お嬢様がGBNにいるわけないだろう!   作:プラ板の削りカス

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【速報】チャンピオンぶっ殺しますわ〜!

「それでは、約束通りわたくしはツミキにガンプラを作れる環境とGBNにログインするための手筈を。ツミキは」

「ええ、なにがあってもルルカの秘密を口外することはいたしませんわ」

 

 翌日。

 結局何戦かやって旧音楽室のガンプラを結構な数ジャンクに変えてきたけど、決着はつかなかった。

 そして、私たちは午後のティータイム、カフェテラスで改めてこの「友達関係」を続けるに当たっての取り決めを確認していた。

 

「ああ……ヤエザクラ様とシロガネ様がお言葉を交わされておりますわ……」

「まるで絵画のよう……」

「ヤエザクラ様が西洋人形なら、シロガネ様は日本人形ですわ!」

「聞いた話では、ヤエザクラ様が身を挺してシロガネ様の大切なものをお守りになられたとか。ああ……麗しいですわ〜」

 

 ギャラリーはいつも通りなんか言ってる。

 紅茶にちびちびと口をつけながら、楚々とした笑みと、しゃんとした伸ばした背筋を崩すことなく。

 淑女のティータイムを完璧に装いながら、私たちは秘密の会話を続ける。

 

「ありがとうございます。ふふっ、わたくしにお友達ができたのは初めてでして。この胸の高鳴りをなんと形容すればよいのか……」

「私も、昨日から興奮が冷めやりません。もっと早くルルカと出会っていれば、と思わずにはいられませんわ」

「お互いの初めてを奪い合った仲ですもの、ね」

 

 頬を染めてうっとりと、ルルカは私の唇に人差し指を当ててきた。

 急に距離感近いな。

 いやまあ、ルルカが様子のおかしい人なのは、十分すぎるほどに知っているから多少の奇行はもうなんとも思わないけど。

 

「聞きましたか!?」

「ああ、なんて情熱的な……!」

「い、いけませんわ! そのようなこと、淑女として!」

「ですが、禁断の関係というのもまた淑女の嗜み……!」

 

 ギャラリーがなんか知らんけど盛り上がってる。

 禁断の関係といわれればそうなんだよな。

 だって私もルルカも様子がおかしいガノタだとバレたら間違いなくこの学園にはいられなくなるし、なんならワンチャン家も追い出される。

 

 私は逆にその方が幸せになれるかもしれないけど、ルルカは──どうなんだろう。

 ま、でもまだ15歳の小娘が家を放り出されたら春しか売るものないし、お互いこの秘密は墓まで持っていくしかない。

 それにしたって、ルルカの言う通り、思い出すだけで興奮するなあ。

 

 今がアニメのどの辺の時系列なのかわかんないけど、もうガンプラ実際に動かして熱く激しくバトルできただけで満足だわ。

 アニメを見る限り、GBNにはルルカに匹敵する猛者がゴロゴロいると考えると、涎が垂れそうになってしまう。

 でもなー、ガンダムビルドダイバーズって確か続編のRe:RISEでヒロトが可哀想なことになってるんだよなー。

 

 一介のガノタが介入したところであの悲劇を覆せるとは思わないけどさあ。

 でも、なんか……こう、できることとか、やれることとか、あるんじゃないのか。

 せっかくギフト貰って転生したんだし。

 

「あら、憂鬱そうなお顔ですわね……どうされましたか、ツミキ?」

「いえ……ご心配には及びませんわ、ルルカ。少々GBN(向こう)のことを考えておりまして」

 

 うーん、この学園にしろ私の家にしろ、あまりにも外部からの情報が入ってこなさすぎる。

 ガラパゴス諸島じゃねーんだぞ。

 もしも原作が始まってしまっていたら、ヒロトくんを助けるのは困難なことになるし、GBNを崩壊から守らなきゃいけなくなる。

 

 サラとかELダイバーとかその辺はリクくんにぶん投げれば解決するとしても、こう……オタクとしては有志連合戦とかにいっちょ噛みしたくなるじゃん。

 とはいえ、有志連合に選ばれるためにはチャンピオンことクジョウ・キョウヤに気に入られる必要があるんですけどね。

 せっかくアニメ世界に転生したのに今んところ原作キャラと絡めてないのも個人的にはモヤモヤポイントだ。

 

