お嬢様がGBNにいるわけないだろう! 作:プラ板の削りカス
「完・全・燃・焼っ!!!!」
バトランダム・ミッションを終えてロビーに戻るなり、ルカはすっかりご機嫌な様子を見せていた。
まー仕方ないわよね。私がカザミくんとミミちゃんの足止めしてる間に突っ込んで、ゴジョウさんとそれはもう激しい
慌ててリミッター解除して私も混ぜてもらおうと飛んでった頃にはもう戦いが終わってたし。
「はぁ……最近はミキの引き立て役を務めることばかりで少々フラストレーションが溜まっておりましたが、久しぶりに熱く、激しく……交わることができて、本当に楽しかったですわ」
「そりゃなによりね、できれば私の分も残してほしかったんだけど……」
「ふふっ、お食事を途中で残すのは
心なしかルカの肌がツヤツヤしてる気がする。
いいなー、私もゴジョウさんと
いや、カザミくんの覚醒とかミミちゃんの献身とかも見られたから十分美味しい空気吸ってた自覚はあるけどさぁ。
「すっかりしてやられたよ。まさか、通信手段を封じていたつもりが、サイコミュの共振という抜け穴があったなんてね」
そんな具合に私がむくれていると、ゴジョウさんがカザミくんたちを引き連れて、私たちのところにやってきた。
珍しいわね。
普段は対戦相手からの感想戦なんて、ろくに挑まれないから、てっきりゴジョウさんたちも同じかと思っていたけど、どうやら付き合ってくれるらしい。
「ええ、ルカのサイコ・ブレードで増幅した脳波を発信機にして、それをフィアのサイコ・フレームが受信することでサイコミュ・ネットワークを形成して通信妨害を無効化する……タネが割れれば簡単だったでしょう?」
「コロンブスの卵というやつだね。君たちの編成を見たときに気づかなかったのは、俺の落ち度だよ」
ゴジョウさんは、フォースメンバーの方を振り返りつつ苦笑した。
先んじて突っ込ませたルカから敵の居場所を共有してもらって、フィアとピケストが遊撃を防ぐ。
その上で私は敵の作戦にまんまと乗せられた道化を演じることで、手品のタネをバラさないようにしていたのだ。
「ちなみに本作戦はこのピケストが考えました」
「素晴らしいね、すっかりしてやられたよ」
「はい。こ・の・ピケストが考えました、もっと褒めていただいて構わないのですよ、お嬢様は褒めてくださらなかったので」
「そ、そうなんだね……」
あんたは褒めるとこうやって調子に乗るからでしょうが。
他人相手にダル絡みしてんじゃないわよ。
でも、ゴジョウさんたちも相当強かったことに間違いはない。
私の場合、原作知識が下敷きにあったから今回はなんとかメタることができたけど、知らない状態で戦わされてたら、ビーム撹乱幕に気づかなくて一杯食わされていたことだろう。
「いえ、でもゴジョウさんたちも強かったわ。少なくともピケストがサイコミュ通信を閃かなければ、私たちは負けていたわけだし」
「そうかな? 君たちのパワーがあれば、案外作戦抜きでも俺たちを押し切っていたかもしれないよ」
「ありがとう、最高の褒め言葉よ」
「こちらこそありがとう。いい対戦だった」
互いに感謝の言葉を告げて、私とゴジョウさんはがっしりと握手を交わした。
あー、うん。
久しぶりねこの感覚。
「少しだけ聞いてもいいかい、ゴジョウくん?」
「なんだい、フィアさん?」
「対戦が終わってから、なんだかカザミくんとミミくんの様子がおかしい気がするんだ。少しよそよそしくなったというか……先ほどから一言もしゃべってなくて、心配なんだ」
フィア、色を知らない年頃か。
いやまあ生まれたばかりのELダイバーに情緒とか男女の距離感とかを理解しろっていうのも酷な話ではあるけどさあ。
でもちょっと、今の質問は火の玉ストレートすぎない?
