるんじゃあないよ。
おかしいな、ただ私たちは純粋なバトルが楽しみたいだけなのに、気持ちよくなりたいだけなのに悪評が広まっていく。
いやまあ……活動当初より自重してはいるけど、主に私たちの本性というか暗黒面が一人歩きしているのだろう。恐るべし、ガンプラバトルの暗黒面。
「それはさておき、次は対人戦で経験を積みたいところよね。フィア」
「そうだね、ミキ……でも、ぼくたちとバトルしてくれるフォースなんているのかな?」
うっ。
確かに普通のフォースは私たちとのバトルを拒否るかもしれない。
そうなるとまたミッション経由で見つけないといけないのだろうか……と、頭を悩ませていたときだった。
「それだったら、バトランダム・ミッションとかどうだい?」
「バトランダム……?」
「簡単に言うと、一つのミッションを二つのフォースが対決する形で攻略するミッションだよ。ちょうど僕たちもやろうと思っていたところなんだ」
なるほど、コーイチさんは頼りになるなぁ。
そういう便利機能があるならどこかに書いておいてほしいものよね。
GBNは神ゲーなのには異論はないけど、説明の少なさに関してはもう少し盛ってくれてもいいと思うのよ。
「それじゃあ、貴方たちビルドダイバーズと当たる可能性もあるってわけね」
「そうなるね」
「ふふっ、そのときは是非とも手加減無用でお願いいたしますわ、コーイチ様」
「当たり前だろうがよ、俺が嫌いな言葉は手抜きの三文字なんだ」
ハロボディのツカサくんがサラちゃんに抱えられたままなんか言ってる。
言ってること自体はすごくツカサくんらしくて格好いいのに、サラちゃんに抱えられてる絵面があまりにもシュールすぎる。
GBNに魂売ったわけじゃないとか言ってたけど、ちゃんとしたダイバールック使った方がいいんじゃないだろうか。
†
「で、私たちの対戦相手は……『MU DISH』かぁ」
バトランダム・ミッションの組み合わせ発表当日、私たちは発表された結果をロビーで確認していた。
本音をいえば、今のビルドダイバーズと戦ってみたかったけど、まあでも、戦う相手としてはかなり「悪くない」範囲だ。
なにせ、「MU DISH」とは、原作じゃ初期も初期だったとはいえ、ヒロトくんが率いていた小文字の方のビルドダイバーズを相手にほとんどパーフェクト勝利を収めた、そこそこの実力があるフォースだからだった。
原作に準拠して考えるなら、カザミくんもまだ所属しているんだろうか。
まあ、この頃のカザミくんに関しては正直地雷も地雷、格好つけて突っ込むだけの脳筋だから適当にあしらっておけば済むだろう。
それよりも、私が戦ってみたいのはフォースリーダーのゴジョウさんだ。
ガンバレルダガーにビームナギナタという渋い構成でヒロトくんとパルくんとメイちゃんの3人をあしらってミッション失敗まで追い込んだ強豪、きっとさぞかし強いに違いない。
オーガと再戦したときも思ったけど、ガンプラバトルっていうのは勝ち負けじゃなくてやっぱり強敵との戦いを楽しめるかどうかよね。
命をかけて、しのぎを削って、全力で戦い抜く悦びにカザミくんも目覚めてくれればいいんだけど。
「君たちが『レディビルド』だね」
ぼんやりとそんなことを考えていると、「MU DISH」のメンバーを率いたゴジョウさんが、挨拶にやってきた。
相手のメンバーは、ゴジョウさんとユウリちゃんとサガリくんとカザミくんに……あれ、あと一人、知らない子がいる?
「なによ、人のことジロジロ見て」
ピンク髪をツインテールに括って、右側にだけ黒いリボンを結えた、ボディラインが出るゴスロリファッションの小柄な女の子が、私の視線に気づいたのか、どこか不満げな表情を浮かべる。
この子、かなりの童顔だから、睨みつけられてもなんか微笑ましいなぁ。
でも胸とお尻はめちゃくちゃでっかいのよね。腰は細いくせに。トランジスタグラマーってやつかしら、すげームカつく。
「ミミ、あまり他人を睨みつけるものじゃないよ」
「うっ……わかってるわよ、ゴジョウ。でも、相手はあの『レディビルド』なのよ? 取って食われてもおかしくないじゃない!」
「いや、いくら『鬼狩りのバーバリアン』と『
「あんたは黙ってなさい、カザミ!」
ツインテールを逆立てて、ミミと呼ばれた女の子はカザミくんに反駁する。
というか私だけじゃなく、ルカにも妙なあだ名がついていたのか。
……残虐令嬢、困ったことに否定する要素がどこにもない。
「とにかく! 実力はあるみたいだけど、あたしは、あんたたちのことなんて絶対認めないんだから!」
「悪いね、君ら。ミミは一度思い込んだらこうだから……」
「ふふっ、気にしておりませんわ。サガリ様。ゴジョウ様も、この機会に全力でバトルを楽しみましょう」
「お手柔らかにね。俺たちはあくまでも中堅フォースだから」
まさか「MU DISH」にミミなんて子が所属していたなんて知らなかったけど、あの口ぶりだとカザミくんの知り合いかなにかだろうか。
これは、カザミくんの過去になにがあったのかを知るいい機会でもある。
頑張って彼の中に眠るヒーローの魂を引き出して、ミミちゃんがどうして原作だと2年後にはGBNを去っていたのかについても突き止めないとね!
崖っぷちのヒーロー