「実機で溶け合うGPD(アレ)とは勝手が異なりますものね……それに、わたくしの見立てでは、ツミキはGBN(あちら)でも上位に入れますわ。ですが」

「なにか、ご懸念でも?」

「ええ。ツミキが退屈してしまわないかが心配で……」

「……その心配は確かですわね」

 

 私に初見でついてこれたルルカがおかしいだけで、周りがバトオペやってる中でEXVSできる人間がいたら、やってる方もやられてる方もクソつまんねーだろう。

 それに、GBNってランク上げとかいう苦行要素もあるからなあ。

 なんかこう、EXVSのプラベとかミックスマッチみたいに、サクッと実力者と戦う方法とかないんか?

 

「っ! そうですわ!」

「ルルカ?」

「わたくしに一つ、いい考えがありますわ、ツミキ」

 

 満面の笑みを浮かべて、ルルカは私の両手を取った。

 少なくとも私よりは外の世界のことを知ってそうなルルカの提案だから、頼りにはなりそうだ。

 恍惚と頬を赤らめているから、なにかよからぬことを考えているのは間違いないだろうけども。

 

あの殿方(チャンピオン)溶け合い(FXXK)いたしましょう♡」

 

 思ったよりすげー提案きたな。

 

 

 

 

 

 

 ルルカの話を聞いてわかったのは、今、この世界がちょうど原作1話の時系列に当たることだった。

 ガンダムベースで行われるエキシビジョンマッチ。

 第何回だったかは記憶にないけど、まああれだよ、リクくんがGBNを始めるきっかけになったあのバトルロワイヤル、あれが開催されるのだ。

 

 バトルロワイヤルに参加する資格は単純で、抽選に選ばれるだけ。

 中にはチャンプみたいに、事前に内定もらってる実力者枠もいる──要するに出来レースの演出だろう──けど、私たちには関係ない。

 要するに、選ばれさえすれば合法的にチャンプとバトれる、ので。

 

「少々小細工をいたしました」

 

 ガンダムベースが建てられている埠頭で、白のワンピースに鍔の広い同じ色の帽子といういかにもお嬢様然とした私服に身を包んだルルカが小さく笑った。

 ダイバーギアの生産に一枚噛んでるらしい玩具会社の権力ってすごい。ちょっとこわい。

 手段は非合法でも、合法的にチャンプや事前に招待されている優勝候補と戦えるなら、四捨五入してオッケーだけど。

 

「ありがとう、ルルカ──ううん、ルカ」

「お礼には及びませんわ、ツミキ──いえ、ミキ」

 

 私たちは、普段と少し違う呼び方で互いを呼んだ。

 ダイバーネームを本名まんまにするのは身バレの問題で避けたかったから、お互い名前から一文字引いた適当な名前でエントリーしている。

 そして。

 

「この日のために作った甲斐があるわね」

「ええ、放課後にお互い高め合いましたもの」

 

 今日はちゃんとしたジュラルミンケースに格納しているガンプラの出来にも妥協はない。

 ウイングガンダム。

 前世でも推しだった、原作で妙に不遇な扱いを受けているこいつが、私の今世の相棒だ。

 

「では、参りましょう……ああ、疼いてしまいますわ」

「忘れちゃダメだけど、優雅にね。お嬢様モード維持で」

「はい、ご心配には及びませんわ。ツミキ。ああ……早くあの殿方(チャンプ)をぶち(おか)したいですわ……♡」

 

 本当に大丈夫なんだろうか。

 

 

 

 

 

 

 GBNをやっていて、恐怖を感じたことはあまりない。

 僕──キスギ・キョウヤこと、クジョウ・キョウヤがチャンピオンの座に君臨してからも、この座を狙う猛者たちと幾度も刃を交えて、その度にいつも興奮の最中にいて、怖気付くどころじゃなかったからだ。

 だけど、今日のバトルロワイヤルは違った。

 

『その程度の腕前で喧嘩売ってくんじゃねーよこの短小イ◯ポ野郎!』

『テメェの本気を見せろよ、まさかそれで本気だとか言わねえだろうなこのミラコロ暗殺頼みの早漏がよ!』

 