「あ、ああ……えっと。大丈夫だよな? カザミ、ミミ?」
「……お、おう。心配いらねえよ」
「……あ、ありがと。あたしも……いつも通りよ」
とかなんとか言っといてこの二人、こっそり指を絡めようともじもじしてやがる。
原作じゃ全然カザミくんの過去は語られなかったけど、まさかこんなツンデレ低身長爆乳巨尻美少女と何拍子も揃った幼馴染がいたとか思わないじゃん。
めちゃくちゃ優良物件もいいところだったのに、原作じゃ名前も触れないどころか思い出してもいなかった辺り、よっぽど酷いフラれ方されたんだろうなー。かわいそ。
今回は雨降って地固まる、って感じで軟着陸してくれたみたいだけど。
……あれ、これでも原作のマイヤ姉ちゃんルートに大分デカいハードルが聳え立ったんじゃない?
うーん、流石にそこはマイヤ姉ちゃんに頑張ってもらうしかないわよね。エルドラの話まで絡んでくると、私にできることなんてほぼないし。
「そうか……いつも通りなんだね、ぼくも安心したよ!」
「ふふっ、微笑ましい限りですわね。フィアさんも、カザミさんも、ミミさんも」
「ルカ、それはどういう意味だい?」
「言葉通りの意味ですわ、御三方がとっても見ていて微笑ましいので」
「よくわからないけど……褒められているんだね! ありがとう、ルカ!」
ぱあっと笑顔の花を咲かせて、フィアはルカの手を取った。
あっ、ピケストが横向いてる。
あれは笑いを堪えてる証拠ね。この邪悪な腐れメイドめ、あいつ、こういう状況は大好物だから絶対そうに決まってるわ。
「……正直、感謝しているよ。ミキさん」
「ゴジョウさん?」
「カザミとミミの関係は、俺だけじゃどうしようもなかった。あいつをフォローすることばかり考えていたけど、ときには厳しくしないとダメなところもあるんだな」
ゴジョウさんは、少しバツが悪そうに苦笑した。
いやー、カザミくんに関してはもっとビシバシ荊の鞭で叩いてもいいと思うけれど。
それでも、フォースメンバーの失態は自分の責任として背負いこんじゃうのが、ゴジョウさんのいいところであり悪いところよね。
原作じゃ2年後にもキャプテン・ジオンの厄介ファンムーブやってたカザミくんへ静かにブチ切れていたのも、ミミちゃんの件があったと考えれば納得がいく。
エルドラで、ちゃんとヒーローとして覚醒してくれたからなんとかなったけど、考えてみたらよく空中分解しなかったわよね、初期の小文字ビルドダイバーズ。
トラウマを抱えたヒロトくんに、初心者で引っ込み思案なパルくんに、生まれたてのメイちゃん。
この三人でカザミくんをフォローしろって言われたら、私がヒロトくんなら冗談じゃないってブチ切れてたわよ。
「そうっすよ、リーダーは身内に甘すぎっす!」
「ミミが抑えてくれてたからなんとかなってたけど、今の今まで本当にカザミにはヒヤヒヤしてたんだから!」
「うっ……すまねえ。サガリ、ユウリ」
「本当よ。これからは心を入れ替えてビシバシ鍛えていくことね! あ、あたしも仕方ないけど、付き合ってあげるから!」
「う、うるせえ! 俺は今度こそキャプテン・ジオンみたいにだな! そ、その……お前を、格好良く守ってみせるからよ!」
もうお前ら付き合っちまえよ。
見てる私が砂糖吐きそうになってきたわ。
ピケストに至っては声こそ出してないけどお腹抱えて蹲りながらスクショ連写してるし。もうどうにでもなーれって感じだ。
「カザミ、俺の言葉……理解してくれたか?」
「……ああ。キャプテン・ジオンは……負けたって、何回だって立ち上がって、守りたいもののために立ち向かうから格好いいんだ。ありがとうよ、ゴジョウ」
「気付いたのはお前だ、カザミ。俺は……きっかけを与えただけさ」
ゴジョウさんも、心なしか憑き物が落ちたような笑顔を浮かべていた。
まあ、なんだ。
未来に少しの懸念を残しながらも、ここにあった問題が解決してくれて、なによりって感じだった。
こいつらアオハルしたんだ!