お嬢様がGBNにいるわけないだろう! 作:プラ板の削りカス
ゴジョウさんたちとバトった翌日、リクくんからダイバーギアを通して連絡があった。
なんでも、高難度ミッションに挑むから知恵を貸してほしいとか。
我ながらどうかと思うけど、知恵って私たちから一番遠そうな言葉なのに、それでも助力を願い出てくるリクくんの聖人っぷりが凄まじい。
そして高難度ミッションといえば、時期的にあれか。
ロータス・チャレンジ。
原作ではチャンプ率いる「AVALON」とロンメルさんの「第七機甲師団」も幾度となくクリアに失敗したクソゲー……もとい高難度のクリエイトミッションだ。
原作だとリクくんたちはデータでレンタルするシャトルではなく、「シャトルを自作する」方向で成層圏突破までの時間を短縮、かなりギリギリの時間までかかったけどクリアしていた。
……これ、別に私たちが手を貸さなくてもどうにかなるんじゃないかしら。
いや、でもせっかくリクくんたちが私たちを頼ってくれたんだから、なにか有益なことをアドバイスしなきゃだし。
「とりあえずはお嬢様モードで学園に通ってからね……」
『失礼いたします、お嬢様。お召し物をお持ちしました』
「入っていいわよ、ピケスト」
『ありがとうございます』
今思えば、お嬢様モードを維持するのって、結構大変だ。
そう考えるとピケストも長いこと本性を隠し続けてきたのだから、相当鬱憤が溜まっていたのだろう。
たまには労いの一つもしてあげないといけないんだろうなー、とぼんやり考えながら、私はピケストに髪型をセットしてもらうのだった。
†
「ありがとうございます、ミキさん!」
お、おお。なんか学園で体調不良での気絶者が出て、騒ぎになったなーと思ってたら、GBNも大変なことになってた。
原作と違って、「AVALON」のお城の応接間に集まっていたリクくんが、お礼の言葉を口にする。
バタフライエフェクトと私の介入で色々と世界がとんでもないことになっているのは自覚していたけど、ロータス・チャレンジ対策委員会みたいな感じで名だたるダイバーたちが集まってるのを見ると、若干ビビるなぁ。
「いえ、私たちで力になれることがあればいいんだけど……」
「三人寄れば文殊の知恵とはこの国のことわざだろう? あまり謙遜しなくてもいいんじゃないかな、『レディビルド』」
肩に力の入った答えを返すと、ソファに腰掛けていた狐耳に尻尾、褐色肌のイケメンお兄さんこと、シャフリヤールさんがフォローを入れてくれた。
流石だなー、タイガーウルフさんと喧嘩ップルやってること以外は完璧なイケメンなだけはある。
……でも、この声どっかで聞いたことあるようなないような。いや、前世で死ぬほど聞いてたからそうなんだけどさ、私の中の今世の部分が引っかかるというか。
「で、ロータス・チャレンジってのはあれか。実質制限時間3分かそこらでガチガチの防衛網を突破しなきゃいけねえってのか」
「ほう? 概ねその通りだよ。ケモノにしては知恵が働くじゃないか」
「喧嘩売ってんのかこのキツネ野郎!」
タイガーウルフさんとシャフリヤールさんが今日も仲良く喧嘩しているよ、かわいいね。
そういえば私たち、相手はGBNの有名人なのにこの二人とあんまり接点なかったからなあ。
生でタイガーウルフさんとシャフリさんの喧嘩が拝めたことに内心で感謝しつつ、私はどうしたものかと頭の中で考えを巡らせる。
うーん、別にシャトルをフルスクラッチで作ることを教えても構わないんだけど、それだとリクくんたちが成長する機会を奪ってしまうのよね。
だから、アドバイスがあるとしたら別の方向でアプローチをかけなければいけない。
例えば……機動武闘伝Gガンダムみたいに、ロケットにしがみついて大気圏突破するとか?