 ……思わず通信回線を切断したくなる。

 だけど、口の汚さはともかくとして、あのウイングガンダムと真紅のヘイズル改を使っている二人は、質が違った。

 僕の他にも、二桁ランカーといった実力者たちが混ざっているバトルロワイヤルで、あの二人は、手当たり次第に出会った相手を鏖殺していた。

 

 気づけば、さっきまで刃を交えていた相手が一人、また一人と減っていく。

 

『見つけた、AGEⅡマグナム!』

『マグナムってんだからわたくしたちを満足させるデッケェモノは持ってるんだよなぁぁぁぁ!?』

「……まるで、スプラッタホラーを見ている気分だ」

 

 ガンプラバトルをやっているはずなのに。

 楽しさよりも先に、身の危険を感じる。

 あの二人にも、恐らく僕が負けることはない。だけど、強いていうなら動きが未知数すぎる。

 

「まずは牽制とさせてもらう! 行け、Fファンネル!」

『緑ロックから飛ばしたところでなぁ!』

 

 先手として、ウイングガンダムの女の子──ミキ、という名前のダイバーを倒すつもりが、相手は必殺の軌道の合間を縫って近づいてくる。

 

『待ってたぜチャンピオン! わたくしを萎えさせるようなXXXXをするんじゃねえぞ!!!!』

「……」

 

 ウイングガンダムの少女を目眩しにしたのか。

 いつの間にかキリングレンジに入り込んでいたヘイズル改のビームサーベルをシグルシールドで受け止めつつ、蹴り飛ばして距離を離す。

 それでもまだ、背筋がざわつくような嫌な感覚は続いていた。

 

『死ねぇぇぇぇッ!!!!』

「バスターライフルか!」

 

 ハイパードッズライフルの三点バーストで死角から放たれてきた閃光をかき消しつつ、次の一撃に備えて飛ばしていたファンネルを引き戻す。

 この女の子たちは、マヴだ。

 さながら、GquuuuuuXのマチュとニャアンのように激しくも精緻に連携が取れている。

 

「お互いを利用した目眩しか……ならば!」

『速ぇ……っ! ゲッターロボかよ!』

 

 こちらも高速戦闘で撹乱するのみ。

 相手のペースに付き合って戦うことほど、全力の戦いにおける愚策はない。

 どこまでも無慈悲に、冷酷に、「正解」だけを叩きつけ続ける。

 

 それが僕の──クジョウ・キョウヤ(チャンピオン)の全力であり、ガンプラバトルの真髄だった。

 

 

 

 

 

 

「たはー、負けたーっ!」

「ええ……わたくしたちの完敗でしたわね」

 

 夕暮れの埠頭で、私は盛大に海へと向かって叫んでいた。

 いや、そりゃ作中最強の男に勝てるとは思ってなかったよ。

 でも、私とルルカの波状攻撃をほぼノーダメで捌き切るってなにさ。マジレス聖戦士にも程があるだろ。

 

「でも」

「ええ、でも」

『次は殺す』

 

 負けはしたけど心は折れていない。

 むしろ、再戦が楽しみでならないほどだ。

 私とルルカが互いに同じ言葉を口にして、微笑み合っていたそのときだった。

 

「あの……!」

 

 青い服に白いズボンの少年──この世界の主人公ことミカミ・リクくんがやってくる。

 おお、ついに原作キャラとの絡みが……いや、もう既にチャンプと言葉交わしてたわ。

 でも、どうして。

 

「お姉さんたち、言葉遣いはめちゃくちゃ悪かったですけど……格好よかったです! チャンピオンが相手なのに、一歩も退かなかった! 俺も、お姉さんたちみたいになれますか!?」

 

 どうやら無意識に私たちは原作主人公の脳を焼いていたらしかった。

 

「なれるよ、キミなら。応援してるね」

「ふふっ……ツミキも罪作りですわね。ですが、仰る通りです。いつの時代も弛まぬ努力こそが道を開くものですわ」

「ありがとうございます!」

 

 手を振って夕陽に向けて駆け出していくリクくんを見送りながら、私たちは、若さと青さへの憧れが少しだけ混じった微笑みを、交わし合っていた。




思春期の少年の脳をこんがりローストしたお姉さんたち(嘘は言っていない)
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