「ミキさんたちもやっぱり悩みますよね……実質3分であれだけの防御を突破しなきゃいけないなんて」
リクくんは俯き、悔しげに拳を固めた。
ダブルオースカイが原作より前倒しで完成しているとはいえ、ロータス・チャレンジの肝はどれだけ大気圏突破までの時間を短縮できるかにある。
個々のガンプラの性能が求められるのは、それより先の話だ。
「うーん……そうね。確かに悩むけど、大気圏突破の方法なら、別にシャトルに限らないんじゃないかしら」
「それって?」
「例えば……スターゲイザーが使ってた『ヴォアチュール・リュミエール』。あれなら、シャトルに頼らなくても単独で大気圏突破ができるわ」
なんとなくヒロトくんたちがエルドラでの最終決戦で使った手段を頭に浮かべながら、私はリクくんに提案した。
まあ、VLを使うとなると結局外付けの専用ユニットやらなにやらを自作しなきゃいけないから、手間という意味ではかかってしまうのだけど。
でも、シャトルをフルスクラッチするよりは現実的な気が……しないでもない。
「おいおい、ミキ。テメェともあろうやつが随分シケた提案してんなぁ」
「ツカ……じゃなかった。アンシュくん。なにかいい提案があるわけ?」
「これだからGBNに染まり切った連中は頭がデータに偏っててダメなんだよ、借りられるシャトルがどれもこれもヘボだってんなら……テメェで作っちまえばいいだけの話だろ?」
今日もサラちゃんの腕の中に収まっている紫ハロボディのツカサくんが、どことなく呆れた様子で呟いた。
おお。これでようやく原作通りの展開になってくれそうだ。
彼の言葉にチャンプをはじめとした面々は度肝を抜かれていた様子だったけど。
でも、ツカサくんが閃くのは「らしい」話だ。
コーイチさんと二人で頑張れば、一週間という期限はあれど、原作よりもさらに高クオリティなシャトルを作ってくれることだろう。
これ、私必要あったかなぁ。
「……あの、一ついいですか」
「なんだよ、ヒロト?」
「……ミキさんの、ヴォアチュール・リュミエールを使うって案、悪くないと思います。それこそ、シャトルと合体させれば、かなりの速度で大気圏を突破できるかなって」
私が少しだけ寂しさと役に立てなかった悔しさみたいなものを感じていると、ヒロトくんが控えめに手を挙げて、折衷案みたいなものを出してくれた。
シャトルにヴォアチュール・リュミエールを積む。
その発想は私にもなかったわ。さすがネプテイトガンダムの生みの親だけある。
「ッ!? やるじゃねえか、ヒロト……さすがGPDの経験者だけはあるな……!」
「確かに、シャトルにヴォアチュール・リュミエールを搭載すればかなりの余裕をもって大気圏を突破できる……! まさに目から鱗だったよ、ありがとう! ツカ……アンシュも、ヒロトくんも、ミキさんも!」
どうやら私の提案も少しは役に立ってくれたらしい。
ツカサくんとコーイチさんが歓喜に湧き立っている様子を微笑ましく横目で眺めながら、小さく口元を緩める。
そうよね、どうせならクソゲーを突きつけてきたロータス卿には原作を超えて余裕のクリアを叩きつけてあげなきゃね。
「その案は自由な発想で素晴らしいよ。しかし……ヴォアチュール・リュミエールの点火役は誰がやるんだい? 見たところ、君たちビルドダイバーズにはそれだけの火力を持った機体はいないみたいだけれど」
などと微笑んでいると、シャフリヤールさんが予想を超えたマジレスを叩きつけてきた。
そ、そうじゃん。
スタゲ式のヴォアチュール・リュミエールって外からの大火力で点火しなきゃ起動しないのに、完全に見落としていた。
「僕がやります!」
「ユッキー?」
「実はリッくんのダブルオースカイに影響されて、僕もなにかできないかって考えてたんだけど……今、ミキさんとアンシュさんとヒロトさんの案を聞いて一つ思いついたんだ! 一週間以内に必ず仕上げてみせるから、コーイチさんとアンシュさんはVL搭載シャトルを作ってください!」
いつになく興奮した様子で、ユッキーくんが捲し立てた。
ははーん、さては「アレ」だな?
確かに「アレ」こと、ユッキーくんの後継機、「ジェガンブラストマスター」のフルバースト火力なら、ヴォアチュール・リュミエールの点火役としてはこれ以上ないほど適任だろう。
「ユッキー……わかった、俺、信じるよ! ユッキーなら必ずなんとかしてくれるって!」
「ありがとう、リッくん!」
がっしりと、リクくんとユッキーくんは握手を交わした。
男の子同士の友情って感じで、微笑ましい光景だなぁ。
それに、原作よりジェガンブラストマスターの完成が前倒しになったのも前世オタクとしては中々ニチャれるポイントだ。
是非ともリクくんたちには、頑張ってロータス卿に白目を剥かせてあげてほしいものだった。
ドージなら荼毘に付したよ